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    浬-かいり-

    @Kairi_HLSY

    ガルパ⇒ハロハピの愛され末っ子な奥沢が好き。奥沢右固定。主食はかおみさ。
    プロセカ⇒今のところみずえなだけの予定。

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    浬-かいり-

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    ハロハピ

    #ガルパ
    galpa
    #ハロハピ
    halo-happi

    ハロハピ年少組がアリの行列を眺めてるだけ「あらっ、」


     昼休み、花咲川の中庭で弦巻こころはそんな拍子抜けした声を挙げた。弁当の入った巾着袋を片手に駆けていた足を止めて、中庭の隅で蹲る。
     日の当たらない木陰の中は心地よく風が吹いている。今日は日射しはそれ程強くなく、爽やかな陽気だ。連日の暑さにより冷房の効いた教室で食べていた生徒も、今日はちらほらと中庭に出てきているようだった。
     そんな久々に賑わいを見せている中庭の隅。視線の先には、


    「アリさんだわ!」


     アリの行列があった。中庭の隅に巣でもあるのだろう。何処からか続いている黒い点の集まりは、何処かへと向かって進んでゆく。
     こころの大きな金色の瞳がそれを映し込んでも、顔を地面に近付けて思い切り覗き込んでも、アリの行列がその列を乱れさせることはない。こころは真顔で、無言で行列を見つめ続ける。その小さな後ろ姿に気付いたのは、北沢はぐみだった。
     一緒に昼食を摂る約束をしていたはぐみは、約束していた人物の後ろ姿を見つけて声を掛ける。


    「こころん? 何してるの?」

    「はぐみ!」


     振り向いたこころは嬉しそうに満面の笑みを浮かべて振り返る。はぐみの問い掛けには、地面に指を刺して。


    「見て! アリさんよ!」


     それだけ答えた。指差す先を覗き込むように見たはぐみも、同じように目を輝かせる。


    「ほんとだ! すごーい!!」


     声を跳ねさせると、こころの隣に同じようにしゃがみ込む。
     二人分の視線が、アリの行列に降り注いだ。


    「このアリさんどこから来たのかしら。お家に帰るところなのかしら?」

    「もしかしたら、今からお出掛けなのかもしれないよ!」

    「それもそうね! だってまだお昼だものね。確かに帰るにはまだ早いわね」

    「そうそう、きっとアリさんも今から遊びに行くんだよー!」


     そんな会話をしながら、二人の視線はずっとアリの行列から逸らされない。
     いつもは元気に走り回っている二人が揃って中庭の隅で蹲っている異質な光景は、他の生徒の視界には入れど声を掛けようとする者は誰も居なかった。


    「おーい、何してんの?」


     そんな中、二人の頭上に声が降り注ぐ。
     やっと視線を上へと移した二人は、昼食を約束していたもう一人の人物、奥沢美咲の姿を捉えて嬉しそうに笑った。対する美咲の方は、この二人が揃って大人しく蹲っているのを見て心配半分、不審さ半分といった様子だ。


    「みーくん、見て見て!」

    「ん? なに?」

    「アリさんよ!」


     指差す方向に導かれるまま、美咲も二人に倣い視線を下へ。立っている状態では日陰の黒い点々は少々見辛くて、視線を落とそうと二人の間にしゃがみ込んだ。
     こころの言った通り確かにそれはアリの行列以外の何物でもなかった訳で。何かを運んでいるわけでもない、なんの変哲もないただのアリの行列。


    「……え、これをずっと見てたの?」

    「そうよ!」

    「ただのアリさんの行列を?」

    「面白いよねー!」


     美咲は呆れたように眉を下げて小さく笑った。まあ、こころとはぐみらしいと言えばその通りではあるのだが。
     行列を見下ろす視線は三人分に増えた訳だが、相変わらず行列に変化はない。


    「みーくん、このアリさんたちどこから来たんだと思う?」

    「えー?」

    「お家はどこにあるのかな?」

    「ああ、それなら……ちょっと待って」


     美咲が取り出したのは、昼食に食べようとしていたおにぎりだった。包装していたラップを剥がすと、端の米粒をいくつか摘む。


    「見ててね」


     その米粒を、行列のすぐ傍に落とした。そのまま暫く眺めていると、程なくしてアリが米粒へと群がっていく。わぁ、という歓声じみた声が二人分上がった。
     アリは数匹掛かりで米粒を持ち上げる。


    「これで巣へ戻っていくはずだから、追いかければ家の場所が分かるよ」

    「みーくん、すごーい! アリさん博士だ!」

    「本当ね、すごいわ美咲!」


     別にそんな褒めるほどのもんではないけど。美咲が頬を掻く。


    「あ、ほら、動き始めたよ」


     じりじりじり。米を運び出すアリの行列の動きに合わせて、三人分の蹲った背中が横に少しずつ動いていく。
     側から見たら異様である光景を、他の生徒に混じって少し離れた所から見ていたのは、


    「……花音先輩。あそこにいる三人、ハロハピじゃないですか?」


     市ヶ谷有咲の指摘で視線を移し、眉を下げて微笑んだ松原花音だった。
     中庭内の注目をそこそこ集めてしまっていることに気付く様子もない三人の背中を眺めながら、花音の表情は楽しそうだ。


    「きっと、また何か楽しいことを見つけたんじゃないかな」

    「はぁ……、中庭の隅っこで?」


     首を傾げる有咲が、花音先輩は行かなくていいんですか、と尋ねる。
     花音は暫く考えてから、


    「うーん、私はあの三人を眺めてるのがなんだか楽しいから、今日はいいかな」


     その返答に有咲は首を傾げる。楽しいか? 少なくとも私は楽しくはない。ていうか本当に何をしているんだアイツらは。昼休み終わるぞ。
     有咲の心配は的中し、三人がやっと動き出したのは昼休みの終了を告げる予鈴が鳴り響いてからだった。弾かれたように立ち上がった三人が、慌てて昼食を食べて教室へと走っていく。


     数時間後、ハロハピのトークルームに一枚の画像が送られた。真夏日の木陰の中、蹲る三人分の背中。
     「見てたなら声掛けてくださいよ!」と顔を真っ赤にする美咲とくすくす笑う花音を余所に、こころとはぐみは嬉しそうに薫へとアリの行列の話を始めたのだった。
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