Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    sinohara0s

    @sinohara0s

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    sinohara0s

    ☆quiet follow

    風息が受け取ってきた誰かが諦めた未来への希望について 長い時間をかけて和解して腐れ縁化している風息と無限

    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/y_hana.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/hana.html

    夢見る花 ひとが諦めた時に零れる祈りは花束に似ている。そう無限に告げた時、風息はもう相当に彼を信用してしまっていたのだろう。
     そういう瞬間に多く立ち会ってきた。むせかえるように香るものや、色鮮やかにきらめくもの。からからに乾きながらもまだ姿を保とうとするもの、茎から腐り行きつつあるもの。まだ世界を知らぬままの花開く前の淡い蕾。
     そのたびに、風息は彼らが描く未来の姿を受け取ってきた。その一瞬、最後の力を込めて形にするそれらを抱き留めて、いつかその世界を己の眼に納めようと彼らに風息は誓ったのだ。数々の祈りが自身の判断に影響を与えた自覚はもちろん風息にもあったが、後悔などしていない。
     脈絡なく始めてしまった風息の話を無限は黙って聞いていた。風息が言いたいことを言い切って口を噤んでしばらく静寂を拵えてから、それは本来分かち合うべきものだろうと無限は口にする。
     なんとなく彼が何を言うか、無限が口を開く前から分かっていた。風息にだって分かっていることだったし、そう無限が思わないはずがない。本当なら無限の言葉の通りにするべきなのだ。ひとつひとつは片手で持てるものでも、数が増えていけばいつ押し潰されるかも分からない代物になる。
     自身の負担になり得るものでもあり、だからこそ無限も一人で持つものではないと言っているのだ。彼の主張は至極真っ当で、風息ごときの話術では無限の意見を変えられそうにはない。
     それでも渡したくないのだと、風息は無限と同じくらい時間をかけてから伝えることにした。無限の言いたいことは分かるし、きっとそうした方がいいのだとも分かってはいる。自分が渡してもいいと思う相手がいるのなら、そうすることが未来に繋がるのかもしれない。
     それでも風息はただ、願いがそこにあることを誰かが知っていればいいと思う。受け取ったのは他ならぬ風息なのだから、無断で誰かに渡すのは無責任と言うものだ。
     その一人がお前なのだとはさすがに言わないでおいたが、今となっては言ってしまっても良かったのかもしれないとも思う。あの日の夜明けに風息が抱える願いのひとかけらはすでに詳らかにしてしまったようなものだったのだから。
     風息の表明を聞いた無限は色々言いたそうな顔をしながらしばらく考えて、肩くらいならいつでも貸そうとだけ風息に告げた。自身の体が重く感じることがあれば、支えることくらいはできるから。まるでそういう瞬間がきっと訪れると確信した響きが不愉快ではあったが、彼は龍游での出来事を思い出していたのだろう。
     付き合いが長くなるうちに、無限の言う通りにしてしまったこともあった。ひょっとしたら無限は風息が願いさえすれば、風息を背負って歩いてくれたかもしれない。今の風息でさえさすがにごめんこうむりたかったが、彼は平気でそういうことをする男だ。
     もしもこれからの自分が気がつかないうちに解けた花弁を落としてしまうようなことがあって、その場に無限が居合わせたなら。そのひとかけらくらい懐に潜ませるのを許してやってもいいと思う。たとえ自分が彼の近くからいなくなったとしても、時折風息に託された未来の色を確かめながら進んでほしい。
     そう思えてしまうくらいには、彼との縁も長くなってしまった。知らないと言ってしまうにはあまりにも共に在りすぎたが、たくさんを知っているかというとそうでもない。知人と称するには因縁が深すぎるし、もはや冗談くらいでしか宿敵なんて呼べやしない。
     関係を形容する事すら難しい彼が花束を作る時、それがどんな姿をしているのかがふと気になる瞬間がある。きっとそれを手渡す相手は風息ではなく、今や引く手数多となった彼の自慢の弟子になるのだろうが、猫ひとりに持たせるには随分大物になりそうだ。
     彼がかつて言った通り小黒がひとりで背負う羽目にならないよう、手分けをしてもいいだろう。もし、小黒がひとりで持っていきたいと言うのであれば、無限が風息にしたように肩を貸してやれるようにすればいい。
     そんなところまで考えて、風息はいつももしもの部分を否定してしまう。風息は無限ほどに諦めの悪い男を見たことがない。どれだけ手酷い失敗をしても、求めた結末に辿り着けなかったとしても、翌日にはまたすぐ面を上げて前を見つめている。彼はそういう人間だった。
     けれどもし、もしもそんな日が来るのなら。きっとそれは真っ白で、清廉な形をしているだろう。数が少ない代わりに一つ一つが大振りで、切り離された直後の瑞々しさをいつまでも保ち続けるに違いない。
     誰にも真意を捉えられない癖に、誰もがすぐ分かったような気持ちにさせられてしまう。彼の夢はきっとそういうものなのだろう。そのやけに分かりやすい姿に思いを馳せながら、この目で見る日が来ないに越したことはないと風息は思考を断ち切った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    sinohara0s

    DONE春節无风です クリスマスでも黒髪だったけど今回も黒髪黑で離島のみんなも元気にしてるので、何も起きなかったというか過去の龍游で交渉が上手くいった世界線なのかな……みたいな幻覚に振り回されているのですが皆さん如何お過ごしでしょうか
    年齢制限ありのワンシーンお題募集してコスプレっていただいたのですが、めちゃくちゃ健全な話になってしまいました。すみません……

    サイト格納済みです。
    まね「すまない、小黒は外に出てしまっていて」
     春節の夜、小黒は風息達の下で過ごすのが慣例化していた。昼までに各々顔見知りとの挨拶を済ませて、夕方頃に風息が無限と小黒の拠点に顔を出す。それから小黒を連れてふたりが出て行って、翌朝戻って来るまでは無限も新年会に参加するのが通例だ。
    「そっか。早く来すぎたかな」
    「いや、そろそろ頃合いだろう。呼び戻そうか」
     無限の分の土産だとビニール袋を手渡しながら特に気にした様子もない風息が部屋に上がり込む。その背中に視線をやりつつ提案してみたが、んん、と風息は気のない声を上げるだけだった。
    「友達と遊んでるんだろ。もうちょっと後でいいよ。それにあんたとちょっと話してくるって言っておいたから、多少遅くなっても大丈夫だし」
    1831

    sinohara0s

    REHABILI猫は人間には聞こえない声で鳴けると聞いたので
    ※謎の無黒風仲良し時空

    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/y_nya-nya-.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/nya-nya-.html
    サイレントニャーニャー 風息がひとりで相槌を打っていると思ったら、小黒が彼の膝に乗っていた。ふんふんと興味深そうに子猫に頷いている風息を後目にしながら、無限は風息の座るソファの斜め横にある食卓の席に腰かける。無限には風息の独り言としか思えないのだが、実は小黒も喋っているらしい。
     それを知ったのはつい最近のことで、それまでは無限は小黒を無視すると度々文句を言われていた。初めての時などもっと酷く、突然無限の脇腹にぶつかるように飛び込んできたと思えば、どうして自分を無視するのかと涙ながらに訴えられて無限は困惑するしかなかった。
     この世に生を受けて四百年に四半世紀を足してまだ足りない。それだけ生きれば耳の一つ衰えてもおかしくはないと思ったが、弟子以外の声を聞き逃してしまうこともないのだ。なぜよりによって小黒の声が聞こえないのか随分長い事悩んでいたのだが、どうやら猫の生態が関与しているらしい。
    1811

    sinohara0s

    DONE風息が受け取ってきた誰かが諦めた未来への希望について 長い時間をかけて和解して腐れ縁化している風息と無限

    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/y_hana.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/hana.html
    夢見る花 ひとが諦めた時に零れる祈りは花束に似ている。そう無限に告げた時、風息はもう相当に彼を信用してしまっていたのだろう。
     そういう瞬間に多く立ち会ってきた。むせかえるように香るものや、色鮮やかにきらめくもの。からからに乾きながらもまだ姿を保とうとするもの、茎から腐り行きつつあるもの。まだ世界を知らぬままの花開く前の淡い蕾。
     そのたびに、風息は彼らが描く未来の姿を受け取ってきた。その一瞬、最後の力を込めて形にするそれらを抱き留めて、いつかその世界を己の眼に納めようと彼らに風息は誓ったのだ。数々の祈りが自身の判断に影響を与えた自覚はもちろん風息にもあったが、後悔などしていない。
     脈絡なく始めてしまった風息の話を無限は黙って聞いていた。風息が言いたいことを言い切って口を噤んでしばらく静寂を拵えてから、それは本来分かち合うべきものだろうと無限は口にする。
    1988

    sinohara0s

    DONEこれから初夜を迎えるぞというタイミングの风无♀(風無♀)書きました。
    ※无女体化及び无の昔の男の話題あり
    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/y_kizu.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/kizu.html
    傷と夜 色恋に身を投じるのは久方ぶりだと躊躇う無限に合わせて、少しずつ関係を進めて来たと思う。窺うように彼女に触れて、体が強張るようであれば無理にはしないようにした。その甲斐あってか風息に抱き留められて深く口づけられても、無限は風息に心身を委ねてくれている。
    「無限、あんたを抱きたい」
     できるだけ誠実に響くように意識して無限にねだったが、どうしても底にある欲望は隠せなかったように思う。口づけに予兆を察していたらしい無限は、風息の願いに驚いた様子は見せなかった。
    「私の体はそう見栄えがいいものではないよ。武人として長く生きてきた。その歳月に相応の見目になっている」
    「それくらい分かってるつもりだ」
     ゆるりと目を伏せた無限への返事が不機嫌に響いてしまっても仕方がなかっただろう。無限がどれほどの力を持つ強者であるか、彼女と戦った風息が知らぬはずがない。彼女が体得したすべては連綿と続く鍛錬と実戦の積み重ねの上に成立しており、となれば然るべき傷も残されていて当然だ。
    7142

    recommended works

    sinohara0s

    DONEこれから初夜を迎えるぞというタイミングの风无♀(風無♀)書きました。
    ※无女体化及び无の昔の男の話題あり
    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/y_kizu.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/kizu.html
    傷と夜 色恋に身を投じるのは久方ぶりだと躊躇う無限に合わせて、少しずつ関係を進めて来たと思う。窺うように彼女に触れて、体が強張るようであれば無理にはしないようにした。その甲斐あってか風息に抱き留められて深く口づけられても、無限は風息に心身を委ねてくれている。
    「無限、あんたを抱きたい」
     できるだけ誠実に響くように意識して無限にねだったが、どうしても底にある欲望は隠せなかったように思う。口づけに予兆を察していたらしい無限は、風息の願いに驚いた様子は見せなかった。
    「私の体はそう見栄えがいいものではないよ。武人として長く生きてきた。その歳月に相応の見目になっている」
    「それくらい分かってるつもりだ」
     ゆるりと目を伏せた無限への返事が不機嫌に響いてしまっても仕方がなかっただろう。無限がどれほどの力を持つ強者であるか、彼女と戦った風息が知らぬはずがない。彼女が体得したすべては連綿と続く鍛錬と実戦の積み重ねの上に成立しており、となれば然るべき傷も残されていて当然だ。
    7142