ノータイトル・ラブファウンデーションとの戦闘終結後、アスランはオーブ、オノゴロ島に寄港するミレニアムにいた。人の精神に干渉するとされるアコードの兵と直接対峙した為、メディカルチェックとメンタルヘルスの検査を受けに訪れていたのだ。
本来は病院で精密検査を受けるところだが、あの戦闘の影響で軍病院は慌ただしく、比較的落ち着いているミレニアムの医療チームのところで検査を回された。そして先ほど検査は終わり結果が出るまでの間、そのままアスランはミレニアムに身を寄せる事となったのだ。
リモートではあるが、共に戦ったカガリも念のためアスランと同じように精密検査を受けるらしい。何事もなければいいがと案じている時、ふと視界に何かが掠める。
アスランは弾かれたようにその視界に捉えたものの後を追った。
「カガリ!」
通路の角を一つ曲がってその先に、先ほど検査を終えたのであろうカガリがそこにいた。珍しく供も付けずに。
「アスラン?」
まさかここで会うとも思っていなかったのだろう、カガリは驚いた表情でアスランを見る。画面越しでない所で二人が会うのは、ファウンデーションとの戦術会議以来だった。
久しぶりの二人だけの空間に、アスランはそのまま躊躇う事なくカガリを抱きしめる。
「ちょ・・・アスラン、」
お互い無事で生きている事を確かめるように、ぎゅうっと噛み締めるようにアスランはカガリを抱きしめる。最初は戸惑っていたカガリだったが、しょうがないなと満更でもない表情でアスランの背中に腕を回し、それに応えた。
「検査は?どうだった?」
「まださっき受けたばかりだよ、そんな早く結果
が出るわけないだろう?お前と同じタイミングで受けてるのに」
そう言ってふふっと笑うカガリに、元気そうな顔を見れてホッとする。
そうこう他愛もない話している内に、遠くからミレニアム乗員の声が聞こえてきた。
二人の時間はここまでだと言わんばかりに、カガリはアスランに預けていた身を離そうとする。離れようとするカガリに殆ど反射的にグッと腕に力を込めて、カガリの体を再度引き寄せた。戸惑う彼女を尻目に近くの扉のボタンを押し、そのままその扉の奥へとカガリを押し込める。
「ちょ、なんだよアスラン、急に」
後ろでシュンと扉の閉まる音がして、そのままアスランはすかさず扉をロックするボタンを押す。
困惑の声と僅かに非難するような声をあげるカガリに、少し面白くなくてアスランはそっぽ向いた。
(カガリは何で、あれだけで満足できるんだ…)
珍しい態度を取るアスランにカガリは顔を覗き込む。数秒沈黙して、漸くアスランは口を開いた。
「…もう少し、一緒に居たかっただけだ。悪いか」
少し拗ねたような声で心中を吐露したアスランに、カガリは虚を衝かれたように仰ぎ見る。
そうならそうと言ってくれれば良かったのにと、またクスクス笑うカガリにやっぱり面白くなくて。アスランはまたカガリを抱き寄せ、今度はその唇を塞いだ。
「んぅ、」
突然のキスにカガリは文字通り体を硬直させる。
二回、三回とその唇を豚めば顔を真っ赤にした彼 女がそこにいた。先程とは打って変わって、すっかり大人しくなったカガリに気を良くしたアスランは、形勢逆転となった状況に笑みを益す。
「急に何するんだ」
頬を染めてそう少しだけ怒るカガリに、嫌だっ たか?と敢えて答えに窮する問いかけを意地悪くたずねれば「お前、性格悪いぞ」と一睨みされる。
悪いと、本当にそう思っているのかという表情で謝罪を述べるアスランに、バカと軽く胸を叩いた。
そして、ふぅとカガリが一呼吸したと思えばグイッとネクタイを引っ張られ、油断していたアスランは前屈みになる。驚いている間に今度はカガリがアスランの唇に噛み付いた。
「ーーっ!」
「そう思ってるのがお前だけだと思うなよ」
すぐに離れてしまったそれに面食らい、少し恥ずかしそうに言い返すカガリを見て、アスランは盛大に長いため息をつく。完全に不意打ちだ。
何だよと剥れるカガリは、これを無意識にやってるのが本当にタチが悪い。
「なら、手加減なしだ」
そう言って再び抱き寄せたカガリにアスランは唇を寄せたのだった。