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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    2022-06-23/今日の空閑汐♂デイリーはアメリカ校に行ってる2人である。

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #BL

    空閑汐♂デイリー800字チャレンジ:23 はじめて、空を飛んだ。誰かに乗せてもらう事もなく、誰かを乗せる事もなく。自分ひとりの命を操縦桿に乗せて、艶やかなプロペラ機を一人だけで飛ばした。
     その事実を思い出し、汐見はひとり暗いベッドの中でほう、と息を吐く。両耳に入れた無線イヤホンからは陽気なメロディが流れていた。
     すっかり慣れてしまった寮の硬く狭いベッドに良く似た――しかし彼が普段暮らしている寮ではないその場所で、ベッドと部屋を仕切るカーテンを締め切った一人だけの空間でごろりと寝返りを打つ。背中に空閑の体温はない。しかしそれでも、実家に帰った時に感じた一人寝の寂しさはなく――汐見の胸に残るのは高揚感だけだった。
     自家用操縦士ライセンスの取得を目的にやって来た、カリフォルニアにある国際航空宇宙学院のアメリカ校。短期滞在用の四人部屋に用意された二段ベッドの上段。それが汐見に与えられた今の寝床で。下段には空閑が、そして反対側の壁にもう一つ置かれたベッドの上下段には同じ日本校から選抜されたクラスメイトがそれぞれ一人づつ。
     空閑以外の同室が良く汐見に絡む男ではなかった事だけは汐見にとって幸いであったが、日本校のように同じベッドで空閑と眠るというのは流石に無理がある。
     汐見が上段を選択したのは、単純に空閑が寝ぼけてそのまま汐見のベッドに潜り込まないようにという空閑に対する信用の無さによるものだ。
     就寝時間をとうに過ぎたこの一室は、すっかり照明が落とされ手元の端末から放たれる光だけがカーテンの内側を照らしていた。昼間の高揚感が抜けきらず、寝入る事が出来ていなかった汐見が手慰みのように弄ぶ彼の端末に、ひとつの通知が表示された。
    『アマネ、寝てる?』
    『いや、起きてる』
    『俺も』
    『だろうな』
     メッセージアプリの着信通知に表示される名は、彼の下で寝ている筈の男で。短い言葉の応酬みたいなやりとりを空気を震わせる事なく彼らは繰り返す。
    『今何してる?』
    『音楽聴きながらお前と話してる』
    『何聞いてるの?』
     空閑からの問いに、ふむ、と小さく唸った汐見は片耳のイヤホンを外し、下段へとそれを放る。小さくうわ、という声が汐見の元へと届いた。
    『相変わらず選曲が古いね』
    『うるせ』
    『ま、俺も好きだけど』
     汐見が聴いていたのは、百年以上も昔に流行ったポップスで。軽快なリズムとメロディで、誰と踊ってもいいけれど最後には自分の元へと戻ってきてと歌っていた。
    『アポロ計画にも携わってた機関があった場所で、その頃に流行った曲を聴くってのが良いんだろ』
    『そういうとこ好きだな』
     互いの片耳に差し込んだイヤホンからは、次の曲が流れる。空閑から届いたメッセージを見ながら、つい緩む頬に力を入れて汐見は端末を操作する。
    『てかヒロミ、お前明日ソロだろ。早く寝ろよな』
    『初ソロはどうだった?』
     同じタイミングで講習を受けはじめた中で、一番早く一人で操縦桿を握ったのは汐見だった。日が昇れば、次は空閑がその席に座る。空閑のメッセージにゆっくりと昼間見た光景を噛み締めるように笑みを浮かべた汐見は、一文だけをその画面に打ち込んで、ようやく枕元へと自身の端末を放ったのだ。
    『最高だったに決まってるだろ』
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