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    せくぴすぱろ至綴

    #至綴
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    斑類ってのは面倒だ。
    種の存続?そんなん無理に決まってんじゃん。もう何年も前に証明されただろ?同類同士掛け算すると劣性遺伝ばっかり受け継がれるって。重種なんてその代表格じゃん。どんどん減っていく斑類に焦って同性同士で子供作れるようにしたものの生まれた子供の貧弱なこと。
    要するにオワコンなの。
    「だから、無駄なんだって時間の無駄。見合いなんてする時間があるならゲームするよ。ただでさえ仕事で忙しいってのに。時間がもったいない。」
    目の前に置かれた冊子に目もくれず俺は画面に集中する。
    孫の顔を見たい両親には悪いが俺は結婚する気もないしましてや子供なんてもってのほかだ。そもそも子供苦手だし。どうせその内あの見栄っ張りの姉が適当に重種捕まえるだろうからもう少し気長に待ってほしい。
    「……至、今度あなたの持ってるゲーム機の新しいのが出るそうね?最新機種だけあって相当値段も嵩張りそうだけれど……。」
    ピクリと体が反応してしまう。最近発表された新機種。ほとんど名前だけの情報で実際に出るのは数年越し。それでも大体の価格はすでに発表されている。当然買うことは決定しているが安い買い物ではないのは確かだ。
    「いつも忙しそうなあなたに時間を割いてもらうのだもの、お礼に買ってあげようと思っていたんだけれど忙しいなら……」
    「いやいや、大丈夫。その日はソシャゲーのイベントもないし、丁度新作も出てなくて暇な時期だから行ける。」
    「そう?それなら良かったわ。」
    にこやかに笑う母に手のひらで転がされているのを感じる。くそっと心の中で悪態をつくものの一日潰れる対価がハードウェアというならいい買い物だ。休日出勤だと思えばいい。
    「一応確認しとくけど、別にそのお見合い進めなくてもいいんだよね。」
    「ええ、私が口を出すのはお見合いまで。その後はあなたが決めることだもの。まあ今回お断りしたところで次のお話を持ち掛けるだけですけどね。」
    熱心なことだ。
    話は終わったのか母は席を立ちキッチンに向かう。
    別に見合いについては今に始まったことではない。重種のお役目というやつで何度か引き合わされている。
    勿論不本意な俺は相手にしないし、見合い中もゲーム機を手放した事は無い。
    それでもという猛者も少なくはないが、そういう場合はお試しでうちに住み込んでもらうことにしている。
    大抵は俺のだらしなさに直ぐに出ていくし、粘っても俺の息子さんが全く息をしていないので泣く泣く出ていくのだ。
    一応言っておくと不能ではない。画面の向こうに住む照れ屋な嫁にはしっかり仕事をする優秀な息子だ。
    何度もそれを繰り返すうちに母も相手方に申し訳なくなったのだろう。最近はそう言った話すら出てこなくなっていたのだが、相手は余程いい家柄なんだろうか。


    月日が流れてお見合い当日。
    「母さん、これどういうこと。」
    「どうも、こうも。あなたも了承したお見合いよ。」
    「どう考えたって熊じゃん!今までずっと猫だったのに!」
    相手方が指定した料亭に充満する熊の匂い。嘘だろ、母さん。
    今まで同類を俺の嫁として宛がってきた母がまさか俺たちより上位種の熊樫を宛がうとは思わなかった。
    「母さん、俺にこのお見合い断っていいって言ったの嘘だったの!?」
    「落ち着きなさい。そもそも熊樫だったことは写真を見ればわかることでしょ。それを怠ったのはあなたの責任です。」
    ぐうの音もでない。どうせ断る見合いだと思って写真を見なかったのは俺の落ち度だ。
    「それにこのお見合いは断っても大丈夫よ。相手さんが良心的な方でね、重種として子をなすことは大切だけど双方合意のない結婚なんてどちらも不幸になし生まれてきた子が可哀想だからって。」
    それを聞いてようやく胸をなでおろす。
    良かった。相手には悪いが熊女なんてごめんだ。それにしても斑類にしては本当に良心的な思考だ。金を払って種付するこのご時世に。余程お人好しに違いない。
    結婚はごめんだけれど、相手方に少し興味がわいた。
    「茅ヶ崎様、皆木様がご到着されました。」
    店の女中が声を掛けてくる。ようやくお出ましのようだ。
    母に腰をはたかれ背筋を伸ばす。お見合いの結果をどうするかは俺にゆだねられてはいるものの相手は格上。粗相はよろしくない。
    大丈夫。いつもの仮面を被るだけだ。
    笑顔を張り付け終わったその時、襖がスッと開いて向こう側が見える。
    貼り付けた笑みがストンと消えたのが分かった。
    足は膨張色と言われる白を纏っているくせに細く、腰もきゅっと引き締まっている。首元には緩くネクタイが結ばれ、除く首筋は少し日焼けをしているのか健康的な小麦色だ。髪は染めているのか頭のてっぺんと明らかに色が違う。顔は幼く中学生とまでは言わないもののお見合いの場には不釣り合いに見える。その中で一際目を引くのはエメラルドグリーンの瞳。目元から人柄の良さが滲み出ている。
    男だ。そこに立っていたのは男だった。
    頭の中で大量の文字が駆け巡る。
    え!?男!?母さん今まで俺に男宛がったことなかったじゃん!ていうかこいつ何歳?お見合いとか早くない?人生そんなに焦んなくても。足なっが!腰ほっそ!え?大丈夫?折れない?うーわ!もう見るからにいいやつじゃん。いい人オーラにじみ出てるじゃん。ていうか!
    「どちゃくそ好みなんですけど……」
    俺の消え入りそうな声は隣の母にのみ届いたようだ。

    「遅くなりまして申し訳ございません。この度はお時間を頂戴致しまして誠にありがとうございます。皆木の母でございます。」
    「こちらこそ、良いお話を頂けて大変恐縮でございます。申し遅れました。私が茅ヶ崎の母でございます。」
    親同士がにこやかに挨拶をする中俺は緊張しまくっていた。
    だって、相手が男だったのもびっくりだけど、好みにドンピシャなんだよ!
    「至、ご挨拶なさい。」
    「うえっ、あ、っと。茅ヶ崎至です。この度はご縁に恵まれましたこと感謝しております。本日はよろしくお願い致します。」
    やばい、狼狽えて変な声を出してしまった。笑顔で誤魔化したけどいけたかな。
    「……皆木綴です。今日はよろしくお願いします。」
    みなぎつづる……。噛みしめるようにその名前を半濁する。つづるかあ、俺もいたるだし子供が出来たら○○るかなあ。
    自分の思考にハッとする。落ち着け俺。どうした。相手は男だぞ!……ん?……男?
    そうだよ、男じゃん!しかも格上!俺の嫁じゃなくて俺が嫁の可能性大じゃん!
    今まで母親が宛がってきたのは嫁候補ばかりで失念していた。いくら好みとはいえ尻の処女を捧げるつもりは毛頭ない。
    (でも好みなんだよなあ……。)
    頭の中では大騒ぎしているものの、表には出さずにこやかに相手方と会話を交わす。
    普段からエリートサラリーマンのふりしててよかった。
    それにしても、先ほどから饒舌に話しているのは母親同士で当人で俺と綴君は挨拶以降会話をしていない。
    挨拶の時もなんか元気なかったし。これは親が乗り気なだけで本人も俺とおんなじ無理矢理連れてこられた口か?
    でもそれだと母さんが言ってた事前情報と食い違うんだよなあ。
    「それでは、私達はこの辺で。」
    「そうですね。至、しっかりお相手するのよ。」
    悩んでるまに親同士で話が付いたらしい。所謂『後はお若い二人で』ってやつだ。
    二人が出て言ったとたんに部屋がシンとする。
    どうしよう、俺コミュ障なんだけど。どんだけ外面かぶってても話題ふるのとか大の苦手なんだけど。
    「すみません、無理を言ってしまって。」
    「へ?」
    突然ふられた話題に頭がついていかない。
    「今日のことっす。こういうのあまり好きじゃないって伺ってたんで。無理言ってすみませんでした。」
    「そんなことない!……綴君こそ無理矢理連れてこられたんじゃないの?ごめんね。こんなおっさんが相手で。」
    誤解されたくなくてついでかい声を出してしまった。慌てて声を落とすも言ってる内容に自分でへこんできた。
    「そんな!無理矢理なんて!このお見合いは俺からお願いしたのに!」
    えっ!と綴君の方を見るとうっかり口を滑らしたのだろう慌てて手で口を塞ぐ綴君がいた。
    どう誤魔化すか考えるように目をキョロキョロさせたものの出してしまったどうしようもない事実にじょじょに顔が染まっていき、最後には隠すように机の上に突っ伏してしまった。
    可愛いかよ。どの動作も限りなくツボなんだけど。なに?事前にリサーチして来た?
    さっきの反応を見るに綴君自身が俺とのお見合いを望んだらしいのでその可能性もなくはないがもし演技だったとしても推しが俺のために努力してくれてるってだけでお腹一杯なので無問題。
    「……綴君てさあ、俺のこと好きなの?」
    びくりと肩が揺れる。机に押し付けいていた顔を少しだけ上げて目だけこちらに向ける。
    上目遣いありがとうございます。
    そんな内心おくびにも出さずにっこりと笑顔を向ける。
    隙間から見えた赤がより濃くなる。
    「……好きです。」
    くぐもった声で聞いた答えに得も言われぬ快感に襲われる。
    「……それは俺を嫁にしたいってこと?」
    途端ガバッと起き上って間抜けな顔をさらす綴君。鳩が豆鉄砲を食ったようとはこのことだ。
    「大丈夫?」
    俺が声を掛けるとまたガバリと机に突っ伏して顔を隠してしまった。
    消え入りそうな声で大丈夫ですと聞こえる。全然大丈夫そうじゃないけど。
    落ち着いたのか今度こそ起き上がった綴君はなんだか疲れた顔をしていた。
    「すみません、そうですよね。熊の男にお見合いなんて申し込まれたらそりゃそう取りますよね。」
    げっそりとして独り言なのか返事をしているのか曖昧な言葉が漏れてくる。
    目を右に左にとウロウロさせて両手を組んでもじもじとしている。
    今時萌えキャラでもそんなことせんわ。
    今日何度目か分からない萌えに襲われていると、覚悟が決まったらしい。
    「俺を茅ヶ崎さんのお嫁さんにしてくれませんか。」
    顔を今までの比ではなく赤く染めてジッと俺の目を見つめてくるのをきっかけにガラリと空気が変わったのがわかる。
    ああ、これは俺の雌だ。
    散々馬鹿にしていた斑類としての本能が訴えかけてくる。これは自分のものだと。誰にも渡すわけにはいかない。
    背中がゾクゾクとしてゲームでも得られない興奮が抑えられない。
    欲望のままに綴君の顔を掴み口を寄せる。
    「いいよ、俺のお嫁さんにしてあげる。」
    唇が触れるギリギリの距離で告げ俺はそのまま噛みついた。
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    MOURNING記憶にない町日
    故に尻切れとんぼ
     助っ人に西園寺が入ると聞いた時、ああ、このコンクールはもうダメだなと思った。天上天下唯我独尊を地で行く我が校きっての天才、西園寺エニス皇帝陛下。彼は前述の通り、協調性の欠片もなかった。カルテットを行う上で一番重要なのは息を合わせることだろう。誰とでも、いつでも合わせられる。それが一流に求められる素養だ。西園寺にはそれが欠けていた。だから無理だと思った。
     しかし、意外にも西園寺はカルテットを経て少しずつ変わっていった。人と変わることで今まで投げ捨てていた情緒が育ったらしい。当然、演奏にもそれはプラスに働いた。コンクールで優勝が狙えるほどに。もしかしたら、優勝できるかもしれない。出場すら怪しかった俺たちが。できるだろうか。いや、やってやろう。そうしたら、もう少しだけ勇気が出るかもしれない。

     なんて、青春っぽく表してみたが大したこでは無い。優勝できるかも、なーんて、浮かれた思考に引きづられ勢いの波に乗ってしまえー!ということである。そして乗った。展開が早い?? そんなことは知らん。そちらで適当に補完しておいてくれ。
     俺は教師である町田先生が好きだった。男性教諭である。惚れた理由諸々 3896

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    DOODLE至綴♀
    綴女体化
    初夜の手前、至の様子がおかしい
    俺には最近恋人ができた。五つ年下の学生でまだまだ若い、フレッシュな恋人が。フレッシュとかおっさん臭い? やめてくれ、ちょっと最近そういうのが気になる年頃なんだ……。
    えー、ごほん。話を戻して、まあ俺も若いから? やっぱりそういうこともね、視野に入れるわけで。お付き合いから半年、キスも済ませて、デートも片手の数はした。となれば、あとはもう、分かるだろ?
    綴は俺が初カレだって言うから、やっぱり夢を見させてあげたいって気持ちもあって。ちょっと気取ってホテルのフレンチなんか予約しちゃったりして、高くはないけどペアリングプレゼントしてみたりして? 漫画みたいに部屋の鍵出したら、あとはもうこっちのもんよ。
    恥ずかしそうに頷いてくれた綴の手を取って、最上階のスイートルームへ。案外スイートルームって高くないんだね。いや〜、貯金しといて良かった。
    二人で使うには広すぎる部屋。綴は、はしゃいだようにあちこちを見て写真を撮っていた。きっとそのうち脚本のネタになるんだろうけど、なんて説明するつもりなんだろう? きっとうっかり口を滑らせて、真っ赤になるんだろうな。
    楽しそうな綴はそっとしておいて、俺は 2192