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    rotten_Mame

    @rotten_Mame

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    rotten_Mame

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    『駆/け/巡/る』パロ
    前にぷらいべったーに載せていた、プロチームの先輩(モブ)×久/保/田 です。本当にごめんなさい。モブ綴?になるのかな。わからない。
    一瞬だけR-18が入ります。あまり明るくないです。
    苦手だと思われる人は読まないでください。ごめんなさい。

     この男は数年後の自分だ、と直感的に思った。
     たいして功績も残せず、かといって今の地位を手放すほどの勇気もない。重ねる年齢と肩身の狭さは比例していき、常に人生のどこかに言い訳を探している。
     落ちぶれた先輩を見て、そんな男に俺も数年後なるのだと感じてしまった。

     俺が高校三年生の時、チームは全国大会まで進出し、優勝まではいかなかったが、ここ数年の部の記録の中で最も優れた成績を残した。その後スカウトマンから声がかかり、俺はめでたくプロ入りを果たした。
     しかしプロの世界は甘くなかった。チームに貢献するどころか、試合における自分のすべきことをやり遂げることさえもできない日々が続いた。高校時代に全く無名だった同期の方が活躍する日もあった。自分がいかに井の中の蛙であったかを思い知った。
     入団したばかりのころから、先輩とのコミュニケーションを取るために、飲み会にはほどほどに参加していた。しかし次第にそこは、コミュニケーションを取る場ではなく、芽が出ない落ちこぼれ同士の慰めの場だと気づいた。
     今日も先輩の中でも特に交流のある人と、二人で飲みに来ていた。

    「なぁ久保田、お前は女いるのか?」
    「いや、いないっすよ」
    「そうなの?モテそうなのに」

     入団して半年が経ったころ、高校時代から付き合っていた彼女と別れた。試合で功績を残せず、苛立ちをプライベートに持ち込む俺に、彼女も次第に愛想をつかしたのだろう。
     先輩は今日もその落ちこぼれ二人の飲みの場で、アルコールを流し込みながら、身の上話を続けた。

    「もう四年……や、五年かな、付き合ってる彼女がいてさ」
    「へぇ、長いっすね」
    「うん。んで、結婚したいっぽくて、その彼女」
    「あー、そんくらい付き合ってると、やっぱそうっすよね」
    「うん、だから俺、サッカーやめた方がいいのかなって」

     先輩はグラスの底に二センチほど残っていたビールを飲み込んだ。
     俺は何も言えなかった。その方がいいと思ったからだ。本当にそう思ったからこそ、俺は何も言えないのだ。

    「なぁ、久保田」
    「はい」
    「タバコ吸っていいか?」

     吸っていいも何も、先輩の目の前の灰皿にはもう既に五本以上の吸い殻が置いてある。どうぞ、と言うと、先輩は胸ポケットから本日六本目のタバコを取り出して、口にくわえた。先輩はぼんやりと、食べ残しが散らばったテーブルを見つめていた。

    「辞めるんすか」
    「ん、どうしよーね」
    「……」
    「タバコ、お前も吸う?」
    「や、さすがに……」

     タバコだけはだめだ。
     こんな近くで副流煙を浴びているので、今更かもしれないけれど、タバコに手を出しては終わりだという理性だけはまだ意識の根っこにあった。
     スポーツをやる人間にとって、呼吸を行う肺を痛めつけるという喫煙は、自殺行為だ。自分のスポーツマン人生を自ら閉じることを意味する。
     『スポーツマン人生』という言葉を自分に向けて使用した途端、急に脳みその真ん中が冷たくなった。サッカーで功績を残せないサッカー選手の自分は、本当にスポーツマンなのだろうか。

    「大丈夫だって、久保田。酒や女と同じ。やりすぎちゃだめだけど、少しならストレス発散に効果的だって」
    「……はは、いや、その」
    「一本吸って、合わなきゃやめればいいさ」

     先輩に無理やりのような形でタバコを咥えさせられた。火を貰って、見よう見まねで喫煙者の演技をする。なんだ、たいして気持ちのいいものじゃない。この一本が消えたらやめよう。

    「女もタバコも、もし俺の手元になかったら、俺はサッカーを続けられていたと思うか?」
    「……どうっすかね」
    「お前は何もなくていいな。煩わしい、足かせになる、厄介なものを」

     眩しいものを見るような目で、先輩はこちらを見る。
     あぁ、そうだ。俺は何もない。サッカー人生を途絶えさせる女も、タバコも。そして同時に、サッカー人生を照らすような才能も。

    「お前、けっこう可愛い顔してるよな」

     先輩は俺がたどたどしく咥えていたタバコを奪い取って、俺の顔をじっと見つめた。

    「は、え?なに、そっちのケもあるんすか」
    「んー、どうだろうね。昔一回だけ男と付き合っていた時期はあったけど」
    「あ、そうなんすね……」
    「結婚したら、こういうこともできないだろうから。……なぁ」

     酒も女も、タバコも、やりすぎてはいけないけれど、少しならストレス発散に効果的らしい。この男はそう言った。なら、男はどうなんだ。男同士で『遊ぶ』のは、この先の人生をどう転がしていくのだろうか。

    「先輩……」
    「こっから歩いて五分くらいのところに、ホテル街あるの知ってた?」

     目の前の男は、きっと数年後の俺だ。感覚的にわかってしまう。
     自分が何をしたくて、何をするべきで、何になりたいのか。何もわからない真っ暗闇の中で、タバコの煙のように形のない不確かなものに依存してしまう人間に、俺はきっとなってしまうのだろう。


     はじめて男に抱かれた。
     ラブホテルのデカいベッドに組み敷かれながら、これまでのしょうもない人生が走馬灯のようによみがえってきた。
     近所に住む幼馴染のお兄さんにサッカーを教わった。自分でも何が作用しているのかわからないけれど、何故だかあっという間に上達した。練習を始めてすぐに、目に見えてお兄さんよりも上手くなった。
     そのまま母親の勧めでサッカークラブに入った。その中でも俺は一番上手かった。大した努力をしたわけじゃない。同じかそれ以上の練習をしている周りのチームメンバーが、どうしてこんなにも下手なのか理解できなかった。

    「お前は地元を出てサッカーの名門校に行け」

     ある日、クラブの練習を終えるとコーチにそう言われた。中学三年の春のことだった。俺は「はぁ」と何とも言えないような返事しかできなかった。

    「サッカーの才能があるんだから、地元の高校のサッカー部じゃもったいない。有名な高校に入ればそれだけスカウトマンの目に留まる可能性もあるんだから」
    「それって、これからも俺はサッカーで進んでいくってことですか」
    「なんだ、他にやりたいことでもあるのか?」
    「いや、ないっすけど……」
    「じゃあサッカーを続ければいいじゃないか。お前には才能があるんだから」

     才能、という言葉を舌の上で転がして、飲み込んだ。どうやら俺には『才能』と呼ばれる、俺の人生の舵を切るほどのものがあるらしい。
     コーチに勧められた高校の願書を出した。サッカー推薦で、特に勉強することなく合格した。
     高校に入ってから、少しだけサッカーを楽しいと思えるようになった。しばらくして、その理由は自身の変化などではなく、サッカーを愛する宮木の存在であると気づいた。このサッカーを心から楽しむ男のためなら、俺も頑張ってもいいと思った。
     そうだ、それで、一緒にプロになれたら、きっともっと楽しい時間が続くだろうって……。


    「あっ……!」
    「、久保田……ん、はぁ……」
    「あっ、あー、いく、イきそ……」
    「おまえ、本当に初めてなの?」
    「はっ、ん!いく、いきた…イきたい……!」
    「んー、前触ってやるから、な」
    「あっ、きもち、そこ……ウラっ、そこぉ……!」

     射精したあと、ホテルの天井を見ていると、意識が少しずつ戻ってくる。
     あぁ、俺はいつも、何かに流されて生きていたんだな、と気づいて、絶望した。
     サッカーを始めたのも、クラブチームに所属したのも、あの高校を選んだのも、そしてプロ入りを決めたのも、俺じゃない。俺の周りにいる他の人たちが促してくれた。俺は何も自分で決めていない。周りの流れに身を委ねて、勧められるままに、緩やかに生きてきた。
     俺は本当にサッカーをしたかったのだろうか。もしサッカーを始めていなかったら、俺は今何をしていたのだろう。宮木のいないこのチームで、俺は何を成し遂げればいいのだろうか。
     今、俺の中に何があるのだろう。

    「俺、今季成績を残せなかったら、サッカーやめるわ」
    「……そうっすか」

     先輩は事後にベッドサイドで、タバコを吸いながらそう言った。俺は一糸まとわぬ姿で横になりながら、曖昧に応えた。

    「タバコ、お前は続けるなよ」
    「先輩が吸わせたくせに」
    「本当だな。俺のせいだな、全部俺の」
    「……」

     結局先輩はその年も成績を残すことができずに、気づいたらチームを退団していた。退団後に何をしているのかも、例の彼女と結婚をしたのかも、俺は聞かされなかった。先輩の同期だというやつらは、この場を立ち去った男の話を一切しなかった。
     俺はあの日から、たばこを惰性的に吸い続けていた。
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    rotten_Mame

    DOODLE学パロネファ。フォ学じゃない。
    前に書いた学パロと同じ設定で、ファウストが高校を卒業する前の話。
    今回は健全。
    違う家の子どもだった男 そう言えば、と独り言ちて、彼は突然立ち上がった。そして部屋に備え付けのクローゼットの中から何かを探る。しばらくその様子を座ったまま見ていると、ようやく目当てのものを発見したのか、彼はこちらを振り向いた。

    「使っていないネクタイがあったけど要る?」

     クローゼットから取り出されたのは、買ってから一度も使っていないことが明らかな、ビニル袋に入った状態のネクタイだった。学校で指定されている、何とも言えないカーキ色のものだ。

    「どしたの、それ」
    「入学した時に予備として一本多く買ってもらったけど、結局使わなかったんだ。この間部屋の掃除をしていたら出てきた」
    「あんた、物持ち良さそうだもんな」

     あと一ヶ月で、ファウストは引っ越しをする。大学進学を機に、彼が18年間過ごしてきた名残で満ちたこの実家から出ていくのだ。今二人で寛いでいる彼の部屋には、既に段ボールがいくつか積まれている。引っ越しの準備を少しずつ進めているのだろう。その荷物をまとめている最中に、未使用のネクタイをクローゼットから見つけたのだと想像を働かせた。
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    rotten_Mame

    DONE2022/11/05 いていな2展示作品

    人間の家族ができたネロが、家族の死後にファウストの元を訪れて居候する話。
    ネロとファウストの間に恋愛感情はありません。ネロ×モブ人間の描写が中心です。

    パスワードはお品書きに記載してあるので、そちらをご参照ください。

    長い展示品になってしまいましたが、メッセージボードに書き込みなどしてくださると励みになります。
    花が枯れたら会いに来て 洗濯物が溜まった日の朝は早く起きる。そうでなければ昼過ぎに起床して、朝昼兼用の食事を取る。洗濯物があったとしても天気が悪ければやっぱり昼過ぎに起床する。それがファウストの、嵐の谷での生活だった。ここ東の国は、晴れの日が他国と比べて少ない。それに加えて谷での生活は天気に左右されやすいので、晴天の朝を逃すと着るものに困ってしまう。
     昨晩、ファウストは寝る前に戸締りをしながら、次の日が快晴になると察した。何百年も生きているからか、はたまた彼が魔法使いだからなのか、その因果関係は不明だけれど、ファウストは150歳を超えたあたりから、次の日の天候を空気中の水分量や風の動き、その土地の精霊のざわめきによって予測できるようになった。同じことを言う魔法使いもいれば、何百年も生きていてもその感覚自体がわからないという者もいる。
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