物置で一人きり私はお兄ちゃんが帰るのを待っている。 暗くて黴臭い物置の中に閉じこもっていると、外の眩しさや賑やかさを全て忘れることが出来るようでとても落ち着く。人から見れば子供みたいだと笑われるかもしれない、それでも私にとって心が落ち着く場所はこの埃っぽい物置の隅っこと、頼れるお兄ちゃんの腕の中しか無いのだった。
今の私は身も世もないほど取り乱しているわけではなく至極落ち着いて物置の暗闇を眺めていた。もうすぐお兄ちゃんが帰ってくる時間なので作った夕食も皿によそってあるし、予め食台の上に書き置きも残している。『物置の中に入ってるから心配しないでね』と。こうして言葉で伝えておくことでどれだけお互いに安心するか、以前顔を合わせることが少なくなった時に身をもって実感したので私は殊更に注意するようになったのだった。
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