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    SS供養

    過去に書いたSSを一部修正して再掲しています。

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    SS供養

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    一乃+青山
    二人の退部後のお話。

    放課後になると生徒たちは部活動のためにグラウンドや体育館に移動し始める。

    一乃は渡り廊下まで来てふと足を止めた。
    向こうの方に良く知る顔を見つけたからである。

    「あー、一乃じゃん。最近どーよ?」

    浜野は白い歯を見せながら二カッと笑って見せた。
    日に焼けた褐色の肌に黄色いユニフォームがよく映えている。

    「お前こそどうなんだ。取り返しのつかないことになってるじゃないか」

    あのフィフスセクターに逆らったのだ。どうなってもおかしくはないだろう。

    「ははっ確かにそーだなぁ。ちゅーか、ここまできたら、もう乗ってみてもいいかなって思ったんだよね」

    頭の後ろで手を組みながら浜野が言った。

    「サッカー、できなくなるかもしれないぞ」

    少しだけ声を低くしたのは警告の意味を含めているからだ。

    「まぁそん時はそん時だよ。じゃあ俺もう行くわ」

    呼び止める間もなく浜野は走ってグラウンドに行ってしまった。



    雷門サッカー部のファーストは目標であり憧れだった。
    セカンドのキャプテンとして自分は一生懸命努力したし、ファーストに上がるためにも頑張っていた。

    それなのにフィフスセクターのシードだと名乗る奴にサッカー部を滅茶苦茶にされ、その結果セカンドは全員退部。ファーストも何人か辞めてしまった。

    ただサッカーがやりたいだけだった。それだけなのにどうして傷つかなければいけないのか。

    「一乃、何してるの?」

    振り返ると青山が側に立っていた。

    「あぁ……すこし考え事」

    「そう……」

    青山は俯いて地面を見つめたまま再び口を開いた。

    「一乃はさ、……サッカー部、辞めてよかったと思ってる?」

    「何を今さら」

    思わず青山を睨むように見つめてしまった。

    「……そうだよね」

    予想通りの答えだったんだろうか。青山は小さく息を吐いてグラウンドを見つめた。

    「思っちゃったんだ。もし辞めてなかったら、あそこに俺たちがいたかもしれないって」

    青山の見つめる先にはボールを追いかけているサッカー部員がいた。

    「青山……」

    「まぁどうせセカンドだし、考えるだけで無駄かもしれないけどね」

    青山は自嘲気味に言った。

    「仕方なかったんだ。俺たちは選択を誤ったわけじゃない」

    自分に言い聞かせるようにそう言った。

    「そう、だよね。間違ってないよね」

    しばらく立ちつくしたまま、無意識に制服の裾を力強く握りしめている自分がいた。
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