しんいちろうくんおたおめ。 夜になってもうだるような暑さで、世の中はやれ夏休みだのビアガーデンだのと楽し気で、毎日クーラーの利いた職場である事以外何の喜びも感じない、家との往復。
花火に興じているリア充を避けてシャッター商店街の近くを通りかかった日だった。
うぅ、とうめき声が聞こえてぴゃっと飛び上がった。オカルトの類は苦手だ。走って逃げようとした、が、もし何かしらの事情で動けない人間だったらという考えがかすめた。
聞こえなかったふりをしたい。でもここで家に帰って、転んだお年寄りが脱水症状で亡くなったなんて事件に発展すればオカルトどころか祟られかねない。
一目確認して、誰か倒れてたら警察を呼ぼう。
スマホを片手に声の方に近づくと、そこに倒れていたのは若い男だった。
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