手折れぬものその容姿は判りやすく、病的の一言に尽きる。
色白を通り越し白磁を思わせる皮膚の色、内臓の存在を疑う薄い体幹部、華奢と評するにも足りない四肢、優れた頭脳が詰まった形良い頭蓋骨を支える頼りなげな首。
姿態そのものから醸し出される雰囲気が、この世に存在することを忌避しているかのようだ。
しかし、一見虚弱なその身体から放出される力が途轍も無いことを、俺はこの身に刻まれるほどよく心得ている。
その力は決して彼が生来から所有するもののみで構成されたのではない。
凡人の想像範囲を凌駕するような惨い人体実験を経て得られたもので、その全てが決して当人の本意でないことは明らかだと客観的にも断じられるくらい。
それを思えば、今こうして生きられていることは奇跡なのかもしれない。
干渉し、干渉されたこいつも、俺も。
「ちゃんと食べてるか?」
「昨日オレが外食を共にした相手は、オマエだと思ったんだがなァ」
「肉とコーヒーばっかり摂取してないで、他のものも食べなさいよ」
「数日メシ抜いたところで死ぬこともないのに」
キシシ…と嗤う表情は、声色に反して朗らかだ。
一方通行の腕は片手で握っても指が余るほどだが、量に関して言えば食事を疎かにしているわけではない。
濃く味付けられた肉類を頬張る姿なんかは、完全に人形のような風貌を裏切っている。
こちらがいくら止めたってカフェインの多量摂取はやめてくれない。
減量に励む女性陣からは嫉視されがちな体質だが、反面健康面については常々気掛かりだ。
「だって簡単に折れそうだし…」
「…オマエ何回もブン殴っといて今更?」
なんて引き気味に言われるとグウの音も出ない。
実際、こちらが何度殴ったところで結局肉体的にも精神的にも復活してくるのは確かだった。
よく考えたら骨が折れたり、筋肉が断裂したりしていたかもしれない。
前者が回復できたのはこの町の技術力故か、こいつの能力の為せる術か。
後者は完全に自身の賜物だろうが。
「殴られるよりもしつこく腰振られる方がキツい」
「スミマセン…」
俺は至って健康的な男子高校生なので性欲の方も言わずもがな、毎度酷く負担をかけてしまう。
一度少しは控えた方がいいかと断腸の思いで尋ねたが、「オマエに求められると悪い気分がしねエ」とか細い声で答える表情がなんとも筆舌に尽くし難く、結局リビドーのままにいつも求めてしまっている。
「でもそのキツさもクセになるんだよなァ」
艶やかに笑む薄い唇が重なり、下半身に熱が籠った。
普段は血色の悪い口唇は薄く色づき、中から覗く肉色の舌はねっとり潤っている。