金色が重なる いや、なんなの?!序盤からこれって、この後どうなるわけ!?ていうか、まさかこのままおっぱじめちゃったりしないよね?!?
心のなかで忙しく騒ぎ立てていたけど、グラスを持ってこちらに戻ってきた煉獄さんがブハッと吹き出す音で我に返った。
「君は…っ、…ふふっ。どうしてそんなに面白いんだ」
テーブルに置いてそのまま流れるように見上げられ、この状況にかその色っぽい瞳にか分からないけど顔が熱くなってくる。
「だ、だって…。こ、このドラマ、さっきからずっと…」
「ずっと?」
「…だ、だから…!ずっと、…その、キ、キス、してて…。イチャついてるだけっていうか…」
「ふぅん。なら、替えるか?」
ハッと、俯いていた顔を上げその瞳を見つめる。
そうだよね!きっと煉獄さんも気まず―
「君には早かったかもしれないな?」
……は?
「いや、え?…何それどういう意味ですか」
「だから、君には刺激が強すぎるんだろう?子供向けのアニメにしようか」
ニッコリ笑顔だけれどその目の奥には意地悪な色が見えて。
「は?何言ってるんです?こんなの、全然余裕ですけど?」
「いや、無理はしないでくれ。
顔が真っ赤になってるぞ」
「べべ別に、お酒飲んでそうなっただけですけど!?」
心配、って表情なのにその赤い目の奥が思いきり笑っているからついムキになってしまう。
「だ、だから!大丈夫です!
この主人公の恋の行方が気になるので!」
「多分主人公は別の人だと思うが?
…まぁ、君がそう言うなら見ようか」
私の横に座った煉獄さんの重みでソファがそっちに沈み込む。
思わず身体がつられないよう力を入れれば笑われてしまった。
なのに、ワインを開けグラスに注ぐ仕草はどこまでも綺麗で見惚れそうになってしまって。
「どうした?見惚れてるのか?」
…そしてやっぱりどこまでも腹の立つ人だと再確認してしまうのだった―。
「ねぇ、煉獄さん」
「うん?」
「もしかしなくてもこれ、すごく高いワインですよね?」
「……まぁ、おそらく」
一瞬気まずそうに目を逸らした彼は、それでも気を取り直したようにグラスに手をのばす。
「まぁでも貰い物だからな。
のまなかったらそっちの方がもったいない。
君が一緒に飲んでくれなければ開ける機会もないしな」
目線で私にも手にとるよう促して、グラスはぶつけずに視線で乾杯する。
ゆっくりと口に流し込んだワインは、渋みがあるけど深くて、なのに自然と馴染むみたいにのどにしみ込んでいくようで。
「うわぁ、なんだかすごく美味しい気がします」
「そうか」
「煉獄さんは?美味しいですか?」
「…うん」
グラスを持ちながら少しだけ俯き目線を彼方にやるこの人の姿は、なんでこんなにも様になるんだろうか。
絵になる、っていうのはこういうことを言うんだろうというほどにワイングラスもやたら高そうなソファも似合っていて、思わず目が離せなくなってしまう。
「どうした?」
「…いや、別に」
正直、どんな顔していいか分からないと思っていたドラマのキスシーンの何倍も色気がすごいというかぶっちゃけ卑猥なかんじがするというか。
頼むから、その気怠げな表情をやめてくれないだろうか。
怪訝な表情を向けてくる彼に慌ててテレビに視線を戻すと、ソファーの上に回された煉獄さんの腕が小さく私の肩に当たった。
「あぁすまない。こういうのは慣れてなかったか?」
「いや全然大丈夫ですけどぉ?!」
くすりと笑って肩に触れられる。
そのまま遊ぶみたいに指先に頬を撫でられ微笑まれればまるで捕まってしまったように動けなくて。
「可愛くて、つい」
カワイクテ、ツイ?
ていうことは、それって。
可愛かったら誰にでもこういうことするんですか?つい?
はぁ?
はーーっと、深いため息
少し黙っててくれるか
黙って見つめる
黙ってればこんなに可愛いのに
頬を包み込んでいうから、恥ずかしくて何も返せない
そのままキスされて、見上げたら
その顔はやめてくれないか
…はい?