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    浬-かいり-

    @Kairi_HLSY

    ガルパ⇒ハロハピの愛され末っ子な奥沢が好き。奥沢右固定。主食はかおみさ。
    プロセカ⇒今のところみずえなだけの予定。

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    かおみさ

    #ガルパ
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    #かおみさ
    loftyPeak

    EPILOGU「やあ美咲、おかえり。向こうは楽しめたかい?」


     10年前の薫の実家でシャワーを浴びて、その後同じくシャワーへ向かった高校生の薫を見送って。そして気付けば美咲は自分の家に帰ってきていた。薫と同棲している、自分の時代へ。
     10年前の世界へ行った時、自分は弦巻家に居たはずだが。……また高校生の美咲と入れ替わったということは、高校生の美咲を自宅まで連れて帰ったのだろう。
     いくら10年前の姿の恋人とはいえ、どうして弦巻家にそのまま泊めさせなかったのか。何故か不満のような感情が渦巻く。が、それは押さえ込んで。


    「いや、ほんとどうなることかと思ったけど……。まあ、でも、悪くはなかったかな。高校生の薫さんにも会えたし。そっちは? 高校生のあたしが来たんでしょ?」

    「ああ、とても可愛らしかったよ」


     なにそれ。
     美咲は出かかった言葉を飲み込んだ。これではまるで、高校生の自分に嫉妬しているみたいだった。
     ふぅん、と興味なさそうな返事を返して、薫の後ろへ視線をやった。……そこで、あることに気付いた。


    「ベッドの……、」

    「ん?」

    「シーツが変わってる」

    「ゔッッ」


     流石にその疑問は口から出た訳だが、どういうわけか薫が言葉を詰まらせた。薫の背中に冷や汗が伝う。
     そんな様子を美咲が見逃す筈がなかった。


    「薫さん?」


     詰め寄る。薫が目を逸らしたので、両手で顔を挟んで無理やり目を合わせた。自分の知る限り、シーツを変えなければいけない事態なんて片手の指程しか浮かばない。


    「薫さん」

    「…………」

    「高校生のあたし、ここに連れてきましたよね」


     薫は頷く。


    「うん。で?」

    「……食事を、作ってあげて、それで、」

    「それで?」

    「……一緒に、お風呂に、」

    「は!?」


     絶句した。自分だって、一緒に入る機会などそんなに無いのに。——美咲自身が恥ずかしがって拒否してしまうのが、一番の原因だったが。——

     そもそも高校生の自分もよく一緒に入ったな。一瞬そう考えたが、でもあの時代の自分なら、上手いこと言い包められて流されて一緒に入ってしまいそうな気もした。自分のことは自分が一番よく分かっている。
     息を整えて、話の続きを促す。


    「……それで、美咲が、その、あまりにも可愛かったものだから」

    「……うん」

    「…………うん。つまり、そういうことさ」


     最後は全力で誤魔化しにかかった薫の言葉に、遂に美咲が限界を迎える。
     取り敢えず手近にあったクッションを薫へ投げつけた。


    「……っ、薫さんの変態! ロリコン!!」


     その台詞は高校生の美咲が言っていたものと全く同じものであったので、薫は思わず口角が緩みそうになるのを耐える。ここで笑ったら間違いなく火に油を注ぐ結果となる。
     投げつけられるクッションを大人しく顔面に受けた。自分にさえ嫉妬してしまう美咲が可愛らしく、そして愛おしく感じられた。それだけ、自分のことを好いてくれているのだと。


    「……ところで、美咲は?」

    「え?」

    「美咲は、高校生の私と何もなかったのかい?」

    「  」


     今度は美咲が言葉を詰まらせる番だった。自分のことを棚に上げて薫を責めていたが、実際自分も、高校生の薫に手を出してしまったのだ。
     言い淀んで目を逸らした美咲の隙を見逃さず、薫はその身体を押し倒す。


    「え、あ、待って、」

    「———言えないようなことをしていたのかい?」

    「…………ごめんなさい、」

    「おや、何故謝るんだい? 理由を教えてくれないかい? そうだね、なるべく詳しく」


     反撃とばかりに畳み掛ければ、美咲は顔を紅潮させて呻いた。
     10年も付き合っていれば大体察せる。この薫は、美咲に何があったのか既に勘付いている。察した上で、わざと美咲の口から言わせようとしている。
     涙目で睨んでも微笑みだけが返ってきたので、美咲は首を振って喚いた。


    「……う、薫さんの、いじわる! あっちの薫さんの方が可愛かった!」

    「———可愛くない私は嫌いかい?」


     ぴたり。美咲の動きが止まる。それもまた、意地悪な言い方であると薫は自覚していた。
     目を伏せた美咲の表情を黙って伺っていると、やがて絞り出すような声が聞こえる。


    「…………じゃない」

    「ん?」

    「嫌いじゃない……」


     服の裾をきゅ、と控えめな握る手に、愛しさが込み上げて。
     薫は美咲の身体を抱き起こすと、そのままゆっくりと、優しく腕の中に閉じ込めた。儚い、と呟いて頭を撫でる。


    「嗚呼、本当に美咲は可愛いね……。確かに高校生の美咲も愛らしかったけれど、私は今の美咲を一番愛しているから、心配しないでおくれ」

    「……あたしも、」

    「うん」

    「……今の薫さんが、一番すき」


     高校生の頃の、捻くれていて恥ずかしがり屋で、そして初心な美咲も可愛かったけれど。今の自分にはやはり、じっくり愛を育ててきたこの美咲が一番愛おしい。
     きっと高校生の二人も、同じことを思っているのだろうな、と薫は微笑んでから、目の前の恋人に口付けた。
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