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    浬-かいり-

    @Kairi_HLSY

    ガルパ⇒ハロハピの愛され末っ子な奥沢が好き。奥沢右固定。主食はかおみさ。
    プロセカ⇒今のところみずえなだけの予定。

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    浬-かいり-

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    ハロハピ

    #ガルパ
    galpa
    #ハロハピ
    halo-happi

    末っ子を可愛がって甘やかしたいの会「今日一日、美咲はあたし達の妹になればいいんだわ!」

    「は?」




     今日はハロハピの練習日。昼食を食べてから練習の予定なので、お昼前にCiRCLEへ。車で送ってくれた親にお礼を言ってから、中へと入った。


    「ごめん、お待たせ」

    「美咲っ!」


     到着したのはあたしが最後。こころが嬉しそうに振り返って、いつも通りあたしに飛びつこうとして……、足を止め立ち尽くす。他の三人も、あたしを見て驚いた顔をしていた。


    「美咲、それ……?」

    「あー……その……、」


     みんなが呆然とするのも無理はない。あたしの身体は傷だらけだった。
     顔には頰にガーゼが貼られ、口の端にも絆創膏。手首は捻挫。足は打撲。ともに包帯が巻かれている。
    一番目立つのは、左手でついている松葉杖だろう。


    「……ええと、」


     四人分の視線が居た堪れなくて、そっと口を開く。


    「……こ、転ん、…………轢かれた」

    「「轢かれた!?」」


     葛藤の末そう言えば、薫さんと花音さんが血相を変える。


    「いやあの、そんな大ごとじゃないんです。轢かれたって言っても自転車だし、」


     昨日の帰り、脇見運転をしていた自転車に後ろから衝突された。ただそれだけの話だ。
     特に痛むのは車輪が直接当たった左足と、倒れた時に咄嗟に手をついて変に捻ってしまった右手首。あとは転倒した時に出来た擦り傷だ。見た目は派手だけど大した怪我じゃない。
     それなのに病院では大袈裟に松葉杖なんか渡されてしまった。

     取り敢えず今日は、仕上げて来た新曲は渡せるけど、DJとしての練習は参加出来ないことを謝った。ミッシェルが来れないことも。


    「いっぱい食べればきっと早く治るよ! お昼ご飯食べに行こう! みーくん、歩くの大変じゃない? 痛くない?」


     昼食に誘うはぐみが顔を覗き込む。
     外のカフェテラスは近いし、それくらいだったら問題なく歩けるはずだ。


    「いや、平気だよ。ありがと、はぐみ」

    「でもでも! 段差とかもあるし危ないよ! いっぱい怪我してるのに、転んだらまた怪我が増えちゃうよ!」

    「いや、そんな過保護にならなくても……」

    「そうだ! なら、はぐみがみーくんをおんぶする!」

    「は!?」


     骨折してる訳ではないんだし、そんなに心配する程のものじゃない。しかもそんな、おんぶとか。子供か!?
     片膝をついて此方に背中を向けるやる気満々のはぐみに、困惑して残りの三人を見る。
     こころは「それなら安心ね!」と笑顔だし、薫さんははぐみの優しさに感極まっているし、花音さんに至ってはいつの間にか松葉杖を手に持っている。歩かせない気か。


    「いや、ほんとにいいって! そんな世話を焼かれる程の怪我じゃないし」

    「美咲は世話を焼かれるのは嫌?」


     こころが首を傾げる。まんまるの金色の瞳が、真っ直ぐにあたしを映していた。


    「嫌っていうか……申し訳ないっていうか……。あたしは別に、みんなの子供や妹じゃないんだし」

    「それよ!」

    「は?」


     で、冒頭のあの台詞である。


    「凄いこころん! 確かに妹なら、遠慮はいらないね!」

    「美咲、今日はお姉ちゃん達にいっぱい甘えていいのよ?」

    「いや、あんたら同級生でしょうが」


     意味が分からず固まるあたしへ、四人の視線が集まった。きらきらとした、期待に満ちたような目。ねえ誰今妹欲しかったんだ、って言ったの。
     そんな目やめてってば。そんな視線を向けられたら、もうあたしにはどうにも出来なくて。


    「……わかったよ、もう……」


     子供のように拗ねたみたいになってしまった口調で溜息を吐くと、諦めて大人しくはぐみの背中に身体を預けた。勢いよく立ち上がって、浮いた足が揺れる。結構怖いが、体幹がしっかりしている為か安定感はある。


    「よし! 行くぞー、みーくん!」

    「えっ、待っ、走らないで怖い怖い!!」


     そのままダッシュ。
     すれ違ったポピパのメンバーが皆驚いたような顔をしているのが、必死にしがみつく視界の端に映った。市ヶ谷さんに至ってはぎょっとしていた、の方が正しい。一番見られたくない相手だった。



    「美咲! ご飯はあたしが食べさせてあげるわ!」


     はぐみから解放され、座らされた椅子にぐったりともたれる。
     運ばれた料理を前にやる気満々で提案するこころに、またしてもあたしの表情は固まった。


    「……いや、いいって、ほんと。子供じゃないんだし」

    「でも、美咲は利き手を怪我しているだろう?」


     薫さんからの指摘に、ぐっと口を閉じる。
     確かに右の手首はまだ痛いが、食事が摂れない程ではない。けれど痛いのは事実なので、反論する術を失う。


    「妹なんだから、遠慮なんかいらないわ。ほら美咲、あーん?」


     オムライスを乗せたスプーンを差し出され、満面の笑み。気付けば、期待と慈愛の混ざった視線が三人分向けられていた。この全力の善意を拒否できる程、あたしは非情になれない。まさに八方塞がり、四面楚歌。
     もうヤケクソだ。観念して口を開けると、嬉しそうなこころがスプーンを口の中へと入れた。
     ……それはいいんだけど、もうちょっと丁寧に食べさせてもらいたい。ただでさえ口の端が切れててあまり開かないのに、こころがスプーンを上手く入れてくれない。お陰で、たぶん口の周りにはケチャップやご飯粒が付いてる気がする。


    「ああ、ほら美咲、こっちを向いて」


     薫さんに呼ばれて顔を向けたら、紙ナフキンで口を拭われた。びっくりして後ろに下がり、椅子がひっくり返りそうになったけど、薫さんのもう一方の手が背凭れを支えた。逃げられない。


     何これ、なんの辱めなの。結局スプーンを持つことは一度も許されず、こころが一口食べさせては薫さんが口の周りを拭いてくれる、の繰り返し。もういっそ早く終わってくれ。
     完食するとえらいわねって頭まで撫でられて、これもう面白がってない? と顔を赤くしたまま疑いの目を四人に向けた。


    「あっ、美咲ちゃん、口のところの絆創膏剥がれかけてるよ。新しいの貼ってあげるね」


     食べ終わって食後のアイスコーヒー(流石にコップは左手でも持てる! と主張して)を飲んでいると、花音さんが剥がれかけの絆創膏に気付いた。
     鞄から絆創膏を取り出すと、ペンを取り出して何かを書き足す。


    「……あの、花音さん? 何描いてるの……?」

    「ふふ、早く怪我が治るように、おまじない」


     見せてくれた絆創膏には、ミッシェルのイラストが描かれていた。剥がれかけの絆創膏を丁寧にゆっくり剥がすと、新しいものを貼ってくれる。ミッシェルの絆創膏。もうかなり恥ずかしいが、あんな笑顔でおまじないと言われてしまえば無碍にも出来ないし、それにここまで来たらもう絆創膏くらいどうでもよくなってきた。


    「じゃあ、食べたし練習しましょう! 美咲、どのお姉ちゃんにおんぶしてもらいたい?」


     あ、まだ続くんですねこれ。
     楽しげな姉四人(仮)は、まだまだあたしを甘やかすつもりでいるらしい。
     ……あたしとしては、お手柔らかにお願いしたいところだ。取り敢えず、おんぶはこころとはぐみじゃなければどっちでもいい。
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