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    とりさし🐣

    じゅ 五甚にどっぽん

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    とりさし🐣

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    高専 五甚(五2年×甚3年の幻覚)
    交流戦と直の横やり / 終始ふざけています

    #五甚
    fiveVery

    あ、やべ。面倒なものがくる。
    教室で甚爾が立ち上がってから出口までかかった時間は僅か2秒ほどの出来事だった。
    ガラ、と古びた引き戸を開け放つと前には壁、もとい大きな体がぬっと現れた。
    遅かった。甚爾は舌打ちをして、すぐさま踵を返そうとしたところでその壁、こと五条に肘を掴まれて、そのまま無言でずるずると廊下を引き摺られていく。

    「…………」
    甚爾が突如立ち上がって出口を目指してからのこの1分にも満たない出来事を、甚爾のクラスメイトたちは一部始終みていたが、触らぬ神に祟りなし。どういうわけか知らないが、呪術界最強の力を誇る年下の男に好かれてしまったらしいクラスメイトに、羨んだら良いのか哀れんだらよいのか、今ひとつ分からないまま、静かに心の中で手を合わせた。そもそも五条の気配を察知して逃げる甚爾も甚爾だ。逃げるから追われるのだ。普段からさして素行の宜しくないクラスメイトのこと、なにか五条の腹に据えかねるような事でもやらかしたのだろう、と特に興味もないが、そう結論づけた。


    来る、と察知してから此処へ来るまでに2秒も掛からないのは狡い。こっちは術式とか人間離れしたモンは使えねーんだぞ、と引き摺られながら、とても人間技とは思えない速さで現れた五条の登場に腹を立てていた。
    「おい五条!離せよ!」
    「悟」
    「は?」
    引き摺られていたかと思えばグイッと引っ張られる、と思った次の瞬間には、ダン、と音がして、甚爾は人気のない廊下の壁を背に縫い付けられた。これは所謂。
    「…壁ドン?」
    両サイドを五条の両腕に阻まれていて、目の前には無駄に整った顔。サングラスの奥の目がじとりと不機嫌を露わにしていた。
    「…悟って呼んで」
    「さとる」
    「呼ばないならキスするから此処で」
    「呼んでる呼んでる、さとるさとるさとるさとる…」
    「………あの、ちょっとは躊躇してみせるとか、ドキドキ顔赤らめるとかして?ここ普通は名前呼べないところだからね?」
    さとるさとるさとる、と壊れた機械みたいに人の名前を連呼する甚爾には、学園モノのお決まりは通用しないらしい。ここは壁ドンされて男らしく迫られることにドキドキして名前なんか呼べずに押し切られてキスされちゃうとこなんだよ、と五条が学園ラブストーリーのセオリーを一から解説すれば、甚爾は心底「なんで?」の顔をしていた。はい、この話は終わりね。

    「いや、僕怒ってるんだけど。身に覚えないの?」
    「?なんだよ」
    話の前にまずこの腕どけろや、と甚爾は壁ドン中の五条の腕をはたき落した。壁ドン二度としない、と五条は思った。

    「ヒント、交流戦」
    「えー?分かんねぇなぁ…」
    「ヒント、1年」
    「んー」
    「ヒント、京都校の奴」
    甚爾は「ん〜」とわざとらしく考えているフリをしながらも歩き始める。難しい難しい、と頭を捻るポーズを見せながらも五条を振り切る隙を狙っていた。


    五条が怒る理由は何となく、分かっていた。
    昨年勝ったので、昨日の交流戦は今年も東京校での開催だった。
    2年の五条と3年の甚爾も参加した交流戦は、五条は呪霊、甚爾は術師を叩く事で二人が揃って参加する交流戦は向かう所敵なし状態だった。対呪霊で五条の技術と才能を上回るものも、近接戦と感知において甚爾の右に出るものいない。ぶっちゃけもう二人で十分に事足りる。また居るのかよ此奴ら、交流戦なんか出るなよ任務行っとけや、と来校した京都校の人間は盛大に肩を落とした。しかし時が経てば、その二人の恐ろしさを知らない人間も出てくる。京都校にも新しい顔ぶれが1人居た。

    「甚爾くん」
    よく通る声が甚爾の名前を呼ぶ。
    甚爾、くん?開催時間まで甚爾とだらだら喋って時間を潰そうとしていた五条は、ぐるりと後ろを振り返る。
    新入りだろうか。見たことのない男だ。
    「ぁあ〜ん?どちら様ですかぁ?」
    セコムよろしく甚爾の肩を抱いたままに、サングラスを下げて男を睨め付ける。うわ柄悪、と思ったのは甚爾以外の生徒たちだ。

    「甚爾くん、久し振り」
    甚爾の後ろからぬっと出てくる190超えの呪術界最強を完全に無視したまま、1年生と思しき男は甚爾に歩み寄る。
    甚爾は馴れ馴れしく呼ばれている事には怒らず、何か思い当たる節があるのか、男を見ながら「ん…?」と首を捻っている。これに慌てたのは五条だった。
    「オイ誰だオマエは。甚爾の名前を馴れ馴れしく呼んでんじゃねーよ、減るだろ」
    「えっ、嘘やろ?甚爾くん俺のこと忘れてしもたん?」
    「……あー?」
    「甚爾は男の名前なんて覚えないんですぅー!散れ散れ、1年坊は引っ込んでろ」
    ねー甚爾ー、と五条は後ろから甚爾の顔を覗き込み、甚爾に近寄る虫は未然に排除、と五条が見せつけようとしたとき、甚爾が「あ」と声を上げた。

    「直哉か」
    「当たりー!甚爾くん久しぶりやねぇ、相変わらずの別嬪さんで。元気そうで良かったわぁ。急に家から居らんようになってしもて、俺心配しててんで?」
    甚爾が思い出したと同時に、ぴょこんと此方に飛び付いて直哉は甚爾の手を取った。
    置いていかれたのは東京校の面々、そして甚爾の背後にいた五条だ。京都校の面々は「ああ、あれが」「直哉の噂のとーじくん」「禪院の」とヒソヒソ言い合っている。

    「背伸びたな」
    「せやろ?甚爾くんに追いつくように必死で牛乳飲んでん。でもな甚壱くんが毎朝めっちゃ牛乳飲むからすぐ無くなってもて取り合いやねん。あのひともう大きならんでええやんなぁ」
    「はぁ?マジかよ、アイツ馬鹿じゃねーの」
    はは、と甚爾が笑った。
    「……!」
    女ならまだしも、男相手に甚爾がこんな風に談笑することは無い。まず無い。五条は、男の中で甚爾が視線を合わせて構ってくれるのは唯一自分だけだと思っていたので、この状況はショックを受けた、と同時に気に食わないにも程がある。昔からあまり物は欲しがらないが、欲しがったものへの執着は凄いと自負している。

    「甚爾、だれコイツ?」
    「あ?ああ、コイツはウチのー…」
    あ、なんとなく顔の雰囲気とか近しいものがあると思ってたらそういうこと、禪院のご実家の、と状況に置いていかれていた東京校の面々は漸く納得した。

    「………御主人様?」

    ガンッッッッ

    五条悟が何かをぶっ放して学校の壁が破壊された。
    「…………」
    あ、これはヤバイ、なんかヤバいこと言ってる奴いるし、ヤバイ攻撃力のやつもいる、関わり合ってはいけない、と敏感に察知した常識のある交流戦参加者たちは、甚爾と直哉、そして五条だけを残して早々に退散した。
    破壊された壁をぼんやりと見ながら二人は変わらず久し振りの再会で、話に花を咲かせている。
    「えー御主人様て、甚爾くん。どこまで本気?あ、俺はかめへんよ?昔っからそのつもりやったし」
    「御主人…?ああ?ちがうか。御当主様だな、次の」
    「甚爾くん今の狙て言うてる?いやー甚爾くんオモロイなぁほんま」
    「あ?ちょっと言い間違えただけだろ」
    そのちょっとで怒り狂ってる野郎おるけど、まあええか、と直哉は、これがあの五条のボンボンね、と認識した。なんか知らんけど初対面からマウント取ってきよって、と苛立っていたが、当の甚爾は荒れ狂っている五条を横目に「何してんだオマエ」と言っているので、まだ付け入る隙は十分にありそうだと感じている。

    「ほな、甚爾くん」
    「あ?おう」
    交流戦も負けへんからね、と直哉は手を伸ばして甚爾の口元の傷に触れ、離れていった。


    その後の交流戦では、今年もあの人外五条・甚爾のコンビにしてやられるのだとうんざりと思っていた京都校の面々は開始からやる気がなかったが、どうやら東京校の面々の様子がおかしいことに気付く。主に、呪術界最強の人が、だが。甚爾が地上から一人ずつ術師を叩いて行き、五条は広範囲への攻撃が可能なことから、呪霊を叩いてポイントを稼ぐのが一番効率が良い。なので早く終わらせる為には一人ずつ動いた方が良いに決まっている。なのにどういうわけか、京都校の生徒の前には、揉めている二人が居た。というか五条悟が完全にヘソを曲げている。

    「おい、五条!オマエはあっちだろ!」
    「やだ、甚爾と一緒に行く」
    「はぁ?早く終わらせんじゃねーのかよ」
    「…だって」
    「?早く行けよ」
    「だって甚爾、あのガキンチョと仲良くするじゃん」
    「ガキ…?」
    「あのクソ吊り目の糸目の」
    「直哉のことか?」

    呼び捨て?名前呼び?はぁ?と五条が怒り、完全に意識は交流戦そっちのけで甚爾に向いている。これはもしかして、もしかするといけるのでは…?と京都校の生徒が攻撃しようと構える。

    「なに?どういう関係なのか説明して」
    「どういうって…だから言ったろ。アイツはウチの、御主…御当主様だ、次の」
    「ねえ、それほんとにマジなのか言い間違いなのかでアイツの人生の長さ決まるから、言葉には気をつけてくれる?」

    京都校の生徒が、今だという確信とともに術式を使った攻撃を、二人は痴話喧嘩を繰り広げながらも簡単に否していく。えっ⁉︎なんでっ⁉︎コイツらほんまキッショ…と叫ぶ暇もなく、何発か避けられたあと、五条に「邪魔だよ」としばかれて生徒は地に臥せた。完全に私怨をぶつけられただけだが、生徒その1、戦闘不能。

    交流戦が始まっているというのに、そんな感じで終始クソほど不真面目な様子の二人だったが、着実に出会う呪霊と術師を倒していき、先にポイントを先取したため今年も東京校が勝利した。今までで一番腹の立つ敗北だった、来年からはあの二人の不参加を求めます、と京都校は後に語る。

    「あーあ、もう終わりなん?ポイント制は怠いなぁ。甚爾くんに相手してもらう前に終わってしもたやん」
    「あ?物足りねーのか?喧嘩ならいつでも買ってやるよ」
    「えっほんまぁ?ほんなら、また来ていい?そん時甚爾くんの部屋、泊めてくれる?」
    「?そんなの好きにしろよ」
    「よっしゃ、約束なー!ほなまたな、甚爾くん」

    見事に徹底的に終始五条悟を視界から排除してみせた直哉に、京都校の面々はある種の尊敬の念を抱いた。イかれた奴らの相手はイかれた奴にしか出来ない、そう確信した。

    これは勝った、のか?甚爾以外の東京校の面々は、やたらと機嫌が悪い呪術界最強の男の所為で、勝敗どころではないとひやひやしていた。当事者であるはずの甚爾は何故かあっけらかんとしており、勝ったご褒美の焼肉に釣られているらしく、さっさと先生を探しに行ってしまった。




    そしてその後も甚爾が碌に真面目に取り合わな所為で鬱憤の溜まりに溜まった五条に追われ、冒頭に至る。

    まだその件引きずってたのかよ、と甚爾は唸りながらぐりぐりぐりぐりと首元に頭を埋めてくる五条に溜め息を吐く。ふわふわした白い毛が頰と首筋に当たって擽ったい。どさくさに紛れてするりと腰のラインを撫でる手を掴んで落とせば、ジト、と不満気な目が甚爾を見る。
    「……なんで僕のことは苗字で呼ぶのに、アイツとはあんなに親し気なの」
    「だから今呼んでやってるだろ?さとるさとるさとるさとるさとる、さとるー」
    「…ふふ。悟大好きって言って」
    「嫌だ」
    「………アイツぶっ殺してきていい?」
    その温度差に、くはは、と耐えきれずに甚爾が噴き出した。途端に声が低くなった五条を笑ったあと、甚爾はぽんぽんと五条の背中を叩いた。
    五条は甚爾の笑顔を至近距離で見て息を飲む。これをあの直哉とかいうガキもこの距離で見たのかと思うとハラワタが煮え繰り返りそうになる。昨日の交流戦の件で、どう考えても腹立たしく嫉妬もあって、思い切り機嫌をとって貰わらなければ許せないと思っていたが、こんな風に笑う甚爾を見ると何も言えなくなってしまって、ぐ、と色んなものを飲み込んだ。

    「……甚爾、僕のこと好き?」
    「あ?んだそれ。バカな奴だな」
    「………」
    デカイ犬みたいな奴だ、と甚爾は、何度突き放しても無愛想にしてもしつこくしつこく求めてくる男の存在がそろそろ可愛いとも思い始めていた。何でこんな猿がいいのかは分からないが。

    「なぁ、あんなガキ相手にすんなよ?どうせオマエには敵うわけないんだから」
    「……!と、とーじ…!」
    きらきら、と音が鳴りそうな程輝いた目で甚爾を見る五条は、この甚爾からの特別扱いが何より嬉しいのだ。この男が認めてくれるのなら、呪術界最強だなんて重いだけで面倒な肩書きすら、良いステータスだと思えてくる。

    「で?オマエの計画では、名前呼ばなかった時はどうなるんだっけ?五条の坊よぉ」
    こてん、と甚爾がわざとらしく首を傾げて五条を見上げる。
    「……!!」


    甚爾だいすきーーーーッ という満足気な男の声が、授業が始まって静かな廊下に響き渡ったとかなんとか。
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    とりさし🐣

    MAIKINGセレンディピティ設定 五甚 10
    マッマとの思い出/初めて自分から五に近付いてしまったと〜じ
    10.



    泣き止まない声、真っ赤になった顔、可哀想なくらい、握り締められた手。
    狭いアパートで、昼寝から起きた子どもはよく泣いた。子どもは酷く泣き怒っていたのに、ゴメンねまだ眠たいよね、と母親が抱けばすぐに泣き止んだ。子どもはとても些細な事でよく泣いたしよく怒った。その度にあいつは「ゴメンね」と言って抱き上げた。その言葉を待っているかのように、子どもはそれを聞いて、今度は甘えるように抱き着くのだ。
    「なんでお前が謝んだよ」
    「え?」
    「恵に」
    不思議に思っていた事を聞けば、予想外のことを聞かれたとばかりにあいつはうーん…と考え込んでしまった。無意識に謝ってるのか、と思っていたら、ぱっと顔を上げたあいつが、
    「考えたこと無かったから分かんないけど、恵が困って泣いたり怒ったりしてることは、ちゃんと私たちがどうにかしてあげられるよ、だから安心してって教えてあげたいの」
    ごめんねって言うのは、ちゃんと私たちの力が及ぶ事柄にしか使わないでしょ、と言った。訳が分からず、首を傾げた自分に「うーん例えば」とあいつが、眠る恵の柔らかな髪の毛を撫でながら、
    「恵が空を飛びたいって言うとするじゃない?」 4940

    とりさし🐣

    MAIKING高専 五甚(五2年×甚3年の幻覚)
    交流戦と直の横やり / 終始ふざけています
    あ、やべ。面倒なものがくる。
    教室で甚爾が立ち上がってから出口までかかった時間は僅か2秒ほどの出来事だった。
    ガラ、と古びた引き戸を開け放つと前には壁、もとい大きな体がぬっと現れた。
    遅かった。甚爾は舌打ちをして、すぐさま踵を返そうとしたところでその壁、こと五条に肘を掴まれて、そのまま無言でずるずると廊下を引き摺られていく。

    「…………」
    甚爾が突如立ち上がって出口を目指してからのこの1分にも満たない出来事を、甚爾のクラスメイトたちは一部始終みていたが、触らぬ神に祟りなし。どういうわけか知らないが、呪術界最強の力を誇る年下の男に好かれてしまったらしいクラスメイトに、羨んだら良いのか哀れんだらよいのか、今ひとつ分からないまま、静かに心の中で手を合わせた。そもそも五条の気配を察知して逃げる甚爾も甚爾だ。逃げるから追われるのだ。普段からさして素行の宜しくないクラスメイトのこと、なにか五条の腹に据えかねるような事でもやらかしたのだろう、と特に興味もないが、そう結論づけた。


    来る、と察知してから此処へ来るまでに2秒も掛からないのは狡い。こっちは術式とか人間離れしたモンは使えねーんだぞ、と引 5206

    とりさし🐣

    MAIKING※本誌バレ有 +存在しない記憶
    直甚 (直9才と甚16才くらいの気持ちで書きました)
    ガン、と大きな衝撃音がした。
    入るなと言われている隅の小部屋からだ。目を音の鳴った方向に向けると、「見てはなりませんよ」と先を急かされる。

    「彼処、なんで入ったらあかんの」
    幼少期に別れた母親の方の言葉を真似たこの口調を、家の人間はあまり良い顔をしない。突然いなくなった母が、どういう理由で居なくなったのかは知らないが、まるでその面影を追うようで嫌なのだろう。まだまだ子どもなのね、と勘違いも甚だしい感傷を抱く奴もいれば、あの女を思い出して胸糞悪いと陰口を叩く人間もいた。勿論、家の連中が嫌がるから、わざわざ母の言葉を真似てやっているわけだが、どうやらこの家で父だけが俺の意図を正しく理解しているようだった。この家にはきっと、碌な奴が居ない。

    世話係の女が、「ご当主がお呼びですよ」と急かしたが、音の正体の方が気になっていた。もしかしたら、少し自信があったのかもしれない。術式をうまく扱えるようになって以降、父からの期待は兄弟の中で一番受けていたから、自分は優秀なのだということを知っていた。ジャリ、と足が隅の小部屋へ向く。

    「彼処は、入ってはならない部屋です。お伝えしている筈」
    「だから、そ 2578

    とりさし🐣

    MAIKINGセレンディピティ 設定 9
    ようやく五→甚 になってきました
    9.猫

    案外、熱心な性格をしている。

    用事を終えて家に着いた五条は、部屋から甚爾の声がする事に気付いた。電話も無い。靴は甚爾のものしか無い。一人のはずだが、一体何をしているのだろうかとリビングに続くドアを開けた五条は、何やら戦闘モードの甚爾とソファの上に乗る黒いものを見つけた。

    「…え?」
    「おい坊、ドア閉めろ!」
    甚爾に言われるがままに玄関に続くドアを閉めたが、改めてこの奇妙な光景に五条は目を丸くさせた。

    「え?なんで?」
    「こいつおれのアテをパクリやがった!」
    「え?」
    「楽しみにしてた子持ちシシャモ最後のひとつをだぞ?!」

    信じられるか、と憤慨する甚爾は既に顔が赤く、いつもよりも目尻が垂れている。酔っ払っている時のサインだ。ローテーブルの上にはビールの缶が置いてある。その横の皿にあった子持ちシシャモをとられた、ということらしい。

    ——この黒い猫に。

    「え、なんで?」
    「あっ!てめ!セコイんだよ!ソファの下に逃げてんじゃねぇ!」
    ソファを持ち上げんとする勢いの甚爾を後ろから羽交い締めにして止める。ジタバタと動いて怒っているが、五条はいまいち状況についていけていない。
    5732

    とりさし🐣

    MAIKINGセレンディピティ設定 五甚 88. 懺悔の夜



    パスタが食べたい気分だなぁ、と思ったが甚爾がカレーの材料を探している気がする。いやハヤシライスかもしれない、もしくはシチューの可能性もあるが昨日シチューだったのでそれは無いと願いたい。
    「…甚爾」
    「あんだよ」
    あ、呼び捨てすんなって言わなかった。考え事をしているのかもしれないが、初めてお許しが出た。
    「ねぇ、買い物行かない?」
    「は?おれとオマエ二人でか?」
    「そう」
    「あー?めんどくせぇ、一人で行けよ」
    こうなることは予測している。しかし今晩の夕食が懸かっているのだ、こちらにも抜かりはない。
    「僕下戸だから、甚爾が自分で選んでくれないとアルコールは買わないよ?」
    「行く」
    甚爾はその誘い文句で即決したらしく、僕のスエットを着たままで、坊はやくしろよ、なんて機嫌良さそうに玄関で待っている。こういう無邪気さが、案外ズシンとクるのだ。最近は心臓が誤作動を起こす度に、天逆鉾で喉ぶっ刺された衝撃を思い出すことに徹している。



    カートを押す役を僕がやろうとしたが、甚爾が食材をとるとなると人参・じゃがいも・玉ねぎ・肉、といったお馴染みすぎる食材になると思ったので、甚爾に 3076

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    とりさし🐣

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    10.



    泣き止まない声、真っ赤になった顔、可哀想なくらい、握り締められた手。
    狭いアパートで、昼寝から起きた子どもはよく泣いた。子どもは酷く泣き怒っていたのに、ゴメンねまだ眠たいよね、と母親が抱けばすぐに泣き止んだ。子どもはとても些細な事でよく泣いたしよく怒った。その度にあいつは「ゴメンね」と言って抱き上げた。その言葉を待っているかのように、子どもはそれを聞いて、今度は甘えるように抱き着くのだ。
    「なんでお前が謝んだよ」
    「え?」
    「恵に」
    不思議に思っていた事を聞けば、予想外のことを聞かれたとばかりにあいつはうーん…と考え込んでしまった。無意識に謝ってるのか、と思っていたら、ぱっと顔を上げたあいつが、
    「考えたこと無かったから分かんないけど、恵が困って泣いたり怒ったりしてることは、ちゃんと私たちがどうにかしてあげられるよ、だから安心してって教えてあげたいの」
    ごめんねって言うのは、ちゃんと私たちの力が及ぶ事柄にしか使わないでしょ、と言った。訳が分からず、首を傾げた自分に「うーん例えば」とあいつが、眠る恵の柔らかな髪の毛を撫でながら、
    「恵が空を飛びたいって言うとするじゃない?」 4940

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    MAIKING高専 五甚(五2年×甚3年の幻覚)
    交流戦と直の横やり / 終始ふざけています
    あ、やべ。面倒なものがくる。
    教室で甚爾が立ち上がってから出口までかかった時間は僅か2秒ほどの出来事だった。
    ガラ、と古びた引き戸を開け放つと前には壁、もとい大きな体がぬっと現れた。
    遅かった。甚爾は舌打ちをして、すぐさま踵を返そうとしたところでその壁、こと五条に肘を掴まれて、そのまま無言でずるずると廊下を引き摺られていく。

    「…………」
    甚爾が突如立ち上がって出口を目指してからのこの1分にも満たない出来事を、甚爾のクラスメイトたちは一部始終みていたが、触らぬ神に祟りなし。どういうわけか知らないが、呪術界最強の力を誇る年下の男に好かれてしまったらしいクラスメイトに、羨んだら良いのか哀れんだらよいのか、今ひとつ分からないまま、静かに心の中で手を合わせた。そもそも五条の気配を察知して逃げる甚爾も甚爾だ。逃げるから追われるのだ。普段からさして素行の宜しくないクラスメイトのこと、なにか五条の腹に据えかねるような事でもやらかしたのだろう、と特に興味もないが、そう結論づけた。


    来る、と察知してから此処へ来るまでに2秒も掛からないのは狡い。こっちは術式とか人間離れしたモンは使えねーんだぞ、と引 5206

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    「…甚爾」
    「あんだよ」
    あ、呼び捨てすんなって言わなかった。考え事をしているのかもしれないが、初めてお許しが出た。
    「ねぇ、買い物行かない?」
    「は?おれとオマエ二人でか?」
    「そう」
    「あー?めんどくせぇ、一人で行けよ」
    こうなることは予測している。しかし今晩の夕食が懸かっているのだ、こちらにも抜かりはない。
    「僕下戸だから、甚爾が自分で選んでくれないとアルコールは買わないよ?」
    「行く」
    甚爾はその誘い文句で即決したらしく、僕のスエットを着たままで、坊はやくしろよ、なんて機嫌良さそうに玄関で待っている。こういう無邪気さが、案外ズシンとクるのだ。最近は心臓が誤作動を起こす度に、天逆鉾で喉ぶっ刺された衝撃を思い出すことに徹している。



    カートを押す役を僕がやろうとしたが、甚爾が食材をとるとなると人参・じゃがいも・玉ねぎ・肉、といったお馴染みすぎる食材になると思ったので、甚爾に 3076

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    MAIKING高専 五甚(五2年×甚3年の幻覚)
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    教室で甚爾が立ち上がってから出口までかかった時間は僅か2秒ほどの出来事だった。
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    遅かった。甚爾は舌打ちをして、すぐさま踵を返そうとしたところでその壁、こと五条に肘を掴まれて、そのまま無言でずるずると廊下を引き摺られていく。

    「…………」
    甚爾が突如立ち上がって出口を目指してからのこの1分にも満たない出来事を、甚爾のクラスメイトたちは一部始終みていたが、触らぬ神に祟りなし。どういうわけか知らないが、呪術界最強の力を誇る年下の男に好かれてしまったらしいクラスメイトに、羨んだら良いのか哀れんだらよいのか、今ひとつ分からないまま、静かに心の中で手を合わせた。そもそも五条の気配を察知して逃げる甚爾も甚爾だ。逃げるから追われるのだ。普段からさして素行の宜しくないクラスメイトのこと、なにか五条の腹に据えかねるような事でもやらかしたのだろう、と特に興味もないが、そう結論づけた。


    来る、と察知してから此処へ来るまでに2秒も掛からないのは狡い。こっちは術式とか人間離れしたモンは使えねーんだぞ、と引 5206