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    sinohara0s

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    sinohara0s

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    猫は人間には聞こえない声で鳴けると聞いたので
    ※謎の無黒風仲良し時空

    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/y_nya-nya-.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/nya-nya-.html

    サイレントニャーニャー 風息がひとりで相槌を打っていると思ったら、小黒が彼の膝に乗っていた。ふんふんと興味深そうに子猫に頷いている風息を後目にしながら、無限は風息の座るソファの斜め横にある食卓の席に腰かける。無限には風息の独り言としか思えないのだが、実は小黒も喋っているらしい。
     それを知ったのはつい最近のことで、それまでは無限は小黒を無視すると度々文句を言われていた。初めての時などもっと酷く、突然無限の脇腹にぶつかるように飛び込んできたと思えば、どうして自分を無視するのかと涙ながらに訴えられて無限は困惑するしかなかった。
     この世に生を受けて四百年に四半世紀を足してまだ足りない。それだけ生きれば耳の一つ衰えてもおかしくはないと思ったが、弟子以外の声を聞き逃してしまうこともないのだ。なぜよりによって小黒の声が聞こえないのか随分長い事悩んでいたのだが、どうやら猫の生態が関与しているらしい。
     猫は人間が聞き取れない音域の声を出すことができるとのことで、小黒は知らず知らずのうちにその音域で無限に喋りかけていたようだった。人間という種の限界の問題であって決して無限が悪いわけではなかったが、得も言われぬ罪悪感が湧き上がってケーキを用意してから説明の場を設けた。
     頬にクリームをつけたままきょとんとした小黒は音もなく黒猫の姿に戻る。それから舌で毛並みの上に残ったクリームを拭って、あくびめいた口の動かし方をした。それから本当に聞こえないの、と今度は無限に分かるよう不思議そうに口にしたのだった。
     本当に聞こえないと無限が答えると、元からどんぐりのような眼をまん丸にして酷く驚いたらしい。ぴんと伸ばした尾の先端をすぐにくにゃくにゃと曲げながら、小黒はしばらく無限に聞こえる音と聞こえない音を織り交ぜながら確かめるように鳴いていた。
     風息には猫の音域が聞こえると分かったのは、それからしばらく経ってからだった。居間で電話をしているのかと思って後ろから覗き込んだところ、きょとんとした小黒と目が合った。それから何事かと見上げてくるソファの風息を見て、ようやく彼が野生の獣でもあることを思い出して合点がいった。
     それからというもの、彼らはたまにお互いにしか聞こえない声で話をする。単なる雑談なのかもしれないが時々混じる空気をくすぐるような風息の笑い方から、ふたりにとってちょっとした特別な時間となっているのは無限にも分かった。
    「ふたりは何の話を?」
     とはいえ、彼らがいつもどんな話をしているか気にならないというと嘘になる。無限の前で堂々と判然としない話を繰り広げるふたりに問いかけると、ぱちんと瞬きを一つして視線がこちらに注がれた。それから小黒が風息を見上げて、ふわりとあくびのように口を動かす。それを見届けた風息の口元がゆるりと緩む。
    「内緒!」
     それからふたりが人好きする一方で、いたずらっぽい調子も混ぜ込んだ笑みを浮かべて揃って無限に言い放つ。きっと大事な話をしているなんてことはなくて、小黒は風息とだけの秘密の交歓ができるのが楽しいのだろう。風息は風息で非日常めいた行為を楽しむ小黒が可愛らしくて付き合っているはずだ。
    「人間を疎外しようとする悪い妖精がいるようだ」
    「おっと、館に報告を上げる前の自己判断に基づく緊急性のない執行は不当行為だぞ」
     それでも二人から仲間外れにされた疎外感は否めず椅子から立ち上がりながら大げさに言えば、愉快そうに風息が煽ってくる。どちらも本気でないのは分かっているらしく、小黒は風息の膝の上で双方を窺うことにしたようだった。
     どうしてくれようか少々考えて、友好の証しと言えば抱擁だと一人で勝手に結論づける。ふたりを取り逃がさないようにイメージしながら腕まくりをすると、不穏な気配を察したのか小黒に手を添えて風息が退避の姿勢に移ろうとした。そんな彼を小黒ごと取り押さえようと無限は早急に距離を詰めながら、無限は大きく腕を広げる。
     突然の無限の動きに判断が遅れたらしく、ふたりは簡単に無限の腕の中に納められてしまった。無限の意図に直前になって気づいたらしい風息の驚愕の表情を思い出してからからと笑う声が、主に風息の引き起こす騒ぎに飲み込まれる。
     やっぱり私にも聞こえた方が嬉しいよ、と余韻が残ったふわふわした声でふたりに伝えたが、果たしてちゃんと聞き遂げられたかは今は神のみぞ知るである。
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    sinohara0s

    DONE春節无风です クリスマスでも黒髪だったけど今回も黒髪黑で離島のみんなも元気にしてるので、何も起きなかったというか過去の龍游で交渉が上手くいった世界線なのかな……みたいな幻覚に振り回されているのですが皆さん如何お過ごしでしょうか
    年齢制限ありのワンシーンお題募集してコスプレっていただいたのですが、めちゃくちゃ健全な話になってしまいました。すみません……

    サイト格納済みです。
    まね「すまない、小黒は外に出てしまっていて」
     春節の夜、小黒は風息達の下で過ごすのが慣例化していた。昼までに各々顔見知りとの挨拶を済ませて、夕方頃に風息が無限と小黒の拠点に顔を出す。それから小黒を連れてふたりが出て行って、翌朝戻って来るまでは無限も新年会に参加するのが通例だ。
    「そっか。早く来すぎたかな」
    「いや、そろそろ頃合いだろう。呼び戻そうか」
     無限の分の土産だとビニール袋を手渡しながら特に気にした様子もない風息が部屋に上がり込む。その背中に視線をやりつつ提案してみたが、んん、と風息は気のない声を上げるだけだった。
    「友達と遊んでるんだろ。もうちょっと後でいいよ。それにあんたとちょっと話してくるって言っておいたから、多少遅くなっても大丈夫だし」
    1831

    sinohara0s

    REHABILI猫は人間には聞こえない声で鳴けると聞いたので
    ※謎の無黒風仲良し時空

    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/y_nya-nya-.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/nya-nya-.html
    サイレントニャーニャー 風息がひとりで相槌を打っていると思ったら、小黒が彼の膝に乗っていた。ふんふんと興味深そうに子猫に頷いている風息を後目にしながら、無限は風息の座るソファの斜め横にある食卓の席に腰かける。無限には風息の独り言としか思えないのだが、実は小黒も喋っているらしい。
     それを知ったのはつい最近のことで、それまでは無限は小黒を無視すると度々文句を言われていた。初めての時などもっと酷く、突然無限の脇腹にぶつかるように飛び込んできたと思えば、どうして自分を無視するのかと涙ながらに訴えられて無限は困惑するしかなかった。
     この世に生を受けて四百年に四半世紀を足してまだ足りない。それだけ生きれば耳の一つ衰えてもおかしくはないと思ったが、弟子以外の声を聞き逃してしまうこともないのだ。なぜよりによって小黒の声が聞こえないのか随分長い事悩んでいたのだが、どうやら猫の生態が関与しているらしい。
    1811

    sinohara0s

    DONE風息が受け取ってきた誰かが諦めた未来への希望について 長い時間をかけて和解して腐れ縁化している風息と無限

    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/y_hana.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/hana.html
    夢見る花 ひとが諦めた時に零れる祈りは花束に似ている。そう無限に告げた時、風息はもう相当に彼を信用してしまっていたのだろう。
     そういう瞬間に多く立ち会ってきた。むせかえるように香るものや、色鮮やかにきらめくもの。からからに乾きながらもまだ姿を保とうとするもの、茎から腐り行きつつあるもの。まだ世界を知らぬままの花開く前の淡い蕾。
     そのたびに、風息は彼らが描く未来の姿を受け取ってきた。その一瞬、最後の力を込めて形にするそれらを抱き留めて、いつかその世界を己の眼に納めようと彼らに風息は誓ったのだ。数々の祈りが自身の判断に影響を与えた自覚はもちろん風息にもあったが、後悔などしていない。
     脈絡なく始めてしまった風息の話を無限は黙って聞いていた。風息が言いたいことを言い切って口を噤んでしばらく静寂を拵えてから、それは本来分かち合うべきものだろうと無限は口にする。
    1988

    sinohara0s

    DONEこれから初夜を迎えるぞというタイミングの风无♀(風無♀)書きました。
    ※无女体化及び无の昔の男の話題あり
    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/y_kizu.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/kizu.html
    傷と夜 色恋に身を投じるのは久方ぶりだと躊躇う無限に合わせて、少しずつ関係を進めて来たと思う。窺うように彼女に触れて、体が強張るようであれば無理にはしないようにした。その甲斐あってか風息に抱き留められて深く口づけられても、無限は風息に心身を委ねてくれている。
    「無限、あんたを抱きたい」
     できるだけ誠実に響くように意識して無限にねだったが、どうしても底にある欲望は隠せなかったように思う。口づけに予兆を察していたらしい無限は、風息の願いに驚いた様子は見せなかった。
    「私の体はそう見栄えがいいものではないよ。武人として長く生きてきた。その歳月に相応の見目になっている」
    「それくらい分かってるつもりだ」
     ゆるりと目を伏せた無限への返事が不機嫌に響いてしまっても仕方がなかっただろう。無限がどれほどの力を持つ強者であるか、彼女と戦った風息が知らぬはずがない。彼女が体得したすべては連綿と続く鍛錬と実戦の積み重ねの上に成立しており、となれば然るべき傷も残されていて当然だ。
    7142

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    sinohara0s

    DONEこれから初夜を迎えるぞというタイミングの风无♀(風無♀)書きました。
    ※无女体化及び无の昔の男の話題あり
    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/y_kizu.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/kizu.html
    傷と夜 色恋に身を投じるのは久方ぶりだと躊躇う無限に合わせて、少しずつ関係を進めて来たと思う。窺うように彼女に触れて、体が強張るようであれば無理にはしないようにした。その甲斐あってか風息に抱き留められて深く口づけられても、無限は風息に心身を委ねてくれている。
    「無限、あんたを抱きたい」
     できるだけ誠実に響くように意識して無限にねだったが、どうしても底にある欲望は隠せなかったように思う。口づけに予兆を察していたらしい無限は、風息の願いに驚いた様子は見せなかった。
    「私の体はそう見栄えがいいものではないよ。武人として長く生きてきた。その歳月に相応の見目になっている」
    「それくらい分かってるつもりだ」
     ゆるりと目を伏せた無限への返事が不機嫌に響いてしまっても仕方がなかっただろう。無限がどれほどの力を持つ強者であるか、彼女と戦った風息が知らぬはずがない。彼女が体得したすべては連綿と続く鍛錬と実戦の積み重ねの上に成立しており、となれば然るべき傷も残されていて当然だ。
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