穏やかな日常の光 それは穏やかな日差しが心地よく眠気を誘う小春日和の午後だった。珍しいこともあるものだ、この人もやっぱり人間なんだなぁなどと思いながら富永は気配を押さえ、椅子に座ったままうたた寝をするKに近づいた。
昼の休診があけるまでまだしばらく猶予はある。起こすつもりは無いが、珍しさから立ち去れずについ近づいてしまった。綺麗な人だ。整った顔立ちは眠っていても当然損なわれること無く、むしろあどけなささえ感じられた。こんな風にまじまじとKの顔を観察したのは初めてかもしれない。 カーテン越しの柔らかな日差しでも影が出来るほど長い睫毛が不意に富永の胸をときめかせた。額に落ちた幾筋かの前髪を指先でそっと掻き分けて整える。そのわずかな刺激に当然Kは目を覚ました。
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