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    砂肝🐓

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    砂肝🐓

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    以前期間限定で支部に載せていたまきまいのお話
    百合ではないです一応( ˘ω˘ ) スヤァ…
    本誌読んだ勢いで書きたくなったやつなので短いですが

    #まきまい
    rolledRice

    よだかの夢「うーん…」

    禪院真希はそう一言唸ると乱暴にクローゼットを閉めた


    京都校との交流会が終わり、慌ただしかった高専内もやっと落ち着いた
    明日は任務もない

    真希は何かを思いついたのか、京都校の生徒が滞在しているであろう部屋へと向かった


    その道中の事


    「あ、真希さん!こんばんは!」


    声のする方を見ると水色の髪の毛がチラッと見えた。三輪だ


    「よぉ三輪じゃねえか。何してんだよこんな時間に」

    「いやなんだか寝られなくって。真希さんこそどうしたんっすか?」

    「私は…」

    「あっ、真依さんなら部屋にいるっすよ!西宮先輩もどっか行っちゃったんで多分1人っす!」

    「まだ何も言ってねぇよ…」


    真希は自分の行動を言い当てられた事に少々苛立ちながら、ガリガリと頭をかいた


    「まぁでもありがとな」

    「っす!」


    とりあえず教えてくれた三輪に礼を言うと、目当ての部屋に向かった


    「真依、入んぞ」


    ノックもせず開けた事に気づいたが、一応声はかけたのでセーフだろう
    そこには突然の、しかも思ってもみない相手が入って来た為、読んでいた雑誌を開いたまま完全に固まっている


    「んだよ何とか言えよ」

    「ちょ、何であんたがここにいるのよ!しかもノックぐらいしなさいよ!いきなり開けるなんて有り得ない!!デリカシーってもんが無いの?!」

    「うるせぇな。声はかけただろうが。」

    「ほんっとあんたってデリカシーも無ければ教養も無いのね!」


    真希の目の前には同じ顔が真っ赤になって怒りに震えている
    双子の妹、禪院真依だ


    「それで?」

    「あ?」

    「あ?じゃ無いわよ。まさか何も用が無いのに来たんじゃ無いでしょうね?だとしたら迷惑にも程があるわよ。私への嫌がらせでもしに来たのかしら?だったらご愁傷様。こんなもの嫌がらせの内に入らないわよ」

    「んなわけねぇだろ。……真依お前明日暇だろ」

    「だったら何?」

    「ちょっと付き合え」

    「は?」

    「場所はまた連絡する。邪魔したな」

    「はぁ?!ちょっと!」


    扉の向こうで「待ちなさいよ!!」と何やら叫んでいるが、強引に約束を取り付けてしまえばこっちのもんだ
    真希は来るべき明日に向けて自室へと帰って行った


    翌日



    昨日と変わらず同じ顔が目の前で怒りに震えている


    「あんたねぇ…」

    「……」

    「なんっで私があんたなんかと洋服を買いに来なきゃいけないワケ!?」


    渋谷のど真ん中で真依が叫ぶ
    双子の口論が珍しいのか、道行く人はチラチラとこちらを見ている


    「仕方ねぇだろ。こういうのお前詳しいじゃねぇか」

    「仕方ないってなによ!あんたの後輩にも居たじゃない!こういうのが好きそうな子が。」

    「野薔薇の事か?」

    「そうよ。あんたに随分と懐いているみたいだから、声かければ喜ぶんじゃないの。」


    真依は苛立ちを隠そうとしないまま、こちらをギッと睨む


    「野薔薇じゃダメなんだよ。…実は今度野薔薇と映画を観に行くんだが、私はそういう事に疎いもんだから、一緒に並んでも違和感の無いような服が無ぇ」


    正直に理由を話すと、真依は一瞬ポカンとしていたが次第に目が釣り上がる


    「っっふっざけんじゃないわよ!!!有り得ない!大体どうして私があんたらの為に付き合わないといけないのよ!帰る!!」


    クルっと踵を返し、来た道を戻ろうとする真依に真希は一言声をかける


    「化粧品」


    すると帰りかけていた真依がピタリと止まる


    「お前、昨日部屋で見てた雑誌の化粧品、欲しいんじゃねえの?」

    「…だったら何」

    「ご丁寧に折り目まで付けて、一瞬だったが数量限定販売なんだってなぁ」


    真希はニヤニヤと笑いながら続ける
    何でそこまで見えてんのよっ!と声には出さないものの真依は焦っていた


    「野薔薇が言ってたが東京で数量限定なんてもんは地方じゃほぼ手に入らねぇ。人気商品なら争奪戦。そこでだ」


    真依の心臓は早鐘を打つ
    嫌な予感しかしない


    「今日付き合ってくれた礼に、私が行って買ってやってもいいぜ。その限定販売とやらに」


    将棋の盤上で王手がかけられたような物だった
    握りしめた拳がギリギリと音を立てる

    東京で限定販売されていた物は、真依が普段から特別気に入っていた物だった
    普通の物なら京都のデパートでだって買えるが、限定品となるとそうはいかない。
    しかもそこには鍛え抜かれた猛者達がいる為幾度となく敗れている。今のところ全敗だ


    「どうする?前に野薔薇とそういう所に行った時はとんでもねぇ人だったが私なら買ってきてやれるぜ。体を使うのは得意だからな」


    真希の言う事はきっと本当だろう


    「………」

    「ま、そんなに嫌なら無理にとは言わねぇよ。悪かったな」

    「っっ待って!」


    悔しそうに両手を握りしめたまま、真依がゆっくり振り向いた


    「………いいわよ…あんたの買い物に付き合ってやればいいんでしょ…」


    顔を上げて見るとそこにはニヤリと笑う真希の顔があった


    「よろしく頼むぜ"妹"」





    ガヤガヤと喧しい人混みの中を同じ顔が2つ並んで歩く


    「大体あんたいつもどんな服着てんのよ」

    「あー、あんまり考えた事ねぇ。例えば…これとか?」


    真希が適当に取った服はシンプルなTシャツ
    しかし真ん中にデカデカと「Kill You」の文字が


    「ざっけんじゃ無いわよ!!!有り得ない!!あんたの感性どうなってんの!!!恥ずかしいったらありゃしない!!来なさい!」


    真依は乱暴に真希の持つTシャツを奪い取り、ワゴンに叩きつけると今度は真希の腕を掴んで人混みの中をずんずんと進む


    しばらくして真依が止まった


    「入るわよ」


    お目当ての店を見つけたのか、掴まれた腕が再びぐいっと引っ張られた


    真依はしばらく考えると、カゴの中にポイポイと服を突っ込んでいく
    そうして溢れんばかりに服の入ったカゴを真希に押し付けると


    「はいこれ。試着してみなさいよ。」

    「おう」


    真希は存外大人しくカゴを受け取り、試着室へと入っていった


    まさか姉妹2人で出かける事になるなんて…考えもしなかった
    仲の良さなんて最悪、会話をしても売り言葉に買い言葉。100%口論になってしまう
    なのに…何故真希は私に声をかけたのだろう
    あいつの考えることはいつだって理解出来ない

    嫌い
    真希なんて
    大っ嫌いよ


    そうこうしている間に試着室のカーテンが開いた
    違うわ…私は限定品の為にここにいるの。真希の為じゃない
    邪念をブンブンと振り払うと出てきた真希を見た


    「着替えたぞ」

    「見りゃ分かるわよ」

    「なんだよ不満か?」

    「……駄目ね。次行くわよ、着替えて」


    真依の選んだ服に身を包んだ真希を確認するが、思った以上にしっくり来なかった。ポカンとした真希を再び試着室へ押し込み、さっさと次の店に連れていく


    そうして3時間ぐらいだろうか…
    あーでもないこーでもないと真希を連れ回し、着せ替えを繰り返していく

    もうブティックを何軒回ったかも覚えていない
    真依は最初こそ文句を垂れていたが、やはりこういう物が好きなのだろう。存外真剣に選んでくれていた。
    真希は自分が言い出した手前断れないので、途中から考えることを辞めた


    そんな時だった


    あ、…新作出てたんだ…
    真依は思わず足を止めた
    そこには、これからの季節に良さそうな、ターコイズグリーンのシンプルなワンピースが掛られていた


    「真依?どうした?」


    真希の声にハッとする


    「別に、何でもないわ。行くわよ」


    今は私の物を見ている場合じゃない。
    真依は足早にショーウィンドウの前を通り過ぎた


    そうして何軒目だろうか


    「うん、いいわね。それにしなさい」


    やっと真依のOKが出た
    正直ここまで長丁場になると思っていなかった為真希はこっそりため息を着いた


    「珍しいな。お前がこういうの選ぶの。」

    「は?私の趣味じゃ無いわよ。大体こんなの私が…着る…わ、け」


    そこまで言って真依の顔が違う意味で真っ赤になっていく


    「ほーぅ?」


    しまったと思ってももう遅い
    ニヤニヤとした顔の真希が目に入る
    100%真希のために選んだと自白しているようなものだった


    「な、なななによ!あんたが頼んで来たんでしょ!」

    「別に私は何も言ってねぇけど?」

    「顔で分かるのよ!どうせバカにしてんでしょ!」

    「はぁ?そんな事一言も言ってねぇだろうが」

    「っもう帰る!!」

    「おい真依!」


    最悪っ!

    後ろで真希が何か言っていたが無視して走り出す
    真依はしばらく走続け、目に入った公園に駆け込んだ


    「はぁ、はぁ…」


    ベンチに雪崩込むように座る

    真希といるとどうにもいつもの調子が出ない
    それどころか取り繕った顔がボロボロと剥がれ落ちてしまう

    本当は憎まれ口を叩きたい訳じゃない
    けど、どうしても天ノ弱な自分が顔を覗かせる


    私を置いていった真希が嫌い
    でもそれ以上に素直になれない私も嫌い


    「馬鹿みたい」


    お気に入りの靴、お気に入りの洋服
    全部全部、今日のために身につけてきた
    それがどういう事か、私だって分かってる


    少し…ほんの少しだけ…
    今日を楽しみにしていた


    何度目かの自己嫌悪によるため息がもれたその時だった


    「見つけた」


    聞き間違えるはず無い


    「なによ。笑いに来たの?真希」


    相変わらず少しも息は上がっていない
    こっちはやっと息が整ったって言うのに


    「なんだ。泣いてねぇのな」

    「はぁ?泣くわけ無いでしょ?何年前の話よ」

    「まぁいいさ。ほらっ帰るぞ。明日京都戻るんだろ」

    「言われなくても帰るっ…いたっ」

    「どうした?」


    突然足の踵に痛みが走った
    見ると靴擦れを起こしてしまっていた
    さっき走った時に出来たのだろう


    「あーあ、派手にやったな。」

    「別に…こんなのっつっ!」


    歩き出そうとすれば痛みが走る
    戦闘中ならこれくらいの傷痛くなんて無いのに…
    今は痛みで歩けそうになかった


    「私なんかほっといて先帰んなさいよ」

    「何言ってんだ。私が先に帰った所でお前歩けねぇだろうが」


    真希はそう言うとベンチに座る私に向かって後ろ向きにしゃがんだ


    「あんた…何やってんの?」

    「あ?おぶってやるから早くしろ」

    「なっ!ばっかじゃないの!?大体あんたの助けなんて借りなくったって…」

    「あーはいはい。分かった分かった」

    「ちょっ!この…待ちなさいよ!」


    真希は文句を垂れる真依に痺れを切らし、その体を難なく持ち上げると、無理やり背中に背負った


    「……………」

    「……………………」


    背中に背負われた瞬間真依は借りてきた猫のように大人しくなり、二人の間に静かな時間が流れる
    だが先に沈黙を破ったのは真希の方だった


    「…真依」

    「なによ…」

    「ありがとな」


    まさか礼を言われるとは思っていなかった為、面食らってしまった


    「あんたが素直に礼を言うなんて明日は雨かしら」

    「はは、そうかもな」

    「ちょっとは怒るか否定ぐらいしなさいよ」

    「うるせぇよ」


    何年かぶりに穏やかな時間が二人の間に流れる


    「真依」

    「なに」

    「足、痛く無いか」

    「もう痛くないわ」

    「そっか」

    「ねぇ…真希」

    「…なに」

    「………何でもない。呼んでみただけよ」

    「なんだそれ」








    次の日


    「真依さーん」

    「あら、おはよう」


    声のする方を見ると、寝癖のついた水色の髪の毛が顔を覗かせた
    三輪だ


    「おはようございます!そうそう、これ預かって来たんですけど」

    「何?」

    「お姉さんからです!」

    「…真希から?」

    「朝偶然廊下で会ったんですけど、これ渡しといてくれって。」


    三輪は、確かに渡しましたからねーと言い、そそくさと退散して行った

    見覚えのある紙袋…まさか


    中を見るとそこには、昨日ショーウィンドウに飾られていたターコイズグリーンのワンピースが入っていた


    「なによ、これ」


    そのワンピースに惹かれ足を止めた私を、真希は見逃さなかったのだろう


    「ふん、バッカみたい」


    ほんの少し
    自分でも気が付かないくらい自然に
    真依の口元が嬉しそうに緩んだ気がした



    おまけ



    「?」

    「は?」


    廊下で真依とエンカウントしたのは、随分と真希に懐いてる野薔薇とか言う1年


    「んだコラやんのか」

    「あら嫌だ。都会にはお猿さんしか居ないのかしら?」

    「猿はてめぇだろうが。とっとと京のお山に帰れよ」

    「ごめんなさいね。私人間の言葉しか使えなくて」


    そのまま数十分睨みあったが、お互い不毛な争いと気づいたのかどちらともなく目線を逸らした


    「釘崎野薔薇とか言ったわね」

    「そうだけど、なんか文句あんのかよ」

    「あんた私に感謝なさいよね」

    「は?」

    「今度真希と映画見に行くんでしょう。昨日その時に着ていく服が無いから一緒に選んでくれって真希に泣きつかれたんだから。本当いい迷惑よ」

    「なにそれ?」


    野薔薇は意味がわからないといった顔をしていた


    「は?」

    「映画?いつ?そんな約束してないけど?」

    「え?だって…昨日……」


    そこまで言ってやっと理解した
    みるみる顔が赤らんで行くのが分かる


    「っっ!!」

    「あ!ちょっと待てやコラァ!!」


    後ろで野薔薇が何やら叫んでいたが今はそれどころじゃなかった


    なによ、なによなによ!!
    ほんっと…やってくれたわね


    してやられたと言う苛立ちの中に、ほんの少しの嬉しさが芽生える

    改めて思い知らされた



    私達はどう足掻いたって双子なのだと





    二羽のよだかは夢を見る



    辛い夢、悲しい夢、恐ろしい夢



    けれどその中に


    確かに幸せな夢があった





    二羽のよだかは海を渡る




    山を越え、空を駆け、星を見上げた



    決して寂しくはない



    そうしてよだかは飛び立った



    まるで鳴き声は会話のように



    空の彼方へ飛び立った
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