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    るい(と)とうふ

    @rui_and_tofu

    rui(字)ととうふ(絵)の合同らくがき置場。二次のみ。ジャンル雑多。

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    るい(と)とうふ

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    脱走直前の尾形が月島に対してごちゃごちゃ考えてる。【即興二次(21/06/07分)/お題:地獄の結末/執筆制限時間:30分】

    #ゴールデンカムイ
    Golden Kamuy
    ##gkm

     自分テメエに酔っていやがる──。
     見境もなく進軍していく男たちの背中を見送りながら、尾形はそう思った。
     これが謀反であるという認識さえしないまま鶴見に付き従う者は、屹度きっと多い。
     尾形とて、これが中央に対する謀反かどうかなど、本音の所ではどうでもいい。けれど己の行いが、周囲にどう見做されるのかさえ自覚せぬまま、盲目的に他人の尻に付いていくという行為自体が耐え難い。屈辱的に思える。
     そんなのは、仲間だのなんだのと美辞麗句に酔い痴れて、己の頭で考えることを放棄しているだけだ。要するに、誰かに救って欲しいだけの甘ったれた愚者の行列だ──尾形はそう思う。
     だが、アンタは違う。
     違うのに、何故。

     月島がふらりと尾形の病室を訪ねてきたのは数日前のことだ。陰で鶴見への謀反を煽っている尾形の動向を探るためだろう。最早浅いとは言えぬ付き合いだ。互いの真意など言わずとも知れていた。そのせいか、月島の表情も口調も、妙に気安かった。
    「具合はどうだ」
    「お陰様で」
     寝台の横に立つ月島に答えながら、何がどうお陰様なのかと尾形は自分でも可笑しく思う。
    「頑丈なお前にしちゃあ、えらく長く掛かるじゃねぇか」
    「川に落ちたんです。熊じゃあねぇんですよ。いくら俺が凄腕の狙撃手だっても、死ぬほど寒けりゃ死にます」
     軽口を叩くと、月島はへっと笑った。実際のところは大分回復していたので、こりゃバレてるなと尾形は観念する。もう少し様子を見てから脱走する腹積もりだったが、予定を早めた方がいいのかもしれない。否、寧ろそれを狙っての来訪か──。
     横目に月島を盗み見ると、彼はめずらしくポケットから紙巻き煙草を取り出していた。
    「あ、ちょっと」
     怪我人の横で、と尾形が抗議する間もなく、月島は燐寸を擦って火を付けた。ぷんと燐の匂いが鼻をつく。
    「ああ、うめぇ」
    「珍しいですな、軍曹殿が規則を無視するとは」
     月島はそれには答えず、吸うか? と己の吸っている吸い止しを差し出してきた。尾形が頷くと、そのまま尾形の口に突っ込む。尾形は一口だけ吸った。久しぶりの贅沢は肺の隅々にまで染みた。
    「矢っ張りヤニですねえ」
     煙を吐き出し乍らしみじみそう言うと、月島は苦笑した。
     月島の滞在は時間にして五分程度だった筈だ。その後は特に会話らしい会話もなく、彼は去って行った。
     只、去り際に一言だけこうつぶやいた。
    「ここは地獄の一丁目で、二丁目のねえとこだ──ってな」
    「芝居、ですか」
     答えはなかった。
     月島なりの、別れの挨拶だったのかもしれない。

     尾形は唇を噛みしめる。
    「何が」
     何が地獄だ。そんなもの──
    「俺は御免だ」
     吐き捨てるように言い、尾形は長年暮らした兵舎の方角を一瞥する。
    「行きたい奴ァ、勝手に逝け」
     そして身を翻し──闇に消えた。


    (了)
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    るい(と)とうふ

    TRAININGひとごろしと、月島。と、ちょっとだけ尾形【即興二次(21/06/16分)/お題:汚れたクリスマス/執筆制限時間:30分】(※色々と捏造含みます)
     人は罪深く、けれど神はすべてを赦したもう。と、目の前に転がる男は言った。清廉な瞳をした、ハキハキと歯切れよく喋る、気持ちの良い青年だった。
     裏表なく人に優しい。義に篤い。教養も深い。それでいて、文化的知識人インテリゲンチヤにありがちな偉ぶったところがひとつもない。知らぬ者には惜しみなく知識を与え、侮ることもなかった。
     トルストイという露西亜の大作家が戦争に向かう祖国を批判し、暴力断固反対の声明を発したという話は、彼から教えられた。
     元々は神戸で貿易業を営む裕福な商家に生まれた長男だったらしい。偶然おとずれた函館で宣教師と出会い、強く感銘をうけた。自身もまた神に仕えたいと言い出した彼に、当然ながら両親は激怒した。溝は埋まることなく、ほどなく彼は勘当された。しかし彼の真摯な信仰は誰の目にも明らかで、遊びや気の迷いと一蹴されるようなものではなかった。結局、折れたのは両親だった。そして両親もまた、いつしか神の御前に帰依するようになったのだと彼は語った。
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