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    saga1913

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    saga1913

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    【さまイチャ3展示作品】
    猫のような犬のような二頭身ケモ刻さんと子育てがひと区切りついた一郎くんの日常2
    ケモ刻さんのお召し替え編です。
    相変わらず世界観ガバ設定なので広い心で読んで頂けますと嬉しいです🙏

    #左馬一
    samaichi

    さまときとようふく 本日もブクロは晴天。空には雲ひとつ無く、絶好の洗濯日和だ。一郎はベランダで洗濯機から取り出したばかりの洗濯物を干していた。カゴにまとめた洗濯物を取り出してシワを伸ばし、手際よくベランダに吊していく。数分もたたないうちに洗濯カゴの中身は空になった。
     弟たちと暮らしていた頃は毎日、山のように洗濯物が出た。特に上の弟である二郎はサッカー部に所属しており、毎日の猛練習で練習着やタオルの替えはいくらあっても足りなかった。一日のうちに洗濯機を二度、三度と回すことも珍しくなかったが、それも弟たちが寮に入ってからというもの、めっきりと減ってしまった。一郎も萬屋の依頼で服を汚すことは少なくないが、それでもひとり分の洗濯物の量などたかが知れている。弟たちと暮らしていた頃は毎日のように働いていた洗濯機も、今では三日に一回くらいのペースに落ち着いていた。
     ふわり、と柔らかな風が吹き抜ける。まだ水気の残るパーカーが風に揺られ、柔軟剤の香りが鼻腔をくすぐる。ゆらゆらと気ままに揺さぶられる衣服を見渡しながら一郎はひとりごちた。

    「んー、やっぱ足らねえよな」
     
     一郎は、ベランダの一角を見やって思わず腕組みした。最も日当たりの良い場所に吊るされているのはビッグシルエットのパーカーでもデニムでもない、子どもサイズのシャツとパンツ。ドクロマークの描かれたシャツと手触りの良いブラックのスキニーパンツは一郎の悩ましげな表情を余所に、気持ちよさそうにゆらゆらと揺れ動いている。と、その時。

    「いちろー! おれさまのふく、しらねえか?」
    「おう。おはよ、左馬刻」
     
     舌っ足らずな声に振り返ると、着古したパーカーを纏った一郎の膝丈ほどにも届かない、ちいさないきものがこちらを見上げていた。一郎の新たな同居人である左馬刻だ。ぴんと立った三角耳の先っちょがぴこぴこと震えており、混じりけのない白銀のしっぽが心なしか逆立っているように見える。

    「お前の服なら、天気が良かったから洗濯しといたぞ?」

     どうかしたのだろうかと思いながらも、こてんと首をかしげながら柔らかな日差しが降り注ぐベランダの一角を指さすと、いきもの――左馬刻はまるでこの世の終わりのような顔をした。よろよろと洗濯物に近づいて手を伸ばすが、一郎の膝丈にも及ばない身長では当然届かない。しばらくぴょこぴょこと飛び跳ねていたが、諦めたのか代わりに恨みがましい目つきで一郎を見据えてくる。

    「左馬刻、どうしたんだよ……?」
    「……おれさまのいっちょうら」

     どうやら一郎が左馬刻の服を洗濯してしまったことがお気に召さなかったらしい。初めて出会ったときから着ていた服は左馬刻のお気に入りらしく、出掛ける時は必ずといって良いほど来て行きたがる。そういえば、昨日は左馬刻と近くの公園へ出掛ける予定だったのが、生憎の雨で取りやめたのだった。早朝から一張羅を着込んで準備していた左馬刻に申し訳なく思いつつも、中止を伝えたが案外すんなりと受け入れてくれた。雨が上がったら出掛けようと約束して、昨日は一郎が撮りだめていたアニメを鑑賞して(といっても左馬刻は一郎の膝の上ですっかり寝こけていたが)床についたのだが、今の左馬刻は外出が中止になったときよりもへそを曲げているように見えた。

    「わりィ、洗濯した方が良いかと思ったんだが……イヤだったか?」
    「せっかくのでーとなのに、かっこつかねえ……」
     
     ただの散歩をデート、表現する左馬刻に思わず頬が緩むが、はっとしてすぐに表情を引き締めた。左馬刻が寝間着として使っている着ざらしたパーカーは幼い頃の一郎が、そして二郎、三郎がお下がりとして袖を通したものだ。くたびれた部分は布を当てて補修しているが、それでも年期を感じさせてしまう。施設の子どもたちへ贈るにも忍びなく、かといって捨てるのも躊躇われた服らを左馬刻を引き取った際に、取り急ぎ着せていたものだが、なるほどたしかに折角出掛けるのに、着古した衣服では格好がつかないだろう。初めて出会った頃はかなり衰弱しており、家の中だけで生活していたのが、最近は左馬刻も体力が戻ってきたし、外出することも多くなるだろうし良いタイミングかもしれない。

    「うし、分かった。なあ左馬刻、少しだけ我慢できるか?」
    「いちろ……?」
    「服、買いに行くか。すげえ格好いいヤツ」





    「なるほどねえ。それでボクのトコに来てくれたんだ」
    「わりィ……お前も忙しいとは思ったンだけどよ。左馬刻の気に入る服がどうしても見つかんなくてよ」

     一郎と左馬刻の向かいに座るのは飴村乱数――一郎の旧友であり、ファッションブランド『Empty Candy』のプロデューサー兼デザイナーだ。あれから数件イケブクロの洋服店を回ったものの、左馬刻が気に入るような服を見つけることはできなかった。そもそも左馬刻の背丈で着られる服は乳幼児用のものしかないのだが、左馬刻が好むのは、セレクトショップに並ぶようなヴィンテージ品ばかり。そもそも足を踏み入れる店すら違っている始末だった。

    「俺は良いんじゃねえかと思ったンだけどな……くまさんパーカー……」
    「さっきからいってンだろ! おれはあんなガキくせえふく、きねえって!」
    「なるほどねえ」

     目立つ三角耳も隠せるからとフード付きのパーカーはどうかと提案したが、これ以上ないほどに頬を膨らませた左馬刻にぷいとそっぽを向かれてしまった。弱り果てた一郎が友人である乱数に連絡を取ったところ、ちょうど仕事を仕上げたところで時間があるからと誘われ、左馬刻の顔合わせもかねてシブヤにある乱数の事務所まで訪れたのだった。

    「そういえば挨拶がまだだったよね? ボクは乱数。飴村乱数。ラムダでいいよん」
    「……」
    「あれれ? 見かけによらず恥ずかしがり屋さんなのかな?」
     
     にっこりと笑いかけた乱数を胡散臭そうに一瞥すると、左馬刻はそのまま一郎の背中に隠れてしまった。

    「こーら、左馬刻」

     仕方なく一郎がたしなめると、ひょこりと顔だけ出していかにも仕方なく、と言わんばかりに口を開く。

    「……おれさまはさまときさまだ」
    「アッハハ! サマトキサマね。ヨロシク~」

     白い毛を逆立てて威嚇する左馬刻に気を悪くする様子もなく、きゃらきゃらと笑いながら乱数はポケットから棒付きキャンディを取り出した。ぺりぺりと包み紙を剥がし、飴玉を口の中で弄びながらソファから立ち上がると、仕事用のデスクの上を漁り始める。資料やらスケッチブックやらをかき分け、何かを探しているようだ。しばらくして「あ、これこれ」という声と共に戻ってきた乱数に差し出されたのは、メンズファッションのカタログだった。
     パラパラと紙面をめくってみると、一郎と同じくらいの年格好の青年たちが写っている。彼らが身に纏っているジャケットやコートは、ちょうど左馬刻が好むようなタイプで、いつの間にか一郎の背をよじ登ってきた左馬刻を横目で見やると、目を輝かせてカタログを食い入るように見つめている。しっぽが勢い良くぶんぶんと振られていて、どうやら気に入ったようだ。しかしカタログを見るに、左馬刻が着られるような大きさの服は見当たらない。

    「うーん……左馬刻も気に入ったみてえだが、このブランドも左馬刻くらいの大きさの服は作ってねえンじゃねえか?」
    「ふっふっふ~、実はそのブランド、まだ公にはしてないんだケド、今度ボクのトコとコラボすることになったんだよね! テーマはカワイイ×カッコイイのリンクコーデ! それで、カッコイイがウリのこっちのブランドではあえて子ども服をデザインしてみよう、って話になってね。試作品を何点か預かってるんだ! だからもし試着に協力してくれるなら、気に入ったもの買い取れるように話してあげる!」
    「マジか! 恩に着るぜ!」

     乱数の提案は一郎にとって渡りに船だった。左馬刻も興味を持ったようで、ふすふすと鼻を鳴らしている。

    「たーだーし! 一郎にも一肌脱いで貰うよっ」
     
     そんな一郎たちの様子に乱数は悪戯っぽく笑うと、ぴしりと人差し指を突きつけてきた。

    「あ? ああ………まあ、そりゃあタダとは言わねえが……どうすりゃいいんだ?」

     これまでの付き合いから乱数の一筋縄ではいかない性格を知り尽くしている一郎だったが、どんな突拍子もない要求をされるか、とっさに身構えてしまう。

    「ふっふっふ~、カンタンだよ! イチローには、ボクのブランドの服を試して欲しいんだ!」
    「俺が、乱数の……?」

     しかし、意外にも乱数からの要求はそれほど難しいものではなかった。思わずこてんと首をかしげる一郎だが、何故か乱数は上機嫌だ。

    「そ! 言ったでしょ? 今回はボクのブランドとのコラボだって! だーかーら、イチローにはボクのデザインした服を着て欲しいんだっ」
    「そりゃあ、俺で良いなら構わねえが……期待に応えられるとは限らねえぞ?」

     いちおう忠告のつもりでそう言うも、乱数は予想通りと言うべきか、気にした様子もない。上機嫌に「だいじょび、だいじょび~」とだけ言って、部屋の脇に追いやられた段ボールを押し付けるが早いが、ぐいぐいと試着スペースに押し込んでしまった。





    「ふう、すっかり遅くなっちまったな」
    「おれさまはらへった!」
    「そだな。今日はどっかで食ってくか」
     
     あれからあれよあれよといううちに、左馬刻ともども乱数の着せ替え人形にされてしまい、ようやく試着を終える頃にはとっぷりと日が暮れていた。片手で左馬刻を抱え、もう片方の手で持たされた大きな紙袋を持ち直す。

    「それにしても乱数のヤツ、随分持たせてくれたな」

     初めは左馬刻の服だけ買い取るつもりだったが、何故か一郎の分の服まで持たされてしまった。しかも一着や二着ではなく、一週間分はゆうにある量だ。そんなに大量に買えないからと辞する一郎に、乱数は折角のリンクコーデだからだとか、この服を着るならこっちも揃えた方がいいだとか矢継ぎ早に言って、しまいには金はいらないから持っていけと半ば強引に押し付けてきた。流石にそれは男が立たないという理由で断ったが、それでも乱数は相場の半分ほどしか受け取ってはくれなかった。乱数のマイペースには慣れっこのつもりだったが、それにしたって気前が良すぎないだろうか。

    「いーじゃねえか。くれるもんはもらっとけよ」

     未だに訝しむ一郎をよそに、左馬刻はというと乱数の事務所を出てからというもの、いつになく上機嫌だ。一郎の腕の中でしろいしっぽをぱたぱたと振っている。左馬刻の服装は出かけに着ていた着ざらしたパーカーではなく、真新しいデニムジャケットと黒いボトム。ちょうど一郎が着替えさせられたビックシルエットの黒いパーカーとデニムで揃いになっており、ご丁寧にネックレスなどのアクセサリーまでも統一されている。

    「んー……つっても、左馬刻はイヤじゃねえのか?」
     
     傍から見れば今の一郎と左馬刻は親子や兄弟に見えるのではないだろうか。いや、一郎と左馬刻の外見はまるっきり異なるのでそれはないか。しかし左馬刻の性格を考えるに、子ども扱いされることを嫌うと思っていたので、機嫌が良いのは少し意外だった。

    「なんでだよ。おれさまはいちろうのつがいなんだから、いやなわけねえだろ!」
    「ははっ、なんだそれ」

     そんな一郎の問いに返ってきたのは、相変わらずの決まり文句だった。もしかしたら左馬刻のいう「つがい」とは、家族のようなつながりを示しているのかもしれない。 

    「いちろう! てめえまたほんきにしてねえな! あのらむだってやつがいってたんだよ! ニンゲンのつがいはおなじふくきて『ケッコン』するんだろ!」
    「結婚ってお前なあ……俺が服着てる間にあいつと何話してンだよ……」
    「そんなの、おまえがおれさまのもんだってことにきまってんだろ!」
     
     先ほどまでの上機嫌はどこへやら、いつものようにぷりぷりと怒りだしてしまった左馬刻を宥めようとした時だった。

    「……くしゅんっ」
    「いちろう……?」
     
     春になったと言えど、夜はまだまだ肌寒い。びゅう、と冷たい風が吹き抜けて、ピアスの嵌まった耳が痛みにも似た冷えを告げると共に、思わず背筋がぶるりと震えた。そんな一郎の様子に腕に抱いていた左馬刻が心配そうに見上げてくる。

    「いちろう、さみぃのか?」
    「ああ、ちょっとな」

     早いところどこかの店で腰を下ろそうと周囲を見渡していると、急に腕をきゅっと握られた。みればだっこしていた左馬刻がコアラのように一郎の胸にひっついている。

    「さまとき?」
    「どうだ。あったけえだろ」

     ふふん、と得意そうになっている左馬刻の言うとおり、ひっつかれた所から左馬刻の体温がじんわりと伝わってくる。弟たちと離れて暮らすようになってから、すっかりと忘れていた自分以外のぬくもりに、完全に虚を突かれてしまった。しかし同時に触れたぬくもりは、まるで意思を持つかのように心の深いところに触れた気さえした。心なしか、腕に抱いたいきものの存在が確かになった気さえする。

    「……うん。あったけえ。ありがとな、左馬刻」
    「ふん、つがいをまもるのはあたりまえだろ」
     
     左馬刻を抱く手にほんの少しだけ力を込めると、一郎の気持ちを知ってか知らずか左馬刻は静かな声でそういった。

    「そうか。じゃあ頼りになる左馬刻に晩メシなに食うか決めて貰うかな」
    「! おれさまにくがいい!」
    「ははっ、よし、じゃあ今日は肉にするか!」
     
     その言葉に飛び跳ねんばかりに喜ぶ左馬刻を伴って、一郎はシブヤの街へ歩き出していった。
     


     後日、乱数から送られてきた雑誌で『今注目の親子コーデ』と紹介された記事を見つけた左馬刻が怒りの声を上げたのは別の話。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
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    saga1913

    DONE【さまイチャ3展示作品】
    せっかくの猫の日なので(?)リハビリに書いていたサマイチ短編をアップしました。猫のような犬のような二頭身ケモ刻さんと子育てがひと区切りついた一郎くんの日常。世界観ガバ設定なので広い心で読んで頂けますと嬉しいです🙏
    さまときとあさ 洗ったばかりの白いカーテンを引くと、雲ひとつ無い青空が広がっていた。目覚めは良好。音を立てないように気をつけながら、するりとベッドから抜け出す。太陽に暖められたフローリングを裸足のまま踏みしめると、じんわりとぬくもりが伝わってきた。キッチンの近くまで来ると、昨夜仕込んでおいたホームベーカリーから香ばしい香りが立ちのぼっていて、思わず笑みが溢れてしまう。

     冷蔵庫から貰い物のベーコンを取り出して熱したフライパンに滑らせると、やがてパチパチという音と共に透明な脂が染み出してきた。まだ赤みが残る部分を揚げるように火を通して、ホームベーカリーから取り出した焼きたてのパンの上に敷く。鼻歌を歌いながら脂を残したフライパンにタマゴを割り入れると双子の黄身が姿を見せた。こっちはあいつの分にしてやろうと、ベッドで眠っているだろう同居人を思い浮かべながら、出来上がった目玉焼きをベーコンを敷いたパンの上に乗せた。冷蔵庫にしまっておいたサラダと牛乳、そして少し迷ってから自家製のキャロットラペを盛り付けて、朝食は完成。
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    saga1913

    DONE開眼聞いて居ても立ってもいられなくなって書いたNB
    咲けよ徒花彼岸花「――助けてやろうか」

     ビル群に阻まれ四角く切り取られた夜空を見上げる。かろうじて覗く星々の輝きは人工の灯りに阻まれて朧気だ。地元の空も美しいとまでは言えなかったが、ここまで味気ないものではなかったはずだと柄にもなく郷愁に浸っていると、びゅうと一陣の風が吹き抜けた。視界の端で赤色の布がたなびく。

     繁華街の騒がしさを抜けた先にある高架下は不気味なほど静かだった。日中は工事をしていたらしく端材や重機が佇んだままで時折電車が線路を走る音はするものの、それ以外に人が近づくような気配はまったくない。隣に座る男から聞くに、イケブクロの街はお世辞にも治安が良いとは言えず、夜に出歩く人間は少ないらしい。きっかけは忘れたがこちらに来たばかりの頃、野宿をしようとしたところチンピラどもに絡まれたと話したことがある。よくも財布が無事だったとのたまうものだから、こいつで払ってやったのだと赤い布をたなびかせれば半ば呆れたように肩を竦めていたのだったか。思えば面倒を見ていたヤツを散々に叩きのめされて、怒りのまま拳を交えた相手と今やこうして肩を並べて戦っているのだから、人生とは分からないものだ。
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