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    sinohara0s

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    sinohara0s

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    これから初夜を迎えるぞというタイミングの风无♀(風無♀)書きました。
    ※无女体化及び无の昔の男の話題あり
    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/y_kizu.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/fm/kizu.html

    #风无♀

    傷と夜 色恋に身を投じるのは久方ぶりだと躊躇う無限に合わせて、少しずつ関係を進めて来たと思う。窺うように彼女に触れて、体が強張るようであれば無理にはしないようにした。その甲斐あってか風息に抱き留められて深く口づけられても、無限は風息に心身を委ねてくれている。
    「無限、あんたを抱きたい」
     できるだけ誠実に響くように意識して無限にねだったが、どうしても底にある欲望は隠せなかったように思う。口づけに予兆を察していたらしい無限は、風息の願いに驚いた様子は見せなかった。
    「私の体はそう見栄えがいいものではないよ。武人として長く生きてきた。その歳月に相応の見目になっている」
    「それくらい分かってるつもりだ」
     ゆるりと目を伏せた無限への返事が不機嫌に響いてしまっても仕方がなかっただろう。無限がどれほどの力を持つ強者であるか、彼女と戦った風息が知らぬはずがない。彼女が体得したすべては連綿と続く鍛錬と実戦の積み重ねの上に成立しており、となれば然るべき傷も残されていて当然だ。
     それに、風息は美しい女が抱きたいわけではない。確かに無限は見目麗しい顔立ちをしているし、風息だってその評価に異論はなかった。無限は美しい女だ。その美貌に価値があることくらいは分かっている。
     腰より下までまっすぐに伸ばされた深い紺の髪も、藍染の染料を混ぜ込んだような虹彩も、すれ違う程度の僅かな時間でも人の目を惹ける代物だ。
     顔の作りは派手ではないが、端正に作り上げられているのが一目で分かる。鍛えられた四肢は安定して落ち着いた所作を生み、無限という人間を上等な存在に仕立て上げていた。
     その美しさから無限を求めた者は多かっただろう。けれど、風息が無限を求める理由はもはやそこにはなくなってしまっていた。風息は美しい女ではなく、無限だからこそ欲しいと思うのだ。その体に傷があったところで、何の問題があるだろう。
    「分かっているのと、実際に見るのでは違うだろう。見たらそういう気持ちもなくなるかもしれない。たとえそうなったとしても構わないから、無理はしないでほしい」
    「……他の男がそうだった?」
    「うん、そうだった」
     色事から離れてしまった理由の一つでもある、と無限は淡々と口にする。その傷の多さに無限が歩んできた道の険しさを思い、それどころではなくなってしまうらしい。誰かに何の憂いもなく愛されることのできる体ではもはやないのだと痛感した彼女が誰も選ばなくなって、どれだけの時間が過ぎたのだろう。
     女を支配することに執心するのではなく、深く触れ合うために彼女を暴こうとする男だったのだろう。だからこそ、無限に刻まれた傷跡に強く動揺してしまった。無限が選んだ相手がそういう気質の持ち主であったことは彼女をいたく傷つけたのだろうが、同時に幸運であったようにも思える。
    「優しい男と縁があったんだな。比べられるのは正直癪だけど」
     とはいえ、前の相手と同じだの違うだの考えられるのはいささか気分がよろしくない。最後に少々語気を歪めて告げると、無限が口元を柔らかくした。
    「なんだよ」
    「私が愛した人を否定されなかったのが意外と嬉しくて」
     するりと抱き着いてきた無限に尋ねると、彼女は柔らかい口調で風息に答える。うまくいかない事もあったけれど、それでも好きな相手だったのだ、と確かめるように彼女は告げた。この物言いだと、喧嘩別れではなかったのかもしれない。
     もう死んでいるかもしれない男に対して行き場のない嫉妬を抱きながら、風息は緩んだ無限の頬をひっつかむ。むにゅりと柔らかな頬を引いてやると、くすくすと笑った無限が風息の手の甲を自らの手で覆った。頬を掴むのを止めて頬に手の平を当てると、無限が僅かに顔を手の平に傾けてくる。
    「あなたも優しいひとだから、私を見て傷つかないか心配してる」
     やはり風息と誰かを比較しているらしい物言いに、治まりかかった嫉妬心が疼くの無視しようとする。肝要は言葉の向こう側にいる誰かではなく、無限の懸念なのだと自身に言い聞かせた。
     愛する人をより深く知る過程で自分が傷つく可能性があるのなら、風息は傷つくべきなのではないかと思う。かつての男がそうだったように自分も彼女に対峙して、それでも傍にいられる道を模索していきたかった。
    「俺がそれで傷つくなら、きっと必要な傷なんだと思う」
    「……分かった」
     しばらく逡巡した気配を見せた後、無限が静かに頷いた。それからボタンのない服に手をかけようとして、俄かに視線を天井に向ける。彼女の視線の先には煌々と室内を照らす照明があった。
    「気になるか?」
    「さすがに少し」
     ソファから腰を上げようとする無限の腕を掴んで制止すると、無限が説明を求める視線だけを寄こす。咄嗟に手を伸ばしてしまっただけで、正直なところ説明に堪えるような動機もない。こんな話をしているときに無限が自分から離れてしまうのが嫌だっただけと告げるのも癪で、風息は少々難儀しながら理由らしい理由を探し出す。
    「俺は夜目が利くから消したところで別段変わらないけど」
    「それはなんだかずるいね」
     む、と声を上げてから上げかけていた腰を下ろした無限に不満を表明されて、風息は思わず苦笑してしまう。無限もそこらの人間よりはずっと暗所に強いようだったが、風息のような夜間も動ける生き物を基にした妖精には劣るようだった。
     一方的に見られるのは癪だと思ったらしい無限は少々間を置いてから観念したようで、もぞりと服を脱ぎ始めた。最初に肩口が露になり、腕に無数の傷が走っているのに目が行った。普段から巻きつけている金属が外されて、その下にもいくらか引きつれた傷の痕があるのが窺える。
     それから下に視線を移すと、絞られた肉体に衝撃を殺すための脂肪がうっすらと乗っている下腹が見えた。日光に晒されない白い皮膚の上に、戦闘による傷とその治療のためにできたと思われる傷が混在している。腕よりは数は少ないが、それでも何度か危ない状況に陥っただろうことくらいは風息にだって判断がついた。
     無限が完全に服を脱ぎ捨てると、繊細な刺繍が施された下着が視界に入る。なんとなく彼女が装飾のあるものを好むのが意外だったが、着飾るのは苦手ではないようだったので下着も同じなのかもしれない。それから視線を上げて行き、淡い色の下着と鎖骨の間に深い傷跡があるのが見えて自身の心臓が大きく跳ねた。
     あと一歩踏み込まれていれば。ほんの少し無限の回避が遅れていれば、その刃は胸骨を潜り抜けて心臓に届いていたかもしれない。いや、腹の傷だって致命的な臓器を傷つけられていればきっと死んでいたはずだ。
     風息の前に晒されているのは、そういう死線を越えてきた体だった。彼女の人生が戦場と共にあると知ってはいた。かつてのように戦争と呼ばれるようなものに身を投じなくなっても、無限は執行人として戦い続けている。風息とも刃を合わせ、死の一歩手前まで追い込まれたことだってあった。
     そういう女だと、知っていたはずだ。けれど無限が案じた通り、自分は知っていただけに過ぎなかったのかもしれない。
    「きつい?」
    「……ああ」
     風息の反応を予期していただろう無限が落ち着いた声音で風息に問いかけてくる。幾度も傷つけられ、死地をさまよっただろう彼女を思いながら風息は頷いた。否定しようと思えばできただろうが、嘘を吐いたところでどうなる話でもない。
     それから無限が返事をする前に彼女に手を伸ばして抱き締める。無限が抵抗しないのを確かめてから、腕の力を強めて身を摺り寄せた。
     何度か抱き締めたことのある体だ。腕から伝わる感触や、匂い立つ女性特有の微かな甘い香りも記憶している。けれど今は表面的な部分に留まらず、傷だらけの皮膚の下に潜む一つ一つを拾い上げようと意識した。
     規則正しく心臓が脈動し、血液を送り出して彼女の体を温めている。緩やかに肺が収縮を繰り返し、かすかな吐息が風息の鼓膜を擽った。
     生きている音と温度に風息は目を細めて、無限の胸を潰しながら彼女の体を更に抱きこんだ。風息の求めに応じるように風息の頭に無限の額が寄せられて、くしゃりと髪が触れ合わされる。風息の傍にありたいと、そう願っているようだった。
     生きている。ここまで生きてくれて、今確かに風息の前にいる。この女がここにいるのは奇跡の賜物に他ならないと、風息はもう分かっている。
     無限は恐ろしいほど強い。ほとんど空間を掌握していたはずの風息ですら、二度目の好機は訪れなかった。それほどの女であるが、それでも彼女がここにいるのは奇跡なのだ。
     たとえば、あの時小黒が間に合わなければ風息は無限を殺していたはずだった。そうでなくてもいつ、どの瞬間に無限が命を落としていたか分からない。一歩間違えれば無限はきっと風息の前に現れることもなかったのだと、ただ運がよかっただけに過ぎないと、無数の傷跡が風息に教えてくれている。
     脇腹の大きな傷、腕の皮膚が引きつれた部分、風息の目の前にある胸元の傷。もう少し傷が深ければ、衛生状態が悪ければ、致命傷となりえたかもしれない。縋るように指を背に這わせると、無限が頬ずりをしてくれたのが分かった。強張りそうになる精神を緩めてくれるのが、無限その人である幸運を風息は噛みしめる。
    「あんたが今、生きてくれていて嬉しい。ありがとう」
     人間という脆弱な体で、本来なら百年と生きられない命でここまで来てくれた。ただそれが嬉しかった。
    「体を見せて礼を言われるのは初めてだな」
     頬を摺り寄せながら告げられた言葉に無限が笑って、風息の胴に腕を回す。服を緩く引きながら抱き返してくれる重みに、風息は堪らず腕の力を強めた。一つ一つの仕草に宿る生存の証が愛おしくて仕方がないのに、上手く伝えられそうにないのが少し歯痒くもある。
     背にいくつかある傷跡を指先でなぞりながら、自分がつけた傷は残っているのだろうかと考える。たしか、龍游支部には治癒が行える妖精がいるはずだから、相当のことがない限りは綺麗さっぱり治っているのかもしれない。今となってはありがたいような、少しだけ惜しいような気持ちになる現金な思考回路に思わず苦笑してしまう。
    「あの時、あんたを殺せてなくてよかった。もちろん、勝てなくてよかったって話じゃないけどさ」
    「わがままだね。二つに一つだったでしょう」
    「それはそうだけど」
     まるで小黒に言い聞かせるように諭されて、緩く唇を尖らせながら風息は無限を閉じ込める腕を緩める。二人の間にできた隙間から彼女の顔を窺って、なめらかなかんばせに違和感を覚えてまじまじと見つめてしまった。
     綺麗な顔だった。作りが良いという話ではなく、傷らしい傷痕が見つからない。傷だらけだった体とは正反対の様相に困惑しながら、風息は無限の頬を撫で上げる。軽い化粧は施しているようだったが、その下に何かが隠されているようにはどうしても思えなかった。
    「どうかした?」
    「いや、顔に傷がないのが不思議で」
     戦闘において、顔への攻撃はそれなりに優先順位が高いはずだ。比較的狙いにくい場所ではあるものの、ダメージを与えられれば重篤な状況に相手を陥れることができる。
     それなのに、無限の顔には瞼を切られた痕も見当たらなかった。彼女が戦場を駆けた歳月を思えば、それが作為的なものの結果ではないかとすら思えてしまう。
    「ああ、そっちの方が私を負かしたときに都合がよかったんだろう」
    「都合がいい?」
     うん、と無限が頷くのを見ながら、風息は緩く首を傾げて考え込む。顔に傷がないと都合が良い、と言われて初めに思い浮かんだのは個人の判定が簡単だということだった。
     彼女の名は昔も通っていただろうし、彼女を打ち倒すことができれば相応の武勲を立てられただろう。その証明のためには、遺体の識別はできる程度の損傷に留める必要が出てくる。とはいえ、ここまで執拗に回避する必要はないだろうと、風息は一つ目の考えを棄却した。
     二つ目の可能性をなかなか見つけられないまま、風息はじっと無限の顔を観察する。綺麗な作りをしていると、今更ながらに強く意識してしまった。風息の好みの問題だけではなく、一般的にも彼女は佳人と称される。美しい女なのだ。おそらくそれは今も昔も変わらない評価だったのではないだろうか。
     戦場にそんな女がいるのだから、さぞや栄えたことだろう。そう思いを巡らせた瞬間、風息は思わず俯いて無限から視線を外してしまった。突然の風息の反応に無限が意図を問おうとしているのが分かるが、上手く返事ができそうにないまま瞼を落とす。
     無限は戦場において女としても価値を見出されていたのかもしれない。確かめるように心の内で唱えると、ふわふわとしていた気持ちがすとんと落ちたのが分かった。本来なら真冬でも平気なはずの指先がきしりと冷たさを伝えて来る。
     うまく彼女を無力化できれば、この体を好きにできるのだ。組み敷いた女の顔は美しいにこしたことはない。おそらくそういうことだろう。男達が性的暴行に及ぼうとした理由は単純な欲望であったり、同士を殺められた復讐心であったりしたのかもしれない。
     無限が敗北を期したことはあったのだろうか。不合意で彼女が組み伏せられる姿を想像して、いたかも分からない相手への敵意が込み上げる。彼女が選び、合意の上で過ごした相手ならともかく、蹂躙された可能性を意識して平然としていられるはずがない。
    「今、最低なこと考えてる」
    「多分それで合っていると思う」
     自分が下卑た発想を持ち合わせてしまっただけだと思いたいと眉間に力を入れてながら唸るのに、無限が平然と風息を肯定する。負けた事があるのかとはどうしても訊けずに、風息は再び開きかけた唇を結局噤むしかなかった。
     そんな目に遭っていれば命はないようにも思えるが、それは彼女が何も知らない一兵卒だった場合に限るのかもしれない。相応の立場にあったのなら、情報を引き出すために捕縛対象とされることもあるだろう。その場合、暴力をともなう筆舌に尽くしがたい責めを受けたかもしれなかった。
     黙り込む風息を気にしたのか口を開こうとした無限を風息は慌てて強く抱き寄せて黙らせる。それでもふ、と呼気をふるわせて風息を呼ぼうとするので、後頭部に手を当てて引き寄せて風息の肩口に彼女の顔を押し付けてしまう。
     それでようやく風息の意図を察したらしく、今度は無限が背中に手を回してくる。とんとんとあやすように背を叩く手の平のためにも、風息は深く息を吐き出しながらちくちくと痛みを訴える精神を落ち着けようとした。
     一度肺の中の空気を押し出し切ってから、長々と落としてしまっていた瞼を持ち上げる。無限の肩越しに見える背中には、他とはまた違った特徴を持つ傷跡が散見された。鋭い刃によるものではない外傷が多かったのか、治り方の経過も悪かったらしい。痣のように痕が残ってしまっている場所に触れると、無限が気にしたようで僅かに身じろぎする。
     傷だらけの女だと思う。見えるものも、もはや見えなくなってしまったものも、そもそも見えないものだってあるだろう。それでも戦い続け、今もなおそうあり続けようとする。そういう生き方しかできないのか、そう生きることが望みなのか。風息には判断がつかなかった。
     無限は風息にとって分からない女でもあった。どうして館に助力するのかも分からなかったし、今ですら投げ捨ててしまえばいいと思う瞬間がある。同族の何倍もの時を生き、血の繋がりがある者が生き残っているのかも分からない。そういう孤独を歩み、なお彼女はその生に疲れ果てていない。
     尋ねれば無限はもったいぶらずに風息に教えてはくれるが、風息が彼女の思考を理解できるかは全別の問題だ。同意できることもあれば、どうしてその結論に至るのかさっぱり分からない時もあった。知れば知るほど分からないことも増えて、今のように知ることが怖くなる瞬間もある。
     だから、こんなにも惹かれるのかもしれない。
    「抱きたい」
    「無理しなくてもいい」
    「いや、大丈夫。俺がそうしたいんだ」
     風息の枷を押し返した無限が気づかわしげに眉を顰める。何をもってして大丈夫なのかいまいち分からないままに、無限が頬に触れてくれる心地よさにゆっくりと瞬きをした。それから無限の手を覆って、やはり時間をかけて握り込む。
    「あんたを抱かせてほしい。頼む」
     己の性欲や征服欲といったものとは別のところにある何かが、無限に触れたいと訴えている。彼女に触れて、今までよりずっと近くにありたいと求めている。そうすれば、もっと無限を知ることができるなんて、幻想めいた予感がそこにはあった。
     風息の痛切さの混じる懇願を聞いて、無限は風息を一度引きはがした。それから意図を推し量ろうとするように風息の瞳を覗き込む。その真剣な視線に瞬きも抑え込まれてしまい、風息は無限の鉄色の虹彩を見つめ返すことしかできなかった。
    「うん、分かった。好きにしていいよ。風息」
     最後にわずかに瞼を伏せて目を細めた無限は体を風息に預けながら腕を背に回し、風息に自身へより近づく許可を出してくれた。気恥ずかしさが勝るのかこのままではいい加減寒くなってきたし、なんて少し笑って見せる彼女の腕に触れると確かに表面がひやりとしている。その体を少しでも温めたくて、ひとまず風息からも無限に擦り寄って彼女の額に口づけを落とした。
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    sinohara0s

    DONE春節无风です クリスマスでも黒髪だったけど今回も黒髪黑で離島のみんなも元気にしてるので、何も起きなかったというか過去の龍游で交渉が上手くいった世界線なのかな……みたいな幻覚に振り回されているのですが皆さん如何お過ごしでしょうか
    年齢制限ありのワンシーンお題募集してコスプレっていただいたのですが、めちゃくちゃ健全な話になってしまいました。すみません……

    サイト格納済みです。
    まね「すまない、小黒は外に出てしまっていて」
     春節の夜、小黒は風息達の下で過ごすのが慣例化していた。昼までに各々顔見知りとの挨拶を済ませて、夕方頃に風息が無限と小黒の拠点に顔を出す。それから小黒を連れてふたりが出て行って、翌朝戻って来るまでは無限も新年会に参加するのが通例だ。
    「そっか。早く来すぎたかな」
    「いや、そろそろ頃合いだろう。呼び戻そうか」
     無限の分の土産だとビニール袋を手渡しながら特に気にした様子もない風息が部屋に上がり込む。その背中に視線をやりつつ提案してみたが、んん、と風息は気のない声を上げるだけだった。
    「友達と遊んでるんだろ。もうちょっと後でいいよ。それにあんたとちょっと話してくるって言っておいたから、多少遅くなっても大丈夫だし」
    1831

    sinohara0s

    REHABILI猫は人間には聞こえない声で鳴けると聞いたので
    ※謎の無黒風仲良し時空

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    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/y_nya-nya-.html
    縦書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/nya-nya-.html
    サイレントニャーニャー 風息がひとりで相槌を打っていると思ったら、小黒が彼の膝に乗っていた。ふんふんと興味深そうに子猫に頷いている風息を後目にしながら、無限は風息の座るソファの斜め横にある食卓の席に腰かける。無限には風息の独り言としか思えないのだが、実は小黒も喋っているらしい。
     それを知ったのはつい最近のことで、それまでは無限は小黒を無視すると度々文句を言われていた。初めての時などもっと酷く、突然無限の脇腹にぶつかるように飛び込んできたと思えば、どうして自分を無視するのかと涙ながらに訴えられて無限は困惑するしかなかった。
     この世に生を受けて四百年に四半世紀を足してまだ足りない。それだけ生きれば耳の一つ衰えてもおかしくはないと思ったが、弟子以外の声を聞き逃してしまうこともないのだ。なぜよりによって小黒の声が聞こえないのか随分長い事悩んでいたのだが、どうやら猫の生態が関与しているらしい。
    1811

    sinohara0s

    DONE風息が受け取ってきた誰かが諦めた未来への希望について 長い時間をかけて和解して腐れ縁化している風息と無限

    サイト格納済みです。読みやすい方でお読みください。
    横書き:http://mpmp.rakusaba.jp/rinzi/text/lxh/none/y_hana.html
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    夢見る花 ひとが諦めた時に零れる祈りは花束に似ている。そう無限に告げた時、風息はもう相当に彼を信用してしまっていたのだろう。
     そういう瞬間に多く立ち会ってきた。むせかえるように香るものや、色鮮やかにきらめくもの。からからに乾きながらもまだ姿を保とうとするもの、茎から腐り行きつつあるもの。まだ世界を知らぬままの花開く前の淡い蕾。
     そのたびに、風息は彼らが描く未来の姿を受け取ってきた。その一瞬、最後の力を込めて形にするそれらを抱き留めて、いつかその世界を己の眼に納めようと彼らに風息は誓ったのだ。数々の祈りが自身の判断に影響を与えた自覚はもちろん風息にもあったが、後悔などしていない。
     脈絡なく始めてしまった風息の話を無限は黙って聞いていた。風息が言いたいことを言い切って口を噤んでしばらく静寂を拵えてから、それは本来分かち合うべきものだろうと無限は口にする。
    1988

    sinohara0s

    DONEこれから初夜を迎えるぞというタイミングの风无♀(風無♀)書きました。
    ※无女体化及び无の昔の男の話題あり
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    傷と夜 色恋に身を投じるのは久方ぶりだと躊躇う無限に合わせて、少しずつ関係を進めて来たと思う。窺うように彼女に触れて、体が強張るようであれば無理にはしないようにした。その甲斐あってか風息に抱き留められて深く口づけられても、無限は風息に心身を委ねてくれている。
    「無限、あんたを抱きたい」
     できるだけ誠実に響くように意識して無限にねだったが、どうしても底にある欲望は隠せなかったように思う。口づけに予兆を察していたらしい無限は、風息の願いに驚いた様子は見せなかった。
    「私の体はそう見栄えがいいものではないよ。武人として長く生きてきた。その歳月に相応の見目になっている」
    「それくらい分かってるつもりだ」
     ゆるりと目を伏せた無限への返事が不機嫌に響いてしまっても仕方がなかっただろう。無限がどれほどの力を持つ強者であるか、彼女と戦った風息が知らぬはずがない。彼女が体得したすべては連綿と続く鍛錬と実戦の積み重ねの上に成立しており、となれば然るべき傷も残されていて当然だ。
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