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    かなで族の最後のオタカラ探し
    ・時間軸はW(Ibからの追加モンスターは観測されていない前提)

    ##MHW

    【MHW】一人と一匹とかなで族のオタカラ探し──今日も「ドデカつばさ竜」に乗り「一族の滝」から、こんなに遠い地で「キノコ」を枕に昼寝した。そしてキネンヒンを埋めたんだ!本当だぞ!


     一人のハンターと一匹のオトモアイルーは顔を見合わせた。
    「これはまた……なんとも大味だな」
     ハンターは途方にくれる心地に蓋をしてそんな風に言った。
    「キノコの採取ポイントを虱潰しに行くか……いや、すべて見て回るなんぞ効率が悪すぎる」
    「にゃむ。クレドさん」
     オトモは訴えかける目でハンターを見た。ふよふよとヒゲを動かす仕草をする。
     オトモの優秀な探知能力に大いに助けられてきたハンターはすぐに意図を察した。
    「そうだな、これまでのように頼れれば良かったんだが……これはさすがに範囲が広すぎる。全部をシュネーの鼻に頼るなんて無謀だ。それに疲れ果てるだろう、気持ちだけ受け取らせてくれ」
     ありがとうな、とクレドはオトモの頭を撫でた。しょげたシュネーの白い耳が下がる。
     オタカラ情報のメモをハンターノートに挟み、クレドは空けた腕でオトモを抱き上げた。
    「テトルーたちの言葉がわかるのはおまえが通訳してくれるおかげだ。これまでのオタカラもその鼻で見つけてくれただろう? シュネーは凄い子だ、落ち込まなくていい」
     意思疎通すら困難なテトルーたちの言葉をクレドが理解できるのは、通訳してくれるシュネーのおかげなのだ。
     毛並みを撫で慰める手をひとしきり受けて、気を持ち直したシュネーは腕から肩へ乗り移った。頬をくすぐるふわふわの足の感触にハンターは忍び笑いをする。
    「ひとつだけ当たりをつけよう。それが外れだったら……諦めて足を使ってひとつずつ調べて回ろうか」
     自由になった手であらためてハンターノートを開き、陸珊瑚の地図とシュネーが翻訳したかなで族のオタカラ情報のメモを並べる。
    「伝説のライダーが枕にしたキノコに最後のオタカラがあるのは間違いないだろうが……」
     書き留められた採取ポイントの多さに気が滅入ってしまう。キノコの採取ポイントが陸珊瑚にどれだけあると思っているのか。書き込んだのは己自身だが。
     大味すぎる、と再度思ってクレドは内心で呻いた。
    「"一族の滝"。"こんなに遠い地"。……急に大雑把になってくれるな……」
     これまでのように西の方だの南の地だの、せめて方角ぐらいは明言してほしいところだった。"遠い地"のさじ加減も難しい。陸珊瑚の台地の端なのか、はたまたテトルーのものさしで見ての遠距離なのか。彼らの二倍ほど大きいハンターには判断しづらい。
    「"ドデカつばさ竜"に乗る。ふむ、これは飛竜種か」
     こちらはわかりやすい。陸珊瑚で観測される飛竜種は三種のみだ。浮空竜パオウルムー、風漂竜レイギエナ、桜火竜リオレイア亜種。しかし、ラフィノスのような小型竜はさておき、体の小さいテトルーではどれも乗りこなすには難敵に思える。ドデカつばさ竜なる言い回しに覚えがあった気もするが、さてどこで見たのだったか。
    「せめてドデカつばさ竜が何を指しているか絞れればいいんだが」
     急にシュネーが肩から身を乗り出してきて、クレドの視界は白いふわふわで埋もれた。かろうじて視界の端でハンターノートに手を伸ばす仕草が見え、兎にも角にもずり落ちかけるオトモを支えて手近な岩場に腰を下ろす。
     シュネーを肩から膝の上へ移動させ、その体の前にハンターノートを広げてやる。
    「なにかひらめいたのか?」
     シュネーはぱらぱらとノートをめくり、挟まれていたメモのひとつをびしっと指した。
    「"ドデカつばさ竜が現れたのでヤツに乗るために崖からダイブ。あえなく失敗"。ああ、前のやつか。これもシュネーが見つけてくれたな」
     場所もよく覚えている。情報の内容から大まかな場所は絞り込めるも、オタカラが埋まっている位置をピンポイントで見つけ出すのは実のところ難儀する。このオタカラを見つけた時もそうで、探し当てられたのはシュネーのおかげだった。
    「そうか…ここなら場所がわかっている。エリアが分かればそこを通過するモンスターもわかる。ドデカつばさ竜もわかるかもしれないな。シュネー、冴えてるぞ」
     ご機嫌になったシュネーはクレドの顎下に額を何度もすりつけた。普段からハンターとオトモのスキンシップは多い。クレドは何かにつけてシュネーを撫でて褒めて可愛がり、シュネーは余裕ができればクレドの膝に乗りたがり抱き上げてもらいすりすりをしたがる。
     喉元をくすぐる感触にじっと耐えたクレドは、シュネーの気が済むまで待ってから、オトモを膝から下した。
     慣れた動きで口元に指をあてる。高らかに吹き鳴らした指笛に呼ばれた翼竜が上空から一人と一匹の元へ降下を始めた。
     
     
     ロープリフトは何度使っても素晴らしい爽快感を味わえる。距離が短いのが惜しいほどに。
     アステラのリフトにもひとつぐらい採用してみていいのでは、とクレドはうっすら考えた。
     揃ってロープリフトを飛び降りたクレドの先をシュネーが元気に駆けていく。
    「崖からジャンプ、して失敗した。そのまま落ちたんだろう。そして緑の穴を発見した。方向はあちらで合っている」
     先のオタカラを発見した場所に再び立ち、クレドは眼下を眺め下ろした。遠目に珊瑚の巨木が立ち並ぶ森が見晴らせる。
     しばらく眺めていると、空に伸びる珊瑚の枝先から無数の桃色の球体が浮き上がり始めた。陸珊瑚の産卵だ。
     そびえる大渓谷の崖壁とそれに覆いかぶさるような水面模様の青空を背景に、なごやかに降る雪に似た桃色の卵がふわりふわりと飛びあがっていく光景をクレドは特に気に入っていた。
    「レイギエナはこの低さには降りてこない。"桃色雪の巨樹"に立ち寄るモンスターはパオウルムーかリオレイアだ。そしてパオウルムーは……"白えり"と呼ばれていたな」
     ねぅ、とシュネーが相槌を打った。
     にわかに珊瑚の森がざわめ立った。騒がしく鳴きわめくラフィノスたちがわらわらと散るように飛び立っていく。
     クレドが目を凝らした先、巨木の影から珊瑚の木肌によく似た色味の竜が姿を現す。特徴的な棘に覆われた背、力強く地を踏みしめ時に恐ろしい速度でハンター達を追いかけてくる脚、ゆるりと揺れる毒針を備えた長い尾。華やかな桜色の見目は蒼い空の王者の対と並び称されるに相応しい。
     畳んでいた翼を打ち振るい、陸の女王は空に舞い上がった。
    「つまり、伝説のライダーが乗った竜はリオレイアだ」
     よくぞあんな火竜に乗ったものだ。テトルーたちのガッツと根性にはクレドも驚かされる。
     桜火竜が飛び去っていく方向を確かめ、クレドはハンターノートを開いた。
    「リオレイアの巡回ルート上で、かなで族の寝床から最も遠い位置にある採取ポイントは──」
     導蟲の誘導がなくとも、何度もフィールドに出ていればモンスターの移動ルートは自ずと覚えるものだ。
     目指すべき場所は、指し示したかのように一箇所だけだった。
     
     
     翼竜に繋いだスリンガーを切り離し着地したと同時に、虫かごから湧き出た導蟲が目標に向かっていく。
     光の帯になった導蟲と競うように走り出したシュネーがそのままの勢いで崖から飛び降りるのでクレドは一瞬ひやりとした。ともに狩猟に出る彼らが非常にタフなのは承知しているが(現大陸にいる妹の話では、ニャンターなる職につくアイルーも居るらしい)、目の届かないところに行かれると気を揉んでしまう。
    「シュネー?」
     崖下からにゃーむ、と普通に返事が戻ってくる。やはり杞憂だったようだ。
     階子を使い降りた先は、日陰なのもあって薄暗かった。狭い範囲に広がって一面を埋め尽くす導蟲のきらきらしい光が、まだ暗さに慣れないクレドの目を眩ませる。
    「む……」
     反射的に閉じた瞼の裏に赤い残光がちらつく。クレドはそのまま導蟲を虫かごに呼び戻した。
     眩鳥防具の飾り布を膝下からちょいちょいと引かれ、目を閉じたまま首を下に向ける。
    「ヒゲがピクピクするにゃ!オタカラがちかいのにゃ」
     白い耳をぴんと立たせたシュネーは素早く身を伏せた。
     眩んだ目を使うよりよほど良い。何もかも任せるつもりで、しきりにヒゲを動かしているシュネーをクレドは黙して見守った。
     方向を探っていたシュネーの鼻先が一方を向き、そこから迷いなく匍匐前進を始める。クレドはすぐ後ろに付き従った。
     黙々と進んだシュネーの鼻先は、岩の裂け目にぽつんとひとつだけ生えたキノコに追突した。
     一見してなんの変哲もないキノコだ。ただの人からすれば、言われてもそれの元に何かが埋まっているなど考えもしないだろう。
     にぁるる、と一等興奮した声とともにシュネーは飛び跳ねた。
    「ここだにゃ!ここにオタカラがあるにゃ!」
     クレドさん!と期待に満ちて呼ぶ声にクレドは笑い返し、オトモが指す場所にかがみ込んだ。途中からシュネーも手伝って、一人と一匹はざくざくとキノコの根元を掘り返した。
     掘り返した深さがそれなりになった頃、ちかりと硬質な輝きを放つ丸いものの表面が土の中から顔をのぞかせた。



    ─────────────────────────────────────
    うちのハンター:
    五期団所属の"白い追い風"。四十路のガンランサー。オトモを甘やかし気味。

    オトモ:
    全身真っ白な毛並み。人見知りする方で、ハンター以外の人前ではあまり喋らない。

     
     
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