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    yu_kiao_i_lxh

    @yu_kiao_i_lxh

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    yu_kiao_i_lxh

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    藍渓鎮を初めて読んだとき、ふと思った妄想話です。清凝と老君、無限と北河、あと龍游の執行人が出てきます。無限の己界に実は傷ついた清凝が保護されていて、という妄想だったのですが、己界に生き物入らないと聞いて、あらら、と。
    次回の藍渓鎮で癒し系の設定が確定しそうだったので、この妄想はもう形にならないだろうなあ、と思ったのですが、ちょっと出来心で一発書きです。書いていたら、ちょっと楽しかったです。

    ある妖精を捕まえるという、かつて最強の執行人として名を馳せていた無限にとって、けして珍しくない任務のはずだった。
    「無限様のご容体は?」
    「かろうじて意識を保っていらっしゃいますが…」
    「危ない、ということか…」
    常に冷静さを保つ潘靖の顔が苦し気に歪むのを見て、冠萱が強張った表情のまま 頷いた。
    捕り物の最中、無限が受けた傷はそれほど大きくはなかった。彼の体術は並みの妖精を凌駕したし、操る金属は妖精の投げた物理的な攻撃を防いだ。しかし、ほとんど妖精に近い無限の身体に僅かに残る人間の部分が、彼を窮地に陥れた。人間では避けきれない呪いを受けてしまったのだ。
    妖精が仕掛けた呪い。
    それは人間の皮膚を内側から破き、止まらぬ血でいずれは当人を失血死に至らしめるものだった。妖精ならば逸風の手により、失血よりも早く身を癒すことができたが、無限の身体は癒えるより早く、新たな傷口を生み出した。
    術を掛けた妖精本人が自爆するかのように身体を四散させたため、無限が呪いの詳細が分からなかった。妖精館本部も総当たりで解く方法を調べてみたが、随分と年嵩の妖精が独自に編み出した呪いを解く方法が分からなかった。手あたり次第の術を試みるが、その間にも無限の身体からは血がどんどんと流れていく。
    「もう、いい。これ以上の手当は不要だ」
    自ら流した血で身体を朱に染めた無限の口から、逸風の手を止めたのが昨日のこと。
    君が倒れてしまう。ここ数日間、全力で力を使う逸風の身体を案じた無限の言葉に、それまで冷静だった逸風の顔がくしゃりと歪んだ。
    「しかし、無限様!それでは…」
    「もう充分だ。この傷は治らない。本部が解呪方法を見つけるか、私の命が尽きるのが先か、だ。それより、頼みがある。北河をここに呼んで欲しい」
    「北河様ですか…」
    「私の命が尽きるとしても、まだ時間はある。それまでに成しておきたいことがある。詳細は北河が来てから説明する。それまで、君は体力の回復に努めて欲しい」
    すまないが頼んだよ。そう言ったきり、目を閉ざした無限が逸風や冠萱の問い掛けに応えることはなかった。
    「それで意識を失われたのか?」
    「いえ、深い瞑想に入られたようです」
    「少しでも体力の温存に努めていらっしゃるのだろう」
    潘靖には、無限が命あるうちに行おうとしていることに心当たりがあった。そして、その為には北河の力が必要なことも。
    同時に、それが非常に危険な賭けであることも分かっていた。
    「無限様、無理をなさってはいけません…希望は、まだあるのですから…!」


    潘靖と冠萱が無限の居る部屋に辿り着いた、時を同じくして、龍游の妖精館に若水に連れられて北河が到着した。
    「北河様!こちらです」
    遠巻きに妖精たちが集まっている廊下を北河が一気に走り抜ける。
    「無限、おい、お前、何やってんだ!!」
    乱暴な足音そのままの勢いで、無限の横たわるベッドに血相を変えた北河が走り寄る。
    「…北河」
    「なんだよ、お前。こんな傷だらけになって!お前、執行人、引退したんじゃなかったのか?」
    北河の声を聞いて薄っすらと瞳を開けた無限の襟元を掴んで、北河が詰め寄った。
    「逸風に癒してもらっても治らないなんて…俺も手伝うから、もう一度やってみよう」
    反対側のベッドに立つ逸風を見やってから、北河が無限に掌を翳した。その手をぐいっと無限が掴んだ。
    「やめろ。お前を呼んでもらったのは、私の傷を癒してもらうためじゃない」
    「何言ってんだ。ああ、また血が流れて…この出血量じゃ、いくらお前が頑丈でも、あと幾日も持たないぞ」
    「百年前、お前に頼んだこと、憶えてる?」
    北河の腕を掴んだ手に無限がぐっと力を込める。既に長い台詞を話す力がないようだ。浅い呼吸を繰り返す無限の顔は蒼白に近い。
    「百年前…」
    「いつか、この時が来たら、お前の力の全て、貸して欲しい。そう、言った、ろう?」
    北河がはっと息を呑むのに、様子を見守っていた潘靖が代わりに無限に問い掛けた。
    「無限様。…老君をお呼びになりますか?」
    こくり、と無言のまま無限が頷いた。
    「ですが、老君は百年籠ることを自らに課して、藍渓鎮に籠っていらっしゃいます。小黒がお願いしても、出てきては下さらなかったのでしょう?」
    思わず逸風が声を上げるのに、横で聞いていた冠萱が「あっ!」と肩を揺らした。潘靖が頷いて肯定した。
    「…そうか!老君の誓いは、もう満願成就になる…!?」
    「そうです。今宵、いよいよ老君の誓いは果たされる。まさにギリギリのタイミングでしたが…」
    はっ、はっ、と苦し気に息を吐く無限を見やって、潘靖の眉根が苦渋で歪んだ。
    「やるのですね、無限様」
    「ああ…今ならば、疾風も、北河も、居る」
    「そのために、疾風の力を温存させましたね。昨日まで治療を受けてくださったのは、時間を稼ぐためでしたか」
    逸風の力で癒しても、次から次へを皮膚の内側から裂けるように生じる傷を見て、無限は快癒の可能性が無いことを早い時点で悟っていた。己が助かる道は、解呪方法を見つけるしかない。それを総本部で哪吒や小黒が必死で探してくれていることも知っている。ならば自分が出来ることは、老君の百年の清願成就までの時間を稼ぐことだけだ。
    「疾風…身体の、調子、は?」
    「は、はい。もう万全です、無限様」
    事情が読み込めないまま、疾風が頷く。
    「…北河」
    「分かってる。お前の願いを叶えるって、約束したから。約束は守る」
    無限の藍青の瞳を覗き込んで、北河が泣きだしそうに顔を歪めた。
    「でも、俺は本当は嫌だ、嫌なんだからな」
    「うん…」
    「お前と約束したから、俺もちゃんと頑張る。だから、お前も最後まで諦めるな。頑張れ!」
    「…ああ」
    「冠萱、老君に連絡を。成就された暁には、至急龍游へ来られたし、と」
    「はい」
    「北河様と 疾風は夜まで待機。少しでも英気を養っておいてください」
    「分かった」
    北河が覚悟を定めた静かな表情で頷いた。
    これまでの会話から、疾風も自分の回復の力が今夜必要とされていることが分かった。きゅっと唇を引き結んだ北河と潘靖の顔を交互に見て、事情が分からないまでも頷いた。
    「無限様は、少しでも体力の温存を」
    無限がこくり、と頷いた。
    「ただし、もし総本部から解呪法が見つかったと連絡が来た場合は、我々はあなたの呪いを解き、身体を癒すことを優先します」
    このまま目を閉ざすかに見えた無限が、はっと目を見開いた。横たわったまま藍青の瞳が潘靖をじっと見上げる。
    「これは館長権限です。この龍游の妖精館で、館長たる私の発令は何よりも優先される」
    この法を整えた時、あなたもその場にいたでしょう。
    「老君も大切です。ですが、我々は、あなたも救いたいのです。皆の真摯なる想いをあなたは受け止めなければならない」
    「・・・任せる」
    瞳をふっと閉ざした無限の口から洩れ出た言葉に、潘靖がこの日初めて満足そうに頷いた。
    「さあ、忙しくなります。若水、無限様に着いていて差し上げなさい。他の皆々は、各自抜かりなく」
    冠萱、疾風、北河、若水の顔を見渡して、館長が重々しく号令をかけた。


    中天に三日月が掛かった頃。
    「老君だ!」「あの方が老君…」一目彼の姿を見ようと無限の眠る部屋が見える露台に集まっていた妖精たちの口から、感嘆の声が漏れた。
    「お越しいただき、ありがとうございます」
    出迎えた潘靖と冠萱が深々と頭を下げた。
    「百年の誓いが成就したこの夜に、私を呼ぶなんて」
    無粋なことだ。何処か浮かない表情を浮かべた老君が呟くのに、再び深々と二人が頭を下げる。
    「私を呼べと言ったのは無限だね?」
    「彼はいま何処に?」と首を傾げる老君を潘靖が「こちらへ」と促した。老君の後に冠萱続く。三人の行く手を阻んでいた物見高い妖精たちがざっと後ずさって道を空けた
    「…おやおや、これは思ったよりも酷い有様だね…」
    横たわる無限のベッド横の椅子に座って、ぐすり、と涙で濡れた顔で鼻を啜った若水が顔を上げた。目の前の見知らぬ青年の正体に気が付いて、はっと後ろに下がって立ち上がった。
    「ああ、いいよ。そのままで…」
    若水に声を掛けた老君が無限の様子をしげしげと見た。
    「北河まで来ているのに、この無限のあり様。…随分と、嫌な呪いを掛けられたものだね。これは人間にのみ発動するまじない。私でも解呪は難しい…」
    老君の声に無限の瞳が開いた。
    「…老君」
    ふっと無限の頬が緩んだ。
    「清願成就、おめでとう、ございます」
    「何が成就なものか。私はただ彼女を殺した相手の妖精を激情のままに葬り去った。その罰を自分に与えただけだ。こんな罰で何が変わる訳でもない。ただ、私一人の気が済んだだけに過ぎない」
    その証拠に、失われた二つの命が戻る訳でもない。
    「老君…」
    自嘲めいた老君の呟きに、周りの妖精たちが掛ける言葉もなく立ち竦んだ。
    「…いいえ、誓いは成就し、あなたの願いは叶う、のです」
    明瞭な無限の声が無言になった室内に響いた。
    「・・・無限?」
    「願いは叶うのですよ、老君」
    身を起そうと身じろいだ無限の腕を若水が掴み、そのまま背後に手を回して無限の背中を支えた。「ありがとう」と若水に小さく声を掛けて、ようやく無限が身を起こした。もう流す血もあまり体内に残っていないのか、血の気を失い蝋のように白くなった腕を若水が撫で摩った。
    「長い間、あなたに秘密にしてきたことがあります。お許しください」
    無限が軽く頭を下げると、短い横髪が無限の表情を隠した。
    「清凝仙子の事です」
    清凝の名前を聞いて、静かだった老君の蟀谷がぴくり、と動いた。
    「ご存じの通り、私は清凝仙子と顔馴染みです。…彼女の最後に、私も立ち会っています」
    老君に恨みを持つ妖精が抵抗する術を持たない彼女を赤子の如くに弄び、傷つけた。血を流し地べたに倒れる愛しい女の姿に、激昂した老君が妖精を塵へと返した。
    その時のことを老君はあまり覚えていない。1000年生きて初めて感じる身の内を焼き焦がすような激しい憎悪に呑まれ、目の前が真っ赤に染まった。
    「あいつの狙いは、あなたに殺してもらうこと。いち片の骨すら残さず、無に返る。それだけでした。彼女に恨みがあった訳じゃない」
    「…分かっている」
    「だからなのか、私が駆け付けた時、彼女の意識は既に失われていましたが、まだ微かながら息があった…私は、そこに賭けました」
    お許しください。再び無限が頭を下げた。
    「清凝仙子は…私の己界のなかに、居ます」
    「無限・・・!」
    目を瞠る老君の横顔を見て、潘靖が瞑目した。
    無限の己界のなかは時間という概念がない。そこに取り込まれた瞬間に、物質は時を止め、取り込まれたままの姿を留める。
    「無限様の己界は、本来は生き物を取り込める空間ではありません。ですが、彼女の場合は九死一生…」
    「可能性がある、と思いました」
    そしてそれは成功した。清凝の身体は無限の己界の中に取り込まれ、今もその時を留めている。
    「何故…それを直ぐ私に言わなかった?」
    「…あなたは彼女を失ったこと、そして、古くからの友人を自ら手に掛けたこと。全てにおいて傷ついていました。そこにこの不確定な希望を与えたら、あなたの苦しみは増すだろう。そう思いました」
    「無限が彼女を己界に取り込んで、俺は直ぐに相談されました。俺ひとりの力でなんとかなれば良かったんですが…俺の力だけでは、死の縁まであと半歩の処に居る彼女を救うことはできないかもしれない。あまりに危険な賭け過ぎる。彼女の蘇生を思いとどまるよう、俺は無限に助言しました」
    だから、責めるならば無限だけじゃなくて、俺も。北河が俯いた。
    「北河!無限…君たちは…」
    二人の告解を絶句しながら聞いていた老君が、北河と無限の頭を抱き寄せた。
    「いけない子たちだ。…生物を己界に取り込むだなんて、どれほど苦しかっただろう。北河も、長い間どれほど心を痛めていたのだろう」
    ありがとう。老君が震える声が彼の心情を余すことなく伝えた。
    老君の掌の中で無限が軽く咳き込んだ。はっとして覗き込んだ老君の掌が赤黒いものでじっとりと濡れている。老君がぎゅっと掌を握り込んだ。無限に残されている時間は、もう少ない。
    「長い間、癒し手が増えることを無限様と私たちは待っていました。より確実に、彼女を救えるように」
    「癒しの力を持つのは北河だけではない。…彼が居ます」
    無限の視線の先で、逸風がはっと背筋を伸ばした。
    「俺と逸風。二人の力を合わせれば、清凝仙子を死の淵のぎりぎりから呼び戻せるかもしれません」
    「・・・やります!俺も精一杯」
    老君が清凝仙子と逢えるように。重責を担った逸風が、ごくりと唾を呑み込んだ。
    「無限。いま総本部が解呪法を探しているのだろう。いまはお前の身体を優先しよう。お前が万全の体調になってから、皆で再度試してみればよい」
    百年待った。私はもう少しくらい、待っても良いのだよ。自らの血で汚れる老君の掌を無限がぎゅっと握り込んだ。
    「…分かっているでしょう?呪いは解けない。逸風や北河の力でいくら傷を癒して貰っても…私に残された時が、もう少ないことを」
    だから、自我がはっきりしているうちに、彼女を呼び起こします。
    無限の意思が変わらないのを見てとって、老君の掌からそっと身を屈めて抜け出すと、北河が後方に下がった。北河に相対するように、逸風も離れた位置を取り、膝を屈めて重心を取る。
    「勝負は一瞬です。己界から出した瞬間に、彼女の息は止まるかもしれない。たとえ彼女の命を留めることができでも、それは呼吸一つの間だけかもしれない」
    「・・・たとえ一瞬であっても、彼女の蒼い瞳を見ることができたら…」
    それは私にとって永遠になるだろう。老君に微笑みかけた無限が、瞳を閉ざす。浅くなる呼吸を整えゆっくりと深呼吸する。呑み込む能力を反転させ、そこに固定された物質を壊さぬように一気に吐き出す。
    「…!!」
    カッと瞳を開いた無限が、合わせていた両手をぱっと開いた。





    …という妄想を藍渓鎮を読み始めた当初、考えてました。
    たた己界に生き物が入らない設定を聞いて、ああ、これは成立しないか、と思いました。
    次回あたりで回復能力の詳細が出るようで、ますますこの話には縁がないなあ、と思ったりもしたのですが、出来心で書いてしまいました。
    この後、清凝ちゃんは無事に己界から出て、北河と逸風の癒してペアの力によって無事に復活します。で、老君は喜んで清凝ちゃんを抱きしめるのですが、若水の「無限様!」の悲鳴で、事情を知って。無限様、力尽きて満足そうに微笑んでお亡くなりになっていて。力を使い果たした北河が「俺にもっと力があれば助けられるのに」と悔んだりして。で、目覚めた清凝ちゃんが「無限大人を見殺しになんてできないわ」と周りが止めるのも聞かず、能力を使って、無事に無限が復活する・・・なんて流れを考えてました。
    そうそう、亡くなった奥さんと子どもに囲まれて安らいでいる無限様を、清凝ちゃんの力を借りて小黒が黄泉の国まで迎えに行く、とか…最後の瞬間に無限を選べなかった北河が自分を苦しめていて、目覚めた無限に「約束を守ってくれて、ありがとう」となでなでしてもらう話しとか…考えてました。
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    yu_kiao_i_lxh

    DONE冠萱マスターさまたちの呟きを日々拝見し、違和感なく潘靖・夏さんと暮らす小冠萱さん、3人の姿が見えました。小黒お誕生日祝いのむ様(む@nijikusa)の素晴らしいイラスト、そして呟かれたお言葉からの小話です。冠萱さんは一体何が見えていたのかしら、という妄想です。映画「エター○ルズ」を鑑賞して、一気に小話が整いました。呼称や能力については全くの捏造です。何でも許せる方向けです。
    湯気の向こうの思い出小黒の誕生日を祝う為に今宵は皆が集まっていた。それぞれの手には小黒へのプレゼントがある。小黒へひとことお祝いを伝えようと、自然と列ができた。
     桃色のリボンで飾られた大きなプレゼントボックスを持って、なんとはなしにその列で順番を待っていた冠萱の嗅覚が、美味しそうな匂いを捉えた。食欲をそそられる匂い。
    「あれ?」
     おかしい。会場にあるのは菓子やケーキなどの軽食の類と飲料のみで、食事類は用意していなかったはず。そう思ったところで、匂いの元――湯気上がる熱々のラーメンが視界の左端に入った。盆を持つ手は骨ばった指の長い、大人の男のもの。ぱっと顔を上げると、
    「無限大人」
     小黒の師父である無限がそこに立っていた。
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    yu_kiao_i_lxh

    MOURNING藍渓鎮を初めて読んだとき、ふと思った妄想話です。清凝と老君、無限と北河、あと龍游の執行人が出てきます。無限の己界に実は傷ついた清凝が保護されていて、という妄想だったのですが、己界に生き物入らないと聞いて、あらら、と。
    次回の藍渓鎮で癒し系の設定が確定しそうだったので、この妄想はもう形にならないだろうなあ、と思ったのですが、ちょっと出来心で一発書きです。書いていたら、ちょっと楽しかったです。
    ある妖精を捕まえるという、かつて最強の執行人として名を馳せていた無限にとって、けして珍しくない任務のはずだった。
    「無限様のご容体は?」
    「かろうじて意識を保っていらっしゃいますが…」
    「危ない、ということか…」
    常に冷静さを保つ潘靖の顔が苦し気に歪むのを見て、冠萱が強張った表情のまま 頷いた。
    捕り物の最中、無限が受けた傷はそれほど大きくはなかった。彼の体術は並みの妖精を凌駕したし、操る金属は妖精の投げた物理的な攻撃を防いだ。しかし、ほとんど妖精に近い無限の身体に僅かに残る人間の部分が、彼を窮地に陥れた。人間では避けきれない呪いを受けてしまったのだ。
    妖精が仕掛けた呪い。
    それは人間の皮膚を内側から破き、止まらぬ血でいずれは当人を失血死に至らしめるものだった。妖精ならば逸風の手により、失血よりも早く身を癒すことができたが、無限の身体は癒えるより早く、新たな傷口を生み出した。
    術を掛けた妖精本人が自爆するかのように身体を四散させたため、無限が呪いの詳細が分からなかった。妖精館本部も総当たりで解く方法を調べてみたが、随分と年嵩の妖精が独自に編み出した呪いを解く方法が分からなかった。手あた 6249

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