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    筐屋は作業中

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    竜ハン×うちの♂
    いい姿勢の日ネタ(遅刻)

    ##MHW

    【MHW】いい姿勢の日(11/1) 竜人族の特徴的な脚のためか、姿勢を正すと相手の方がわずかに背が高い。
     彼ら一期団の面々で並ぶと大団長の飛び抜け具合で錯覚するが、間近に立てば多少見上げる程度には上背の差がある。長く過ごした古巣でも己より大柄な人物は居らず、見上げる経験は新鮮だった。
     そんな稀なる竜人族のハンターが調査拠点に帰還する頻度が上がってしばらくした頃、酒宴に興じる同期たちが「腰の位置が高い」だの「脚が長い」だのと沸き上がる場に居合わせた時は、したり顔で相槌を打つ一方で内心はまあ平静ではなかった。腰の高さの違いはすでに身を持って味わっている。
     彼との身長差など普段は気にもとめない事だが、わずかに届かないもどかしさを実感させられるのは、こうして身を寄せ合っている時だ。
    「……意地が悪いぞ、貴方」
     魂胆はわかっていると恨みがましく睨め上げるも、目線だけで見下ろしてくる相手は堪える様子もない。
     顔を寄せた姿勢のまま、綺麗に髭の整えられた顎に指をかける。ぐっと力を加えるも、思いの外抵抗された。いつもならすぐ身をかがめてくれるというのに、今日は素直にこちらへ顔を向けてくれるつもりはないらしい。平時なら見惚れる彼の姿勢の美しさも、こうなっては恨めしく思えてくる。
     背伸びをすれば届かない距離ではないが、呼びかければ彼は微笑んで身をかがめてくれるので、浮足立つ裡を耐えて届く距離まで待つのが常だった。それがどうしたことか、いつものように顔を寄せた彼は、触れる直前でふいと顎を持ち上げてみせた。
     一瞬呆気にとられた。何かやらかしたかと直近の身の振りが脳裏を駆け巡った後は、何か含むところがあると察するのに時間はかからなかった。
     何気なくすれ違った風を装って─わざとなのは言うまでもない─上へ逃げていった相手の顎を摘む指先に、かすかに震えが伝わった。笑っているのだ。
    「君が遠慮がちだからだ。気兼ねなくしていいといつも言っているだろう?」
    「年長者に失礼のないように、分別を守っているだけだ」
     四十年前に新大陸に降り立った一期団の彼らは、年長者という意味でもハンターという意味でも偉大な先達だ。言い分に嘘はない。ないが、互いに立ったまま、こちらから不意を突くように仕掛けた手前、言い訳がましく響かなかったかと一抹の不安が過った。
     彼をこちらに引き付けるのは、色々と気後れするのだ。美しい均衡を崩したくないとか、軽々しくそう振る舞うには己は薹が立っているとか。しかも、何をするにもこちらが間合いを取っていることに彼は気づいている。
     相手より背が低いと逃げられやすいことをこんな形で思い知る日が来るとは。逃がさないようにする方法ぐらい考えつくが、素面で実行に移せるかと己に問えば、即却下の一択しかない。
     整えられた髭の手触りをうわの空に堪能する指先を、彼がひょいと掬い取った。
    「いつも隙を狙いに来るようにされたのではね」
    「貴方にしても俺にしても、いつもアステラに居ないからな。滅多とない好機を狙うしかない」
    「それが毎度不意を打ってくる理由かな? 最初から予定を合わせているときは別だが…君は大抵素早く立ち去ってしまうし」
    「……お互い忙しいだろう」
    「私は君にならいくらでも時間を作るつもりだよ」
     彼は掬い取った手を肩口に導いた。こっそり添える程度に手を浮かせていると目ざとく気づいて「掴まりなさい。首に回させるほうがいいか?」と珍しく強気に押してくる。藪蛇は避けるべしとぎこちなく肩に縋るようにして、ようやく彼は満足げに目を和ませた。
     ここまで誘導されれば、どう振る舞うのを期待しているのかは察せられる。反故にするほど野暮でも初心でもない。観念しよう、求めるところは異論なく己も同じなのだから。
     肩口に掴まる手を背中へ滑らせ、軽く力を込めた。彼は笑みを深くして促されるまま背を丸める。こんなささやかな力で、彼の真っ直ぐに背を伸ばした立ち姿を、望むように出来ることを許されている。
     不意に体を駆け上ってくる疼きを見透かしていたかのように、四本指の大きい手のひらが首裏に回った。




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    うちのハンター:
    五期団所属の"白い追い風"。四十路のガンランサー。賢人との腰の高さの違いでえらい目にあった事がある。「中年の腰の脆さを舐めるな」
    年上の主人に仕えていた経歴から、年長者である賢人に対して一般的なそれらしく振る舞うことに多少遠慮がある。年上の先人はまず敬うもの。

    竜人族の賢人:
    一期団所属の竜人族のハンター。抱え上げた時に重量を気にするハンターに冗談を飛ばしたところ笑ってもらえたのが嬉しかった事がある。「大丈夫だ。私の操虫棍より軽い」
    スキンシップを厭う気配はないものの、いつも間合いを取っているハンターにはもっと遠慮なく縋ってくるなり掴むなりしてほしい。ハンター自身の意志で掴まえさせたい。

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