恋を止めた日 ここは地獄か。
騒々しい店内でアルコールで炙り出された人間の欲が溢れて頭がクラクラする。
そんな場所にのこのこ着いてきた俺が一番欲に塗れていて馬鹿らしい。
「愛してる」
簡単に紡がれる陳腐な言葉も。
一次会から二次会に流れ、何度帰ろうかと思ったがあいつ(杉元)がいつもよりも酒に酔って強い力で引き留めるからおめおめと着いてきてしまった。
そもそも白石主催の飲み会という名の合コン紛いに来ているのも、杉元がいるからだ。
あいつはバイトに明け暮れいつも金が無く、ただ飯ならという理由でのこのこ着いていくやつだ。
自分を餌にどれほど女も男も引き付けているのか分かっていない。
釣られている一人が俺なんだが。
そんな餌に懇願されれば、緩んでいつでも振り払える腕に引っ張られたまま仕切りで区切られた簡易な座敷でチビチビと酒を胃に流し込んでいる。
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