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    ナナメ

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    ナナメ

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    創作の雷華の過去から今まで
    読みづらい事この上ないぜ!!!

    わしは子供ん時から、ずぅっと馬鹿やった。

    一族に目ぇ付けられて屋敷に幽閉されてやっと出られたと思ったら人間に角ぉ折られた。

    こんな生き様嫌じゃ、っち思うて何度か死のうとした。子供やったし、何も考えず一人で、勢いだけで生きてたんやな。

    左の角折られた時、もう駄目や、わしはここで死ぬんじゃっち思うた。
    男共は「殺さず見世物にして金を稼ぐ」っち言うとった。そんなんは御免じゃ。そうなるぐらいならここで舌噛んで死んでやる。
    そう決心しとった。

    でも、御天道様はわしを見放さんかった。

    わしと同じくらいの歳の男の子が出て来て、
    でかい男共に石を投げて追っ払ってくれた。

    確かこん時、わしは人間で言うところの16歳くらいやったはずや。
    16の子供が勇気振り絞ってまで、化物扱いされとる鬼のわしを助けてくれた。
    人間も、皆が皆悪い奴やないっち知った。

    そいつの名前は平助と言って、母親とちっさい家で二人で暮らしとった。
    父親は大工で、仕事の最中に梯子から落ちて死んだらしい。

    母親は肺の病気を患っとって、平助が出稼ぎに出て何とか食い繋いどるんやと。
    こんな苦労して生きとる家族の間にわしのような異種のもんが入って、平助達にまで危害が及んだら嫌や、と思って、晩にこっそり出て行くつもりやった。

    でも、平助の疲れ切った寝顔を見て、わしもせめて助けられた恩のぶんを返さにゃこれからずっと引き摺るようになっちまう、と思って、その日から平助の仕事を手伝うようになった。

    最初のうちは頭に布を巻いてその上から深く笠を被って角を隠しとったが、しばらくして人間に化ける術を使えるようになった。
    それはそれは便利な術やったけど、姿を人間にしようが力は強い鬼のまんまで、うっかり怪しまれる事もしばしばあった。

    山で芝を刈ったり、炭を焼いたり、引っ越しの手伝いをしたり、色んな事をして金を稼いだ。平助に教えて貰いながら、毎日を楽しく過ごしとった。


    が、ある日、恐れとった事が起こった。


    あの時、平助と出会った時にわしを襲った男共がまたやって来おったんじゃ。わしだけを狙えば良い物を、平助を狙いおった。

    悪い奴ぁ何時も、獲物の弱点を探す。


    平助はわしの居場所を聞かれ、答えなかった。

    答えれば怪我も無く解放されたんじゃ。
    いや、わしを誘き出す為のエサにされとったかもしれんが、それでも怪我は酷くなかったはずじゃった。

    平助はわしを守ってくれた。
    守って、自分が犠牲になったんじゃ。


    わしが駆け付けた時、人気の無い森の中で平助が倒れとった。もう何度も殴られ蹴られたようで、血だらけの顔でわしを見た。

    怨まれる。
    そう思ったわしはこのまま平助から離れて男共に大人しく捕まってやろうかと考えた。
    怨まれるのは当然じゃ。


    「逃げろ、雷華」


    平助が必死に紡いだ言葉に耳を疑った。
    そして、心を突き刺された。

    何故平助は、この人間は、わしにそこまで情をかける?何故そこまでしてわしを助けようとする?
    何故、こんなわしを…

    一人の男が「余計な事を言うな」と平助の腹を蹴飛ばした。別の男がこっちへ近付いてくる。

    平助を見て、わしの中で「何か」が切れた。

    今まで生きて来た中で出した事のない咆哮を上げ、激しく底から噴き出す怒りで目が紅く染まってゆくのを感じる。隠していた右の角をバキバキと音を立て、露にさせた。

    自分が自分じゃなくなっていくのを感じる。
    悲鳴を上げながらも男共がこちらに向かって来る。
    薙ぎ倒しながら、叫び続けた。
    無我夢中で走って来る男を蹴り飛ばし、腹を殴り、投げ飛ばした。逃げる者をひっ掴んで、地面に叩き付けた。

    どうしてわしじゃなく平助を襲ったんじゃ
    平助はわしを救ってくれた良い子やのに
    平助、
    どうしてそこまでされて、まだわしを救う
    もうやめてくれ、もう、


    「雷華!!」


    平助が泣いておる
    痛かったよなあ、つらかったよなあ。

    すまんなあ、わしのせいなんじゃ、全部。


    「雷華…もうやめてくれ…おれは大丈夫…
    だから、もう…やめて…」


    平助が怯えた表情でこちらを見ていた。


    ああ…


    わしは男共に瀕死の重傷を与えておった。
    辛うじて息はしているらしい。

    わしは怪我を負った平助の何倍も血を浴び、身体中真紅に染まっておった。

    気付かぬうちに己の角は伸び、瞳孔は開き、牙は鋭く尖り、体が大きくなっていた。

    鬼じゃ。

    人間が恐れ、絵巻物に描く、鬼じゃ。


    そうじゃ。
    わしは その「鬼」じゃ。



    これ以上平助に迷惑を掛ける訳にはいかん。

    平助に背を向け、去ろうとした。

    「雷華」


    振り返ると、平助が腕を押さえながら立ってこちらを見ていた。


    「行っちまうのか」

    「…もう平助もこんな目には合いたく無いやろ
    わしとおるとこうなる。離れた方がええ」

    「嫌だ!!…俺はどうなってもいい。
    雷華が居ないと…俺はやっていけない」

    「…大丈夫や。平助なら何だって出来る」

    「雷華…!!なあ、お願いだ…俺を置いて行かないでくれ…きっともう俺は独りぼっちになっちまう…雷華…」


    「…今まで、ありがとうなあ。平助」





    平助が俯いている間に、
    木々を抜け町を去った。

    痛む心を無理矢理隠して、わしは遠く離れた地で人間の姿で毎日仕事を続けた。


    わしら鬼の種族は若い姿でいる期間が長いもんで、ずっと一部の人間と関わりっぱなしじゃあ怪しまれる。
    働いて、しばらくしたら何かと理由をつけて離れた地に移動して、また仕事を始めた。

    一時も平助を忘れる事は無かった。

    母親は元気になったんやろか。
    平助は大人になって、良い人と巡り合えたやろか。
    あの男共が報復に行っとらんとええけど…


    仕事で行く先々で、「派手な髪色だねえ、ガイジンの人かい?」「そんな奇抜な髪してんのに着物が似合うねえ」「随分と訛ってるじゃないか、あんたどこの人だい?」と様々な事を言われた。
    わしを騙そうとする輩もおったが、全員締め上げて懲らしめてやった。



    各地を転々としていくうちに、街に建物が増えて、服装やら生活様式やら何やらががらりと変わり始めた。

    時代が変わって行っているらしい。

    それに合わせてわしも着る服を周りに合わせて、何とか過ごしとった。
    せやけど、やっぱりこの話し方はどうしても変えられんかった。染み付いた癖みたいなもんやしの。

    人間がどんどん増えていって、なんやでかいケンカが何度かあった。
    海の外の者とのケンカらしいが、鬼と人間でも仲良う出来るっちのに難しいもんじゃの。

    その後も度々ケンカがあって、ようやく収まった。わしの仕事での知り合いも、そのケンカに呼び出されて死んでしもうた。

    ケンカでタマ散らすんは、馬鹿のやる事じゃ。命より大事なもんは無いっちゅうに…

    そこからまた時代が変わって、金持ちが増えたり減ったり、ビルが増えたり、電車っち言う鉄の塊が多く走るようになったり、人間を写す「テレビ」っち箱が板みたいに薄くなったりした。

    海の外の者がよう街に来るようになって、わしと同じような髪色のもんが仰山おって驚いた。
    海の外じゃあ、この目立つ金色の髪がふつうなんか。世界はほんまに広いもんやの。

    気付けば、今の時代になっとった。
    「レイワ」と言うらしい。

    自分らが生きる時代に名前を付けるんは斬新な考え方じゃの。

    わしが産まれたんは「エド」と言うらしいけど、何年生まれ?と聞かれてエドと答えると笑われるらしいもんで、また周りに合わせんといかんかった。めんどくさいやっちゃな…

    新しく働いとった会社でそれなりに成功して、それなりの金が入ったもんで、そろそろ辞め時やったししばらく働くんはやめた。

    大きく成功してまうと、人間の記憶に残ってまう。記憶に残ると、後々出会ってしもうた時にわしの姿が変わっていない事に気付かれる。せやから、それなりに生きて、平凡を目指しとった。

    一応やっすいアパート一部屋借りて小さく拠点は持って、いつでも引っ越せるよう置く荷物は最低限にしとった。

    毎日の楽しみは、夜人間が寝静まった頃に公園に遊びに行く事やった。

    明るいうちは子供や爺ちゃん達がおってあんま近寄れんけど、夜やったら誰もおらん。

    …そう思っとったんやけど、
    今日は一人だけ、おった。

    「…??どないしたん、嬢ちゃん…」

    ちっさい女の子がブランコに乗っとる。
    こんな遅い時間に普通の女の子が公園におる訳あらへん。

    「嬢ちゃん、おかんはどこ行ったん?迷子なんか?…兄ちゃんが探してやるで、着いて来い」

    交番は開いとるやろか…と考えながら手を引こうとしたが、女の子はぴくりとも動かん。
    割と力入れて引っ張ったが、やっぱり動かん。これは本当に「普通の女の子」やないかも知れん…そう思って少し身構えて話し掛けた。

    「嬢ちゃん、こないなとこずっとおったらカゼ引くで?嫌やろカゼ引くん。それに暗いと危ないで、悪い人間もおるんやから気ぃ付けんと」

    「…」

    「名前は何て言うん?わしは雷華や、怪しいもんとちゃうで。嬢ちゃんが心配で声掛けとるんや。…これ言うたら更に怪しいやろか」

    「…」

    「……嬢ちゃん、ひょっとして物凄い人見知りなん?わしは優しい兄ちゃんやで~怖くないで~?それかめっちゃ無口なん?どちらにせようんとかすんとか言うてくれへんと兄ちゃん困ってまうで~」

    しゃがんで目線を合わせて手をひらひら振って見せる。するとやっと嬢ちゃんが口を開いた。

    「あそぼ」

    「…遊ぼ?なんでや、嬢ちゃん遊ぶの大好きやからこないなおっそい時間にまで公園来とるんか?さっきから言うとるけど、危ないからやめた方がええで。」

    「あそぼ」

    「だから危ないて、帰ろうや」

    「わたし、ともだちいないの
    だからあそべないの」

    「急に悲しい事言うやん…大丈夫やて、わしでも出来たんやから嬢ちゃんにも…」

    「らいかにい、あそぼ」

    「あそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそ」

    思わず後退りする。

    「な、なんや嬢ちゃん…!そんな言わんでもええって、そこまで遊びたかったんか…!?分かったから、分かったから一旦落ち着けて…!!わしが通報されてまう!!」

    「いっしょにいこう」

    「行こう、て…どこに…嬢ちゃんの家になら連れてったる……」

    「かえるおうちないよ」
    「こうえんでらいかにいとずっとあそぶの」

    「………」




    じわじわと染み込んでいた考えが、確信に変わる。
    この子、やっぱり人間やない。

    いや、「元」人間や。

    ここの公園の地縛霊や…

    多分、何かがあってここで死んでしもうたんやろ。それで、強い思いが留まってそのまま霊になってしもうた…
    この様子じゃ、嬢ちゃんは遊ぶ友達を増やす為に異界に子供を拐う悪霊になってまう。

    かわいそうやけど、死んでしもうてるもんはもうわしにはどうしようも出来ん。
    連れて行かれる子供がいないよう、わしが止めてやる事しか、出来る事はない。

    わしは鬼やし、もう子供やないからあまり連れて行く気は起きないらしい。
    この子が悪霊に堕ちないよう、せめて一緒にいてやろう。…わしも昔独りやったから、寂しいのはわかる。家族に会えない辛さも、少しは分かるつもりや。

    家族は殆ど全員屑やったけど、母親だけはわしを認めてくれた。それが今こんな事になってしもて…おかんは元気にしとるやろか。

    嬢ちゃんの母親はどんな人間なんやろか。

    今はまだ、それを知るよしは無いが、これからは一緒に過ごすんや。
    少しは嬢ちゃんから聞けるやろ。




    …今度は間違えて失わないようにせな。




    こうして、わしと嬢ちゃんは出会った。












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