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    sinzaka

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    sinzaka

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    「麗しき私と変な女」2

    「え、ケンカ売ってるなら買うけど」

    「あ、ごめんなさい! そういうつもりじゃなかったんです」

     本当かよ。
     めっちゃニコニコしてるので、怪しい。

    「それで、ですね。私と友達になってもらえませんか?」

     頭のおかしい女の子に友達になってほしいと言われた。こわ。

    「ならない」

    「そうですか……」

     しょんぼりしてしまった。まあ、別にいいか。
     ……私と、頭のおかしい女は二人で並んで歩く。無言。
     ちらっと横目で見ると、頭のおかしい女はずっと俯いている。
     なんなんだこの状況。
     私、何か悪いことしたかな。

    「……てかさ」

    「あっ! はい!」

     私が声をかけたら、急に元気になった。そんなに私のこと好きなの? 怖いなー。

    「いつまでついて来るの。違う学校でしょ」

    「それは……友達になっていただけたら、すぐ自分の学校に行きます」

     やっぱり怖い……。
     なんか、このノリだと学校に入ったら、普通に教室までついてきそう。
     今日は学校行くのやめるか。
     私はくるりと後ろを向いて、逆方向へ歩きはじめた。
     変な女もあわててついてくる。

    「どこへ行くんですか?」

    「サボる」

    「いけないですよ、サボりは」

    「そう? 別に私が学校からお金貰ってるわけじゃないし。いいんじゃない」

    「でも、授業を飛ばすとついていけなくなっちゃいませんか」

    「知らん」

     授業中は大体寝てるから、サボっても出ても大して変わらない。
     なんで自分が学校行ってるのかよくわからなくなってきたな。たぶん惰性で行ってる。
     変な女は呆れ顔だ。お前そんな顔する資格あんのか。

    「将来が心配じゃないんですか?」

     そっちの将来のほうが心配だけど?

    「お金はあるから平気」

     両親からいっぱい貰ってるのでなんとでもなる。月に一億くらい。

    「へえ……」

    「え、なに。興味あるの?」

    「うーん、将来がどうとでもなるくらい持ってる、って言われたらちょっと気になっちゃいますね」

    「あげないよ」

    「お金が欲しいわけじゃないです。友達になりたいんです」

     ……やっぱり気持ち悪いんだけど、さすがに気になってきた。
     普段はカケラも持ちあわせてない、他人への興味を振り絞ってみるか。

    「なんで私と友達になりたいの」

    「え……」

     うーん、と腕を組んで考え込む。
     散々友達になりたいって言ってきてそれ? なんなんだこいつは。こわ。

    「なんででしょう……。私、通学途中にたまに貴女のことを見かけてたんです」

    「へえ」

     私は全然変な女には気が付いていなかった。一方的に見られていたらしい。
     それは仕方ないか。私は美人だからね。

    「それで、綺麗なのにいつも一人なんだな、友達いないのかな……って思って」

    「ぶつぞ」

    「ぶたないでください」

     こいつ私を煽りに来たのか。
     ……あれ、これが煽りに聞こえるってことは、私、もしかして友達とか欲しかったのか。まさか?

    「そう考えてたら、友達になりたくなったんです」

    「つまり、友達がいないやつの友達になってやろうって哀れみ?」

    「いえ、そういうわけでもなくて。うーん、なんとなくです」

    「なんとなくか……」

     なんとなくと言われると弱い。
     私もなんとなく生きてるからだ。
     なんとなくより切実な理由は、たぶんない。

    「なんとなくなら、しかたないな」

    「…………」

    「なんか奢って」

    「え」

    「友達なんでしょ」

     笑顔のような呆れたような、複雑な顔になる変な女。

    「……将来がなんとでもなるくらい、お金があるんじゃありませんでしたっけ」

    「それとこれとは別」

     変な女は、財布を取り出してのぞきこむ。千円札が二枚。

    「ええと、あまり高いものは無理ですけど……」

    「じゃ、ラーメンだ」

     私は背の低い彼女の腕に手を回し、むりやり引き寄せる。

    「わっ」

    「今日から私たち、親友ね」

    「え、えっと……はい」

    「よろしくね、鉄花」

     私は笑って、彼女の顔を見た。
     不安げな顔が、ぱっと明るくなる。
     こうしてみると結構かわいいじゃん。私ほどじゃないけどね。

    「はい! あの、お名前を教えていただいてもよろしいですか」

    「くもり。雨上(あまがみ)・くもり。そっちは?」

    「はい。歌島(かしま)・鉄花(てつか)です」

    「OK。そんじゃ、駅前のラーメン屋行こうか。あそこはもう開いてるから」

    「私たち、制服ですけど……」

    「私は気にしないから大丈夫」

     何が面白いのか、鉄花はふふっと笑った。

    「くもりさん、すごいマイペースですね」

    「……うわ。それ、鉄花が言うの怖いなー」

    続く
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