百合の甘露(side百合子)
若干水気を含んだソックスや下着を外し、洗濯籠に入れる。後で上条の洗濯物と一緒に洗ってもらい、帰りは以前置いていった方の下着を使おう。なんて都合のいい、馴れ馴れしいことを考えてしまうほど、上条の前ではリラックスしてしまう。誰に対しても胸襟を開いて迎え入れてしまいそうな彼が、自分に対して劣情を催しているという事実だけで、無性に胎の奥底がムズつき、その蠕動が心臓の方まで昇ってくるのだ。いつからこんなに俗っぽくなってしまったンだろう。
「なんて考えても仕方ない、か」
と独りごち、ドアを開ける。ここは浴室でありながら、同居人に気遣う彼の寝室でもある。いくらタオルを敷いたってバスタブで寝るなんてあンまりだ、と思うが、自分も同じ立場に立ったら同様に振る舞うのだろうか。なんて思案しながらシャワーの栓を捻る。湯の温度に反応して、空間内は彼が常用するシャンプーやボディソープの香りが広がった。水蒸気と共に身体を包まれるような感覚がして、少し身が震える。
「ってやっとる場合か」
己を戒め、ソープを泡立てて肌に滑らせていく。先に四肢を、続いて肋の浮きがちな薄い胸から下腹に向けて…情事を想定し、局部は少し念入りに洗う。蓼食う虫(かみじょうくん)が首を長くして待ってるから程々にしなきゃな、と若干の不安は泡ごとシャワーでさっぱり流した。
*
(side上条)
「お待たせ」
「あ、もう上がったのか」
「…ちゃンと洗ってきた」
むす…と顔を顰める百合子に「そうじゃない」と言い訳、ぼんやりしてたらあっという間に時間が経っていただけだ。別に烏の行水だなんて思ってないぞ、断じて。
「じゃあ俺も…」
「後でいいでしょ」
「だって百合子も入ったし」
「それは…だって舐めるって言うから…」
湯上がりで薄く色づいていた頬がぽぽぽっと更に赤くなる。かわいいなぁと思いつつも複雑な気分。俺は百合子に散々しゃぶっといてもらいながらクンニの一つもしてあげたことがなかったのだ、この甲斐性なしめ。おまけに初めてがきっちり洗い立てとは。少し尿の匂いが残ったしょっぱいまんこを味わいたかったのに…まぁそれは次回リベンジすればいいだけだ。
「わかった、じゃあおいで」
ベッドに座って自分の横をポンポン叩くと、呼ばれた猫みたいにトコトコやってくる。ポスンと座ったところで両頬に手をあて、目蓋、頬、小作りで筋の通った鼻の頭にキスをしていく。「んン…」と気持ち良さげにくぐもった声が鼻に抜けたところで唇にも。リラックスしているおかげで簡単に口は開き、中から小さな舌が招き入れてくる。舌同士をくちゅくちゅ絡ませ、上顎を擦ると、くたりと力の抜けた身体が寄りかかってきた。胸から下を包んでいたバスタオルが落ち、薄いながらに柔らかい肌の感触がよりダイレクトに伝わる。
「上条も脱げ、不公平だろォが」
「はいはい、仰せのままに」
上のシャツを脱いでたおやかな躯幹を抱き寄せると、彼女の細腕が自分の背にも回る。肌と肌が触れ合わせるの好きだ。表皮の見えない凹凸が重なり合って、互いの温度が伝わる感触。百聞は一見に如かずと言うけど、百見もまた一触に如かず、とも思う。そっと上半身を倒してベッドに寝かせると、百合子の腕が俺の後頭部へススッと上がり、彼女の顔に引き寄せられる。今度は百合子の方から舌を絡ませ、口内をなぞってくる。小さな舌が歯列を伝う感覚にゾクゾクと熱が立ち上る。
「今日は結構積極的じゃないか?」
「いつもはもっとマグロなのにって?」
「いんや?どんな百合子さんもかわいいですよ」
耳朶を唇で甘噛みしたり、舐めたりすると小さく「ァ、ァ」と控えめな声が上がる。百合子は長い間無駄な(と自分が判断した)ものを反射してきた分、触覚は勿論のこと、聴覚も大変に敏感だ。特に耳を舐めると触覚と聴覚を同時にダイレクトに刺激される所為か、とても素晴らしい反応を返してくれる。
「そこ、ッ、あンま、舐め、ンなァッ…アぁ、」
「なんで?気持ちいいだろ?」
「それが、や、ぁ…ん、ンゥ、ッ」
真っ赤な瞳の表面に水膜が張り、目尻も赤く染まっている。演算能力の高さと外界に対する知覚能力の高さは比例する。普通の人間以上に刺激情報が脳を埋め尽くすしてしまうのだろう、以前セックスした時も「頭がパンクしそう」と泣きながら喘いでいた。人間の生殖機能なんて繁殖本能に基づいて活動するだけだろうに、人智を超えた段階に足を踏み入れかけたこの子の本能はその枠から外れかけているのかもしれない。
(それでも、同じ人間だよ)
自分を怪物だ、と自称していた彼女を思い出すとどこか苦しい気持ちになる。生まれ落ちた時は普通の人間だったのに、大人の恣意で勝手にカタチを変えられて。
「も、おかしく、な、ッから…アッ」
「うんうん、もっとおかしくなろ?」
脈打つ感覚が伝わる細い首筋を舐めていると、慌てたように視線を合わせてくる。
「キスマーク、付けンなよ?」
「大丈夫、もうしないから」
以前うっかり登校日の前日に付けた時、青ピや土御門にイジられたのが堪えたらしい。色素も皮膚も薄い肌はキスマークが付きやすいので、俺が面白がってつけまくった所為だった。ただ俺が「内出血なんだから血流操作で消せるんじゃないのか?」と訊いたら「…せっかく付けてもらったのに」と脳が破裂しそうなほど可愛い反応をしてくれたので、以降はなるべく気を付けるようにはしているのだ。
「ァア!ひゃ、だ、めェッ、ぃ…ッ、あ”」
「だめ?もう硬くなってるけど、乳首」
「ァ、ンま、つよ、いの、ォ、ン“ン…きもち、からッ、アッ」
性感帯としてはダイレクトだけど百合子は胸も弱い。肋が浮くほど脂肪が薄いが、感度は抜群だ。「胸が小さいほど感度がいい」なんて俗説もあるが、それを加味しなくても充分なほどに。色素が全体的に薄いのもあってか、普段は桜の花びらのように淡いピンク色をしていて、そのトップは奥ゆかしげに引っ込んでいる。しかし刺激を少し与えてやると、この通り紅潮し、硬さを持って隆起する。白い肌とのコントラストが絶妙に劣情をそそってくるのだ。
「ああ悪い、反対側がお留守になってたな」
「あ“っ、ァ、りょうほォ、いっしょ…やッ、ア”ァ!」
ちっぱいを揉みながら乳首を噛んだり吸ったりすると、身体がビクンビクン波打つ。頑是ない子供にイタズラしているみたいでちょっと背徳感がある。俺はロリコンじゃないので、まな板属性はあくまでも百合子限定だが。
そろそろ頃合いかなぁ、と腰の辺りで引っかかっていたバスタオルを一気に剥ぎ取る。「や、」と慌てて抑えようとしたが、残念ながら間に合いませんでした百合子さん。ルームライトがついていなくても外がぼんやりと明るいから、ぐっしょり濡れそぼったおまんこが丸見えです。
「おーおー、よく糸を引いて…」
「実況すンなァ!!」
含羞の色に染まりながらも気丈に眉を吊り上げて怒る様は、猫がシャーシャー威嚇する姿を思わせる。つまり、ただかわいい。怒ってもかわいいんだから百合子はすごい。しかし、この子猫の威嚇的状態から本当にさせてもらえるんだろうか、シックスナイン。
「ってちょっと、おイタが過ぎますのことよ!」
気付いたら百合子のおみ足が伸び、上条さんの大事な息子をツンツン突いている。唐突な悪戯に慌てて腰を引くと、百合子はぷくっと頬を膨らます。
「こっちだけ不公平なンですけど?」
はいはいそうでしたね、言われなくても脱ぎますよ。履きっぱなしだった制服のスラックスから脚を抜いて床に落とし、下着まで潔く脱ぎ捨てた。グレーのボクサーパンツにガマン汁の跡が残っているのをバッチリ見られ、きっちり痛み分け。
「上条のとォまくンお披露目ェ♡」
「もう、お下品ですのことよ」
今更どの口が言うのか、という話だが女の子には慎ましやかであってほしいという夢見がちな男子高校生の戯言だと思ってほしい。それでありながら積極的な方が嬉しいという、男子は矛盾を孕む生き物なのです。
「で、どうしたらイイの?」
積極的な百合子は勿論大好物、横に寝っ転がって先を促す。
「俺の上に跨って、お尻をこっちに向けて」
百合子は恥じらいを飼いながらも素直に従い、四つん這いになって肉付きの控えめな双丘を突き出す。つたう愛液がてらてら光って最高にイヤらしい。
「あんまり見られると、恥ずかしいンだけど…」
「こんなに綺麗でかわいいのに?」
「そんなわけないでしょ、バカ!」
そんなわけあるんだよなぁ。普段の性交時は上から見ることが殆どだが、改めて下からまじまじと見上げた眺望は絶景だ。無毛の恥丘から続く大陰唇は本来なら下着との摩擦等で黒ずみ易いはずなのに、なにものにも荒らされることなくその白さを保っていた。その大陰唇前も以前はぴっちりと閉ざされ一本のスジを引くのみだったが、上条の甲斐甲斐しい開発により、萌芽しつつある。
(それにしたってAVに比べたら充分ロリの部類だけど)
「もう、大丈夫?」
「ああ、俺の方もいい?」
「ん…」
しおらしそうにコクリと頷き、百合子は傅くように俺の竿に手を添える。細くて柔らかい指が沈む感触に、体温がまた上昇する感覚。続いて亀頭に柔らかい唇の感触、唾液が潤滑剤になって舌がるろるろと鈴口をなぞっていく。回数経る毎に明らかに巧くなっている。
と、自分ばかり尽くされている場合じゃなかった。
膣液が溢れる蜜壺をぐに、と広げれば、くすみのないサーモンピンクの媚肉が視界に映る。生き物の呼吸みたいに膣口がパクパクと動く光景はともすれば生々しいはずなのに、今の俺にとっては興奮材料にしかならない。眼前の佳景に誘われ、大陰唇に唇をつけ、粘膜の中に舌を挿し入れる。
「や!ああア!!いきなり、ッ…ンァ、ふ、ゥあ」
「ちょ、いきなり落ちてきたら窒息する!」
「あッ、ごめン…これで平気?」
「うん、というかパニクって悪い!」
「ううン、こっちこそ…ちょっとびっくりして腰が砕けちゃった」
「気持ち悪かったか?やめる?」
ひょっとして嫌な思いをさせた?と窺ったが、百合子は耳まで真っ赤にして首を横に小さく振った。どうやら杞憂だったらしい。体重がモロに顔に集中したことで思わず止めてしまったが、正直感触の方は極楽浄土だった。希望する死因のトップ5に「百合子の顔面騎乗で圧死」と「百合子の愛液で溺死」が乱入するレベルだ。
なんて感傷に浸っていると、百合子はフェラを再開してくれていた。温かい口内の感触は勿論、あの貞淑そうな口の中に猥物が入っているという事実がなによりも色情を唆るのだ。
こちらも舌を窄めて膣口を穿ると、蜜がコポリと溢れ、呼応するように彼女の尻も揺れた。
「気持ちいい?」
「ん、きもちい…上条は?」
「…最高にきもちいいです」
よかった、と百合子は天使の微笑みを見せ、悪魔の舌技で翻弄してくる。俺も負けじと慎ましい花唇を舌でくりくり弄れば、甘い嬌声が漏れる。舌に絡んだ愛液からは仄かな塩気を感じた。初めてのクンニは黴の強いチーズみたいな臭いがしたなんて誰かが言っていたが、百合子の秘処からは石鹸と微かな汗の匂いしかしない。
「ァ、ああ、ッ、ぅ…アッ、アアア、も、だめ、エ……」
「いいよ、イッて」
「え、そこ、や、アッ、あ"あああああァ!!」
クリトリスを包皮の上から擦ると、甘イキしてくったりと倒れてしまう。
ゴプリ、と溢れた甘露を最後まで吸い上げ膣口を舐め上げると、体がビクンとうねった。
薄い背中が大きく上下している。
「は、ふゥ、かみじょ、ごめ…」
「へーきへーき、百合子が気持ちいいならよかった」
百合子の躯幹を抱き寄せて背中をさすると、胸元に体重を預けてくれる。汗ばんだ肌がしっとりして気持ちいい。体が上気している所為か、ボディーソープの香りが立ち上る。普段自分が使っているものと同じなのに、使う人間が違うだけでどうしてここまで匂いが違うんだろう。
「そ、か……かみじょォ、イってないよな」
「ああ、後で抜くから「擦って、精液飲ませて」
「……え!?あ、あの百合子サン、何をおっしゃって…」
「私のだけ飲んでもらったのに、不公平だし…」
別に不公平だなんて思っていないが、発射寸前で寸止めを喰らった身だ。据え膳食わぬはなんとやら、俺は申し出に甘えることにした。
恋人から見つめられて行うオナニーは少し恥ずかしい一方、興奮もする。ガチガチで熱を帯びたモノを握ると、自分のガマン汁と百合子の唾液でヌルついて滑りが良い。何度か擦る内に自然と速度が上がる。百合子が亀頭の前で口を開けた。
「は、ぁ、くッ、もう射出るッ……ウッッ」
「ンぐッ!?…んん…」
達した瞬間、俺は百合子の慎ましやかな口の中に勢いよく吐精した。
収まりきらずに飛び散った精液は頬や髪にかかり、清廉と潔白の白がたちまち白濁で汚れる。
「悪い!!出して!」
慌てて近くにあったティッシュを数枚引き抜いて渡したが時既に遅し、俺のオタマジャクシは彼女の腹に落ちた後だった。
「ご馳走サマ♪」
んべ、と舌を出し悪戯っ子みたいに笑ってるけど、気が気じゃない。
「ごめん…本当に面目ない…」
「なンで?飲みたいって言ったじゃない」
「不味かったろ?」
「美味しくはなかったけど、不味くもなかった」
「お腹壊すかも…」
「そうしたら…看病して、ね?」
「喜んで!」
*
その後、一緒の入浴時間中「クンニが気持ちよかった」「シックスナインもたまにはいい」など大変有り難いお言葉の数々を賜ることに成功し(途中で「しつこい」「言わせンな」の怒号と共に拳骨も頂戴したが、大して痛くないのと怒った顔の可愛さでお釣りがきた)、鬱陶しさしかなかった筈の雨期に、はからずも感謝の念を覚えたのであった。次の休日が雨だったら、おうちデートという名のセックス三昧を所望します。
「捕らぬ狸の皮算用、ってなァ」
「布に応じて衣を裁てとも言いましてね」