めるへんにのかげ影浦「何か今日、街の方がやけに騒がしくね?」
荒船「ああ。今第二王子が行方不明になって大騒ぎしてるらしいぞ」
影浦「へー」
荒船「もうちょっと興味持てよ」
影浦「んなこと言っても関係ねえし」
荒船「王子を見付けた奴には報奨金が出るらしいぞ」
影浦「マジか」
荒船「まあこんな村の方までは来てないだろうが」
影浦「どうせ世間知らずの王子様が城下町で迷子にでもなってんだろ」
荒船「世間知らずかは知らないが第二王子は意外と天然だって噂は聞いた事あるな……」
影浦「どっちにしろ俺らには関係ねえな……お、犬」
荒船「え"」
影浦「でけえ犬だな〜荒船……いねえ」
(遠くに全力で逃げる荒船の後ろ姿)
影浦「野良犬にしてはやけに毛並みのいい奴だな……どっかから逃げてきたのか?」
(全く逃げる様子のない犬に話しかける影浦)
影浦「悪ぃけどウチじゃ飼えねえからな」
くぅん。
(悲しそうに鳴く犬)
影浦「……まぁ今日はもう遅いし一日くれえなら泊めてやる」
犬「わん!」
* * * * *
影浦「おい、身体洗ってやるからこっちこい」
犬「わん」
影浦「お湯なんてねえから水で我慢しろよ」
犬「わう……」
影浦「おい、逃げんなコラ。綺麗にしてやるっつってんだろ」
犬「わうわう」
影浦「お湯沸かせってか?てめえ贅沢言ってんじゃねえ」
(結局不満そうな犬のためにお湯を沸かす影浦)
影浦「ったく、どこの王様だよ」
(ぶつぶつ言いながら沸かしたお湯で身体を洗ってやる影浦と、満足気な犬)
影浦「おら、飯できたぞ。食え」
犬「わうわう」
影浦「あ?こっちは人間用だ」
犬「わうわうわう」
影浦「だからお前のはこっち……あーうっせーな、分かったよ」
(根負けして自分用の食事をやる影浦)
影浦「うめーかよ」
犬「わん」
影浦「人の飯食っといて良い身分だな」
犬「わふっ」
影浦「……おめー言葉分かんのか?」
犬「わん」
影浦「言葉分かるくれえ賢いなら迷子になってんじゃねえよ」
犬「わうわうわう」
(抗議するように鳴く犬)
影浦「うっせー!近所迷惑だろが。オラ、飯食ったらさっさと寝ろ!」
(吠える犬を無視して、自分の食事を作り直しに行く影浦)
* * * * *
(食事を終え、寝室に来た影浦)
影浦「……おい。何ちゃっかり人のベッドに寝てんだよ」
犬「わふっ」
影浦「わふっじゃねえわ!下りろ!」
犬「わうわう」
影浦「一緒に寝れるわけねえだろ、んなでけえ図体しやがって!」
(意地でもベッドから退かないので、結局ギュウギュウになって一緒に寝た)
* * * * *
影浦「……もう朝か」
二宮「おはよう」
影浦「は?」
(隣に知らないイケメンが寝てて飛び起きる影浦と、優雅に身体を起こすイケメン)
影浦「な、だ、……どっから、」
二宮「昨夜は世話になった」
影浦「はぁ?」
二宮「魔女に呪いをかけられ犬になってしまって難儀していた。礼を言う」
影浦「はぁあ? お前、まさか昨日の犬かよ」
二宮「一応、この国の王子だ」
影浦「オメーかよ、行方不明の間抜けな王子は!」
二宮「誰が間抜けだ。不慮の事故で彷徨っていただけだ。お前は自分の国の王子の顔も知らないのか」
影浦「知るわけねえだろ、会ったことねえんだから」
二宮「肖像画くらい見たことはあるだろう」
影浦「興味ねえから見ても覚えてねえよ」
二宮「……まあいい。礼をしたいから一緒に城へ来てくれないか」
影浦「あ?あ〜もしかして報奨金貰えんのか?」
二宮「まあそのようなものだ」
影浦「んじゃ着替えるから待ってろ」
* * * * *
衛兵「おっ王子、ご無事で…!」
二宮「心配をかけて悪かった。父上へ謁見を頼む」
衛兵「そ、その者は?」
二宮「俺の生命の恩人だ。丁重にもてなせ」
影浦「いや俺は報奨金貰えればすぐ帰んだけど……」
二宮「こっちだ」
影浦「全然話聞かねえなコイツ……」
* * * * *
(謁見の間に勢揃いする国王、第一王子、第二王子の傍に控える側近)
城戸「よく無事に戻った」
二宮「ご心配おかけして申し訳ありません」
城戸「それで、その者は?」
二宮「呪いにかけられた私を助けてくれた命の恩人です」
影浦「あー……影浦、デス」
城戸「そうか。大儀であった、影浦。息子の命を救ってくれてありがとう。ぜひとも礼をしたいから何でも欲しいものを言ってくれ。すぐ用意させよう」
影浦「あ、俺は報奨金さえ貰えたら……」
二宮「父上、私からもお願いがございます。影浦を伴侶として迎えることをお許しください」
影浦「はあ"?」
城戸「伴侶だと……?」
二宮「私にかけられた呪いは、真実の愛でしか解けない呪いでした。これを解いた影浦こそ私の生涯の伴侶となるべき存在かと」
影浦「いやお前、朝起きたら勝手に元に戻ってたじゃねえか」
二宮「違う。呪いを解いたのは間違いなくお前だ」
東「どうやって呪いが解けたんだ?」
二宮「朝起きて影浦の寝顔を見ていると、身体の一部が燃えるように熱くなったと思ったら呪いが解けました」
諏訪「下ネタじゃねえか」
風間「真実の愛というより本能だな」
城戸「王族の婚姻ともなれば、そう易々と認めるわけにはいかないが……だが、そういう訳では仕方ないな」
影浦「いやいやいや、待てオッサン」
城「よろしい。許可しよう」
二「ありがとうございます」
影「何でだよ!!」
城「ただし……子どもができたらすぐに顔を見せに来ること。それが条件だ」
影「条件激ゆるじゃねえか、王族の婚姻!!いやそもそも子どもできねえわ!!」
城「子どもなら魔女に頼めば何とかしてくれるだろう」
影「いや別に子どもが欲しいわけじゃ……つうかその魔女が諸悪の根源なんだろうが!!」
城「城に住むのが気詰まりであれば、敷地内に新居を建てるからそこに二人で住むと良い」
風間「厚遇」
城「二人でどこか旅行に行きたければ、子どもは私に預けていくと良い」
諏訪「駄目だ完全に初孫に目が眩んでるぞこの人」
東「おめでとう」
三輪「おめでとうございます」
二宮「ありがとうございます」
影浦「話を聞けてめえら!!」
これから一月後、二人は式を挙げ、魔女から祝福を受け、めっちゃ子宝にも恵まれた。
Fin
* * * * *
城戸さんと二宮さんがアレ過ぎて影浦くんがツッコミマシーンと化してる…
ちなみに加古さんが二宮に呪いをかけたのは、単に酔っ払ってノリでかけちゃっただけです。