祖母。注意:書き手は土佐弁がしゃべれません。土佐弁通訳ツールを使いなんとか書いています。エセ土佐弁が苦手な方はUターンをお願いします。それでも楽しくて食べられる方はお進みください。
離れて暮らす祖母は、いつも一匹の黒い犬を連れていた。とても人懐こく賢い犬。犬の名前はムツ。俺はその犬が大好きで、ムツも俺の事を気に入っていた。
それと、思い出だけがすっぽりとないが、幼い頃の俺は祖母の家に行くのがとても大好きだった。長期の休みになると毎回遊びに行った。でも何故か、祖母の家に行け親族は俺だけ。他のイトコたちは招かれた事はない。入ることも許されない。っと。
そんな祖母の家にも中学にあがる頃には、部活や勉強で忙しくなり行かなくなった。友人達から、祖父母の家に行ってもネットもない田舎にいってもなぁっと話になり、言われてみればそうだなぁっと思ったのも理由だ。
祖母も特にせがむこともなかった。
俺の中の祖母は、とても落ち着き、穏やかで、どこか浮世離れした人。そして、いつもムツという犬を連れていた。
そんな祖母が亡くなった。
葬儀は三等親のみの小さな葬式。歳も歳だったので、呼ぶ友人もなく、本当に親族だけの葬儀。祖母が事前に手配した代理人や葬儀屋が、親族の意見を無視して、執り行った。
納得が行かないおじさんが、葬儀屋に文句を言いに行こうとしたが、葬儀屋の代表の顔がカタギの顔に見えず、その圧に負けて何も言えずに終わった。
そんな葬儀屋の社員たちは、まるで家族より家族を看取る様に、対応してくれた。葬儀代も事前に祖母が用意してあり、葬儀は苦なく終わった。世の中では葬儀は大変だと言う話だったが、祖母の葬儀はとても難儀なく終わった。
ただ、通夜の日に一人の社員が棺に眠る祖母の顔をじっと見ていたのが、ずっと頭に残った。ほんの一瞬だ。一瞬だけ、その男性社員があの祖母の側にずっといたムツに見えた。つい立ち止まりじっと男性社員をみてしまった。向こうも気づいたのか俺の顔をみた。
男性社員は、目を大きく、そう、丸くして俺をみて満足そうに微笑んで会釈した。意味がわからないが、俺も会釈して、親族が集まる部屋に戻った。
葬儀屋の全員がそうだが、みな顔が良く、何かスポーツでもやってそうな、身軽な動きをみなしていた。それと一緒にやけにスーツが似合うなぁっとも思った。
ぼんやりと祖母の火葬を待つ中で、祖母が生前に頼んだ弁護士が言った。
祖母の遺産、住んでいた土地は全て、俺に譲ると。文句を言う親族たちを、その弁護士はするりと丸めこめ、俺の意見は無視で決定された。祖母の遺言と両親と弁護士のから、祖母の遺産は思ったよりも多く、他の親戚が黙ってないだろうとの事で、祖母の家に住むことになった。
「どうやって、大学に通うんだ。」
当時の俺はその決定事項に頭を抱えた。
「そこは安心して欲しい。交通はとてもいいから安心して欲しい。」
「信じられません。てか、どうして俺なんですか?」
キナ臭い笑顔で言う弁護士に俺はいった。
大正時代を思わせる、モダンな洋服と丸メガネ、センター分けのうねった長い髪を一つに束ねた男性弁護士。
「残念な事に、君が一番適正があってね。適材適所ってやつだよ。」
返す言葉がないというのはこのことだろう。たぶん。
そんなとんでもないことが起きたのだが、それ以上のとんでもないことが起きた。
「わしの目に狂いはなかった。おんしゃが一番、ここを継ぐのがいい。主もそう言いよった!」
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
な… 何を言ってるのか わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった…。
継いだ祖母の家に、自分が刀だという男が何人もいて、俺は彼らの主、審神者にならなきゃ行けないらしい。祖母の家は彼らたちの中で本丸と言われて、今、その本丸の古参にあたる刀で、あの通夜で見た葬儀屋の男性社員が俺を見て言った。
ていうか、ここいる自称"刀"という男性達は、全員があの日に見た葬儀屋社員。しかも坊主もだ。
これで頭がイカてないていう奴を俺は見てみたい。
「わしの名前は陸奥守吉行。おまさんの祖母の初期刀。よろしゅう頼むき。ーーー」
「な、なんで俺の名前を?」
いろいろ聞きたいことがあるが、まずは陸奥守吉行と名乗った男は俺の名前を知っていた。
「そりゃ、そいつがムツだからだ。」
陸奥守吉行の隣にいるガラの悪そうな青年が言う。
「肥前!簡単にネタバレをせんずつ欲しい!」
「いつかはバレるだから、その手の事は早めに話したほうが楽になるよ、陸奥守くん。それにこれからもっと大変な事になるんだから。」
そう呟くのは、祖母の代理の弁護士と名乗った男だ。
「あの時の弁護士さんに、ムツがあんただって?」
人を指差すものじゃないと言われたがつい、目の前の人物に指を指して声をあげる。もう何が何だわからない。
「やぁ。あの時はどうも。僕の名前は南海太郎朝尊。いやぁー、あの時は弁護士じゃないってバレたらどうしようと思ったよ。意外とどうにかなるものだね。」
「ありゃ(あれは)見ゆーこっちがハラハラしぜよ!」
「あぁ。本当に肝が冷えた。」
「僕は楽しかったけどね!」
こっちの気持ちお構いなしに、3人はケラケラと笑う。だめだ、頭ががんがんしてきた。そんな中で「俺は、そんな奴を主と認めんぞ!」と大声が響いた。
「おや、その大事が来たようだね?」
「ちっ、めんどくせぇ。陸奥守、そいつを部屋に連れて行け。あいつはこっちで対応する。」
いや、目の前で後が俺がなんとかするから先に行けとかやらないで欲しい。
「二人に任せる。頼んだぜよ!」
陸奥守吉行は「すまんのぉ」と言うと、俺をするりと抱えて駆け出す。
「ちょ、ちょっと待てってくれ!」
「待っちょったら、もっと面倒くさいことになる。あいつは頭が固うて困る。まだ審神者についての話もしちょらんのに。」
「まだ何かあるのかよ!?」
「あるぜよ、あるぜよ。これから、やることがたんまりあるぜよ!」
「はぁぁぁー?!」
先程居た場所から「まて、陸奥守吉行!あぁ!離せ、肥前、俺は話すことが!」「まぁまぁ、長谷部くん少し話そうか。」そんな声が遠く聞こえた。
「もう、休ませてくれ。」
「困ったのぉ。人の子の時間は有限や。時は金なり。時間があるうちに覚えと困るのぉ。」
「俺は、もう、困ってる!!」
そんなこんなで、俺は、祖母の本丸を継いで審神者になることになった。
俺の自室となる部屋についてから、パンクしてる頭の中で、陸奥守吉行は審神者について、そして祖母の先代派で俺が審神者になるのを反対してる者がいるらしく、さきほどの男がその一人、へし切長谷部とのことと話した。
「………いろいろ言いたいことがあるが、もう休ませてほしい。」
どこか懐かしい匂いがする畳の上でぐったりと横になり、説明してくれた陸奥守吉行を見上げる。
「またわからんことがあったら、何度でも聞きしとおせ。これから、ここではわしがおまさんの相棒ぜよ。」
「相棒?」
とんだ鬼畜な相棒様だ。俺は深いため息をつく。相棒と名乗るその男、自称本体は刀はケラケラと笑った。
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反対派筆頭は長谷部。
賛成派筆頭はむっちゃん。
土佐弁難しい!!!