昔から、同性に恋をしてきた。
はっきりと自覚したのは中学生の頃だ。仲の良かった部活の先輩が彼女が出来たと言っているのを聞いて、桐島はそこではじめて自分の好意の種類に気がついた。はじめての恋で、はじめての失恋だった。
桐島は自分の性的志向について悩んだことはあまりない。交友関係が狭い自覚はあるが、友人や家族には恵まれているんだろうなと思う。恋が実ったことはないが、これは性的志向ではなくて桐島自身の問題だ。
両思いになれたら、を想像することはあったが、それを現実にしようとは思わなかった。小説やドラマや周囲の「恋人」を見ていると、なんとなく自分には向いていなさそうな気がした。
だから桐島にとって恋は、一方的に遠くから眺めるだけのものだった。それはそれで十分に幸せだったと思う。少なくとも、当時の桐島はそう信じていた。
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