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    okeano413

    @okeano413

    別カプは別時空

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    甲操 年の宿で微睡みを

    ##甲操

    2021.01.03

     空が白み始めた頃、初日の出を見ようと張り切っていた少年は既に夢の中へ沈んでいた。黄色のクッションを抱え、俺の肩に頭を預けたまますっかり眠り込んでいる。どうして起こさなかったのかと抗議されそうだが、新年の始まりからこのぬくもりを手放すのは惜しい。真似して俺も頭を傾げる。一度、二度、擦り付けると、規則的な呼吸が重そうに乱れた。
     年越しと言っても、アーカイブに残される除夜の鐘撞きや歌番組などの恒例行事はなく、各々が家族と過ごすのが島の通例だそうだ。仲間内で集い賑やかに新年を迎えるもよし、出歩かず安穏に過ごすもよし、らしい。今回の俺はと言えば、羽佐間先生の好意に甘えて、小晦日からお邪魔させてもらっていた。御節料理を支度して重箱に詰めたり、先生には手の届きにくい場所の掃除を頼まれたり。三人であれやこれやと家を整えているうちに、年内最後の夕陽はあっという間に姿を消していた。こんなにも心地良い疲労は──この時期を家族らしく過ごすのは、初めてだった。
     余韻を脳裏で噛み締めつつしばらく寄り掛かっていると、階段を降りる足音が聞こえて、そっと身を起こす。明けの挨拶を済ませて先に眠っていた羽佐間先生が、眠るクーを抱いて降りてきたのだろう。つとめて静かに開かれた扉を振り返ると、足元にはショコラの姿もあった。大あくびをして、眠る来主を起こさないよう、慎重に水入れの元へ向かう。まだ引き戸は開けられないらしいが、すっかり勝手知ったる、だ。
    「あらっ、まだ起きてたの?」
    「羽佐間先生。おはようございます」
    「ええ、おはよう。操は……寝ちゃったのね。もう、自分から言い出してたのに」
     仕方なさそうに微笑みながら、少しへこんだ髪を撫でる手は今日も優しい。夢うつつのクーの脚を借りて頬や額をつつく。何度かそうされても起きる気配はない。よくはしゃいでいたから、眠りも深いのだろう。
    「起こしていいのよ? もう朝だし、甲洋くんも眠いでしょう」
    「いえ。まだ、眠る必要はありませんから」
     少し違う。正確に言うならば、まだ眠りたくなかった。一秒でも長く、一瞬でも多く、共にいられる時間を刻んでいたい。……そう伝えるのはなんとなく恥ずかしくて誤魔化すように瞬くと、目の前に白い指。咎めるには弱い力で弾かれる。驚いて、もう二、三度瞬く。
    「私が休んで欲しいの。起きるのはお昼でも、夕方でもいいから。好きなだけ眠ったら、三人で初詣に行きましょう。お正月ってそういうものなのよ」
     腰に手を当てる仕草がよく似ている。日はまだ浅くとも、こうして親子になっていくんだろう。来主の好む優しい記憶は、この家にも刻まれている。
    「……それじゃあ、少しだけ」
    「ベッドに行かなくていいの?」
    「ここに座っていたいんです。瞑るだけでも休まりますから」
    「そう。御節、一緒に食べましょうね。お雑煮も用意して待ってるわ」
    微笑みを返すと、来主の膝にクーを預けて行った。今日も、明日も、少しでも長く、この穏やかな時間が続くといい。来主が起きればすぐにわかるように、今度こそ寄り掛かって目を閉じた。
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