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    duck_ynbt

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    おンなの子になりたいの2の続き、同級生モブ視点。これ単体は鈴科百合子(♀)として読むことができます。

    おンなの子になりたいの3鈴科百合子という異物、怪異、天使…なんとも形容し難いヒトが同じコミュニティに参入すること、はや一ヶ月ほどが経過していた。異物や怪異と称してしまったのは、それだけ彼女の美しさが突出していることの証左に他ならない。完璧なプロポーションに欲情ができないのと同じで、あまりにも完成され過ぎていて自分と同じ生き物に思えないのだ。羨望の眼差しで見つめることまでは適うようにこそなったが、その先まで辿り着ける日は常々与えられる機会に非じ。セブンスミストのショーウィンドウでいつも見かける、実在する人間の標準から数段底上げされたスタイルのマネキンが着ている0のやたら多いドレスみたいなもので、物理的には身近でも本質はどこまでも遠ざかっている。

    同時に、彼女の美しさは男女の境目を完全に超越していた。
    下世話な話、女子の容姿について胸が大きいとか、男子の容姿に対して身長が高いとか、センシティブな筈の世代は結構俗で大衆的なモノサシを以て他人を好き放題品定めするものだ。
    しかし、鈴科百合子は男女双方からそういったモノサシを向けられることなく、というより大衆のモノサシが見えざる力によってへし折られたかのよう、ほぼ異口同音に評される。
    誰かがわざとらしく声を上げて誉めそやすといったこともなく、「彼女が美しい」ということは「大気の成分中窒素が80%で酸素が20%を占めている」ことと同じというレベル感で、である。
    これは決して皮肉とかではなく、自分も大衆の輪に組み込まれていることを自覚した上での発言なので許してほしい。
    彼女はとりわけ胸が大きいわけではなく(寧ろぱっと見真っ平だ)、身長が低いわけでもなく(170cmはギリ無いくらい)、ド直球な可愛らしさの記号は持っていない。

    でも、パッと見の印象は「美」の一文字なのだ。
    多分彼女を「美」たらしめる要素を一つ一つ分解して、それを少しずつ水準的な人間のパーツに出し入れしたとて、同系統の「美」を手に入れることはできない。
    陳腐な言い方だが、魂の器から違うんじゃないかと思う。
    「俺」という一人称も、通常確実に成人後の黒歴史になりかねない筈なのに、彼女の口からまろび出れば何故か愛嬌の一つとして腑に落ちてしまう。美のバフが強過ぎるのだ。



    だが、そんな鈴科さんの真横には特定の人物が常にいる。
    彼女は決して孤高の女王然とした人間ではなく、来るもの拒まず去る者追わずを地で行くタイプの人間だから、特段おかしい話ではない。
    クラスメイトに話しかけられれば答えるし、ちょっとした世間話にも普通に応じる。
    彼女の周りに人がいない時は、大体みんな気後れしているときくらい。
    話を戻すがその側近というのが、かの有名な上条当麻だ。
    過ぎたるは及ばざるが如し、過大過ぎるラッキースケベのしっぺ返しは言うに及ばない。
    関わった女子のほぼ全員から矢印が向いてしまう無自覚主人公。

    そんな上条氏はなんと入学前から鈴科さんと知り合いだったらしい。
    発覚したのは彼女が転入してきた当日である。
    二人間の明らかな視線の交差に当然教室中は訝しみ、上条側への詰問が繰り返された結果である。
    (転校生に初日から繊細な話題で質問攻めにしない程度のモラルは幸い皆持ち併せていた)
    しかし、知り合ったきっかけについては、双方とも死んだ二枚貝のようにきっちり口を噤んだため開明されることはなかった。
    その後も知り合いのよしみか、互いに甲斐甲斐しく世話を焼き合う場面を校内で度々目にすることになる。

    面白いことに、上条の過ぎたるラッキーも対象自体のレベルが高いと上手い具合に相殺されるのか、隣り合わせて居る時にオーバーフローして不幸に繋がることが少ないようだ。
    誰かが「上条属性は平均的な女性だと一人で処理しきれなかった影響が周囲にも波及していくが、鈴科百合子は一人で処理しきれるスペックがあるため、上条属性の超過が発生しない」などと言っていた。正直初めて聞いた時はバカサイエンス乙と思ったが、改めて考え直すとなかなかいいところを突いてる気がする。

    ここまで来れば自明の理だが「あの二人が付き合っている」という情報は、常に噂レベルで出回っていた。だが、二人が同時にいる時に訊きに行ける猛者は残念なことに存在せず。
    とはいえ、色恋沙汰に敏感な年代の人間の興味を削ぎ切ることは、学園都市の技術を以てしても叶わない。仮に叶ったとしても、流石にそれは都市外の人権団体にリークされてほしい。
    片方がいる時にもう片方への気持ちを訊く、というまどろっこしい手段により得られた結果は以下の通りである。

    「そりゃ鈴科は見ての通り魅力的だよ?でも流石に迷惑だろ?そんな、好き…とか…ハハ」
    「上条?そりゃ好きにならない方が珍しいし、選り取り見取りだろ?俺が眼中に入るか?」

    上条の気持ちはまぁ分からんでもない、というか常に女性に追われる側の上条から矢印が向く女子がいることに改めて驚く。ただ日頃あんなに言い寄られてる分の自信はどこに捨ててきてしまったのか、質量保存の法則では解明しきれない謎が生まれてしまった。

    だが鈴科百合子、アンタはなんなんだ。普段鏡とか見ないのか。「ショーウィンドウに女神が映ってると思ったら自分だった」みたいな経験が鈴科さんに無かったら、世の女性は皆「私のような芋虫毛虫が往来を歩いて申し訳ございません」と日々猛省しなきゃならなくなるだろうが!「上条にも選ぶ権利はある」じゃないんだよ!!上条が焼いてる世話が周囲に等しく与えられてるとでも思ってるのか?荷物を持ったり食堂の席を確保したりなんて万人に対してしてないんだよ!

    なーんて本人を前に言えるワケなど当然なく、放課後にみんなで寄ったカフェでシーズナルパフェにザクザクとソーダスプーンを抜き差ししながら檄を飛ばしていた。普通なら「まあまあ、落ち着いて…」と誰かが止めに入ってもいい筈なのだが、今回は誰も止めに入らず、寧ろ深々と頷くばかりである。

    「昔『破れ鍋に綴じ蓋』って授業で習ったけどさ」
    「あー、あったね」
    「あれってまさに上条と鈴科さんのために作られた言葉なんじゃない?」
    「……わかる」
    「てか絶対そうだわ」

    鈴科百合子の本質はまだまだ把握し難いが、私が当初感じていたものとはまた違った方面にあるような気がした。
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