「大倶利伽羅は、あなたのサンドイッチをずいぶん気に入ったみたいですね」
「! そう思うかい?」
「えぇ」
にこりと笑って頷けば、わかりやすく光忠の表情が喜色に染まった。うれしい、と目が喜び、頬が笑みを作り、ほんの少しの誇らしさまで覗いて見える。素直だなと思わず釣られてしまうが、光忠もいつだってこうなわけじゃない。格好をつけるところでは己を律することも作ることもできるはずだ。それが、こうまで明け透けになることが、宗三の頬まで緩めてしまう。
「ところで、ひとつお願いがあるんですけど、いいでしょうか」
「え、うん。なんだい」
ぱ、と光忠の表情が仕事のそれに戻った。それを待っていたようにテーブルの上でスマホが震える。ディスプレイに並んだのは、ついさっき浮かべていた名前だ。失礼、と挟んで確かめれば、思っていた通りのメッセージが送られてきている。
「――あなたに配達を頼みたいんです」
「配達…? 構わないけど、宗三くんデリバリーまでしてたの?」
「えぇ、一名だけ」
「?」
きょとりと瞬いた目が、詳細を告げていくにつれ丸くなっていった。十二分に驚いてから、降って湧いた彼と会えるチャンスにじわりと頬が赤くなる。そういう素直さこそが子どものようだと、やはり言わずにお願いしますねと締めくくった。頷いた光忠の口元がむずむずしている。もしも光忠が本当に年端もいかない子どもだったら、いまこのとき、どんな言葉を発しただろう。そんなことを考えてしまうのがおかしくて、宗三も小さく笑った。