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    ミトコンドリア

    @MtKnDlA
    捻じ曲がった性癖を供養するだけの場所です

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    ミトコンドリア

    DONE『義人はいない。ひとりもいない』

    職人の👹が✒️にハイヒールを作る話
    You are my, この頃は、男でもハイヒールを履く時代である。
     18世紀、ルイ王朝時代にハイヒールは高貴なる特権の象徴として王侯貴族に広く好まれた。舗装された路を歩き、召使いに全てを任せ安楽椅子に座る権利を誇示するために。今ではそれは、美というある種暴力的な特権を表すためのものになっている。
     ヴォックス・アクマはそのレガリアを作る職人のひとりであった。彼の作るハイヒー ルは華美と繊細を極め、履いて死ねば天国にゆけるとまで謳われる逸品。しかし彼が楽園へのチケットを渡すのは彼に気に入られた人間のみであり、それは本当に、幾万の星の中からあの日、あの時に見たひとつを探し出すよりよっぽど難しいことであった。

     いつものように空がマダラに曇った日、ヴォックスは日課の散歩に出ていた。やっぱり煙草は戸外の空気(そんなに綺麗なもんじゃないが)の中で吸った方が美味いもので。 数ヶ月の間試行錯誤している新作がどうにも物足りずにむしゃくしゃしていて、少し遠くの公園まで足を伸ばした。特にこれと言って見所は無いが、白い小径と方々に咲き乱れる野花の目に優しい場所である。
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    ミトコンドリア

    DONE『お前が隣に居る日々を』

    🦊が👹から逃げる話
    ミスタ・リアスの逃亡/帰還「エッ」

     ヴォックス・アクマは心の底から驚いて言った。昨日の夜中にたしかに腕に抱いて眠ったはずの恋人が、朝日が昇るのと同時に忽然と姿を消していたのである。 びっくりした猫ちゃんみたいな顔のまま空っぽのスペースをしばらくジッと見つめ、ノソノソベッドから降りた。脱ぎ散らかした服を適当に洗濯機に突っ込んで、早足で家中を回る。ベランダにもトイレにもミスタの姿はなく、ヴォックスは右手にティーカップを 持ってリビングのソファにドッカリ座り、なんとなくテレビを付けて、ついでに煙草にも火をつけてキャスターが滑舌良く話すのをぼうっと聞き流した。
     こういうことは前にもあった。朝起きたらミスタがいなくて、ほとんど半狂乱で探し回っていたら当の本人がビニール袋を引っ提げてケロッと帰ってきたのだ。起こすかメモくらい残せと詰め寄ったが、「疲れてると思って」「忘れてた」とかわゆく謝られたもんだから うっかり美味しい朝食を拵えてしまった。他にも小さい喧嘩をしてプチ家出を決め込んだりだとか、漫画だかゲームだかの発売日だったりだとか、マアしばしば あることだった。それでもこうして毎回律儀に驚いてしまうから、ヴォックスからすれば釈然としないこと ではあるのだが。
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    ミトコンドリア

    DONE『かくのみにありけるものを君も吾も千歳の如く頼みたりけり』

    相互の誕生日に捧げた👹🦊
    ▓隠し 待ちに待った夏祭りの日だってのに熱が出て、ミスタはひとり布団の中で不満げにグスグス鼻を啜っていた。
     昼には38度近かった熱も日が落ちるにつれて和らぎ、暇を持て余してウゴウゴと暴れる。少しダルい感じはあるが動けないほどではなかったので、夕食を持ってきたお手伝いの老婆に行ってもいいか訊いたのだが、案の定宥めすかされて畳の上に逆戻りである。
     壁掛け時計の針の音が畳に落ちる。ボーーン…と間延びした渦巻きリンの鈍い音が午前2時を告げた。全ての生き物が眠るこの時間を丑三つ時というのだと、ミスタは3歳のときに病気で死んだ祖父に教えられて知っていた。
     パチッと目を開けて、庭に面した障子をゆっくり開ける。冷たい沓脱石に縁側の下に隠しておいた草履を履いた足の裏をペタリとつけて、十数えた。それで誰も起きてこないのを確認してからミスタは勢いよく走り出した。裏の勝手口から猛然と家を出て、田舎のだだっ広い畦道を突き進む。真夏の生ぬるい風が火照った頰を撫でた。高い空に幾万の星がチカチカしている。蛙と虫の鳴く声を置き去りにして、珍しい鬼を祀っている神社の長い石段を駆け上がった。人々の喧騒と馬鹿囃子が近くなる。
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    ミトコンドリア

    DONE『運命より、愛をこめて』

    記憶なし転生スラム街育ちショタ🦊が闇オークションで👹に買われて最終的にハピエンになる話
    The Words for You ミスタは自分の目を疑った。
     テーブルや椅子が倒されていない。脚も折れていない。灰皿も無けりゃマリファナも酒瓶も無い。ダッドがミスタの頭をよく打ち付けている煉瓦のカタマリも無い。どう贔屓目に見ても肉の詰まったズタ袋にしか見えないダッドは、戸惑うミスタの手を優しく引いた。昨日までいつものダッドだったのに、おかしい。気持ち悪い。
     ミスタは元々血色の悪い顔をさらに青くさせて、ひとつしかない椅子に怖々浅く腰掛けた。椅子に座るのは初めてだった。ママが生きてた頃、ミスタがほんのくにゃくにゃの赤ちゃんだった頃はいつもママに抱かれていたし、ママがジャンキーに殺されてからはダッドはミスタを自分の子どもどころかそもそも人間だとすら思っていなかったので、椅子に座る・食器を使うなどの人間的な/文明的な行為は許されていなかった。(その所為で足に変なクセがついてしまってうまく閉じられない)だから足が地面につかないのが落ち着かなくて、真新しい青い痣のあるコメカミに汗をかきながら、不安そうに細っこい両足を絡めていた。テーブルの端のまるい煙草の焦げ跡が、ダッドの肉に埋もれた小さい黄金虫みたいな目のようだった。
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    ミトコンドリア

    DONE『心臓の場所が違っただけだった』

    政略結婚して信じられないくらいすれ違う👹🦊(※バドエン)
    鶯は梅に帰らない ア、無理だ。
     遠くを見つめてミスタはスコンと表情を落っことした。その青い視線の先にいるのはひとりの女。彼の夫たるヴォックス・アクマの、数えて三人目の妻になる女である。濡羽色の髪と瞳の美しい人…。
     くるりと踵を返して、部屋まで早足で戻る。苛烈なまでに叩き込まれた礼儀作法と少しの理性でなんとか走ることはしなかったが、それでも脚に絡みつく朱色の着物の裾が バサバサ揺れるのが煩わしかった。裸足の足裏に汗が滲み、板張りの廊下によく滑る。襖を震える手で締めて、ペタンと畳に膝を折った。毒を太い注射針で流し込まれているように脳の奥がジクジク痛んだ。もう駄目だ。
     ミスタとヴォックスの結婚は、いわゆる政略結婚だった。ミスタの父親は出世のためにアクマ家の歴史が、ヴォックスは一族の再興のためリアス家の資金力が欲しかった。しかし、リアス家にはヴォックスと釣り合う年齢の娘はいない。ヴォックスはただリアス家の人間との縁故があればいい。それが男であり、跡継ぎを産めないミスタがヴォックスに嫁いだ理由だ。至極簡単かつありふれた話である。が、アクマ家は、資金という最後のピースを得てヴォックスの悪魔的な手腕によって、この五年足らずで大きく成長した。…三年前にはすでにリアス家の助力を必要としない程度には。なれば、形ばかりの男の嫁など邪魔くさいばかりだ。
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    ミトコンドリア

    DONE『殉教』

    家康軍に囚われたクランの民が👹について語ってるだけ
    お前たちにはわかるまい ヘッ、仔理の手先共が揃ってぞろぞろと、五月蠅えったらねぇナァ。蟻ぢゃあるめぇし。そんなお偉ェ鎧なんぞ着込んぢまって、御立派に太刀なんぞ提げていやがる。なんでェ、ソリャ、竹光かい?ッヘ、へ、そんなに怒りなさんなよ旦那。 俺ァな、アンタのその御自慢の御刀が、彼の方にひとッつも傷を付けられなかっ たのをしっかとこの両の眼で見てンだ。無様だったなア、彼の方の御羽織すら斬れねぇで。グルグルグルグル、手前ェの尾っぽ追っかけてる犬みてぇに。情けねェったら!ハハ。
     …マア、聞いてくれよ。あすこはな、桃源郷なンだよ、俺たちの好きなものを食えて、好きな所に住めて、好きな着物を着れたンだ。俺のカカは柳町の、 吹けば飛ぶような小見世の遊女でな。俺ァ四つのときに、まだ生まれたばっかりの妹とドブ川に棄てられて、それでもなんとか生きてたンだ。盗みも、殺しもやったよ。お天道様に顔向け出来ねぇようなことは全部やった。…そんな顔してくれるなよ。でなきゃ、死ンでた!ホラ、見えるだろ お役人様に捕まる度に、焼火箸を当てられんだ。これが八つのとき、金をスったのがバレちまったンだ。んで、これが…十一ンときだな。食うモンがねぇんで猫を攫ったンだが、それがどっかの長屋の大家の猫でな。ハハ、酷ェ目に遭ったよ。…マ、そんな風に生きてたンだな。俺たちゃ。妹も十二のときから辻に立ってな、…春を鬻いでた。俺ァ自分が情けなくって、毎晩妹に謝ってたよ。 兄貴なのになア、御免なアってな。でも、妹は、十四で死んだ。酔っ払いの男に酷く殴られて、身体中痣で真っ青ンなって…身包み剥がされて死んでた。 飛び抜けて 美人じゃァねェが、可愛い子だったんだよ。笑うとなァ、ここんとこ、右の頬べたにひとつエクボができて、ソリャア可愛かった。 その日はな、運良くちょっとばかし御銭が手に入ったから、俺は、妹にかんざしを、買ってやろうとしたンだ。危ねェから、今日は辻には立つなって言い付けてな。 二百文の安物のかんざしを握って帰って来た俺を待ってたのは、唾吐きかけられて転がされた妹の骸だったんだよ。……俺は妹をゴザで包んで、冷たい、固い身体を抱いてジッと朝が来るのを待ってた。夢だと思ったンだよ。物凄く悪い夢。でも、日が高くなっても妹は動かなかった。痣がドス黒くなってきて、腕も足もダランとして黄色くなって……。俺、どうしてだか泣けなくて、それが悲しくっ
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