Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    SONOKO

    @84e5bBV3to90zYt
    降志が好きです。
    個人的な好みが強い特殊設定のものはポイピクを使ってみようと試行錯誤中。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🐱 🐻 💛 💜
    POIPOI 24

    SONOKO

    ☆quiet follow

    ただイチャイチャしているだけのお話。
    R15くらいかもしれない。(一応)
    クリスマス(当日じゃないけれど)デートする二人。
    デートほとんどしていないけど。
    一応利害の一致婚した二人の設定ですが、「結婚しているくせに初々しい二人」という認識だけで大丈夫です。

    恋人ごっこ「――デート?」
     志保はほかほかと湯気を上げる白菜を箸で持ったまま、彼の言葉を繰り返した。
    「あぁ。僕たち、恋人らしいことせずに結婚しただろう? どうかな、たまには」
     鍋を間に挟んで向かい合った降谷が、冷凍うどんを鍋に入れながら言った。それを見て志保はコンロの火を強くする。
    「……別に、いいけど…」
    「志保さんはあまり気乗りしない?」
    「ち、違うわよ」
     彼女は大きく首を振った。だが彼はこちらを見ておらず、菜箸でうどんをほぐしている。彼女はひっそり小さく口を尖らせた。
    「動物園とかどうかなって。志保さん、結構そういうところ好きだろう? ちょうど十二月の週末はクリスマスイベントをやっているらしいよ」
     
     二人が結婚したのは一年ほど前だが、それまでの経緯は多少特殊。志保のわがままに降谷を巻き込むような形で籍を入れ、まるで契約のような結婚をした。つまり、交際期間ゼロの、利害の一致婚である。
     そんな二人が思いを通じ合わせたのは、ほんの少し前のこと。
     普段から保護者のように志保を大切にしてくれていた降谷が、急に男性として彼女のことを求めてきたのだ。そして志保も無自覚であったが――どうやらずいぶん前から彼のことが好きだったようである。
     日々の生活は既に二人に馴染んでいたが、線を越えてからというもの、志保は新しい関係性に戸惑うことも多い。というか、ドキドキしてしまうのである。今だって、そう。鍋に具材を足していくような所帯じみた仕草ですら、どうしてこんなに素敵なのだろう。本人には、あまり言いたくはないけれど。
    「――もうちょっと火を弱めて」
    「えっ、えぇ。わかったわ」
     今日もスーパーに行って、一緒に食材を買い込んだ。カートを押して、夕飯は何にしようかと話しながら歩いた。荷物を持ってくれる方とは逆の手を差し出されて、恐る恐る掴んだ。そんな何気ない普通の買い物で充分楽しいし、嬉しいと思ってしまう志保がいる。
    「……あなた、忙しいでしょう?」
    「え?」
     いきなり話を戻したので、咄嗟にわからなかったらしい。降谷はきょとんとしたが、すぐに思い当たり、にこりと笑った。
    「そんなこと気にしなくていい。僕が志保さんと過ごしたいだけだから」
    「……」
     まっさらな笑顔で言ってしまえる彼が眩しい。
    「志保さんが嫌なら――」
    「い、嫌なわけ…ないじゃない」
    「……」
     志保が慌てて被せるように言えば、降谷が微かに目を丸くして。それから顔がふにゃりと緩む。
    「――決まりだ」
     
     
     
     いつも通る駅前の大きな広場にツリーが設置されたのは、十一月の終わりだったような気がする。
     今年は比較的温かい日が続いていたから、年の瀬に近付いてきたことにまったく実感が無い。よく見ればあちこちがクリスマスのレイアウトに彩られている。イベントに浮き足立つなど自分らしくないとわかっているが、志保の足取りは軽い。ただの恋する乙女のようだ。
    「……変じゃないかしら」
     ショーウインドウのガラスに写る自分を見て、もう一度チェックをする。わざわざ今日のために服を新調してしまった。白いAラインコート。中は白いブラウスと芥子色のニット。下はチャコールグレイのチェック柄のスカート。膝丈。ショートブーツ。機能性よりビジュアルを重視したもの。
     しかもそれをギリギリまで隠しておきたくて、同じ家に住んでいるというのに、――しかも車で出掛けるというのに、外での待ち合わせを提案した。彼は特に疑問を呈することもなく、いいよと頷いた。
     さすがにクリスマス当日のデートは無理だろうが、こんな風に志保を思いやってくれ、合わせてくれる理想の旦那様である。当日は当日で、家で夕飯を一緒に食べられれば御の字。どこぞのありふれた家庭のように、チキンやケーキを買って、彼の好物を作って、帰りを待つことが出来る。そんなことがこんなに幸せなんて、不思議なものだ。
     巷に溢れる恋人たちをチラリと見て、口元を緩ませる。自分たちもあの中の一組になってしまうのだな、と。ちょっと悔しいような気持ちになるが、まんざらでもない。
     
     と、そんなことを考えていると、見慣れた車がロータリーに入ってくる。ちゃんとナンバーを確認して、志保は足早に彼の元へ向かった。向こうが車だと安心だ。仮に待たせたとしても、車の外から逆ナンしようとする女性はいないはず。
     志保は降谷が降りてくる前にドアを開けた。
    「ごめんなさい、外で待ち合わせにしちゃって」
    「いや、いいよ。待った?」
    「いいえ。全然」
     助手席にそっと乗り込んで、服を巻き込まないように静かにドアを閉める。中は暖房が効いていて丁度良い温度だった。シートベルトを付けながら彼の方を見ると、降谷はじっと志保を見つめている。
    「降谷さん?」
    「あ、いや。――何でも」
    「…?」
     出るね、と彼が言う。ウインカーを出し、右後方の様子を窺う。髪から覗く耳がほんの少し赤くなっているような気がして、この人でも照れたりするのかしら、と志保は少し疑問に思う。
    「…外、寒くなかった?」
    「えぇ。そんなに待っていないから」
    「そうか」
    「………」
     走り出した車に揺られ、志保は運転する彼の横顔を見る。彼は志保の視線がわかっているのか、どこか苦々しい顔を浮かべる。
    「どうかしたの?」
    「いや、本当に何でもないんだ…」
    「そう…」
     いつもなら、志保のおめかしに気付いてすんなり褒めてくれるような気がしたが。気付いていないのか、気付いているけれど言わないのか。とはいえ、志保から聞くのもおかしな話だし、気合いが入っていることを白状するのも恥ずかしい。
     まぁいいかと志保も前を向く。
     が、赤信号で止まったとき、膝の上に置いてあった手に、彼の手が重なった。
    「……」
     何も言わずに、指をゆっくり絡ませてくる。ぶわ、と頬が熱くなる。おずおずと彼の様子を窺うと、彼は視線を前から外すことなく、それでも志保と負けないくらい頬を赤らめている。
    「………冷たい。やっぱり寒かったんだろ」
     夫婦、であるし。
     付き合いも長いし。
     手を繋ぐ以上のことだってしたことがある関係だというのに。
     二人して何を照れているのか、と冷静に思ったりもするのだが。
     彼は目を合わせない。志保はきゅ、と指に力を入れる。温かい、手。
    「………うん…」
     恋人という関係も、悪くないかもしれない。
     
     
     
     一時間ほど車を走らせると、目的の動物園に着いた。
     あちこちにイルミネーションが装飾されている。今は明るい時間だからわからないが、暗くなったら華やかに色づくだろう。
     志保がごそごそとバックからサンタクロースの帽子を取り出す。ここの動物園のクリスマスイベントのひとつで、サンタクロースのグッズを見に付けていると、限定生産のサンタのコスチュームを着たカピバラぬいぐるみをくれるというものがあるのだ。
     周囲を見渡せば、サンタクロースの帽子やトナカイのカチューシャを付けている客の姿があちこちにある。
     耳元まですっぽり守るように被ると、降谷がくすくすと笑っている。何よ、と志保は頬を膨らませた。
    「あなたの分は用意しなかったわよ。赤がNGなんでしょ」
    「はは、…ありがとう」
    「私が付けるのには文句言わないのね」
     降谷は赤が嫌い、らしいから。志保はおのずと私服に赤を選ばなくなっていた。本当はあまり気にしなくていいのかもしれない。そう思って尋ねると、彼は苦笑いを浮かべた。
    「ぬいぐるみを手に入れるためにサンタ帽を用意する志保さんがかわいすぎる」
    「…な…」
    「文句言えるはずないだろ?」
     しれっと言うと彼は志保の帽子の傾きを直して、それから彼女の手を引いた。
    「じゃあ、…行こうか」
    「……う、うん」
     
     
     クリスマス限定のスタンプラリーを集めながら、志保はサンタ帽の白いボンボンを揺らしながら歩く。餌やり体験の餌がクリスマスにまつわるものになっていたり、トナカイの宿舎が緑と赤に彩られていたり。子供が喜ぶようなかわいらしいイベントだが、カピバラのぬいぐるみも無事にゲットできたこともあり、志保はとても楽しんでいた。
     志保の代わりにぬいぐるみを抱えている降谷が、順路はこっちだよと手を引く。
    「こっちはリスザルだね」
    「小さい手。かわいい。あ、あの子たち親子だわ。毛繕いしてる…」
    「志保さん。あまり檻に近付かない方が――」
     揺れる白いボンボンに反応したのか、一匹のサルが勢いよく志保の方に飛びかかってきた。もちろん檻があるから触れることはないが、鉄格子が揺れる大きな音がして、志保は思わずひゃあっと声を上げて後ずさった。
    「志保さん」
     よろめいた彼女を彼の腕が受け止める。
    「――大丈夫?」
    「え、えぇ…。驚いちゃった」
     そこまで近付いた自覚はなかったけれど、はしゃぎすぎているのを咎められたようで、何だか恥ずかしい。
     振り返って見上げると、今日一日の中では一番近い位置に彼の顔があった。だが志保には逆光で彼の表情が見えない。でも、目が合ったと思われる刹那、何故か彼の腕に力が入る。
    「――…降谷さん?」
     キスできそうな距離、だ。そんなことをぼんやり思って、志保は彼の名を呼ぶ。降谷が腕の力を抜いた。離れる際に彼女の髪をさらりと撫でる。ほんの少し、名残惜しそうに。
    「…このエリアが終わったら。昼休憩しようか」
    「えぇ…」
     
     
     ハンバーガーを大きな口で頬張る降谷を見つめて、志保も必死に口を開ける。たくさん具材が入ったバーガーは美味しいと思うけれど、何をおいても食べにくい。はむ、と噛むとじゅわりとソースが口元を汚すのを感じる。咀嚼しながら、急いでティッシュで拭う。食べ方が汚いとは思われたくない。
     ここの動物園のフードコートはブーゲンビリアの温室の中にあった。綺麗な赤紫の花があちこちに咲いている。白いテラス席に志保とぬいぐるみは並んで座り、向かいに降谷がいる。
     席はほとんど埋まっており、皆思い思いに食事を楽しんでいる。
    「志保さん」
    「え?」
     降谷が自分の口元をとんとんと指差しながら志保を呼ぶ。まだ口許に残ってるのかと志保はティッシュに手を伸ばすと、その手を彼が取った。
     ――ちゅ。
     志保の頬に降ってくる、柔らかな感触。
    「……は」
    「取れた」
     降谷は淡々と頷いた。
     志保は今何が起きたのかわからなくてしばらく固まる。それから口を押さえてキョロキョロと辺りを見回した。幸運にも誰にも目が合うことはなかった。
    「……ちょ、ちょっとあなた、ここ外よ?」
     目撃者がいなかったとは言いきれない。志保は咎めるような口調になってしまう。
    「わかっているよ」
    「な、なん」
    「いい加減、限界だから…」
    「え…」
     ぱく、と。降谷がハンバーガーの最後の一口を口の中に入れる。もぐもぐと咀嚼している様を志保は呆然と眺める。
     限界、とは。
     まさか、この恋人ごっこのようなデートのことではないだろうか。志保は急に不安になる。彼女は彼が許すのをいいことに、好き放題振り回した自覚がある。
    「……つ、つまらなかった?」
     降谷が微かに眉を動かす。
    「…? そんなこと一言も言ってないだろう」
    「だけど…」
     彼はコーヒーを片手で取り、ふぅっと息を吹きかける。
    「志保さん」
    「…何?」
    「帰りに、寄り道して良い?」
    「え…? い、いいけど。どこに行くの?」
     志保の問いに、彼は眉を寄せた。青い瞳が冷たく輝いている。
    「……――それは、着いてからの……お楽しみ、かな」
     それにしては楽しそうじゃないな、と志保は不思議に思った。
     
     
     
     
     
     
     ――嘘。
     志保は目を丸くして、固まっていた。
    「早く降りて」
     降谷に引っ張り出されるように車から降ろされ、エレベーターに乗せられる。後部座席に置かれたままのぬいぐるみが黒い瞳で二人を見送った。
     初めて、来た。そりゃそうだ。こんなところ志保には縁がないし、そもそも彼にも縁がなさそうだ。いや、事件とか捜査とかで関わることはあるかもしれないが。
     恥ずかしくて、彼の腕に額を付ける。寄りたい、所って。なんで。
    「こっち」
     志保を覆い隠すように、彼は彼女の身体に腕を回した。志保は前を見ること無く、彼に従って足を進める。
     
     ――ラブホテルなんて、初めて、来た…。
     
     そういった『行為』をするためのホテルだというのは知っている。もちろんあまりいいイメージは無い。風俗とか、不倫とか。買春とか。そんなネガティブなワードばかり浮かぶ。そりゃお互い実家暮らしの恋人にとっては心置きなくいちゃつける場所だろうが。
    「着いたよ」
     ドアが閉まった音がして、降谷の腕が志保から離れる。志保は恐る恐る顔を上げた。予想以上に普通の部屋が目の前に広がっている。ちょっとだけほっとしていると、彼の指が彼女の顎に掛けられる。上を向かされたと思うと、すぐに目の前が彼でいっぱいになった。
    「…んっ、ん…」
     まだ部屋に上がってもいないのに。彼の向こう側に見えるのは大きなベッド。それなのに彼はそちらに見向きもせず、彼女の唇をむさぼる。入り口のドアに押しつけられ、奥に奥に舌を押し込まれる。
    「ふりゃ、さ」
    「志保」
     合図のように呼び捨てにされた。長いキスに息も絶え絶えになりながら志保は彼を見上げる。夜のむつごとの際は、志保、と零さん、とお互いを呼ぶのが、二人の間でいつの間にか決まったルール。本当にこれからセックスをするつもりなのだと今更ながら胸が高鳴ってしまう。
    「っ、……なんで、こんな」
    「したいからに決まっているだろ」
     迷い無く彼が答える。
     二人は夫婦だ。だから同じ家に帰ることができる。帰った後、心置きなく二人きりで過ごせる。
     なのに、何故、今。
    「いっ、…家に帰ってからでも…いいじゃない」
     志保が彼の胸を両手で押し、息も絶え絶えになりながら尋ねる。彼女の疑問を愚問だと言うように降谷が口を曲げた。
    「待てない」
     彼の両手が、彼女の胸を下から持ち上げるように掴む。彼女がひゃあっと声を上げる。鼻先が触れあうくらいに顔を近付けて、彼が憎々しげな声で答える。
    「……最低だとわかっていても、志保がかわいすぎて途中からこれしか考えられなくなった……」
     途中、とは。
     彼の瞳を覗き込めば、その言葉が嘘ではないことがわかる。獣のような獰猛な目線が彼女を貫いてきて、欲しいと訴えてくる。
     どんどん身体の熱が上がっていく。先ほどまでクリスマス気分で楽しく浮かれていたというのに、一気に現実的な、いや生々しいものに引き戻されたような感覚。
    「や、やだ、恥ずかしい…」
     首を振って抵抗するも、ここに到着した時点で。いや、一緒に部屋に入った時点で彼女は既に選択しているようなものだ。嫌なら車の中ではっきり言うべきだった。
     けれど、はいそうですか、それじゃあしましょうか、と簡単に頷くわけにもいかない気持ちをわかってもらいたい。女心は複雑なのだ。
    「家と同じことをするだけ」
     いとも簡単に言ってくれる。
    「で、でも……ぁ、」
     ニットの上から柔らかさを確かめるように何度も揉まれて、彼女の吐息が荒くなる。頭の中に警鐘が鳴り響いていた。
    「だ、だめ…」
    「何でさ?」
     苦し紛れの拒絶に彼が優しく尋ねた。志保は彼の問いに答えられない。
     場所が違うから? デートの後だから? 彼が強引だから? かわいいって言われたから?
     だからこんなに、ドキドキしてしまうのだろうか。もう、こんなに。――答が出る前に足の力が抜けていく。
     立っていられなくて彼の腕にしがみつくと、彼が彼女の身体を支えてくれる。
    「……皺になるから先に脱いだほうがいいな。帰りも着ないといけないし」
     何より、汚すと大変だろう? とそっと耳打ちしてくる。
    「………えっち」
    「ん」
     ふわりと彼女の足が宙に浮く。
    「きゃっ」
     彼に軽々と担ぎ上げられて、そのままベッドに連れていかれた。ぽふんと下ろされた後にショートブーツを脱がされて、彼はそれをぽいっと放り投げる。タイツの上から男の手が這い上がってきた。志保が咄嗟に足を引っ込めた。
    「や、…やめて」
    「やけに抵抗するな。……そんなに嫌?」
    「い、嫌と言うか…」
     まさかドキドキして苦しいから、だなんて言えるはずもなく。
    「私は、……こ、こんなところ、来たことないもの」
    「僕もまず来ないよ」
     それは裏返すと全く関わらないわけではないということだ。少しもやもやしてしまう。
    「大丈夫、なの」
    「安全性は確認してある」
    「…何で、いきなりこんなところに連れてきたの」
    「さっき言っただろ。志保がかわいいから」
    「そ、そうじゃなくて」
     降谷がやれやれと大きくため息を吐いた。
    「……俺のために着飾る志保がかわいい」
    「ふえっ…」
    「――俺とのデートに浮かれている志保がかわいい。サンタの帽子を準備する志保がかわいい。動物にはしゃぐ志保がかわいい。……小さい口をいっぱいに開けてバーガーを食べる志保がかわいい」
    「………」
     つらつらと述べる彼に志保は目を丸くした。
    「わかった?」
     彼は彼女をゆっくりと横たわらせる。額をコツンと合わせて、恥ずかしそうに呟いた。
    「……君が待ち合わせに現れたとき。そのまま連れ帰って、家で抱き潰したかったよ、本当は…」
    「………っ、」
     にこやかに一緒にデートを楽しんでいてくれたと思っていた相手の本音に、彼女は絶句するしかない。不安になって恐る恐る尋ねてみる。
    「………デート、…本当は面倒だったの…?」
     降谷が首を振る。
    「そんなわけないだろう。楽しかったよ」
    「………でも…」
    「いきなりこんなところに連れてきたのは悪いと思っているけれど、世の恋人たちのデートなんてこんなものだ」
    「こんなものって…」
     降谷が志保の手を取り、指を絡ませながら言う。
    「一緒に過ごしたくて。……相手の色んな顔が見たくて。見れば見るほどかわいいって思って。好きだって思って。相手に触れたくなって。触れて。……深く深く繋がって。もっと幸せになる」
     降谷のもう片方の手が志保のニットとブラウスを上に捲り上げていく。下着のホックが外される。真っ白な肌をようやく拝むことができて、彼が惚れ惚れと息を溢す。
    「…………ほら。続きをしよう。恋人がここで何をするのか教えてあげる」
     何ができる場所なのかも、ね。
     
     ふ、と彼が得意気に笑った。
     胸がきゅうっと締め付けられて、志保は自分がとことんこの男に弱く、惚れているのを実感する。
     赤い頬のまま、そっと瞳を閉じれば、降谷が小さく笑ったのがわかった。
     
     
     
     志保の初のクリスマスデートは、それはそれは甘くて、決して他人には話せないような一日になってしまったのだが。
     
     なかなか彼女からは彼に伝えられないけれど。
     また、デートしてもあげなくもない、と思っていたり、いなかったり、だとさ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💯💯💯💯💴💴💯😍😍😍💞💞💞🐒🏩🐘🏩🐧🏩🐎🏩👏👏😍❤👏👏💕😭❤💖🎄🎄✨💒💛💜💯🌋🌋🌋💗💖💒💕💒😍😍👏😍💜☺☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    SONOKO

    DONEあゆみちゃん、哀ちゃんを思う。
    ちょっと読んでる話に引きずられたのです。
    星を待つあんなに日が長かったのに、今はもう、気を抜けばすぐに真っ暗になってしまう。暑苦しくて、早く涼しくならないかなぁとぼやいていたくせに、なってしまえば心の中はスウスウと涼しい風が通り抜け、ほんのちょぴっと切なくなる。
    夕方と夜の間の時間を足早に駆け抜けていけば、目の前に広がる不思議な色の空で、ぽつんと強く輝く星を見つける。
    東の方角に見えたそれを指差して、哀ちゃん、と宙に言う。思い出の中の哀ちゃんは返事をせずきらきらと微笑む。
    あれはなんという星だったかな。木星か、金星だった気がする。確かなことは、教えてもらった星の名前が漢字だったこと。哀ちゃんがすらすらと答えてくれたこと。せっかく教えてくれたのに覚えていないなんて勿体ない。でも、もう一度聞こうとしたときにはもう哀ちゃんはここにいなくて、だから、私が忘れてしまったのは哀ちゃんのせい。そんなことを言う私は悪い子。哀ちゃんだって、私を寂しくさせたくていなくなったわけじゃない。夜の闇がさっきよりずっと広がった気がして、私はひとり立ち止まる。闇に際立つ月に照らされて、まるでスポットライトのよう。風がざわざわと街路樹を揺らす。
    1422