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    調@大人向け他

    @seitea21

    調(@seitea21) の大人向けや企画系SS置き場です。増えるかどうかは常に未定、塚不二オンリーは確定です。大人向けにつきましては、18歳以上での閲覧をよろしくお願いいたします。

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    塚不二オンリーWebイベント「MY HOME」を記念して、2022年発行された塚不二はじめてアンソロに寄稿させていただいた塚不二SSを再掲いたします。未来、ふたりの家に至る、そんな塚不二のはじめての隣、おかえりとただいまの話です。

    ”受け取り、自室に戻ってくると、不二が笑顔で手塚を迎えた。”

    #塚不二

    はじめての隣    一

    「隣、いい?」
     ふわりと声が落ちてきた。青空から光が降りたと錯覚する、居心地のよい声だった。自分にはついぞない感覚だ。手塚は内心驚きながら、「うん」と彼――不二へと応(こた)えた。
     不二はにこりと微笑んだ。彼と知り合い半月ばかり。なんら含むものもなく、素直に澄んだ微笑もあると、今では手塚も知っていた。知ると同時に近くで見たいと思ったが、彼が隣に座るのは――彼の隣に座るのは、これが最初のことだった。
     部長の訓示が途切れたときに、手塚はちらと横を見た。膝小僧の小さなまろみが目に飛び込んで、慌てて前を見、またゆっくりと隣の彼へと目を戻した。見たいという望み、あるいは欲望――少し違うように思う。自然な首の動きであり、自然な心の動きだった。
     体育座りで膝を抱(かか)えて、不二は前を向いていた。手塚の視線に気づいた様子はなかったが、なんの弾みか白い指がきゅっと重なり細い足をかき寄せた。おとがいがわずかに持ち上がる。
     手塚も空を見上げてみた。四月にしては空の青は薄かった。浅い春の名残の色に、ひとはけの雲が流れている。――そうか、風が吹いたのだ。
     手塚は再度、不二を見る。そういえば、左右どちらもあいていたのに、彼は迷わず右へと座った。既に知る利き手の側(がわ)をふさがないのは、不二の配慮ではなかろうか。自分にしては好意的な見方だったが、そうだろうと手塚は思った。やはり自然な気持ちでそれを受け止めた。
     陽光は淡く、コート脇の大気に混ざりたゆたうようだった。その中で、ほのぼの白い手足を折り曲げ、不二が隣に座っている。なんとはなしに落ち着いて、手塚は前を向き直った。再開された話とともに、脳裏で反響する心音も聞いていた。
     聞きながら、手塚は不思議と安らいだ。今、自分の隣には、不二がちょこんとおさまっている――ただそれだけの事実ひとつを透過して、心臓の音も薄い日差しも穏やかに、世界はゆったり広がっている。

    「隣、いいかい?」
     小首をかしげて不二が微笑む。
    「ああ」
     手塚は首肯し、身じろぎをする。隣に彼の場所をつくる。
    「ありがとう」
     笑った不二が、手塚の右側へと座る。初夏の日の中、残暑の日の中、涼やかに吹く秋風の中――。
     いつからか、首肯に続けて身じろぐことはなくなった。不二の居場所をあけておくのは当然だ。不二が隣に来ることは、手塚にはもう、当たり前のことだった。

    「やあ、手塚。寒いね」
     冬のある日も変わらない。花びらのような笑声を白い息へと変えながら、不二は素直に手塚の隣におさまった。
    「夜から雪らしいからな」
    「ふふ、うん」
     顔をほころばせた不二が、雪が好きだと手塚は既に知っている。雪見をし、喜ぶ彼を思い浮かべた。だから朝、予報を聞いて、嬉しいことだと思ったのだ。
    「油断はするなよ。しっかり着込め」
     言いながら手塚は考える。もし、その隣にいられたら――たとえば彼にマフラーを巻いてやれたなら、――おかしな夢想だ。雪が降り出す時間には部活はとっくに終わっている。
    「……手塚」
     不二が首をかしげた。ふっとなにかに思い至った表情だった。
    「もしかして、キミも雪を見たりする?」
     手塚は再度考え、うなずく。これからは、そんなこともあるかもしれない。不二が見ている雪なのだ。それはきっと美しく、自分も見たいものだった。
    「ふふふ、じゃあ――一緒に見るかい?」
     咲いた笑顔はいとけない。いたずらを仕掛ける無邪気な子供を思わせたが、不思議と気にはならなかった。手塚はただ、感嘆する。
    「さすがだな、不二」
    「え?」
    「そうしよう」
     ずいぶん容易(たやす)い話だった。一緒に見ようと誘えばそれでよかったのだ。手塚がそうであるように、不二が断ることはないのだ。とろりと甘い心地で手塚は、「何時にする」と話を進める。まばたいた不二の口もとで、ふたたび笑顔がこぼれて咲いた。あえかな花弁がくすぐったそうに揺れていた。
    「え? ああ、うん。それじゃあ、手塚――」

     ふたりで共に雪を見た。イルミネーションも見に行った。日差しがぬくみはじめたころ、手塚はふと、気がついた。おのれもまた、不二の隣に自然と座り、あるいは立って並ぶようになっていた。もしかしたら、ずっと前――雪見よりも前からだったかもしれない。
     意識したのは、小春日和の午後だった。今日はあたたかいと思い、不二の隣だからかと思い、――そうして気づいたのだった。
     隣から、自分を見上げる視線は感じた。けれども今もこれまでも、不二の拒絶は一度もなかった。すぐに心地のよい声が、ふうわり手塚に微笑みかける。――そうだ、いつでもそうだった。これから先も、そうだろう。
     ――見たかい? 手塚。
     ――やあ、手塚。
     ――ふふ、ナイスタイミング。手塚、ちょうどいいところだよ。
    「ああ」
    「うん」
    「そうか」
     手塚はひとつひとつに応(おう)じる。彼の隣で前を見る。ゆるゆると、景色は今日も美しい。


        二

     不二の声が聞こえない。手塚の隣はあいていた。風すらうつろに過ぎゆくそこに、手塚に向けられる笑みはなく、ぬくもりもどこかに消えていた。
     五月晴れの頭上は一面青空だったが、まるで冬場の曇天だった。記憶に遠い、凍(こご)える冬だ。廊下もコートも薄暗く、生気の抜けた影絵だった。
     何があったわけでもない。不二が風邪を引き、学校を休んだ、――それだけだ。ただそれだけがいつもと違う一日は、ぽっかりとした空隙をかかえたままで終わろうとしている。
     沈む夕日がやけにぎらぎら照りつけて、手塚は足を急がせ茜をはねのける。たいした距離でもない帰路が、今日はずいぶん遠い気がする。
     昨日不二が綺麗と笑った夕映えは、一体どこにいったのか。のっぺりとした景色の中で、手塚はほんの一日前を思い出す。
     ねえ手塚、夕日が綺麗だよ。明日もきっと晴れるよね――。
     その明日に不二はいなかった。息するように信じていた、疑うこともしなかった、隣で笑(え)笑(わら)う彼の姿は、当たり前ではなかったのだ。
     どくりと胸がざわめいて、急に息苦しさが増した。そうだ、たしかに、最初は当たり前ではなかった。不二が微笑み尋ねてくれた。となり、いい――? 手塚は赤い世界の中にたちすくむ。

     ポケットから布地越しにかすかな振動が伝わって、手塚ははっと我に返った。取り出した携帯電話には、着信マークと彼の名前が浮かんでいる。不二周助――。
     指先が滑り、二度目にようやく通話ボタンをタップした。落ち着けと自身を戒めて、一度大きく呼吸する。薄い機械を持ち直し、「不二」と彼に呼びかけた。
    「具合は」
    「ふふ」
     電波越しに、彼が笑まう声がした。ずっと喉に詰まっていた、空気がすっと抜けていく。手塚はもう一度呼吸して、耳を澄ませて不二を待つ。
    「もう大丈夫。ありがとう、手塚。――それで、明日の練習だけれど」
    「明日か。そうだな、やはり短時間ということになった。集合は――」
     ああ、不二だ。時間を告げつつ、手塚は思う。いたく事務的なやり取りが、ふんわり明るく色づいている。
    「うん、分かったよ。ありがとう、手塚」
     うなずく笑顔が目に浮かぶ。わざわざ結ぶ約束に至らぬ自然な声がした。
    「じゃあまた、明日ね」
    「――ああ、また明日」
     かみしめ、視線を上げて手塚は気がついた。空の薔薇色が艶(あで)やかだ。日差しの名残が雲を染め、ところどころに夜の菫(すみれ)がたゆたっている。
    「不二。外が見えるか」
    「うん? ――わ、すごい」
     弾む声を、手塚はそっと引き寄せる。丁寧に、決して損なわれぬように。これもまた、自分にあるのが意外な心の動きだったが、同時に手塚はおのれの心に安堵した。大切にしなければならない。息するほどに自然なそれは、本当は、たぐいまれなものなのだ。どこにもなく、かけがえもない。深山が芽吹くに春日が要(い)るように、手塚に必要なものだった。
    「ふふ。綺麗だね、手塚」
     不二が笑う。優しい光を胸の一番深くにおさめて、手塚は息を吸い込んだ。
    「不二。――今から、訪ねていいか」
     逢いたいのあいは愛なのだと、そんな話を読んでいたのは親友だ。名前も忘れた登場人物、その心中を、いまや手塚も理解する。逢いたいのあいは、愛なのだ。逢いたい、あいたい、愛したい――。

     身を返し、手塚は既によく知っている道をいく。彼の家へ、彼へと向かって歩を進める。
     まだ道のりはあるのだが、既に彼が隣にいるという気がした。くすくす笑って手塚に言う。
     ――急いでいるね。
    「ああ」
     ――ふふ、こけないでよ?
    「ああ」
     ――それで、手塚。話って?
    「大事な話だ。――不二」
     日が沈む。投げかけられた赤い光に、町がいっさんに輝いた。今日もいつもと変わらない。とても綺麗な夕方だ――。


        三

    「隣、いい?」
     不二が微笑む。手塚は「ああ」とうなずいた。折りたたみ式の座卓の向こうで、痩躯がたおやかに立ち上がる。
     手塚の自室、ふたりで過ごす休日の午後だ。今日は朝からふたりで過ごした。テニスをし、喫茶店に行き、本屋を覗いて――予定がすべて終わってなお、別れがたく、手塚は不二を自室に招いた。
    「いきなりご迷惑じゃない?」
    「かまわない」
     家に電話もかけてみせると、それ以上は拒まれなかった。
     そうして不二は手塚の部屋で、慎ましやかに座卓を回る。手塚の隣にやってきて、小さく笑むと腰を下ろした。
     手塚は右手を動かした。並べてみると、彼の爪は自分のものより一回り――いや、それ以上に小作りだった。整ったそこに宿った光を、手塚は指の陰へと隠す。
     光ごと包んだ不二の手は、ほんの一瞬こわばって、それから静かに力を抜いた。小さな呼吸の音が聞こえる。手塚の鼓動はそれよりうるさく、不二に通じているかもしれない。手塚は重なる手を見つめる。とたんにふうっと落ち着いた。指先まで、彼はまるであつらえたようにそこにいる。
     おのれの手の下、包み込んだ彼の素肌が覗いている。きめが細かく、線もほっそり優形だ。明確なふたりの差違に気がついて、けれども手塚はいっそう安らかな気持ちでいた。
     これほどまでに違うのに、華奢な手首のくぼみの影にも、穏やかな親しみを感じていた。服に隠れた不二の二の腕、肩に背中――まだ触れていないところすら、既に知っている気がする。優しく弧を描(か)く唇の奥に隠れた歯列や舌も――。
     想いを遂げた五月の夕べ、ふたりは――手塚はゆるりと変わった。変化は未来永劫に、変わらぬものも伴(ともな)った。
     日がけぶる部屋がやんわり香り立つ。鼓動を刻む胸が同時に安堵して、あるべきところにあるのだと、いるべきところにいると思う。
     彼の隣でくつろいで、手塚は眠気すら抱(いだ)く。見慣れた壁のルアーがきらきら光って見えて、――そうだ、まだ、不二にひとつひとつの由来を話していなかった。
     すっかり緩んだ口を開く。不二が微笑み耳をすませて、花容をわずかにかたむけた。

     母に呼ばれていることに、不二に言われて気がついた。よほど夢中で話していたのか――不二が話を聞くのがうまいから――いや、つまるところ手塚の油断だ。
     咳払いをすると、不二がくすりと笑んだ。大丈夫だと言われたようで、気を取り直して階下へ向かう。母はお茶のおかわりを用意してくれていた。
     受け取り、自室に戻ってくると、不二が笑顔で手塚を迎えた。
    「おかえりなさい」
    「――……」
     まるでピースがはまるように腑に落ちて、手塚は「ただいま」と彼に応(こた)える。
    「……ただいま、不二」
     繰り返す。――そうだ。俺は帰ってきたのだ。あるべきところ、いるべきところ。彼の隣があいている。そこまではあと、もう少し――。
     カップにソーサー、油断はできない。注意を払い、盆を机の上へと置いた。これでよし。上体を起こし片膝をついてから、手塚は不二に問うてみる。
    「隣、いいか」
     不二はまばたき、手塚を見上げた。上下したまつげの長さすら、今の手塚は知っている。
     不二は、にっこりうなずいた。
    「うん。もちろん」
     返事をもらった、と手塚は考える。不二の返事だ――。
     手塚は彼の隣に座る。不二が微笑む。もう何度目か――なのにまるではじめてのように新鮮に、手塚ははっと熱を覚える。
     不二はちょこんと正座をしていた。膝の上でそろえられた、指の関節が軽く曲がって、こっくり光って見えていた。左手の小指の輝きは、指輪の光に似ている気がする。
    「……不二」
     手塚は彼に向き直り、そっと自分の左手を伸ばす。包んだ手に、今度は堅さは感じなかった。手のひらに柔らかくぬくもりが広がって、手塚の胸に染みていく。いっそう曲げた手塚自身の小指にも、同じ光が宿り、輝く。
    「不二」
     名を呼んだ。不二は分かっているだろうか。不二なら分かっているはずだ。手塚が映る、美しくはにかんだ目で笑う。
    「うん、――手塚」
     ちょうどそのとき、ふたりはさあっと明るんだ。窓辺で西日があふれ出し、ここまで届いたらしかった。綺麗な黄金(こがね)色だった。
     不二と同じ日差しの中で、手塚は深く息を吐く。互いの指に光をともして、彼の隣で安らいだ。はじめてのときと同じに、今、――はじめて。
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    調@大人向け他

    DONEお題「春遠からじ」と「赤い糸」で、不二くん受けウェブオンリー様の企画その2、WEBアンソロジーに参加させていただきます。お運びくださった皆さまには申し上げるまでもなく塚不二でおおくりいたします。
    『たとえば今…』八周年の今日にも寄せて。まさに原作と讃えられた歌のごとく、永遠に離れないふたりでいてください。おめでとうございます&ありがとうございます…!
    春遠からじ、赤い糸 赤い糸というものが、手塚にはいまいち分からない。いや、意味としては分かるのだが、つまりは合縁奇縁であり、自分の意志より運命で伴侶が決まるというのはどうにも腑に落ちない。
    「そうかなあ」
     遅咲きの梅の写真を一枚撮って、ほんのりと笑って不二が首をかしげる。
    「たぶんさ、運命ってひとつじゃなくて、たとえば今日、キミはボクに梅が咲いたって教えてくれて、だけどボクじゃない可能性も」
    「ないが」
     なにやらおかしなことを言い出したものだから、思わず食いつき止めてしまった。言葉が強かったかもしれない。反省をしている手塚に不二はまばたいて、くすくすと花より小さくまぶしい笑みをその場にこぼした。
    「ううん、――そうだね。ふふ、ねえ、手塚。キミの赤い糸はさ、きっと。キミの手の中に今あって、キミが自分で結びに行くんだ」
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    229tensai

    DONEち、違う!! 俺が悪いんじゃない!!
    全国大会の準決の試合中に劣勢になっているのにも関わらずえっちな顔して写真集みたいなお色気ポーズしてる不二パイセンが悪いんだ!!!!
    不二のえちおね♂な色気爆発かわいさに世界が気づいてないのはおかしいと思っているモブ汚じさんが書きました。
    なんでこの世界の人たちは不二に欲情しないんですか?

    ※某掲示板風注意
    ※手塚が居ますがラビ時空ということで…
    「最近同室になった美人が不健全なんだが」(幸不二)(蔵不二)1:名無しにかわりまして植物愛好家がお送りします
    なんだろう…
    こう、どう考えても誘ってるとか、彼女が彼氏にするみたいな言動を普通にしてくるんだ


    2:名無しにかわりまして植物愛好家がお送りします
    お前は何を言っているんだ


    3:名無しにかわりまして植物愛好家がお送りします
    タイトルからしてツッコミどころがありすぎる


    4:名無しにかわりまして植物愛好家がお送りします
    サークルクラッシャー女に人生狂わされてる童貞の話か?


    5:マーガレット
    ごめん、色々限界で俺とした事がコテハンをつけ忘れていたよ。
    コテハンはこれにする。

    マーガレット→俺(男)。マジレスで相手の五感を奪うスタイル。神の子の異名を持つ。

    サボテン→同室になった、いつもニコニコしている不健全な美人(男)。本人は至って健全だしそういう気も全く無いのにえっちなことになったり、無意識に男に思わせぶりな態度をとったりしてくる。
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