金色が重なるだから先に飲み物やフードを見ていてと伝えて、ショーツやらなんやら売ってるあたりを指さして。
それに察してくれた煉獄さんを見送り立ち止まって商品を見るふりをすれば。
『こんばんは、お久しぶりです』
『……どうも』
やっぱり。聴こえてくる二人の交わす挨拶に少しだけ泣きそうになる。
知り合い、だよね?だって挨拶するくらいだし。
あの女の人、煉獄さんのことすごく見てた。…もしかして、本当にもしかして。昔の恋人とか、そんなことは―。
「―ッ」
あの人が煉獄さんの横にいるのを想像しただけで、ほんとに泣きそうになってしまった。
…どうしよう。意地なんて張らないで煉獄さんに引っ付いてれば良かったかも。そうすればあの女の人とは話さないでくれたかもしれないのに。
ふと近くに感じた店員さんの気配に、慌てて少し歩いたり手近な商品を見るフリをする。
適当に商品を手に取ってみたところで聴こえてきた言葉は。
『一緒にいた方は、妹さんですか?可愛らしい方ですね』
ひどい、ひどい。だって、私達は手を繋いでたのに。
煉獄さんは、こっちが恥ずかしくなるくらい私のこと大事そうに可愛いって目で見てくれてたのに。
意地が悪い言葉に手に持っていた箱を握りつぶしそうになるのを慌てて堪える。…それでも、
「…いえ、俺の大事な人ですがそれが何か。
それから失礼ですがもう話しかけないでもらえますか。
彼女に勘違いされたくありませんので」
キュッと、胸の中が掴まれたみたいな感覚がして、苦しくて熱くてどうしたらいいか分からなくなる。
そのままこちらへ向かってくる足音が聴こえ慌てて手の中の商品を戻そうとしたとき―。
「…!き、キャアアァァァ!!」
「!?どうした、大丈夫か!?」
気づいたら目の前まで来ていた煉獄さんに見えないよう、急いで手に持っていた箱を背中に隠す。
「だっ、だだ大丈夫です!すみません、なんでもないです!」
「何でもないことないだろう!どうしたんだ!」
「いや別にほんと―、…あっ!」
反対の腕を掴み引き寄せられ、あっという間に手から取り上げられた小さな箱。…それは、
「……あ、ちがっ。ご、誤解です…!ほんとに、」
「…大丈夫か?」
「…へ?」
コンビニの一角、わりとどこにでも置いてあるだろうけど恥ずかしくて視線を向けたことはない。…所謂、避妊具というもので。
だから買おうとか見ようとかそんなつもりはなくて。そもそもちゃんと見ずに手に取っただけでだから誤解だと伝えたいのに返ってきたトンチンカンな質問に思わず首を傾げてしまった。
「…、…あの、」
「これだと俺のは入らないと思うんだが、大丈夫か?」
「……。…はい?…え、なんて?」
「…だから。このサイズだと俺のは、」
は、ハアアァァ?!?!
「ば、バカなんですか?!何を言ってるんです?!そもそも、誤解だって言ってるじゃないですか!」
「?今夜使うつもりなのかと思ったんだが、」
「ち、ちがっ!ちがっ、ちちちちがい…っ」
「買うのが恥ずかしいから俺を先に行かせたんだろう?それとも、まさか俺以外の男と使うのか?」
「は、はぁ?!?そんなっ、ただ、私は…っ、」
必死に、なんとか伝えようとその赤い瞳を見上げ覗き込んだとき―。
その奥の赤い色に、ニヤリと笑いかけられた気すらするほどに。
「…っ、…な…っ」
「…ふっ」
「ブフッ」
意地悪をされていたんだとその目に教えられて。
言葉が出ずにいれば小さくでも楽しそうに笑われ、背後から店員さんの噴き出す音まで聴こえた。
「…。もう、帰ります」
「…え?」
「もう帰ります!」