転生ファウ晶♀ 小話④ とある夜。
私はとある人を探して夜の魔法舎を徘徊していた。徘徊、とは言ってもその人がいる場所には心当たりがある。
結構な頻度で現れる場所であるし、他の魔法使い達からの証言もある。私は目的の扉をそっと開けて一歩中へ踏み出した。
カラン、と小さく軽やかな音が耳殻を擽る。
部屋を見渡すとカウンターの中でお酒を作っているシャイロックと、お目当ての──。
「フィガロ。」
カウンター席に座っていたのは冬空色の髪の南の魔法使い、フィガロだった。
珍しい訪問客に不思議な色の瞳をぱちりと瞬かせている。フィガロは綺麗な笑みを浮かべて私に向かって手を振った。私も手を振りかえし、にこやかに笑うシャイロックに会釈をしてカウンター席に腰掛けた。
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