『The Swamp You Die In』リプレイThere is peace in the SWAMP though the quiet is DEATH.
――Bret Harte
page1:What brings you here3 (1D6):
You find a mysterious map saving there's treasure in the swamp.
What are you hoping the treasure could be
ぼくんちのパパとママがつまんないことで言い争うようになってからもうどれぐらい経つだろう。
けんかは嫌いだ。けんかが始まると、パパもママもぼくのことなんてまるで見なくなってしまうから。ぼくのことを透明なおばけみたいに無視して、すごく長いあいだ、お互いに汚い声と言葉で罵り合う。物が飛び交うことだってしょっちゅうだ。このまえなんかけんかが原因で僕の大事なマグカップが割れてしまった。大好きな樫の木のマグカップだったのに。こんなふうにして、いつのまにかいろんなものが壊れていくんだろうか。
それにしても今日のけんかは何がはじまりだったんだろう? ぼくには全然わからない。でもところどころ「お金」ってことばが聞こえた気がする。
お金があればパパとママは昔のように戻ってくれるんだろうか。
そう思ったから僕は沼へやってきたんだ。納屋で見つけた宝の地図をにぎりしめて、お金じゃなくてもいいから宝石とかコインとかいった価値のあるキラキラのなにかが見付かればいいと思いながら、禁じられた沼地へ足を踏み入れた。
page2:Coming Alone was a bad idea2 (1D6):
Here's the cabin you are warned about.
What happend here
沼地の傍らには古びた見張り小屋があった。ほとんど崩れかけのぼろ小屋だ。一目で誰も住んでいないとわかる。
僕ははやくも一人で沼地へ来たことを後悔しはじめていた。といっても僕にはいっしょに危険を冒してくれる親友なんていやしないのだけど。ああ、でも昔はいたかもしれない。どうだろう? 最近の僕はすこし物覚えがわるいんだ。
見張り小屋では昔、僕の生まれる前、殺人があったのだと聞く。殺された人は沼に捨てられた。その人の体は腐ってどろどろになって溶けてなくなってしまった。
だから今もこの沼の底には骨があるはずなんだ。でもそれは本当じゃないと思う。僕は骨なんか欲しくない。僕と僕のパパとママを救ってくれる夢のような宝物が欲しいんだ。
page3:The place is not right5 (1D6):
There is a grave stone here.
Do you know whose it is
宝の地図にしたがって僕は見張り小屋の後ろに回る。すると、思いもがけぬ邪魔者が僕の行く手に立ちはだかった。
墓石だ。刻まれたエピタフは古くてとても読めたものじゃなかったけれど、それが立派な――もしかするともしかして貴族様のお墓かもしれないってことは、僕にだってなんとなくわかった。
心臓が凍り付くかと思った。こんなの地図になかったじゃないか。上に下に動悸のおさまらない胸をおさえながら、僕はもう一度地図をたしかめた。やっぱり、ない。お墓の噂だって聞いたことが、ない。
どうしてこんなところにお墓があるんだろう? いったい誰が建てたんだろう?
page4:You regret coming here4 (1D6):
You step on something extremely sharp.
Is it safe to yell in pain Can you help it
おもわずしらず僕は一歩退がる。僕の気持ちはずっと地図に向いていたから、足下がおろそかになってしまっていた。
「あっ!」
なんだ酷く鋭くものを踏みつけた僕はバランスを崩して転倒する。このあたりの土地は水分が多くてやわらかいから怪我はしないはずだった。でも、駄目だった。僕が転んだ原因となった酷く鋭いものの正体は墓石のかけらだった。墓石のかけらは僕の向こうずねに大きな擦り傷を遺した。
助けて、僕は言いかけて口をつぐむ。誰も助けになんか、来ない。僕は誰にも断らずにここへ来た。パパとママに言えばきっとどちらかが僕をぶつだろうから……。
僕を助けてくれる人は何処にもいない。昔はいたかもしれない。どうだろう? 僕の記憶はやっぱり曖昧だった。
page5:It's too late to turn back3 (1D6):
You force your way forward by making a promise to yourself.
What will be the first thing you do when you get home
このままじゃ帰れない。だってなにも変わらないじゃないか。
なにもなかったようにそしらぬ顔をした僕が今更、手ぶらで帰宅したところで、パパとママはあいからず意味のない冷たいだけの言葉をぐるぐる振りかざして僕を責め続けるだろう。そんなのいやだ。最悪な毎日がこれから続くだけなんていやだ。
だから僕は傷を我慢して前に進んだ。宝の地図は僕に明るい未来を示してくれると信じて。それ以外のことはかんがえられなかった。
page6:This is far enough3 (1D6):
You are greeted by a loved one who died long ago.
Is this a comforting reunion
泥濘むほとりをひたすらに進む。生ぬるい泥水が疵口に沁みるけど、僕は気付かないふりをした。そして僕はとうとう地図の場所まで辿り着いた。これできっと宝物が手に入る、僕のこれまでの人生を吹き飛ばしてくれるぐらいのとっておきがあるはずだ。
――けれども。
目的の場所にあったのは宝物じゃなかった。また墓石だった。いや、違う。新しい墓石が僕のまえにあらわれたんじゃない。これはさっきの墓石そのものじゃないか、だって同じところが欠けている。
どうして?
僕は混乱する。ちゃんと地図通りに歩いてきたのに、なんでこんな意地悪な景色を見せられなきゃいけないの?
膝が冷たく嘲笑う。力が入らない。僕は足を崩してへたりこんだ。どうしよう、どうすればいいんだろう、どうにもならない。僕は宝を手に入れたいのに、だからじきに立ち上がらなきゃいけないのに、心はちりぢりな方向へ逸り、僕は現実の位置を見失う。
「あなたはもう帰らなくてもいいのよ」
優しい声が風に流れて届く。思わず知らず僕は答える。
「……おねえちゃん?」
「ひさしぶりね」
ああ、懐かしい声色。振り向くとそこには何処となく僕に似た容貌の女性が、はかない笑みを浮かべていた。
どうして忘れていたんだろう。僕には姉がいた。お気に入りのマグカップをくれた大好きな姉だった。昔、この沼で死んだ。通りすがりのならずものが僕の姉を沼の底に沈めた。僕が見た、そして今も目の前にある、あの墓石は姉の墓碑に他ならない。
僕は、全部、思い出した。
「辛かったでしょう。ごめんね、迎えに行ってあげられなくて。でもあなたのほうから来てくれて、ありがとう」
ついに僕は知る。僕の宝物とは姉だ。永遠に失われたはずの姉が、今、僕の側にいる。これ以上の幸せが何処にあるんだ? 僕は姉に抱きすくめられる。しびれるような喜びが背骨をたちまち駆け上がる。
僕は、沼から、帰らない。