『Alone on the Hitman Red Eye』リプレイ【キャラクター設定メモ】
一人称:わたし。
女性。年齢不詳。20代のようでもあり50代のようでもあり。夜行列車にも関わらず薄くけぶったサングラスをかけているので、表情は見えづらい。質素な服装をしている。旅行者にしては荷物は少ない。
体格はかなり細い。棒のような印象。性的魅力はほとんど感じられない。特になんの印象も残さない雰囲気。
名前は敢えて設定しない。名無しのオプ。
【part.0】
列車は定刻通り駅を出発した。
ビズのはじまりにはまだ早い。わたしは車内の座席に身を沈めつつ、車窓を流れゆくブルーの夜景に目をやった。
美しい。
だが、それだけだ。美しさとわたしはなんの関係もない。
わたしは車窓から目を離し列車の進行方向に向き直る。ゆりかごにも似た微かな振動が心地よかった。
【part.1】 (1D6) → 4
♢4:ダイヤのA
無意識に――そう、無意識だ、ついうっかりとわたしとしたことが――斜め前の席を陣取る、いかにもビジネスマン然とした雰囲気の男性に目をやった。相応の年齢にさしかかっていくらかふっくらしはじめた、何処にでもいる一般男性の中年。
なにかを勘付いた彼もちらりとこちらを眺めやる。
瞬間かちあうわたしたちの視線。小さな黙礼を互いに交わす。
わたしは反射的に唇を動かした。我ながらなにをやっているんだ、彼が読心術を心得ているわけはなかろうに……。わたしの後悔とは裏腹に、意図だけはどうにか伝わったらしく、彼はごそごそと居住まいを直しはじめた。
正しい着席の姿勢を取る。手荷物から夕刊を取り出して開く。彼が夕刊に目を通すそぶりは滑稽なぐらい真剣だった。
ならばわたしも応えなければならない。わたしは目を閉じる。息を吸う、吐く。しばしの瞑想。完全なビズには出来うるかぎり完全に近いハートを必要とするからだ。
※
以降の展開と整合が取れなくなったので、このパートは大分書き直した。自分が反省会するためのいい材料だからα版もどっかにあげるかもしれない。
【part.2】(1D6) → 5
♣9:クローバーの9
メンタルの完成までにはもうしばらく静穏に時間を割かなければならない。目を閉じておとがいをいくらか上げて、やわらかく目を閉じる。薄く淡い瞑想。少しずつ完成に近付く集中力。
だのに、わたしの挙動の何処が気に触ったのだろうか。ドカドカとがに股で通路をウォーキングする、いかにもといった風情のチンピラがわたしに目を付けたようだ。やりにくい。わたしはとかく何事も起こらないようにと祈りながら、うつぶせてその場をやりすごそうとする。が、そうは問屋が卸さなかった。
チンピラは断りもなく(そりゃそうだ)オラオラと彼が言いがかりを付けはじめた。わたしを弱者と侮ってことだろう。下に見られること自体はかまわない。
だが、今はどうしたってビズの遂行が最優先だ。すみませんすみませんと頭を下げつつ、わたしはポケットから取り出した紙幣を1枚握らせる。彼は悪態をつきながら私を解放した。
必要経費として依頼者にあとで請求しなければ。心中だけでため息をつく。
※
> スクリプトキディとは、インターネットを通じて外部のコンピュータシステムへの侵入や妨害などを行う攻撃者(クラッカー)のうち、自らは技術力や専門知識がなく、他人の開発した攻撃ツールを入手して使用するだけの者のこと。
へー。初めて知った。
※※
このへんで主人公を探偵にしようかなと思い立つ。名無しのオプだし。
【part.3】(1D6) → 4
♢5:ダイヤの5
さあ、そろそろビズを遂行しても良い頃だろう。『わたし』が立ち上がると隣席の後輩がやにわ情けない顔になった。うるさい、おまえはただの数合わせだ。座ってればいいだけだから楽な仕事だろうに。
「待っていろ」
わたしは短く言い捨てて彼をうっちゃった。電車の進行とは逆方向に歩みを取る。
後輩のビジネススーツはあまり板に付いていない。いかにもフレッシュマンといった雰囲気で、だから連れて歩けないのだ。
この仕事にはいつだってプレーンが求められる。そしてなにより最上級のクールを。
※
突然生えた後輩のせいで探偵設定が完全に固まった。さすがに殺し屋はずぶの素人の後輩連れて歩かないだろうて。ギャグならありだが、今回はやめておく。
【part.4】 (1D6) → 1
♣8:クローバーの8
通路をひとりで進む。と、
「落としましたよ」
ポロシャツを着た爽やかな風情の青年に声をかけられ、ハンカチを手渡される。一瞬トラップかと警戒したが、ハンカチはたしかに『わたし』のものだった。『わたし』としたことが初歩的どころでないミスだ。後輩の目前でなくてよかったということにしておこう。
「どういたしまして」
素直に受け取る。男のシャツの襟には列車会社の公式ピンズが光っていた。
※※
駅員設定を上手く生かせなかったため「非番の駅員がたまたま列車に乗っていた」といういささか苦しい背景がある。
【part.4】(1D6) → 5
♡K:ハートのK
ここまではさして滞りなく行程通りだった。が、いよいよといおうか、予想外の
「近田さんじゃないですか!」
近田はわたしの数ある偽名の一人だった。
げ。
慌てて振り向くと、以前のビズの関係者が朗らかな態度で座席の一角に腰を落ち着けていた。
まずい。
彼はその年齢にしてはなかなかの富豪だが、変わった嗜好の持ち主らしく、どうやら『わたし』に好意を寄せているらしい。さて、如何にして密やかに場を収めるべきか。
しかし、わたしは幸運だった。置いてきたはずの後輩が「先輩!」と姿を現したからだ。ちょうどいい。こいつも富豪とは顔見知りだからこいつに相手をさせよう。
「わたしの代わりにこいつの相手を頼む」
「え、あの、ちょっと……!」
タイミングは今しかない。だから、わたしがこいつの相手を手にするわけにはいかないんだ。後輩の言い訳のいも始まらぬうちに、わたしはそそくさとその場を離れた。
※
まさか後輩が役に立つとは思わなかった。
【part.5】 (1D6) → 2
♡3:ハートの3
そして『わたし』はようやく彼の元へ辿り着いた。いたってシンプルな、けれどもその実態は高級ブランドの一級品を身につけた彼は、『わたし』の昔の友人……真っ赤な嘘だけれどもそういうことにしておいてくれ……だ。彼は『わたし』のことなどまるで気付いていないように見える。そうだろう、『わたし』は変わった。
見掛けを着飾ることばかり考えていたあの頃の『わたし』はもういない。高額のハンカチを贈られて心底うれしがっていた『わたし』はもういない。
ファッションモデルらしい女性を侍らせてにやつく彼をペン型のカメラで盗撮する。今日の目的は達成した。
『わたし』はしがない私立探偵、今日の仕事は不倫の証拠を得ることだった。依頼人――はじめのビジネスマンはファッションモデルの旦那だ――は満足するだろうか?
どうでもいいことだ。そういえば彼と別れた原因も彼が二股をかけようとしたことがきっかけだったな…と、なんの感情もなしに思い出しながら、『わたし』は彼の傍らを通り過ぎる。今、彼が気付いてくれたなら、昔の馴染みで証拠の1枚ぐらいどうにかしてやってもいいのに。
が、彼は愛人の容姿に見とれるばかりで、こちらのことなぞついぞ気にもとめなかった。まあ、そうだろう。今の『わたし』はそのように『わたし』を作ったのだから。さようなら。口の中だけで呟き、わたしは車両をついに通過した。
※
そういうわけでちんけなビズは終了。
なんて安い仕事なんだ。だが、わたしはそういう系のハードボイルドが好きなのよ。