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    jooo_taros

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    jooo_taros

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    高専五七。はじめてのえっちからの2回目えっちに至るまでのもだもだ。エロは支部にあげるときに追加するつもり。

    ※いつも書いてるシリーズの五七とは別軸です

    3回目は次の日だった世界が昨日とは違ってみえる。

    はじめて身体をつなげた次の日の朝、目を覚ました先の視界に映った白い綿毛はきらきらと光っていて、七海は開けたばかりの瞳をわずかに細めた。身体を包む人肌は心地良く、じわじわと昨夜のことを思い出す。

    昨夜、七海はかねてよりお付き合いをしていたひとつ年上の先輩である五条とついに一線を越えた。

    誰かと裸で抱き合うのははじめての経験だった。自然の流れで受け身になった七海は五条のされるがままで、最中は身体を貫かれる痛みと今まで経験したことがないような快感と自分自身はじめて聞いたあられのない声が恥ずかしくて、なんだかもういっぱいいっぱいだった。最後はわけがわからないまま達してそのまま気絶してしまったらしい。何も身につけてはいないが最中に飛び散った精液はきれいに拭き取られている。おそらく五条が後始末をしてくれたのだろう。
    七海が目を覚ましても、五条は眠ったままだった。目を縁取るようにびっしりと生えた長いまつ毛をまじまじと見つめる。整った美しい顔は、眠っているとまるで人形のようだ。白い肌に触れるとたしかにあたたかく、指の先に感じる体温がなんだか無性に安心できた。
    「……ん、あ」
    ふる、とまつ毛が揺れてゆっくりと瞼が開く。あらわれた世界で一番美しい青に、七海の顔が映し出される。身に余るような光景は、これから先一生忘れることはできないだろう。大袈裟だと笑われそうだが、このときの七海は真剣にそう思った。
    目を覚ました五条はまだ寝ぼけているのか焦点が定まらない。締まりのない顔でじっと見つめられ、七海は気恥ずかしさを感じながらぼそぼそと口を開いた。
    「……おはようございます」
    「……七海がいる」
    夢と現実の狭間にいるのか、五条の声はふわふわと浮ついていた。
    昨夜は五条の部屋で身体を重ねて、そのまま寝てしまった。五条の体格に合わせて少し大きめにカスタマイズされた寮のベッドは、それでも平均よりサイズが大きい男子高校生が二人寝るには小さなサイズだ。五条に抱きしめられるように眠っていたから許容されていると思っていたが、やはり寝心地が悪かったか。
    「すみません、昨日そのまま眠ってしまって…」
    すぐ帰ります、とベッドから起き上がろうとして、改めて自分が何も身につけていない状態であることを思い至る。昨夜、身体の隅々まで見られてしまったので今更恥ずかしがる必要もないのだが慌ててシーツを手繰り寄せる。辺りを見渡して、ぐしゃぐしゃのまま床に落ちていた自分の服を拾い上げようと腕を伸ばしたところで、五条に後ろから抱きしめられる。
    「ちがくて!まだ帰んないで」
    「ちょっ、」
    後ろからぎゅうぎゅうと抱きついてくる五条に抵抗しようとしたが、耳元で甘えた声を出されたらもうだめだった。服へ伸ばしていた手を引っ込めて、胸の前にまわった五条の腕に触れる。心臓がうるさい。七海の首筋に顔を埋めて、五条は深く息を吐いた。
    「夢じゃなかった……」
    「夢じゃないですよ」
    夢のような出来事だったが、身体の節々に残る違和感はたしかに現実のものだ。七海の返事に、五条は力強く七海を抱きしめる。
    「やべ〜朝から幸せ過ぎる……」
    こっち向いて、と顔だけ五条の方へ向かされ、そのままキスをされる。触れるだけのキスだけでもどきどきして、心臓の音が早くなった。
    「身体、痛くない?」
    「大丈夫です」
    本当は腰は痛いし、お尻はまだ違和感がある。それを見透かしたように五条は続けた。
    「今日はさ、絶対任務行くなよ。急に呼び出されたら俺が行くから」
    翌日のことを考えて五条とセックスをするに至ったので、元々今日は休みだ。身体が資本の呪術師、特に七海は近接型の戦闘スタイルなので身体の不調は下手したら命取りになる。しかし、七海だって呪術高専に入ってからそれなりに鍛えているし、五条たちにしごかれながら経験だって積んできた。か弱い子供ではないのだ。確かに身体は痛いが急に任務が入ったって対処できるつもりだった。
    「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
    「だめ、俺が心配なの!今日は一日休んでろよ」
    「……はぁ」
    至急を要する任務は数少ない特級呪術師である五条に入る方が多い。お互い任務が入ったらどうするつもりなんだろうな、とぼんやり考える。難なく両方こなしてしまうんだろう。だって彼は最強なので。
    付き合う前だったら、任務を代わりに請け負う、なんて言われたら悔しくて突っぱねていたかもしれない。しかし、五条と付き合うようになって、彼の愛情を一身に受け続けた七海はもうそんなことできなかった。五条が純粋に七海の身体を労ってくれていると分かっているので。
    「腹減ってない?水は?なんか持ってくる?」
    「とりあえず服着たいんですけど…」
    「それはだめ。もうちょっとこのままでイチャイチャしたい」
    七海、大好き。昨日めちゃくちゃ可愛かった。ちゅ、ちゅと素肌にキスを繰り返しながら睦言を囁く五条はどこまでも甘い。部屋に満ちた甘い空気に頭がふわふわする。昨夜の余韻が色濃く残ったまま、七海は結局夕方近くまで五条の部屋で甘い時間を過ごした。


    はじめてのお付き合いは順調だった。五条は七海への愛情を周りに隠さずところ構わずくっついてくるので、周りにからかわれる恥ずかしさはあったが、おかげで不安を感じる隙なんてないぐらい五条の愛情で満たされた。手を繋いで、キスをして、ゆっくりステップアップして、おそるおそる身体を繋げて。男同士のセックスは不安でいっぱいだったが、五条がリードしてくれてなんとか最後までできた。翌日も五条は優しかったし、七海を気遣ってくれた。はじめてのセックスは少し痛かったが、気持ち良かったし、これから慣れればもっと深いところまで五条で満たされるのだと思えばなにも不安はなかった。
    (……おかしい)
    五条のことだ。一度セックスをしてしまえば、タカが外れたように何度も求められるようになると思っていた。しかし、なかなか二回目の機会が訪れない。訪れない、というよりなんとなく五条に避けられている気がする。七海がそう気づいたのは、はじめてのセックスから二週間が経った頃だった。
    キスはする。でも、それ以上はやんわり避けられる。七海の部屋に誘って二人で過ごしていても、日付が変わる前に朝から任務だから、と帰ってしまう。五条の部屋で過ごしていても同じ。日付が変わる頃にはやんわりと帰るよう促され、その空気に耐え切れず七海は結局いそいそと自身の部屋に戻る。一度五条の部屋で過ごしていた時、意を決してこのまま泊まりたいと伝えたが、一瞬困った顔をされてしまいそれきりもう七海からは誘えなくなってしまった。
    (……どうしてだろう)
    セックスをした翌日は、こんなことになるなんて思わなかった。これからもっと五条と仲を深めていけると信じていたのに。
    (やっぱり男同士だから……)
    五条はよく七海に可愛い、と言ってくるが七海は男だ。たしかに中性的な見た目をしている七海は、特に小さな頃は女の子と間違えられることもままあった。しかし、最近は成長期でぐんぐん背も伸びているし、父も祖父も体格が良いので将来的にはもっと逞しい体格になると思う。毎日筋トレも欠かさずやっているので少しずつ筋肉もついてきた。そして、なにより見た目がどんなに中性的であろうと七海は女性ではないのでもちろん胸はぺったんこだし、骨張った身体はきっと抱き心地も良くない。五条が今まで抱いてきた女性たちとは明らかに違う。
    見た目に惹かれて付き合ってみたものの、いざ抱いてみたら想像と違った。萎える理由としては十分だと思う。だが、翌日過ごした甘い時間を思い出せば、五条の気持ちが冷めたなんて信じられない。しかし、あれ以降どこかよそよそしささえ感じる五条の態度に、七海の心の中の靄は濃くなるばかりだった。



    五条と七海の二人で泊まりがけの任務を割り当てられたとき、七海は不謹慎ながらも正直チャンスだと思った。
    場所は関東から新幹線で約二時間の地方都市。呪霊の発生は夜なので祓徐のあとはホテルに泊まって翌日に高専へ戻る。翌日は今のところ他の任務も入っていないため、夕方までに帰宅するのであれば少し観光してきても良いとのお達しまでもらった。夜蛾も五条と七海の関係をうっすら把握しているようなので彼なりに気を遣ってくれたのかもしれない。
    新幹線の中で補助監督から渡された今回の討伐対象の呪霊に関する資料を読みながら、ちらりと隣の五条を伺う。いつもなら俺はそんなもん見る必要ない、と渡されたそばから資料を投げ捨ててしまうような男なのに、その双眼はじっと資料の文字を追っていた。真剣そのものの横顔にどきりとして、任務が終わったあとに邪なことを考えている自分が情けなくなる。
    呪霊が最優先だ。小さな油断が命取りになることだってある。七海は気を引き締めると呪霊の情報を頭に叩き込むように資料を目で追った。


    二級相当の呪霊の祓徐はあっという間だった。呪霊の性質と七海の術式の相性が良かったのも勝因として大きい。五条にサポートしてもらいながら、ほとんど一人で呪霊を祓徐するのに成功した七海は我ながら浮かれていた。普段はやたらべたべたして恋人アピールが激しい五条も呪術のことになるといち先輩として厳しく七海を指導する場面もある。特にひとつのミスで命取りとなる祓徐に関しては容赦ないが、今日は良くやったな、とストレートに褒めてくれた。五条の手を煩わせることなく祓徐できた今日の手応えは七海にとって良い経験となった。
    任務が終わればあとは高専に戻るまで自由だ。二人でご当地グルメを堪能したあとホテルに向かう。高専で予約してくれた部屋はシングルルームふたつ。同じ部屋がよかったな、と思ってしまう自分は、きっと想像以上に浮かれている。
    五条の分と合わせてチェックインを済ませて、カードキーを手渡す。
    「明日の朝は朝食ビュッフェらしいです」
    「まじ?俺パンケーキ食べたいんだけど」
    「パンケーキなんてありますかね」
    「俺がよく泊まるホテルにはあるけど」
    今回は高専が用意したホテルに泊まるが、五条単独の任務のときは五条家で用意したホテルに泊まることが多いらしい。五条家が用意するホテルなんてきっと星がいくつもつくような高級ホテルだ。パンケーキがあるのではなくて、五条が所望するから作っているんだろう。五条の金持ちっぷりに改めて住む世界が違う人だな、と驚いてしまう。
    エレベーターで泊まる部屋の階まで上り、横並びになっている部屋の前まで着く。時刻はまだ寝るには早い時間。このまま解散、なんてあんまりだ。七海はカードキーを使ってさっさと部屋に入ろうとする五条の制服の裾をくん、と引っ張った。
    「五条さん、あとからそちらの部屋に行ってもいいですか?」
    「……いいけど」
    視線を彷徨わせたあと、五条がぼそぼそと返事をする。五条の態度は気になるが断られる可能性も考えていたため、とりあえず了承を得られたことにほっとして七海も自分の部屋に入った。
    五条と一旦別れて自分の部屋に入る。ベッドが置いてあるだけのシングルルームに荷物を置いて、一息つく間も無くバスルームへ向かった。
    二人きりの泊まりがけの任務。明日は実質休み。ここまで用意された据え膳もなかなかないだろう。
    少しでもその気になって欲しくて持参してきたシャンプーやボディーソープは五条が気に入っている匂いのもの。任務で汚れた身体を隅々まで洗って、慣れないながらも自分で後ろの準備までした。逸る気持ちを抑えて髪の毛を乾かして全身ぴかぴかに整えたところで五条の部屋へ向かう。
    七海と同じように風呂に入っていたのか、出迎えてくれた五条の髪はいつもより無造作に跳ねていた。かわいい。
    「風呂入った?」
    「……はい」
    「なんかいい匂いする」
    「いつも自分が使ってるシャンプーを持ってきてたので」
    「えー。俺めんどくさいからホテルの使った」
    お前まめだな、と笑う五条の頬を抓ってやりたくなる。それもこれも五条のためにわざわざ用意したものだなんて、当の本人は思いもしていないのだろう。
    すん、と鼻を近づけてくる五条にどきどきして、思わずぎゅっと目を瞑るとそのままキスをされた。洗い立ての髪の毛はふわふわしていて触り心地が良い。掻き抱くように五条の頭を撫でながら、キスに酔いしれる。そのうち立っていられなくなってもつれるようにお互いベッド
    へ横になると、さらにキスが深くなった。
    「五条さん……このまま部屋に泊まってもいいですか?」
    「えっ」
    足を絡めてぎゅうぎゅう抱き合いながらキスをして。キスの合間、息継ぎをするタイミングで控えめに尋ねる。五条は一瞬困ったように眉を下げたが、やがて観念したのか渋々と言った程で頷いた。
    「い、いいけど」
    このとき、七海はこのままセックスにもつれ込むもんだと思っていた。しかし、五条はキスを再開せずに七海に妙なことを言い出した。
    「なぁ、歯磨いた?」
    「……まだですけど」
    意味がわからず首を傾げると、五条はガバッと勢い良く起き上がってテンション高く言った。
    「じゃあお菓子パーティしようぜ!」
    「はあ?」
    思わず大きな声を出してしまった。しかしそれぐらい予想外だったのだ。お菓子パーティー?陽気な響きに首を傾げていると、五条はごそごそと荷物を漁ってビニール袋いっぱいに入ったお菓子を掲げるように七海の前に見せてきた。
    「さっきホテルの前のコンビニで買ってきた!」
    「はぁ……」
    「七海はどれ食べる?俺的におすすめはこれ。この新商品の…」
    「待ってください。どうしたんですか、このお菓子の数」
    新商品から五条が気に入っている定番のお菓子まで。袋の中からはさまざまなお菓子が次から次へと出てくるが、とても二人で食べ切れる量ではない。
    「泊まりの任務のときはいつも傑とお菓子パーティーしてたから」
    傑は酒飲んでたけど。けらけらと笑いながらお気に入りのチョコをつまむ五条はみんなでいるときに見せる悪ガキの顔をしていた。さっきまでの雰囲気はどこにいったんだ。七海はため息をつくと目についた新商品のお菓子を手に取った。
    「はぁ、わかりました。やりましょう、お菓子パーティー」
    たった二人のお菓子パーティーはそれなりに盛り上がった。五条が買ってきたコンビニのお菓子は都内では見慣れないものもあり、二人でああでもないこうでもないと他愛のない話をしながらお菓子をつまむ時間は楽しかった。
    それから、なんとなく流していた地方のローカル深夜番組のくだらなさに二人で笑っているうちに日付がとうに次の日へと変わっていることに気づいたのは、ちょうど番組が終わったタイミングだった。
    「そろそろ寝ようぜ」
    「そうですね」
    「歯磨いてくる。歯ブラシオマエの分もあるしこっちで磨けば?」
    「じゃあそうします」
    いよいよだ。五条と並んで歯磨きをしながら、七海はこれからのことで頭がいっぱいだった。気もそぞろのまま歯を磨き終えて部屋に戻ると小さなシングルベッドに横になった五条の姿。心臓の音がうるさいな。五条に聞かれてしまったらどうしよう。どきどきしながら五条の隣に潜り込んで、七海は精一杯のアピールのつもりで五条の足に自身の足を絡める。キスもまだ自分からは恥ずかしい七海にとってはこれが限界だった。
    しかし。
    「明日は何時に起きる?」
    「朝食はゆっくり食べたいので七時で」
    「わかった。じゃあおやすみ」
    事務的な会話を終えると五条はさっさと目を瞑って寝る態勢に入ってしまう。五条のありえない態度に驚いたのは七海である。恋人と二人きり。狭いシングルベッド。密着した身体。邪魔するものは誰もいない。ここまでシチュエーションが揃っているのに、この男は何もせずに朝まで寝るつもりなのか?
    (……っ、)
    先程キスをしたとき、五条におかしな様子はなかった。そもそも抱き着いてキスを仕掛けてきたのは五条からだ。キスはできるけど、エッチはできないってことか。それは、やっぱり七海が男だから?
    七海はその見た目から理性的だと思われがちだが、実際は同期の灰原よりもずっと短絡的で衝動のまま行動に移してしまうことが多々あった。要するに短気でせっかちなのだ。ぐずぐず悩んでいるのは性に合わないし、悩む暇と余裕があればひたすら行動あるのみだと思っている。
    それは、恋愛に関しても同じだった。
    「シないんですか?!」
    「えっ、な、七海……?」
    五条の上に馬乗りになる。薄暗い部屋の中、ぼんやりと映る青い瞳は驚きで見開いていた。
    お付き合いに関してはウブ丸出しだった恋人が自分の上に跨って迫っているのだ。そりゃ驚くのも無理はない。しかし、七海は必死だった。ここまでしたらもう後戻りはできない。最悪、五条と別れることになるかもしれないが、それでもこのままの状態で五条と付き合い続けていたくはなかった。
    「やっぱり男だからですか?」
    「は?」
    ずっと気にしていたことを言葉に出すと改めてずしりと心が重くなる。鼻の奥がつんと痛くなって、頭に血が上ったように熱くなった。状況が飲み込めないのか、五条は放心したままだ。必死になっているのは自分だけみたいで悔しくて、七海は傍らにあった枕を五条に投げつけた。が、無下限にあっさり弾かれてしまい、ますます悔しさが募る。
    「好きだって言ったくせに!」
    「男でも関係ないって!」
    「ぜんぶうそだったんですか?!」
    「ま、まてまて!何の話?」
    この期に及んでまだとぼける気か。ぐっと唇を噛み締めて、七海は小さくつぶやいた。
    「……あの日以来、私たちなにもないじゃないですか。どうしてシないんですか」
    「だってオマエ、任務で疲れてるし…」
    「疲れてません!」
    「でも、」
    はじめて身体をつなげた日だって任務をこなした後だった。五条のあまりに下手くそな言い訳に悲しくなってくる。
    「……私とは、もうシたくないですか……?」
    男だから。経験もなくて、五条にリードされてばかりで、五条を満足させることもできなくて。もう七海とはシたくない。もしもそう思われてたら。
    「ちがっ、んなわけねえだろ!」
    七海の迫力に圧されっぱなしだった五条が勢い良く起き上がる。吸い込まれそうな青い瞳でじっと見つめられ、今度は七海がひるんでしまった。即座に否定されて内心ほっとするが、ますます五条の考えていることがわからなくなってしまう。
    「じゃあなんでシないんですか?」
    「…………オマエ、前のとき次の日辛そうだったし…」
    「は、はじめてだったから、多少違和感があっただけです。大丈夫だって言ったじゃないですか」
    「でも……」
    「自分の身体のことは自分が一番分かってます!嫌だったら誘ったりしません!」
    はじめてで、しかも受け入れる側だったから、まったく辛くなかったといえば嘘になる。女性のように受け入れるようにできていない身体で、平均より大きな五条のモノを収めるのはなかなか大変だった。正直、気持ち良さより痛みの方が強かったのは事実だ。しかしそれ以上に好きな人と繋がることができた幸福感が七海の心を満たした。普段は横暴で、わがまま放題で、周りを振り回してばかりの五条が七海を気遣いながら腰を振る様は可愛かったし、望めばなんでも手に入れられる男が必死に七海を欲しがるのも彼の特別になれたようで嬉しかった。なのに。結局求めているのは自分ばかりなのだろうか。
    「せっかく自分で準備までしたのに…」
    「は、じゅ、準備?!」
    ちら、と後ろに視線を向けると、五条が目を丸くする。赤くなった頬を撫でて、七海は追い討ちをかけるように続けた。
    「……無駄になるんですけど。シないんですか?」
    「あ〜〜〜もう〜〜〜」
    ちゅ、と唇を押し付けられて、そのまま抱きしめられる。痛いぐらいぎゅうぎゅうに抱きしめてくる五条の腕の力さえいとしさを感じてしまうのだから、七海も相当だと思った。
    「めちゃくちゃ我慢してたのに」
    「我慢しなくていいです」
    「痛かったら言えよ」
    「大丈夫ですってば」
    「……明日、七時に起きれないかも」
    ホテルの朝食ビュッフェは魅力的だが、今の七海はそれよりもっと欲しいものがあった。ぐだぐだと煮え切らない五条の耳元で小さく囁く。
    「いいから、はやくして」




    結局、次の日目を覚ましたのは朝食ビュッフェどころかホテルのチェックアウトギリギリの時間だった。慌てて飛び起きて、最低限の身支度だけをしてホテルを出る。
    知り合いは誰もいない都内から遠く離れた地方都市。伸びてきた五条の手を振り払うことはできなくて、ぎこちなく手を繋いだままゆっくりと歩道を歩く。
    「なぁ、身体痛いとこない?」
    「しつこいな、大丈夫ですってば」
    何度目かわからないやりとりにいい加減辟易する。昨夜は我慢の限界を迎えた五条に何度もイかされた。耳を舐められ、胸をいじられ、奥を突かれて、全身とろとろになるまで五条にしつこく愛された。あまりの快感に声も我慢できなくて最後はほとんど悲鳴みたいな嬌声を上げて達した。おかげさまで目を覚ました直後は立ち上がれないわ声は出ないわの悲惨な状態だったが、時間の経過と共にすぐに治った。しかし、それでも五条の気はおさまらないらしい。
    「だってさぁ〜〜〜オマエ細っこくて握りつぶしちまいそうだったし」
    「すみませんね、弱そうで」
    「そういう意味じゃねーし!」
    「ふん」
    これでも以前よりは逞しくなったつもりなのに。たしかに夏油のような厚みはまだないが。筋トレを増やしてそのうち五条をあっと言わせるぐらい鍛えてやる、と決意する。
    「なぁ、七海怒った?なぁなぁなぁ」
    とりあえず今はお腹が空いた。七海の機嫌を損ねたかと焦る五条に何をねだってやろう。食べ損ねた遅めの朝食を考えながら、隣で七海のご機嫌取りに勤しんでいる恋人の手をそっと握り返した。
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