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    nnsn_neta

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    ミチフィガ

    ※未読ストエピあります
    ※捏造

    #ミチフィガ

    死籠り 厄災の傷が感染する様になって百年が経ち、ボクたちは魔法科学や、マナ石すら使わない科学と言う技術に守られるようになった。だって誰だって心臓が燃えたら痛いし、絵の中に閉じ込められるのは怖い。それから不思議なことだけれど、魔法使いが弱くなってから人間はとても優しくなったのだ。ボクたちは普段、厄災から隔離されたドームで暮らしている。これを檻と呼んだのは誰だっただろうか。ミスラさんかもしれないし、リケだった様な気もする。
    「ねぇ、フィガロ先生。怖くないんですか?」
    「どうして?」
    「だって、ほら、厄災がすごく近いです」
     ボクは先生の傷を知らない。同じように、先生もボクの傷を知らない。傷を知る前に、ボクたちは檻に入った。
    「怖くないよ、ミチル。久しぶりに見たけど、びっくりするほど綺麗じゃない?」
    「なら、先生。ボクも怖くないです。全然怖くなくて、なんだか、ドキドキしてしまって、」
     マナエリアに訪れたのは久しぶりだった。高い高いドームの天辺。ボクは全身で厄災を浴びる。檻に入ってから具合の悪くなったボクを、先生がこっそり連れ出してくれた。ドームの天辺で月の光に照らされて、ボクの心臓が高鳴る。月が、あの月が、月、月、月、月月月月月月月月月月月が、綺麗だ。厄災だなんてとんでもないと思う。きっとあれは祝福だ。魔法使いに残された最後の祈り。新しい魔法使いが生まれなくなってから何年が経つだろう。賢者が最後に訪れたのはいつのこと? きっとこの世界は滅びたがっている。今だけはそうと確信できた。
    「オルトニク・セアルシスピルチェ」
     歌うように呪文を唱える。繰り返し、繰り返し、だってもっと近くで見たくて、もっと傍で感じたくて、だって、月が、すごく、綺麗な、
    「ミチル、綺麗だね」
    「ええ、はい、とても」
     月が、落ちて、世界は滅ぶ。
     それは、
    「――フィガロ先生、」
     ボクは先生を呼んで、呪文を止めた。
    「ミチル、いいの?」
     先生は何もかもわかっているような顔で、ボクに聞いた。緑色の菱形が、月の光に揺れている。それがとても優しげにみえた。月よりも綺麗だった。
    「はい! みんながいれば、ボクはそれで」
     これはきっと最後のチャンスだったと思う。世界は滅びたがっていた。厄災は魔法使いに許された最後の祈りだった。でも、それがなんだっていうのだろう。人間はとても優しくなったし、厄災が来ても無理に戦わなくていい。それでいいじゃないか。
    「先生、帰りましょう」
     厄災から目を逸らす。見渡す限り灰色の土地を背にして、立ち上がる。マナエリアなんてもう世界の何処にも無い。ボクたちは自ら檻に入る。
     それでもきっと、ここだっていつか、安息の地になるだろう。
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    Replies from the creator

    related works

    mninnmnninm

    MOURNING去年書いたミチフィガ
    ミチルが成人してる
    まだ厄災と戦ってる
    魔法舎の裏手にある庭園のベンチで二人、静かに並んで座っている。風がすこし肌寒く感じはじめる季節になった。
    ミチルはそっと、フィガロの手を握った。
    存在を確かめるように優しく、それでいて何かを求めるように力を込めて指を絡ませた。
    フィガロは絡んだ指先にほんの僅かに身じろいだだけで指先はそれ以上動かなかった。どうすればいいのか分からなかったのだ。
    握り返してはくれないんですね、とミチルがぽつりと呟いた。その横顔を盗み見ようと顔をあげると悲しそうに寂しそうにこちらを見つめる瞳と目が合った。しかし言葉は続かなかった。お互いに探るような瞳で見つめあったまま不思議で静かな時間が流れた。
    フィガロは柳色の綺麗な瞳を見つめながら考える。彼は欲しいと言えばくれるのだろうか。願えば叶えてくれるのだろうか。薄い皮のすぐ内側で、ひりつくほど欲しているくせに何も出来ないでいる。彼のことも自分のことさえも信じられないでいる。力があって人望もあって権力もあってこんなにも強いのに愛の前ではこんなにも無力で不確かで曖昧で、弱い。本当に握り返してもいいのかと往生際悪く戸惑っている。ふと、彼の瞳に映る自身が欲を含んでいる表 799

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