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    ミトコンドリア

    @MtKnDlA
    捻じ曲がった性癖を供養するだけの場所です

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    POIPOI 28

    『殉教』

    家康軍に囚われたクランの民が👹について語ってるだけ

    お前たちにはわかるまい ヘッ、仔理の手先共が揃ってぞろぞろと、五月蠅えったらねぇナァ。蟻ぢゃあるめぇし。そんなお偉ェ鎧なんぞ着込んぢまって、御立派に太刀なんぞ提げていやがる。なんでェ、ソリャ、竹光かい?ッヘ、へ、そんなに怒りなさんなよ旦那。 俺ァな、アンタのその御自慢の御刀が、彼の方にひとッつも傷を付けられなかっ たのをしっかとこの両の眼で見てンだ。無様だったなア、彼の方の御羽織すら斬れねぇで。グルグルグルグル、手前ェの尾っぽ追っかけてる犬みてぇに。情けねェったら!ハハ。
     …マア、聞いてくれよ。あすこはな、桃源郷なンだよ、俺たちの好きなものを食えて、好きな所に住めて、好きな着物を着れたンだ。俺のカカは柳町の、 吹けば飛ぶような小見世の遊女でな。俺ァ四つのときに、まだ生まれたばっかりの妹とドブ川に棄てられて、それでもなんとか生きてたンだ。盗みも、殺しもやったよ。お天道様に顔向け出来ねぇようなことは全部やった。…そんな顔してくれるなよ。でなきゃ、死ンでた!ホラ、見えるだろ お役人様に捕まる度に、焼火箸を当てられんだ。これが八つのとき、金をスったのがバレちまったンだ。んで、これが…十一ンときだな。食うモンがねぇんで猫を攫ったンだが、それがどっかの長屋の大家の猫でな。ハハ、酷ェ目に遭ったよ。…マ、そんな風に生きてたンだな。俺たちゃ。妹も十二のときから辻に立ってな、…春を鬻いでた。俺ァ自分が情けなくって、毎晩妹に謝ってたよ。 兄貴なのになア、御免なアってな。でも、妹は、十四で死んだ。酔っ払いの男に酷く殴られて、身体中痣で真っ青ンなって…身包み剥がされて死んでた。 飛び抜けて 美人じゃァねェが、可愛い子だったんだよ。笑うとなァ、ここんとこ、右の頬べたにひとつエクボができて、ソリャア可愛かった。 その日はな、運良くちょっとばかし御銭が手に入ったから、俺は、妹にかんざしを、買ってやろうとしたンだ。危ねェから、今日は辻には立つなって言い付けてな。 二百文の安物のかんざしを握って帰って来た俺を待ってたのは、唾吐きかけられて転がされた妹の骸だったんだよ。……俺は妹をゴザで包んで、冷たい、固い身体を抱いてジッと朝が来るのを待ってた。夢だと思ったンだよ。物凄く悪い夢。でも、日が高くなっても妹は動かなかった。痣がドス黒くなってきて、腕も足もダランとして黄色くなって……。俺、どうしてだか泣けなくて、それが悲しくって、ドブ川まで妹を引き摺って行って、水ン中に自分の頭ァ突っ込んで、無理矢理泣いたンだ。涙と鼻水と、なんだかよくわからんモンを色々ダラダラ流して、もう死んじまおうと思ったんだ。このまま妹を抱いて、ドブ川に身投げしちまおうってな。……そンときだよ、彼の方が現れたのは。向こう岸に立ってたンだ。 上等の白い着物を着て、肩にこれも上等の黒い羽織をかけてな。…み、水の上を歩いて、 俺たちの方まで来たんだ。ゆっくり、ゆっくり。俺は、俺はお迎えが来たと思った。糞みてェな人生の最期に、神さんか、仏さんが遣わして下すったんだと思った。だ、だって、彼の方は、彼の方は、お、俺の汚ねぇ顔を撫でて、地べたに跪いて、妹を抱きしめて、な、泣い、泣いたんだ。金色の、お天道様みたいな目から、ポロポロ涙をこぼしてさ。棒切れ同然の、金の無い、身寄りの無いガキの死ぬとこなんざ誰も、心痛めたりしねェのに、彼の方は、泣いたんだよ。着物が汚れンのも気にしねェでさ。は、蝿だって集って来てンだぜ。臭いも、酷いし、青くて赤くて黒くて、見れたモンじゃねェのに。ずっと、ずっと、俺たちを抱いて泣いてたンだ。そのあと、俺は眠っちまって、気づいたら彼の方の屋敷に寝かされてた。俺ァ手前ェの目を疑ったね。骨と皮ばかりの人間なんざひとりもいなかったし、破れた着物を着てる人間なんざひとりもいなかったし、暗い穴ぼこみてェな目をしてる人間なんざひとりもいなかった。明るくて、穏やかで、豊かで、鳴呼俺ァ今、極楽浄土にいるンだなと思った。でなきゃおかしいものなァ。呆気に取られてる俺のとこに、粥やら白湯やらをニコニコして持ってくるンだ。辛かったろう、安心してお休み。なんて言うんだ。木綿の、綺麗なべべ着せられてさ。身体もまっさらに洗われてて。…しばらくして、彼の方が来た。片腕に綺麗な娘を抱えて……妹だった。痣が紅と白粉で上手に隠してあって、錦織の着物を着て、金襴緞子の帯締めて。髪も洗って結ってあって、鼈甲だの、珊瑚だの、蒔絵だののかんざしやら櫛やらで飾られて。きっと、どこの国のどんなお姫様より綺麗だったよ。彼の方は俺の手を引いて、野菊の咲いてる綺麗な丘まで連れてって、その天辺にふたりで穴を掘って、ちゃんと 白木の棺も拵えてあった、そこに、妹を埋めたンだ。俺はそこで初めて、心から泣いた。妹が死んだのがどうしようもなく悲しくって、おいおい泣いた。…人ならざる者?旦那、野暮言っちゃいけねェよお。ソリャそうだ。だって、人間があんなに優しいわけねェもの。人間があんなに綺麗に泣けるわけねェもの。馬鹿だなア。彼の方はな、神様なんだよ。俺を、妹を、人間扱いして くれたのは、彼の方が初めてなんだよ。だからな、旦那。俺ァ、なにがあっても、彼の方がなにであっても、共に生きて、共に死ぬって決めてるンだ。彼の方は存外寂しがりだから、俺如きでも、話し相手がいないといけねェンだ。 ……彼の方の名? 知らねェよ。俺たちの足りない舌じゃ上手く呼んで差し上げられん。それぢゃあな、旦那。俺は死んでも彼の方への恩を忘れねェし、死んでもアンタたちへの怨みを忘れねェよ。

     男は、隠し持っていた小刀で自分の首を掻き切った。驚愕している兵士の後ろに立つ、最愛の主に微笑みながら。

    「俺の名はヴォックス・アクマ」

    「覚えて死ね」
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    Replies from the creator

    ミトコンドリア

    DONE『義人はいない。ひとりもいない』

    職人の👹が✒️にハイヒールを作る話
    You are my, この頃は、男でもハイヒールを履く時代である。
     18世紀、ルイ王朝時代にハイヒールは高貴なる特権の象徴として王侯貴族に広く好まれた。舗装された路を歩き、召使いに全てを任せ安楽椅子に座る権利を誇示するために。今ではそれは、美というある種暴力的な特権を表すためのものになっている。
     ヴォックス・アクマはそのレガリアを作る職人のひとりであった。彼の作るハイヒー ルは華美と繊細を極め、履いて死ねば天国にゆけるとまで謳われる逸品。しかし彼が楽園へのチケットを渡すのは彼に気に入られた人間のみであり、それは本当に、幾万の星の中からあの日、あの時に見たひとつを探し出すよりよっぽど難しいことであった。

     いつものように空がマダラに曇った日、ヴォックスは日課の散歩に出ていた。やっぱり煙草は戸外の空気(そんなに綺麗なもんじゃないが)の中で吸った方が美味いもので。 数ヶ月の間試行錯誤している新作がどうにも物足りずにむしゃくしゃしていて、少し遠くの公園まで足を伸ばした。特にこれと言って見所は無いが、白い小径と方々に咲き乱れる野花の目に優しい場所である。
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    ミトコンドリア

    DONE『お前が隣に居る日々を』

    🦊が👹から逃げる話
    ミスタ・リアスの逃亡/帰還「エッ」

     ヴォックス・アクマは心の底から驚いて言った。昨日の夜中にたしかに腕に抱いて眠ったはずの恋人が、朝日が昇るのと同時に忽然と姿を消していたのである。 びっくりした猫ちゃんみたいな顔のまま空っぽのスペースをしばらくジッと見つめ、ノソノソベッドから降りた。脱ぎ散らかした服を適当に洗濯機に突っ込んで、早足で家中を回る。ベランダにもトイレにもミスタの姿はなく、ヴォックスは右手にティーカップを 持ってリビングのソファにドッカリ座り、なんとなくテレビを付けて、ついでに煙草にも火をつけてキャスターが滑舌良く話すのをぼうっと聞き流した。
     こういうことは前にもあった。朝起きたらミスタがいなくて、ほとんど半狂乱で探し回っていたら当の本人がビニール袋を引っ提げてケロッと帰ってきたのだ。起こすかメモくらい残せと詰め寄ったが、「疲れてると思って」「忘れてた」とかわゆく謝られたもんだから うっかり美味しい朝食を拵えてしまった。他にも小さい喧嘩をしてプチ家出を決め込んだりだとか、漫画だかゲームだかの発売日だったりだとか、マアしばしば あることだった。それでもこうして毎回律儀に驚いてしまうから、ヴォックスからすれば釈然としないこと ではあるのだが。
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