灰色の男3やけに機嫌の良い少女の軽やかな足取りが街の喧騒に溶け込んでいく。
人並みも増えてきた午後。
ふと男は迷子にならないようにと思い立つ。男は少女の小さな手を握った。
少女は最初は驚いた顔をしたが、直ぐに嬉しそうな笑みへと変わる。
足並みを揃え、街を歩くと、少女が何かを見つけたかの様に声を上げた。
「あ!セリカ!」
声をかけられ振り向いた少女はゴスロリ調の布の重たいドレスを着ていた。
「なんだお前かよ。」
「なにしてるのー?」
「呆れてた。嘲笑ってた。」
「あざわらう?」
セリカの指差した方向を少女と男は合わせて見る。
そこには自動販売機の下に木の棒を差し込んでいる。若い青年の姿があった。
「かなしい...」
少女の残酷で素直な言葉が思わず漏れる。セリカも不遜な目で青年を見ていた。
「ロイド...かなしくないか?」
「ばか、あれには明日のご飯がかかってんだよ。一円を笑うものにはなんとやらってなー・・・」
ロイドは髪の毛やジャージに砂埃が付いていてもお構いなしに探りながら語っていた。
セリカは呆れ顔で吐き捨てる。
「知らん。レディにでも借りればいいだろ。」
「ばか、そんな恥ずかしい真似できるかよ。」
(今の姿は恥ずかしくないとでも...)
内心疑問に思う。誰がどう見ても哀れな姿だった。
少なくともこの場では少女とセリカだけはこうはなりたくない大人の見本として
ロイドは映っていた。
男は無関心にその場の様子を見ているだけだった。