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    瀧よし

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    POIPOI 4

    瀧よし

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    捏造設定バリバリあります
    軽く知己越えしてます
    この話の続きです→https://poipiku.com/1948062/8359063.html

    #おも誕アンソロ
    omotenashiAnthro
    #温周
    temperatureMeasurement

    泥酔2捏造設定バリバリあります
    軽く知己越えしてます



    すっかり泥酔したあの日から、どれぐらい経ったろうか。
    温客行と共に木の洞へ入れた果物が何ヶ所か良い具合になった頃、再び酒が飲める日が来たことを喜んでいたのだが。

    「もう阿絮は飲んじゃ駄目!」
    まだほろ酔い程度だというのに、酒甕を取り上げられてしまった。
    卓の上には既に空いた酒甕がいくつか転がっているが、それでは呑みたりやしない。
    ムッと温客行に手を伸ばしたがひらりと避けられる。
    ムムッと立ち上がりさらに詰め寄るが、高く掲げられてしまい面白くないと睨みつけた。
    「何故だ。まだ残っているだろう知っているんだぞ?」
    「前に酷く酔っ払った時のことを覚えていないから、そんな事が言えるんだ」
    全くもう、と睨み返してくる温客行に、周子舒は何を言っていると口を開く。
    「覚えているぞ?」
    「えっ!?」
    「次の日に流石に頭が痛くなった事は覚えている。それでも飲みたいと思うんだからいいだろう」
    二日酔いなど滅多にない。それ程強い酒だったのかと驚いたものだ。
    「そっちか」
    「老温?」
    「んんッ……そんな顔しても上げないから!」
    そう言って、老温は残りを一気に飲み干して部屋から出て行ってしまった。
    まだ半分以上入っていた筈だというのに!
    残された空の甕をひっくり返しては、わかっているのにため息をつく。
    「老温め。俺が何をしたって言うんだ」
    まぁ何かはしたのだろうが。
    酷く酔っ払ったという事は言われたが、具体的な内容は教えてもらえなかった。
    自然が作り出す酒は、定期的に必ず飲める訳ではない。しかもどうやら保存が難しそうだ。
    なので、できた時に喜ばしくありがたく思いながら飲みたいではないか。
    何より万が一飲んでは駄目だった物だとしても、二人で飲んでいれば怖くなどない。
    (そういえば、あいつはどこへ行ったんだ?)
    フラフラとどこかへ歩いて行ったのは視界の端で見ていたのだが。
    「老温?」
    呼んでも返事がない。
    しん……と静まり返った空気に、いつもは感じない薄寒さを感じ周子舒は席を立つ。
    武庫の内部には気配を感じない。外へ出たのかと入り口へ向かえば、少し開いた扉から月明かりが差し込んでいた。
    やはり外かと足をむけ、再び名を呼ぶ。
    「老温?どこだ、老温……老温?」
    「あ〜〜しゅう、ここだよ〜〜」
    外へ出てすぐの小山の上。
    見晴らしの良いそこにいたらしく、周子舒の声を聞いてぶんぶんと手を振っていた。
    「なんだか熱くなってしまって、酔い覚ましに月を見ていたんだ。阿絮も来たらいい」
    空を見れば満月と言う訳ではないが、雲もなく穏やかな月夜だった。
    応えのあったことにホッと息を吐き、それを隠すようにズンズンと近寄っていく。
    眼下には薄く靄が立ち込めているが、人の営みの灯りも小さく見え隠れしている。今頃は新緑の見頃な頃だろうかと思いを馳せながら、老温を腕を組んで見下ろした。
    「お前なぁ、全部飲み干すことはないだろう?」
    「だって、駄目なんだ」
    「駄目ってそればかりじゃないか」
    「駄目なものはだーめ!大体、阿絮は可愛いという自覚があるのか!?あれは本当に酷かった!私の身にもなってくれ!」
    むぅ、と不満げに唇を尖らせそっぽを剥かれては、まるで子供だと可愛くて仕方がない。
    これは酔いが回っているなと笑みを浮かべたが、笑ってしまっては余計拗らせると思い、わざとらしい咳払いで笑いを誤魔化す。
    「んんッ、なぁ老温、あの日何があったんだ。いい加減教えてくれ」
    流石に記憶を無くすほど飲んだことはなかったというのに、こいつの前では気が緩んでいる証拠だ。
    それだけに、限界まで酔った自分が何をやらかしたのか、非常に気になって仕方がない。
    花を見ながら酒を飲んだことは覚えているが、気がついたらいつも通り牀榻で朝を迎えていたのだから。
    温客行の隣へ腰を降ろし、ぐいっと身を寄せ顔を覗き込む。
    「吐いたのか?それとも全裸になって踊ったりでもしたか?」
    「ぜッ……それはない!ないけど……したことあるのか?いてッ」
    ある訳ないだろうと、「まさか!」という顔をした額を指で弾いてやった。
    「何かお前に迷惑をかけたのかと思っていたんだがな。まぁ、もういい」
    「だって……またあんな事があったら私は……」
    「お前が?」
    額を手で覆い守りながら、温客行は上目遣いで訴える。
    「阿絮の為だよ?私に酷いことされたくないでしょ?」
    「酷いこと?」
    それは一体なんだろうか。拷問ならある程度耐えられるつもりだ。
    鍛錬ならむしろ乞い願う程だが。
    これ以上詮索しても、ここまで言わないのなら教えてはくれないのだろう。
    ただ酒が飲めないのはいささか困る。
    さてどうしたものかと顎をさすれば、立てた膝に顔を埋めた温客行が小さく呟いた。
    「言えるわけないだろう……口付けされたなんて」
    ぐぐもってよく聞こえなかったが、聞き捨てならない言葉ではなかったか?
    「……なんと言った?」
    聞き間違いだろう、そうであってくれと顔を寄せれば、ガバッと顔を起こした温客行に抱きしめられた。
    「らッ……!」
    「阿絮、私はここにいる、ずっと」
    気が付かなかったが、温客行は思っていたよりずっと酔っていたようで、唯一見える耳が真っ赤に染まっている。
    けれどそれどころじゃない。
    心臓が早鐘を打つ。
    ずっと隠している気持ちが一つ。

    温客行を自分のものだけにしたい

    なんと我儘な独占欲だろうかと、時折湧き上がる気持ちに蓋をする。
    共に命を賭けた知己だからとて、必ず隣にいなくてはならないことはない。
    今の温客行からは考えられないが、もし別の山で暮らしたいというならば、止める権利などないのだから。
    そして同時に、温客行の自分への執着もわかっていた。
    求められていると気がつくたびに、甘やかな渦が込み上げてくる。
    それは歓喜だ。
    ーーけれど、その執着は果たして自分と同じなのだろうか。
    そもそも自分とて、どうしたいのか答えは見出せていない。
    もし、自分の隣からいなくなる日が来たら……
    その時果たして自分はどうするだろうか。
    想像するだけでろくな事にならず、周子舒は頭を振った。
    これは、知己への独占欲なのだろうか。それとも、愛しい人への慕情なのだろうか。
    これほどに求めた人などいざ知らず、初めての感情に周子舒は戸惑っていた。どうするべきか彷徨っていた腕を回し、そっと温客行の頭を撫でる。
    「老温、私もここにいる。ずっと……」
    触れ合っている所だけが暖かい。
    六合心法の後、目覚めるまでの間ずっと側で温もりを分けるように触れていたことを思い出す。
    それともう一つ。
    (こうしていると、甄衍を思い出すな)
    まだ幼かった頃、転んで泣いた甄衍をこうして慰めたものだった。
    思いだせば懐かしさに心は落ち着き、愛おしさに思わず頭をポンポンとあやしてやる。
    「すっかり大きくなって……」
    「ちょっと阿絮?子供扱いしていないか?」
    肩に埋めていた顔をあげ、温客行は拗ねた声をだしたが周子舒は可笑げに笑った。
    「仕方ない。出会った頃のお前はこんなに小さくて可愛かったからな」
    そう言って顔の前で親指と人差し指を少しだけ広げて見せる。
    「それ野鼠よりも小さいじゃないか!」
    「そうか?ほら、こうして見れば月と同じ大きさだ」
    今度は腕を月に伸ばし、ほらな?と笑って見せれば抱きついたままの温客行も指を覗き込んできた。
    自然顔が近づき、一瞬端正な横顔に見惚れてしまう。
    月の光を透かした髪が銀色に浮き上がり、月の神仙なのではないかと思ってしまった。
    「同じ大きさでも、月はあんなに遠くて私は阿絮を抱きしめている。私の勝ちだ」
    ふふんと鼻を鳴らし得意げな温客行に、なんだその理屈はと吹き出してしまう。
    「やはり子供だ」
    「子供じゃない!……阿絮、酔った時何をしたのか教えてあげようか?」
    「何、ッ……!」
    気がつけば、雪の上に身を横たえて肩を温客行に押さえつけられていた。
    自分が何をしたのか知りたいと思う気持ちが、一瞬反応を遅らせ、思い詰めたような顔をした温客行の顔が吐息のかかる距離にあってーー
    「ッせい!!」
    思わずそのまま胸ぐらを掴み、力一杯天高く投げ飛ばしてしまった。
    抱きしめられた時の鼓動など、まだ早鐘ではなかった。
    今は口から飛び出してしまうのではないかという程、バクバクと音を立てている胸をギュッと抑え込んだ。
    顔も熱いし、一気に酔いが回ったような気分だ。
    動揺する周子舒の後ろから、ザクザクと雪を踏みしめ温客行が姿を表したのだが、その姿はまるで雪だるま。
    「酷いぞ阿絮!」
    「あのぐらい、受け身を取れるだろうが」
    「取れるけど!着地したところが新雪の吹き溜まりだったんだよ!」
    あぁもう!とバサバサ雪を払う温客行に、すまんすまんと言いながら周子舒も雪を払ってやる。
    周子舒が好きな白髪もすっかりぐしゃぐしゃになってしまっていて、む,と眉を寄せた。
    この色こそが二人を繋ぐ証。だからこそより愛おしいし、できるならばいつだって触れたいと密やかに思っている。
    後で梳かしてやろうと思いながら前に回り込めば、長いまつ毛に乗った雪が優しい月明かりに煌めいていた。
    ここにも光があると思った瞬間、それは溶け落ち雫となりまつ毛を軽く伏せさせたのが見え、気がつけば唇を寄せまつ毛に触れていた。
    ギョッと飛び退いた温客行に、我に帰った周子舒は自分でも驚いて言い訳を考える。
    「ッ!?あ、あちゅ!?」
    「誰だそれは。いや、勿体なかったからつい……」
    そんな言い訳あるか。でも本当の事だ。あぁまずい、俺も自覚していたより酔っているのか?
    「そんな事より。老温」
    「そんな事じゃないよ大問題だよこっちは」
    「俺はーーその、お前に、口付けをしたのか?」
    そもそもは、それが聞きたかった。
    (もしそうだとしたら、お前はどう思った?)
    その事を聞くのが一番怖い。
    知己だと思っていたのに、師兄だと思っていたのにと怒るだろうか。
    温客行がそのことを、なかったことにしているのが答えなのではないかとも思う。
    だが、どう思われても受け入れるし、温客行を縛り付けたりなどしないと誓うから。
    キッと温客行を見つめ強く拳を握れば、温客行も真っ直ぐにこちらを見つめていた。
    「もし、そうだと言ったら?阿絮はどうするの?」
    「そうだと言われたらーーあぁ、それが俺の答えなんだろうな」
    温客行への気持ちに戸惑っていたなんて、自分への誤魔化しだ。
    ずっと欲しかったと知っていた癖に。
    もし離れて行こうとするのならーー
    「覚悟しろ老温」
    「阿絮?」
    追いかけて捕まえればいい。
    お前が追いかけてきた時のようにな。
    数歩の距離を一気につめ腕を伸ばし、白髪を一房掴み引き寄せた。
    瞬きの音が聞こえそうな距離で囁く。
    「これが俺の答えだ。お前はどうする?」
    触れ合う寸前の温客行の唇が震えたが、言葉にすることはなかった。
    周子舒の頭を引き寄せ、宝物に触れるように唇を落としたから。
    離れたのは一瞬、雪に伸びる月明かりに照らされた影は、互いに引き寄せられるように一つになり離れることはなかった。



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