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    SONOKO

    @84e5bBV3to90zYt
    降志が好きです。
    個人的な好みが強い特殊設定のものはポイピクを使ってみようと試行錯誤中。

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    POIPOI 24

    SONOKO

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    パレット用に書いていたのですが、とあるワードだけうまくいかず、また、なんとなくすっきりとしなかったので没にしていたお話。
    1104の日にちゃっかり供養します。
    既に季節が過ぎ去りました。あとひたすらイチャイチャしているだけの話です。

    真夏のサンセット――博士がね、慌ててテレビを消したのよ。何かしら?って見たら、あの有名な鮫の映画だったの。
    今度子供たちと海に行くから、怖いんですって。
    でも後で見たいからと言って録画はするのよ。
    博士ってば、いい年しておかしいわよね。


    そんな、なんてことのない世間話だった。
    「そうか、もうそんな時期だな」
    慌ただしい社会に生きていると、季節が過ぎるのが早いのだろう。降谷は志保との会話で、今が海水浴シーズンだということを思い出したようだった。
    「――僕たちも行かないか?」
    「え?」
    「海」


    * * * * *


    どこまでも続くマリンブルーの水平線。たくさん足跡のある白い砂浜。いつもより広い空と入道雲。潮の香り。咲き乱れるパラソル。
    「さすが最盛期。平日でもすごい人ね」
    まるで芋を洗うよう。海水浴場はいつもこうなのだろうか。友人たちで来ていたり、家族で来ていたり。恋人同士も多い。
    子供の姿の頃なら安易に遠出したものだが、大人になると移動時間もネックになる。特に普段から忙しい人と一緒だと。
    都内から気軽に車で来られるこの場所は、多くの人が集うホットスポットなのだろう。
    「確かにね」
    隣に座る降谷が相づちをうつ。
    あちこちに浮かれた笑い声がこだまして、波の音をかき消している。
    海は開放的な気分になるものだ。だが一方で志保は身体を小さく縮こませる。水着なので当然肌を露出しているのだが、やはり恥ずかしい。好きな男性の前なら尚更。
    お節介な友人たちに選んでもらったビキニ。背伸びしたつもりはないものの、隣の彼と並んでも見劣りしないよう、できるだけ大人っぽいデザインにした。
    友人たちはとっても似合ってるよと言ってくれたけれども、いきなり自信を持てるはずもなく。志保は自分の膝を抱き締める。これなら胸元もお腹周りもあまり見えないはず。
    パラソルの下は日陰になっているが、夏の空気はむあっとしている。まさに熱風だ。涼しいわけではないし、日焼け対策もしているけれど、一応バスタオルを肩に羽織る。
    志保は海を楽しむ人たちをぼんやりと見回した。と言うか、本当は彼の方をあまり見られなかったのが本音だ。
    彼も水着なので、その肉体を惜しげもなく太陽の下にさらけ出している。彼女だって何度かは見たことはあるけれど。それでも目のやり場に困る。
    見た目はいい男だから、多くの観光客の視線を集めていることもわかっている。それでも、意識しているのを彼に気取られたくもない。からかわれてしまうに決まっている。
    「…皆、楽しそうね」
    平静を装って、なんとなしに呟いた。賑やかな場所は苦手だった。多くの人間がはしゃいでいる場所は、特に。
    それでも最近は、悪くないと思うようになっていた。もともと素直に楽しめない性格ではあるが、やはり誰と来るかによるのかもしれない。
    「志保さん」
    「ん?」
    彼がこちらをじっと見ていたことにようやく気が付く。
    「疲れた?」
    「……大丈夫よ。別に、つまらないわけじゃないわ」
    それを聞いてふっと彼が笑った。同時に彼女との距離を詰めてくる。砂浜に引いたビニールシートがくしゃりと音を立てた。
    肩が触れるくらいの距離。
    「何…」
    「いや、恋人らしいことしようと思って」
    「――恋人らしいこと?」
    「うん」
    肩に腕を回されて、彼の胸の中に引き寄せられた。肩にあったバスタオルが落ちる。彼がそれを気にする様子はない。もちろん二人とも水着だから、直に肌が触れた。自分とは違う体温。潮風のせいで少しべたついている。
    「ちょ、ちょっと」
    「ん?これくらいいいだろう」
    「でも…」
    筋肉質な固い胸板に触れて、思わず意識してしまう。できるだけ直視しないようにしていたのに。
    「…志保さん、顔、赤いよ」
    彼が耳元でくすくす笑う。くすぐったくて、恥ずかしい。
    「ずいぶんと初心な反応だね」
    「日差しのせいよ!」
    「はいはい」
    そのまま彼は彼女の髪に鼻をうずめた。肩に回された手はゆっくり腰におろされて、志保のやわらかな腹を撫でる。脇腹を触られたため条件反射で身体を跳ねさせる。
    「ひぇっ。ちょ、ちょっとここをどこだと思っているの?」
    「ん?海だろ」
    「公序良俗に反しているわよ」
    「厳しいな。恋人ならこれくらいの距離普通だろ」
    「あなたおまわりさんでしょ」
    降谷は、ははっと笑った。
    「好きな人と近付きたいんだよ。普通のことだろ」
    そんなフレーズを恥ずかしげもなく言ってしまえるこの男をすごいと思う。
    「……でも、志保さんが嫌ならアウトかな」
    「え…?」
    「嫌だった?」
    寂しそうに眉を下げて聞いた。
    「い、…嫌じゃないけど――」
    「うん」
    降谷は志保の答を待っている。期待に満ちた視線。
    何故『けど』と続けてしまったのだろう。逃げ道を塞がれた気がする。
    「………………………どきどき、するじゃない」
    聞こえるか聞こえないかくらいの声量でぼそり。彼は眉を少し動かして、彼女と同じくらい小さな声で答えた。
    「……うん、どきどき、するね」
    「……あなたも?」
    いつも余裕そうなのに。ちらりと見上げると内緒話をするように耳元で囁く。
    「うん。…でも、嫌な感じじゃないだろ?」
    きゅん、と胸が鳴る。かわいい、だなんて思ってしまう。愛おしそうに彼が自分の鼻を志保の耳にこすりつけてくる。まるで犬みたいだ。手が重ねられて、指がゆっくりと絡まされていく。
    「…行こうか」
    「ん…?」
    「混んでいる海にも、良いところはあるだろ?」



    ちゃぷ。海水に足を浸す。思ったよりずっとぬるかった。
    じゃぶじゃぶと、砂を踏みしめて進む。踏んだ場所が波でさらさらと流れていく。海特有の、独特な感触。
    「こっちだよ」
    人と波をかけ分けて、ばしゃばしゃと進む。くるぶしまでだった水位はだんだんと上がる。腰を超えて、胸元まで来ていた。
    「こんなところまで来て大丈夫…?」
    辺りはだいぶ人がすくなくなっていた。家族連れは浅いところで遊ぶから、この辺りはカップルや大人ばかりだった。
    浮き輪とか、そういった類いのものも持ってきていない。
    「大丈夫だよ。ちゃんと考えているから」
    「私、あまり泳ぐのは得意じゃないわ」
    「そう」
    じゃあ、と彼は彼女の両方の腕を取る。それから自分の肩に乗せた。
    「じゃあ、掴まっていて。しっかり、ね」
    逆光だけど、彼がほんの少し意地悪な顔をして笑ったのがわかった。
    おずおずと彼の首に自分の腕を絡ませると、足がふわりと浮いた。さっきより近くなる距離。胸が触れて、あ、と思うけれど、抱き締めるように背中に手を回された。
    彼は更に先へ。沖へ向かっていく。少し心細くなって、腕に力を入れる。ぎゅう、と自分の身体を押し付けるような形になり、彼女は恥ずかしくて彼の首もとに顔を埋めた。
    「ん、……志保さん、かわいい」
    ちゅっ、と彼女の赤く染まった耳にキスが落ちてくる。
    「ば、ばか。ここ、外なのよ」
    「見てないよ、ここまで来ればそもそも誰もいないし」
    そうは言っても、と志保はじたばたするも、すぐに抱き込まれてしまう。そこで彼の肩越しに見た海には、確かに他に誰もいなかった。
    海の中で、彼の手が彼女の腰を支えるように添えられた。浮力があるから、それだけで事足りる。それ、だけなのにどきどきする。
    「……ひぁっ」
    ぺろ、と首筋を舐められて彼女は思わず声を出す。
    「ん……しょっぱい」
    「何、考えて……」
    「だって。志保さんがかわいいから。大丈夫、さすがにこんなところでしようなんて言わないよ」
    連想したことを言い当てられて、志保は視線を泳がせる。
    「……う、」
    「でも、少しだけ。いちゃいちゃしようか」
    「………ま、待って……」
    「大丈夫だから」
    安心させるように彼女の髪を彼のもう片方の手が鋤き、潮風で絡んだ束をほどいていく。こめかみにそっと小さなキスが降ってきて、鼻先で優しく頬を撫でる。浮力で軽く抱き寄せられ、触れ合っている身体。それだけなのに、しがみついた腕の力が抜けてくるから不思議だ。
    「志保さん」
    降谷に呼ばれ、志保が顔を上げた。見上げると、蕩けた甘い瞳で彼が彼女を見つめてくる。
    その艶やかさに胸が高鳴る。こんな顔、他の誰にも見せてほしくない。彼は彼女に顔を近付けて、鼻先が触れあうくらいの距離で向かい合う。ふっと、彼が笑った。
    「水着姿。すごく、綺麗だ。……正直言うと結構余裕無かった」
    「……っ、え…」
    彼は照れ臭そうに打ち明けた。
    自分よりずいぶんと大人でいつも余裕なくせに。
    「君は恥ずかしがって隠してばかりだし……。そういうところも、……変な話、そそられるし……」
    こそ、と志保の耳元で囁く。
    「後でよく見せて。………――俺だけに、ね」
    誰に聞かれるわけでもないのに、とりわけ甘い声で、彼女だけに、囁く。
    「………………………うん」
    何故だろう。こくりと素直に頷けてしまう。海だから?夏だから?心が風船のようにふわふわしている。
    返事に対し彼はにっこりと優しく笑って、また、ちゅっ、ちゅっと、小さく髪にキスを落とした。
    「ん……降谷さ」
    「かわいい、志保さん」
    耳をぺろ、と舐められる。
    「んっ、ふぁ……」
    「こら。……あんまりかわいい反応したらダメだろ」
    「だ……って」
    海で逆上せるなんておかしいのに、心の中に、好き、がいっぱいになる。彼に触れられると、いつもこうなってしまう。伝えたくて仕方なくなって。でもうまく言葉にできなくて。
    「ふる、やさ……」
    溺れるような気持ちで、呼ぶ。一瞬、彼の瞳に迷いのようなものが見え隠れした。
    呼び掛けに答えるように、彼の手が水の中でゆっくりと志保の腰をなで回した。下に下がっていくと知らず知らず期待で身体が震える。志保の頭の中で警報が鳴り響く。
    降谷の瞳が微かに細められた。
    「ん、……………………これ以上は、まずいかな」
    ぽんぽん、と頭を優しく叩きながら、彼は志保を抱き抱え直した。
    「………あ、……」
    「…………こら、残念そうな声を出さない」
    「べっ、別にそんなんじゃ……」
    「はいはい」
    子供をあやすように、優しく抱き締められる。
    甘いやりとりが終わって、残念なのか安堵したのか。
    身体の熱を落ち着かせようと小さく息をしながら、志保は目を閉じた。

    二人で海の中。
    しばらく抱き合いながら、ただ、波の音の音を聞いていた。波の音は、人の心を落ち着かせる効果があるらしいと聞いたことがある。
    厳しい日差しを遮る、彼の身体。心地よい体温。とくんとくんと、彼の心臓の音が聞こえる。
    懐かしい二つの音を聴きながら、何故だか泣き出したい気持ちになる。

    このまま、時が止まればいいのにと思った。

    「名残惜しいけど、そろそろ上がろうか」
    「……え」
    「志保さんが熱中症になると困る」
    抱き抱えたまま歩き出す。
    「…お、降ろしてよ」
    「歩ける?」
    「歩けるに決まってるでしょ」
    「そうか。残念。もう少しくっ付いていたかったんだが」
    しれっと言うので、志保はぎろりと睨む。
    降参したように彼は志保を下ろした。
    「でも楽しいだろ?いちゃいちゃするの」
    降谷はすかさず彼女の手を取った。指を絡ませて握りこむ。
    「ばか」
    わざわざこんなところまで来て。
    知らない場所も、気恥ずかしい格好も、慣れない人混みも、得意ではない。実際どきどきしてばかりで、心臓によくない。
    ざばざばと波を掻き分けていた足を止めて、降谷は小さく傾げた。
    「……もし、単に触れたいだけなら、こんなところに来ない」
    瞳を柔らかく細めて、ふんわりと笑う。
    「色んなところに行きたいし、色んなものを見たい。君といるとどこに行っても楽しいから。恋人なんて、そういうものだろ」
    志保さんもそう思ってると嬉しいなと付け加えて、彼は再び歩き出した。志保も引っ張られる形で進む。頬をほんのり染めて、小さく頷いた。彼には見えなかっただろうが。
    波打ち際まで戻る。ちらりと沖を振り返ると、太陽の光がこうこうと水面を照らしていた。
    先ほどまでのことが夢の中の出来事のように思えた。まるで、二人だけの舞台から降りて、現実に戻ってきてしまったみたいだ。
    「ねぇ、志保さん」
    ぼんやりとしていた彼女の意識を引き戻すように降谷が志保を呼ぶ。
    「……ここからちょっと行くと温泉街があってね、帰りに寄ってから帰ろうと思っているんだ」
    「温泉……?」
    「日帰り入浴ができるから。この海水浴場に来ると、多くの人が使うルートさ」
    「そうなの」
    そんな手があったのか、と志保は思う。海水浴場にも最低限の設備は備え付けられているが、砂を全て落として帰るのは難しいものだ。混雑もしていることであるし。
    近くに入浴施設があるなら、ありがたい。ついでに温泉も楽しめるなんて。でも、少し準備が良すぎて気になる。もしかしたら、以前誰かと来たことがあるのだろうか。そんなことを考えていると、余裕たっぷりに降谷が志保の顔を覗き込む。
    「志保さんがいいなら……予定を宿泊に切り換えようかなって思ってるんだけど……」
    どうかな。
    低い声で、有無を言わさない問いだった。
    「あなた、仕事大丈夫なの……?」
    「そっちは気にしなくていい」
    「………そ」
    志保が明日も休みであることを知っているくせに彼は聞く。いや、もちろん休みに予定があることもあるから、尋ねるべきなのだろうが。
    彼は断られるはずがないと思っていて、それがちょっと面白くない。
    「私も………予定はないけど」
    「なら決まりだ」
    待っていましたとばかりに、繋いでいた彼女の手を引き寄せ、その甲にちゅっとキスを落とす。
    「――さっきの続きはそこで。………いいね?」
    彼の群青色の瞳に、冷たいものが怪しく光っていた。
    「……………………えっち」
    「ははっ、違いない」
    さあ行くよと、彼は嬉しそうに志保を促した。その手を引いて、すたすたと歩いていく。
    あまりにもわかりやすく機嫌が良いので、志保は呆れて指摘する。
    「さっきと言ってることが違わない?」
    彼は振り返って、少年のように舌を出す。
    「むしろ同じだと思うよ?」
    志保は砂を小さく蹴る。太陽の熱で温かい。
    「だって、せっかくなら、――もっとどきどきしたいだろ」


    どきどき、のところだけ。
    秘密みたいに小さな声で囁く。


    「……ばか」
    「うん」

    ――本当に、馬鹿馬鹿しいと思うのに。
    忙しい合間をぬって、二人の夏の思い出を作ろうとしてくれた優しいその人と。
    次の季節も、そのまた次の季節も、一緒に過ごせたらいいと思った。
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    SONOKO

    DONEあゆみちゃん、哀ちゃんを思う。
    ちょっと読んでる話に引きずられたのです。
    星を待つあんなに日が長かったのに、今はもう、気を抜けばすぐに真っ暗になってしまう。暑苦しくて、早く涼しくならないかなぁとぼやいていたくせに、なってしまえば心の中はスウスウと涼しい風が通り抜け、ほんのちょぴっと切なくなる。
    夕方と夜の間の時間を足早に駆け抜けていけば、目の前に広がる不思議な色の空で、ぽつんと強く輝く星を見つける。
    東の方角に見えたそれを指差して、哀ちゃん、と宙に言う。思い出の中の哀ちゃんは返事をせずきらきらと微笑む。
    あれはなんという星だったかな。木星か、金星だった気がする。確かなことは、教えてもらった星の名前が漢字だったこと。哀ちゃんがすらすらと答えてくれたこと。せっかく教えてくれたのに覚えていないなんて勿体ない。でも、もう一度聞こうとしたときにはもう哀ちゃんはここにいなくて、だから、私が忘れてしまったのは哀ちゃんのせい。そんなことを言う私は悪い子。哀ちゃんだって、私を寂しくさせたくていなくなったわけじゃない。夜の闇がさっきよりずっと広がった気がして、私はひとり立ち止まる。闇に際立つ月に照らされて、まるでスポットライトのよう。風がざわざわと街路樹を揺らす。
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