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    paccho_mokumoku

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    paccho_mokumoku

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    はるか昔に書いた虎♡伏です

    #虎伏
    ItaFushi

    伏黒恵さん、好きです。俺と付き合ってくれますか?伏黒恵には悩みがある。
    年の割には落ち着いていて飄々と流れる水のように生きている、ように傍から見えるのは理解しているし事実そうだとも思う。とはいえ恵も思春期の男子高校生で、男子高校生らしく悩みの1つや2つは抱えている。
    寝たまま何年も起きない津美紀のこと、体術がいつまで経っても亀の歩みのようにしか成長しないこと、傍若無人がすぎる担任教師兼保護者のこと、休みの度に荷物持ちと称して繁華街に連れ回す同級生のこと……挙げだせばきりがないが、恵の脳内を現在1番支配している悩みは、

    「伏黒いるー?ごめん明日までの課題見して!」
    自分が虎杖悠仁に対して、恋情を抱いてしまっているということ。

    自覚したときは動揺した。あり得ない、何かの間違いだろう、吊り橋効果だろうからいずれは落ち着くに違いない、と。
    今までは普通に女性が好きだった。初恋は津美紀で、中学時代気になっていたのも女子ばかり。性格は快活で優しくて、少し背が低くて笑顔が可愛い、女の子がタイプだったはずだった。そう、女の子が。

    それが何で虎杖?確かに快活で優しいが身長は自分よりも高いし、筋肉ゴリラでそもそも男だ。しかもなかなかにイカレている。目の前にいる伏黒を助ける、そのためだけに特級呪物たる宿儺の指を迷いなく飲み込んでしまえるくらいには。
    気の迷いだと思い込めば込むほどに余計に意識してしまって、そうなると今まで気付かなかったところ、何とも思っていなかったところまで良く見えてきてしまう。

    釘崎と買い物に行く時、必ず車道側を歩くところ。
    満員電車に乗るときは必ず女子を守るように立つところ。
    課題を見せてくれたお礼に、と、必ず夕飯を振舞ってくれるところ。
    何の躊躇もなくパチンコを打ちに行くところ。
    景品のお菓子は絶対に分けてくれるところ。
    何かを分担して作業する時、必ず1番負担の多い役割を買って出ようとするところ。

    「ありがとな、助かったわ!今日の夜飯、生姜焼きにするから」

    (—————好きだ、)

    恋を自覚して1ヶ月。伏黒恵は白旗を上げた。

    これ以上自分で自分は誤魔化せない、俺は虎杖悠仁が好きなのだ、と。

    認めてしまえば、そこからの恵の行動は早かった。実は元来直情型なのだ。思い立ったら即行動、うだうだ考えるなんて性に合わない。
    課題のお礼に、と悠仁が作ってくれたのは、およそ男子高校生の自炊とはかけ離れた完璧な和定食。恵の好みに合わせて、生姜を効かせすぎるくらい効かせた豚の生姜焼きと、ほかほかと湯気が立つ炊き立てのご飯、いりこで出汁をとった油揚げと豆腐とわかめの味噌汁にほうれん草のお浸しだった。
    たっぷりタレを絡めた豚肉で豪快に米を包み、口に放り込んでもぐもぐと頬を膨らませる姿を、愛おしい、好きだ、と思う。せめて洗い物は、と言ったら、お礼なんだから洗い物も俺やるよ、とスポンジを取り上げられてしまった。そんなところも優しい、好きだ、と思ってしまうのだから、これは拗らせたら大変なことになる、と、すぐに恵は告白をすることにした。付き合うにしろ振るにしろ、早く済ませたい。同性だなんだで自分の気持ちを笑うようなことはしないだろう、振られたら明日からは少し気まずいが、それよりも自分が暴走して釘崎や五条にこれがバレるほうが怖い。

    夕食後、悠仁の部屋。話がある、と唐突に訪れた恵を疑うことなく出迎えて、悠仁はベッドに腰かけ、恵は両拳を握って立っていた。
    「好き、なんだ」
    「……それは伏黒が俺のこと好き、ってことで合ってる?恋愛的な意味で」

    恋愛、と改めて言われるとさすがに早まった感がある。何せこちらも自覚してから数時間しか経っていないのだ。口に出してそうだ、と言うのは憚られて、肯定の意味を込め、首を縦に振った。悠仁の反応を見るのが怖くて、ぎゅっと目を瞑る。
    同級生の唯一の男からそういう目を向けられていると知って、引くだろうか。気持ち悪がるだろうか。優しい奴だから受け入れてはくれると思って来たが、明日から話しかけんな、とか言われたらどうしよう。そうなったら、言いふらすことはしないでくれと頼もう。

    暗闇の中、ぐるぐると悪い方向に下がっていく思考を止めたのは、「マジ?」という声だった。声色からして引いてはいなさそう————むしろ、弾んでいるようにすらも聞こえる。伏黒、目ぇ開けて、俺の顔見て、と優しい声に促され、恐る恐る目を開けたらそこには満面の笑顔の悠仁。
    「ありがとう、すっげー嬉しい!俺も、伏黒のこと好きだよ」
    「…それは、恋愛的な意味で?」
    「もちろん」

    嫌がられるどころか、喜ばれている。悠仁も恵のことが好きだったらしい。
    事実を認識した次の瞬間、マジか、の3文字が恵の脳内を支配した。恋愛的な意味で、虎杖悠仁が伏黒恵のことを好き。俺が悠仁を好きなように、悠仁も俺のことが好き。マジか。信じられない。

    「伏黒から言わせちゃってごめんな?ちゃんと俺からも言わせて」

    告白、両想い、ときたら、次のステップは決まっている。言われるであろう言葉に思わず身構えた。

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