そんな光景、エイリアン映画で見た。ベッドに座る二人の間には、ビニールに包まれた掌ほどの箱がある。表面には、軽妙し難いキャラクターが描かれている。
それを刑部はさっきからじっと見つめている。読みたくはないが、目に入る文字は“光る”とある。なにが光るって、ナニがだ。
「………晃」
「んだよ」
重々しい呼びかけに桐ケ谷は飄々としている。この箱を出した時からそうだった。
「色々言いたいことがあるが、まずこれはどこで手に入れた」
「ヤス…はいなかったな、ウロボロスのメンバーに貰った」
チームのリーダーになにしてるんだ、あいつらは。
眉間に皺が寄るのを自覚しながら、刑部は更に尋ねていく。
「で、なんでこれを今出すんだ」
「おもしろそうじゃん?てか今出さなくていつ出すんだよ」
たしかにそういう空気だったし、ゴムを用意しようと手を伸ばしたところだった。桐ケ谷が、そういやコレ貰ったんだけどと、問題のブツを通学鞄から出した途端にそんな雰囲気はなくなったが。
口を閉ざして箱を睨みつける下着一枚の刑部に、裸の桐ケ谷は息を吐いて頭を掻く。破天荒なくせにに、融通が利かなくて遊びがないのだこの男は。
「んな深く考えなくてもいーだろうが。ほら、付けてやるからパンツ脱げ」
「まて晃、俺はそれを着けるとは言ってない」
「いいからいいから、入れれば一緒だって」
箱を開け、個包装されている一つを千切り袋を破る。明るい緑色のそれは、既にほのかに光っている。
出してしまったそれに諦めたのか、やっと動きだして下着を脱いだので、刑部の足の間に入り装着する。
よく見えるようにと部屋の電気を消して振り返ると、踏ん反り変える刑部の真ん中で、緑色の棒がほのかに光っている。主に先が。
「おまっ、それ…!ふはっ、先っぽだけって、ははっ、くっそやべぇ!」
口を押さえているが、震える肩と漏れ出る声で笑っているのが丸わかりだ。
「やべぇ、写真撮りてぇ」
スマホを構える手を捕まえて、刑部は満面の笑みを桐ケ谷に向ける。
「晃?」
「あー、でもお前だって見たら絶対笑うって!」
「だから嫌だったんだ」
「んだよ、ノリわりぃな」
「…お前にも着けてやってもいいんだぞ」
「エンリョします」
「まったく…」
捕まえていた手を引いて桐ケ谷をベッドに転がすと、緑に発光する滾りを広げた後ろに押しつける。
「そーいやこれって腹の中から光らねぇのかな」
「ふふっ、それは見てみたいが、ははっ、笑わせるな」
素直な疑問をぶつけると、肩を震わせて刑部が一度タンマを要求してくる。
「お前だって笑ってんじゃねぇか」
「今のは晃が悪い」
笑いがおさまり腹におさめてみると、残念ながら光ることはなかった。