空閑汐♂デイリー【Memories】03「アマネ! この間女の子に熱烈な告白されたんだって?」
久々にご飯でも、と顔を合わせた瞬間に楽しそうにそう口にするのはフェルマーで。そんなフェルマーの第一声に汐見は肩を竦める。
「よく知ってるな、女の子って言っても本当に小さな子供だったからな。すぐに忘れるだろ」
「あれは本気の目だったよ、俺あの後ヴィンに泣きついたもん」
汐見の肩口から不満げに声を上げるのは空閑で。ズシリと体重を掛けられた汐見は、その重量には文句を言わず「出所はお前かよ」と呆れたように深いため息を一つ零した。
「空閑は相変わらずだな、クラスでもこんな感じなの?」
「入学したての頃にヒロミが牽制しまくったせいで、同期達から生暖かく見守られるようになった」
苦笑混じりの篠原に問われた言葉に、汐見が答えていれば「アマネ狙ってそうな奴も居たんだよ!?」と背後から再び不満の色が滲んだ声が飛んでくる。
「あのなぁ、ヒロミ。俺はそんなに狙われるような人間じゃないし、狙われた所でヒロミ以外には興味ないんだから問題無いだろ」
今日は面倒臭い方だな、と内心で嘆息した汐見は肩口に顎を乗せている空閑の頭を雑な手つきで撫でてやる。そんな光景を見せつけられるフェルマー達は苦笑を浮かべていた。
「空閑も相変わらずだが、汐見も相変わらずだな」
ため息混じりに溢された高師の言葉に、汐見は笑う。
「まぁな、ヒロミが安心するならその方が良いだろ」
「愛だねぇ」
「おう」
フェルマーの合いの手みたいな言葉に、短い言葉と共に頷く汐見は視界の端に見えている空閑の頬へと唇で触れて。そんな戯れのようなキスを贈る汐見に、篠原はやけくそじみた声を上げる。
「ああもう! お前らは時と場所と場合を考えてくれよ! っていうか、四六時中こんなんなのか!? 高校の時もう少し落ち着いてたよな!?」
篠原の声に汐見は今更だと口元だけに笑みを浮かべる。今更取り繕って離れても、互いに良い事なんて特にない。
それであれば包み隠さずこうしていた方が、面倒は少ないし同期も生暖かい視線を送るだけで面倒な絡まれ方をしないし――なんて言ったって空閑の機嫌がいい。面倒臭い空閑も嫌いではないが、脳内花畑ポジティブシンキング野郎をしている空閑の方が楽しそうなのだ。
そしてそんな空閑の姿は、汐見を人知れず安心させてくれる。
「日本校の頃みたいに変な絡まれ方しないしな、こんなんでヒロミが安心するなら俺は構わないし」
それが一番合理的だろ、危うく口から溢れそうになった一言を飲み込んだ汐見は篠原に向けて楽しげな笑みを見せるのだ。