おひさまキラキラいい天気 窓から入ってくるお日様の光で、目を覚ます。
光は温かくて、キラキラしていて、今日がとっても素敵な一日になることを教えてくれているみたい。
早く外に出たい。今日はきっとよく晴れるはず。
すぐにでもベッドから飛び出したい気持ちだったけど、隣で眠る美咲のことを思い出してぐっと堪えた。
まだよく眠っている美咲は、昨日からお泊りに来てくれて、一緒に新しい曲を作っていた。それも昨日で完成したから、今日は沢山一緒に遊べるわね。
美咲はとってもお寝坊さん。ほっぺたをつついても、髪を梳くように撫でてもちっとも起きない。
このまま可愛らしい寝顔をずっと眺めてても良いけれど、今日はそれだけじゃ勿体ない。
早くしないと、今日が終わってしまうもの!
「美咲」
取り敢えずまずは名前を呼んでみる。……もちろんそれだけじゃ、全然起きない。
今度は、寝息が掛かるくらいに顔を近付ける。
「美咲、起きて」
ぺろ、と目元を舌で舐める。びっくりしたように美咲の肩が跳ねたけど、やっぱりまだ起きてはくれない。すぐにすやすやと規則正しい寝息が戻る。
「みーーさーーきーーーー」
ぎゅむ、と鼻をつまんでみる。
暫くすると眉が苦しそうに歪められて、酸素を求めてぱか、と口が開いた。
鼻から指を離して。すかさず、その開いた口へと唇を重ね、自分の舌を挿し込んだ。
「ん、」
漏れる吐息に胸がドキドキする。このドキドキを“恋”だと知ることができたのも美咲のお陰だと思うと、嬉しくて。止まらなくて。
一度唇を離して身体を起こしてから、美咲に覆い被さる。また唇を重ねて、先程よりも奥へと舌を挿れた。
「ふ、……ぅ、う、」
舌を味わうみたいに絡めれば、美咲の吐息混じりの声が水音と一緒に耳に届く。
うっすらと瞼が開いて、まだ眠そうなぼんやりとしたブルーグレーの瞳にあたしが映った。それでも、味わうのはまだやめない。
「ぅ、……、んっ!?」
覚醒した美咲が、目を見開いてびっくりして、あたしの顔に手をやって引き剥がそうとする。
だから一回顔を離してから、美咲の両手首を捕まえた。おかしいわね、美咲が起きたらやめようと思っていたのに。
「っは……、は、ここ、」
息を整える美咲があたしの名前を呼び切る前に、もう一度唇を塞ぐ。止められないのはきっと、美咲だから。彼女の反応が可愛いから。
ぐ、と腕に力を入れられ抵抗されるけれど、体重を掛けて押さえ込めば流石の美咲でも抜け出せない。
逃げる舌を夢中になって追いかけて、捕まえて、絡め取って。そんなことを繰り返しているうちに、押さえ付けている手首の抵抗は弱まって。代わりに、程なくして布団の下の足がばたばたともがくように動き出した。息がもう限界みたい。名残惜しいけれど唇を離す。ちゅ、というリップ音の後、美咲が激しく咳き込んだ。
「ぇほっ、げほっ! はっ、は、ぁ、なに、して、」
「美咲ったら、全然起きないんだもの。早く起きないと、今日が終わってしまうわ」
顔を真っ赤にして此方を睨みつける美咲は、上手く言えないけれどなんだかとっても楽しい気分になってくる。
美咲の唇の端から垂れている涎をぺろりと舐める。これはどちらのものだったのかしら。
「こころ、も、もうやだ、」
首をフルフルと振って涙目で訴える美咲を見ていると、もっとキスしたい気持ちがむくむくと湧いてくる。いじわるしたいなんて、他の人に対しては思わないのに。美咲にだけは思ってしまうの。それって不思議だけど、とっても幸せで素敵なことだって、あたしは嬉しくなる。
けど、あんまりいじわるをして朝から機嫌を損ねさせてもいけないから。程々にしておいて、唇から離れる。身体を抱き起こして、ぎゅーって抱き締めてあげた。控えめに背中に手が回される。良かった、怒ってはいないみたい。
「ふふ、おはよう、美咲!」
「…………おはよ」
背中に回った手がパジャマをぎゅっと掴む感触が嬉しくて、笑顔で挨拶をする。美咲も、まだ赤みの残る顔でぼそりと返してくれた。
顔がそっぽを向いているから、拗ねたように尖った唇がよく見える。
「……何してんの、朝から」
じっとりした視線で睨まれる。でもそんな風に睨んでもあたしが怯まないってことは、美咲自身もよく分かっているはずだ。
「眠ってるお姫様はキスで起こすって、絵本に書いてあったわ!」
「……お姫様も、こんな濃厚なキスはされなかったんじゃないかなぁ」
得意げに伝えれば、美咲が呆れたように笑って溜息を零した。それから、くぁ、と短い欠伸をして。
「ていうか、今何時?」
「6時よ!」
「はぁ!? まだ寝れたじゃん……」
美咲が項垂れると、寝癖のついた頭が胸に当たった。
あたしはその頭を撫でてから、ぎゅっと抱き締める。美咲の黒い髪はお日様の光を反射させて、きらきらと輝く。ちょっとだけ金色に光っているところもあって、それがあたしの髪とお揃いみたいで嬉しい。
「だって、せっかく美咲が泊まりに来てくれて、朝からこんなに良い天気なのに、寝ているのは勿体ないんだもの」
「いや、いくらなんでも早いって……。今日学校も練習も休みなのにさぁ、」
ぶつぶつ文句を言い出した美咲を置いて、あたしはベッドから飛び降りる。それから、美咲の手を引いた。
「ほら、早く行きましょう、美咲! 早く早く!」
笑顔で誘えば、美咲が一瞬だけ困った顔をした後、すぐに笑顔になって。
「……仕方ないなぁ」
そう言って笑う顔が優しくて、可愛くて、大好きで。ベッドから降りた美咲と手を繋いだまま、我慢できなくて駆け出した。つんのめりながら美咲も転ばないように走り出す。
今日はとっても良い天気。さあ、何をしようかしら? あなたと一緒にやりたいことはたくさんありすぎて、きっと今日一日では全然足りない。